012653 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Supica's room

Supica's room

遺失物

遥か彼方の宇宙から、宇宙人がやってきた。

「こんにちわ」

「こんにちわ」



僕はコーヒーカップをテーブルにおいて、深々とお辞儀をした。

宇宙人は礼儀に対してはとてもとても厳しいのだ。

「遺失物はありますか。何でもおっしゃってくださいな。私達そう言う仲でしょう。」

宇宙人はパンパンに膨れた大きなお腹から、小さなメモ帳を取り出した。

宇宙人は肩にかけている鞄から、いかにも高級そうな万年筆を取り出した。

僕は不思議と悲しくなってきた。


「ごめん。少し泣いていいかい。」

と僕は言った。

「どうぞどうぞ。人生が詰まっている人ほど、私の前ではよく泣くんです。好きなだけ泣いてください。」

と宇宙人は言った。

僕は宇宙人の前でしばらく好きなだけ泣いた。


© Rakuten Group, Inc.