今日妻と二人で今年のアカデミー作品賞を獲得したキャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」を観て来ました。イラクでの爆弾処理班のアメリカ人兵士三人を中心にした物語です。中でもジェームズと言う恐れを知らない爆弾処理専門の兵士の無謀な位の勇敢さと活躍が主題です。
妻は「やはりアカデミー作品賞を獲得しただけに良く出来ていた映画だったね」と言いました。確かに最初から最後まで飽きさせずに次々とハラハラする場面を繋いでおり、また無駄のない画面作りだったと思います。実際のロケはイラクでなくヨルダンで行われたそうですが、アラブの街の雰囲気もリアルでした。
私としてはアカデミー作品賞との期待があったせいか、少し不満が残りました。大きな盛り上がりや感動がなかったせいです。主題は恐らく危険な仕事に毎日従事しているイラク派遣のアメリカ兵士の苦労を伝えると共に、爆弾処理のもたらす緊張感と達成感が若者にもたらす中毒現象を伝えているのかも知れません。
一年の任務を終えて妻と幼い息子がいるアメリカの自宅に戻ったジェームズは平和で平凡な日々に退屈さを感じ、また再度イラクに戻り、爆弾処理の仕事に就くところで映画は終わります。生と死のぎりぎりの場所での緊張と興奮の記憶が彼を平和で単調な日々からイラクの戦場に引き戻すのです。
ある意味で言えば、これも一種の反戦映画としても観られるかも知れません。戦争の残酷さ、そこへ送られたアメリカの若い兵士たちの死と隣り合う日々、それらを知ると親はもちろん一般国民のイラク戦争の大義を疑うのではないかと思います。それをビグロー監督が意図したのかどうかは判りません。
キャスリン・ビグロー監督はアカデミー賞の歴史で初めて女性の監督として作品賞を獲得しました。元夫だったジェームズ・キャメロン監督が制作した「アバター」と争っての勝利でした。これだけの緊張する戦争映画を作るのが女性の監督でも可能である事を証明した映画ではあります。
それにしても果たして本当にアメリカはイラク戦争を引き起こす大義や理由があったのかどうか、この映画を観ると、ますます疑問に思われます。ブッシュさんは石油のためだとか、中東にアメリカの望む民主主義を確立するために、その楔としてイラクを思う通りにしたかったのだとの説もあります。
同時多発テロのショックと恐怖からブッシュ大統領の大量破壊兵器の存在を理由にしたイラク攻撃に同意したアメリカ国民ですが、この映画などを観ると、また反省と後悔の思いを強くするかも知れません。現在のイラク国民のアメリカに対する本音の気持などを知りたい思いです。(終り)