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コインロッカーに降る雨は… (そのほか)楽天ブログ 【ケータイで見る】 【ログイン】

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オルタナティブな旅

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2007/01/28 楽天プロフィール Add to Google XML

コインロッカーに降る雨は
[ +コトバを抱いて眠る+ ]    


「またかよ」舌打ちしながらヤマザキ君が戻ってくる。
「どうしたの?」僕は業務日誌に点検印を押しながら言う。
「例のロッカーですよ、西口の」ヤマザキ君がうんざりした表情で、
小さな応接テーブルの上に、バサッと封筒を放り投げる。
「なんなんですかね?俺らに嫌がらせですか」
「まさか」と言いながら、僕はヤマザキ君の顔を一瞥してから
テーブルの封筒に目を移す。

彼が言う通り、ここ何か月かの間に時々ロッカーに預けられたまま、
預け主の現われない封筒と同じもののようだ。
ヤマザキ君の表情には、俺は関わりたくないっすよと書いてある。
確かに、この意味不明な預かり物のせいで
報告書類作りに手間がかかるうえに、
ターミナルビルの管理会社からは現場の手落ちのように
突付かれるのだ。

「で、今日のお宝は?」
「いつもと同じっすよ」ヤマザキ君はそう答えて、
封筒の中身をトランプの手品のようにテーブルに並べてみせる。
写真。ただし、普通のプリントよりも大きな、
なんて言うのかは知らないけれど、よく刑事ドラマなんかで
「この写真に見覚えはありませんかね」と聞き込みに使うような
大きさの写真だ。

「ストーカーじゃないんすか、やっぱり」ヤマザキ君が
帰り仕度をしながら言う。
「おんなじマンションの写真ばっか撮って、馬鹿じゃねえの?」
「まあ、いろんな奴がいるから」
そんなことは彼も分かっていることだけれど、僕はそう言う。
他になんて言えばいいのだ。

コインロッカーといっても、まともな使われ方ばかりじゃない。
どうみてもゴミのようなガラクタが押し込んであるのは
しょっちゅうだし、300円で処理できるのなら安いものかもしれない。
僕がじぃっと写真を見つめていると、
ヤマザキ君は何か言いたげな表情を浮かべながら「じゃっ」と
言って帰っていく。
取り残された僕は、ルノワールのリサイクル品のような
ソファに埋もれて眼を閉じる。
同じように取り残された、引き取り手の現われない
荷物たちのことを僕は思う。

所有されているわけでもなく、完全に捨てられたわけでもなく
宙ぶらりんな状態に置かれているものたちのことを。
伊勢丹の包装紙に包まれたままの銀のスプーン。
紙袋に無造作に放り込まれたウィッグ。
花火セット(遊ぶ時は必ずバケツをして用意して大人の人と楽しみましょう)。

彼らは互いに何も喋らず、無言の夜を越えていく。
彼らはみんな、僕にはどうすることもできないことを知っているのだ。
そのことを考える時、僕の夜は一層深くなる。
やがて、コインロッカーに雨が降り始める。

 コインロッカーに降る雨のことを知らずに眠る君の目にも涙




Last updated  2007/01/28 11:54:36 PM
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2006/11/27

泣ける電車
[ +コトバを抱いて眠る+ ]    


山手線に乗ったら、乗客がみんな泣いていた。

ああ、これが泣ける電車かと思った。
あいにく僕は泣きたい気分ではなかったのだけれど、
乗ってしまったものは仕方ない。

どうやって泣こうかと考えてたら、僕の前で吊り革を、
雑巾でも絞るように握り締めて泣いていたおばさんと目が合った。
こんなに悲しいことが世の中にあるなんてね、
とおばさんは僕に同意を求めるように泣き続けた。
私の牛すじがあんなふうになるなんてね、ほんとにね、
とおばさんは僕に向かって泣き続けた。

牛すじがどうやって、そんなに悲しくなるのか
よくわからなかったけれど、おばさんにはおばさんなりの
悲しいストーリーがあるのだろうと僕は思った。

車掌さんも泣きながら、つぎは西日暮里、
西日暮里とアナウンスしていた。
こんなに悲しい西日暮里は初めてだったので、
僕も上を向いて何かをこらえた。

Last updated  2006/11/27 11:48:39 PM
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2006/09/03

僕とライオンと月明かりと
[ +コトバを抱いて眠る+ ]    


久しぶりに動物園に行くと、ライオンがくたびれた表情で僕を待っていた。

「どうしたの、元気ないね」僕は言う。
「歳だからね。暑さがあとからくるんだ」ライオンはぐったりとした顔を
自分の腕に乗せたまま言う。
「そうみたいだね」
「お風呂に連れてってくれないかな」ライオンが言う。
僕は少し驚く。お風呂に、というのではなくライオンが
自分からどこかに行きたいというのが珍しかったからだ。
いつも、あまり乗り気でないライオンが僕に引き摺られるように、
仕方なくついてくるという感じなのに。

「お風呂?」と僕は聞き返す。
「ああ、たまにはゆっくりお湯に浸かるのもいいかなと思ってね」
僕はしばらく考えて、そして「いいよ」と言う。

閉園時間を待って、僕はライオンを連れて銭湯に歩いていく。
途中でコンビニに寄って、ライオンのためにシャンプーを買う。
シャンプーにはカオーと書かれている。
やっぱりライオン製が欲しかったのだけれど、まあ仕方ない。
番台のおじさんは、ずり落ちそうな眼鏡の上からライオンをちらりと見て、
大人と一匹だねと言って僕の差し出した千円札を受け取る。

僕はライオンのくたびれたタテガミやなんかをゴシゴシと洗ってやる。
カオーのシャンプーは思ったより泡立ちが良くて、
ライオンは大きくて真っ白な泡に包まれてしまう。
僕が洗っているのを、3歳くらいの子が不思議そうにずっと見ている。

時間をかけてシャワーで泡を洗い流すと、
ライオンは気持ち良さそうに身体を震わせて飛沫を飛ばす。
ライオンと僕は並んで湯船に沈む。
僕はライオンの頭にタオルを載せてやる。
「こうする決まりなんだよ」と僕が言うと、ライオンは真剣な表情でタオルを頭に載せている。
お風呂上がりにはお約束のサイダーをふたりで飲む。

銭湯の外に出ると、割と気持ちよかったね、と僕は言う。
ライオンも満足したらしく黙って頷く。

「あ、月の匂いがする」

ライオンが不意に呟く。見上げると丸くなった月が僕たちを照らしている。
今度は、同じ月を頭に載せて歩いているみたいだなと僕は思う。


Last updated  2006/09/03 11:14:37 PM
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2006/08/14

何もない場所へ060814
[ +行き止まりな旅+ ]    


駅を降りると、夏はそこで行き止まりだった。

真夏の炎天下に、不意に胸の中が空っぽになるような、あの感じ。

何かに似ている。

何もない駅に着く

なんだろう。夏の非常階段のような。

校舎の喧騒を振り切って、一人で夏の非常階段に出たときのような。

2倍速くらいの、ゆるくて速いスピードで

夏の雲が過ぎっていくのを見上げているような。

つかめそうでつかめない、行き止まりの夏。

行き止まりの電車

電車の去ったホームから線路を覗き込むと

男性欲情誌のページが破り捨てられているのが見えた。

届かない線路

Last updated  2006/08/14 07:30:34 PM
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2006/05/27

熊にバター
[ +コトバを抱いて眠る+ ]    


一週間ぶりに部屋に帰って冷蔵庫を開けたら熊が住んでいて、
僕はあわてて冷蔵庫を閉めた。
部屋を間違えたのかなと一瞬思って、
キッチンを見渡してみたのだけれど、
それはほとんど間違いなく自分の部屋で、
だったら冷蔵庫だけが違うのかもしれないけれど、
冷蔵庫にくっついた何かの景品でもらった
犬のキャラクターのマグネットには見覚えがあって、
だったら僕の部屋の冷蔵庫に
熊が住み始めたというだけのことかもしれない。

まあ、相手が動物のことだから、
本当のところどうなのかなんて考えてもよくわからない。
仕方なく、僕は買ってきたコンビニの袋を
そのままキッチンのテーブルに置いて、
冷蔵庫のではない買ってきたばかりのビールを開けて、
本当は冷蔵庫に入っているレーズンバターが食べたかったのを諦めて、
テレビニュースを観た。

冷蔵庫に熊がいるのにテレビを観ているというのも、
なんだか変な感じだ。
それで僕はテレビを消して、もう一度、
こんどはそうっと冷蔵庫の扉を開けると、
ぼわんとした卵色の灯りに包まれて熊が寝ていた。
冷蔵庫のいところは、と熊が言う。涼しいし静かだし、
なにより食料に困らないことなんだ。

そのレーズンバターは、と僕は中身のなくなった
銀色の包み紙を見つめながら言う。
最初から冷蔵庫にあったものじゃなくて僕が買ってきたんだよ。
細かいこと気にしちゃだめだよ。熊は言う。
その通りかもしれない。
じゃあ、おやすみ。僕は冷蔵庫を閉めながら言う。
言いながらレーズンバターを塗った熊って、
ちょっと美味しそうだなと僕は思う。

Last updated  2006/08/14 07:20:29 PM
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2006/03/05

月明かりの下、ライオンと
[ +コトバを抱いて眠る+ ]    


そろそろ寝ようかなと思ったときだった。

ワールドビジネスサテライトが終わって、
港を出る船の汽笛が何度が鳴ったときに、誰かが僕の部屋をノックした。
こんな時間に誰だろうと訝りながら、
ドアスコープを覗いて見るとライオンがいた。

「どうしたのさ」僕は言う。
「いや、悪いとは思ったんだけど。どうしても聞いてほしいことがあって」
なんだか、ちょっと凹んでいるみたいだ。僕はライオンを部屋に入れて、
テーブルの雑誌やなんかを脇に寄せる。

「この前はありがとう。楽しかったよ」ライオンが言う。
ああ、そうだったと僕は思う。僕が北海道に連れていったのだ。
「エゾシカのスープ、食べれなくて残念だったけどね」僕は言う。
「うん。でも、楽しかった。初めてだったからね北のほうに行くのは」

わざわざ夜中にこんな話をしにきたわけではないと思うけれど、仕方ない。
ライオンにはライオンの話しの順序というのがあるのだ。
まあいいやと思い、なんとなくクラウデッチ・ソアーレスが聴きたくなって
CDを探す。どこだっけ。

「こんど入ってきた女の子のことなんだけど」
CDを探していると、ライオンが唐突に口を開く。
「話が合わないんだ」
ふーん、と僕は言う。いろいろあるんだね、ライオンにも。
「どんな子なの?」僕はたずねる。
「どんなって、いまどきのギャルだよ」ライオンは素っ気無く答える。

渋谷とかにいそうな? と言いかけて、
いくらなんでもそれは限定的すぎると思い、言うのをやめる。

「なんか、つっかかってくる気がするんだよ。
いろいろ、ここでの暮らし方とか話してもさ」
僕は、なんと言っていいのかわからず、飲みかけのコーラの横で
つまらなさそうに雑誌をめくるギャルライオンを思い浮かべる。
「まあ、歳が4つも離れてるからね。人間で言えば40歳」
「40歳」と僕は驚いて聞き返す。
「園長には園長の考えがあるんだろうけど、こっちはね」
ライオンはそう言って、宙を見つめる。

こんな時間に愚痴を聞いてもらって、ありがたいよ。
ライオンはそう言って、帰ろうとする。
途中まで送っていくよ、と僕は言い、並んで坂を下る。

彼は少しだけ先を歩く。
月明かりに照らされたライオンの毛並みを見ていると、
なんだか、名前も知らない星で出会った者同士のような気がしてくる。
あの、小さな王子様の出てくるお話のように。
月明かりの下、本当にそうだったとしても、不思議ではないような気がした。


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Last updated  2006/03/06 08:18:58 PM
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2006/03/01

猫の気配
[ +キヲク収集+ ]    


 そもそものきっかけは、路地の角を曲がったところで
 出会った、一匹の猫だ。
 
 彼女は、この辺りでは見かけない顔をしていた。
 猫には猫のなわばりというか通り道というのがあって
 僕は、この辺りの猫のことはたいてい覚えている。
 
 この路地に新しくやって来た猫だとすれば
 あまりにも仕草が溶け込みすぎている。
 猫も人間同様、新しい土地に足を踏み入れるときには
 それなりに緊張した面持ちをするものなのだ。

 僕は顔見知りの猫たちの顔を思い浮かべ、
 確かにこの猫が知らない猫であることを確認する。
 と、同時に、何かが変だなと思う。
 今日に限って、一匹の猫の姿も見えないのだ。

余所者の猫がやってきたことに気づいた猫たちが
 隠れたところから様子を窺っているのだろうか。
 それならそれで、何かの気配があってもいいはずだ。
 第一、そうした気配には、この見知らぬ猫が一番
 敏感なはずだ。
 何かあったらすぐに逃げるか闘うかを判断しなくてはならない。

 なのに、この新しい猫は、自分の領分を検分するみたいに
 落ち着き払った態度で歩いている。
 僕は姿勢よく揺れる尻尾に引っ張られていくように
 猫のあとをついて歩く。
 まるで、ハーメルンの笛吹き男か、どこかの王様の後を
 進む近衛兵みたいだ。

 そのうち、どこかの塀から屋根づたいに歩き始めるか
 どこかの庭先に潜り込むだろうと思っていたのだけれど
 そんな気配は微塵もなく、彼女はただ歩き続ける。
 路地をいくつか曲がり、空家のまま放置された庭が目立つ
 町のはずれをすぎ、淀んだ川をいくつか越え
 いい加減、どうしようかと思い始めた頃に彼女が言う。

 「入りましょうか」
 
 振り向いた彼女が立っているのは、古びた旅館の入り口だ。
 
 僕は、町のはずれにこんな旅館が残っていたことに
 驚きながら、彼女と旅館の入り口を覆うように繁っている
 栗の木の佇まいを交互に見比べる。

 彼女は、分かってるわよね、という目で僕を見つめ
 そのまま旅館の玄関へと続く湿っぽい小道を歩き始める。
 僕は、仕方なく彼女のあとに続く。


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Last updated  2006/03/02 07:22:48 PM
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2006/02/26

凹村戦争
[ +思考するブランコ+ ]    

凹村戦争


その列車の乗り方を教えてほしいんです。

僕は村の老人に言う。

あの列車に乗ろうっていうのかい? 
老人は、杖の先でよくわからない幾何学模様を書きながら、
僕の顔をじろりと見て言う。

僕は、あの列車に乗らなくちゃいけない。
いや、乗りたいんです。どうしても。

おまえ、あの列車がどこへ行くのか知っとるのか?
町です。成功するために、みんなあの列車に乗ったということは知ってます。

それは、もう随分と昔の話だ。老人は言う。
もう今では、あの列車に乗ろうと考える者なんておらん。
第一、もうこの村には長いこと、列車は走っておらんからな。

でも……。

納得できないでいる僕に、老人はこう告げる。

そんなに乗りたいなら、駅に行って好きなだけ待っておればいい。

僕は、草いきれの中を、白昼夢みたいに空っぽな駅へ向かう。
妙に真っ白で長いホーム。
僕の上を、見たこともない飛行機が飛び越えていく。
山の向こう側で、何かが破壊されたみたいに煙があがる。
音のない煙。

なんか違うんだよなぁ。こうじゃなくて。
どうにかなっちゃえばいいのに。
どうだっていいんだ。
人生って、何だろうね。
意味ねえ。
あれ、どっちが侵略者だっけ。
どっちでもいいや。
これって戦争?
もっとテキトーな、何か。

で、どうしようかな、これから。


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Last updated  2006/03/01 07:01:30 PM
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2006/02/25

空飛ぶ57577
[ +コトバを抱いて眠る+ ]    

恋ノウタ(愛しくて)

日本恋愛心理学会が行った調査によると、いわゆる告白を
昼間よりも夜に行ったほうが、成功率が高く、
さらに電話などの声よりも手紙などの文字で伝えたほうが、
さらに成功率が高いことがわかった。

というのは、もちろん嘘で、なんとなく万葉集を眺めているときに、
ふとそんなことを思っただけなのだけれど。
それはともかく、やっぱり万葉集は面白い。
ポップでキッチュでファンキーだ。
遥か大昔の人たちの詠んだ歌なのに、
さっきまでそこに居た人たちのような体温や匂いが伝わってくる。

そこには、偉い人からそうでない人、金持ちから無一文な人、
生まれたばかりの恋に照らされているような人から、
崩れ落ちた恋の残骸を引き摺っている人まで、いろんな人間のリアルな声がある。
読んでいると、なんだか、その人の人生の一部が
自分の胸の中で生々しく再生されるみたいな感じになる。
まるで読むタイムマシンだ。
そして、万葉集の時代の人たちが、僕らと同じ、
いやそれ以上に恋愛体質というか情感を持っていることにドキッとする。
もしかしたら、携帯もメールもない、かの時代の人たちのほうが、
今よりも「言葉」を知っていたのかもしれない。


梅の花 降り覆ふ雪を 包み持ち
君に見せむと 取れば消につつ


(万葉集 巻10・1833/作者不詳)

*心動かされたものは人に見せたくなる。自分が恋をしているほど、
なぜかそう思う。だけど、そんな大切なものほど手に取った瞬間に
はかなく消えてしまうものだ。


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Last updated  2006/02/26 10:31:18 PM
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2006/02/22

笑う珈琲
[ +キヲク収集+ ]    


教えられた喫茶店に着くと
なんだか様子が変なことに気づくだろう
今にも蝶番から外れそうな木のドアを開けて
中に入ると、コートを着た客たちが
ほとんどコーヒーも口につけず
テーブルに向かってぶつぶつ呟きながら
紙に向かって何かを書いたり消したりしている
あなたが入り口に突っ立っていると、一番近くの客が
「星空の精製」
と書かれた紙を無言であなたに向かって突き出す

あなたは仕方なく、その紙を手に空いている
テーブルに座る
星空を精製したら、なにができるのだろうか
きっとせつなくて甘いさらさらした何かだろう
そんなことを考えていると
頼みもしないのにコーヒーと紙が運ばれてくる

あなたは、コーヒーを啜りながら考えるはめになる
星空を採掘するには、とても長いスコップが必要だ
長いスコップはどこにも売っていないから
少女は短いスコップを握り締めて泣くだろう

店を出る時、その紙を店の主人に渡す
主人は何やら、思案したあと
極度な近眼らしいメガネ越しに
あなたの顔を見上げて言う

「……300円だね」

それが、あなたの、コーヒーの値段
あなたは、少し驚く
たしか、外の看板にはコーヒー250円
混乱するあなたに主人は、もう一枚、紙を渡す
そこには、本の名前がいくつか書いてある

「其の中から一冊、選びなさい」
主人は言う。よくわからないまま、あなたは
『笑う豚の生活』と書かれた本を選んで店を出る
なんだか得したような損したような
不思議な気分だ

パラパラとページをめくりながら歩く
本の内容は……
面白くなかった


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Last updated  2006/02/24 07:03:46 PM
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