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前項のヨシに引き続き、伊豆沼・内沼における最近の放射能に関するデータです。 (空間線量) 伊豆沼の堤防路肩17箇所での地上1mと地表面の平均値 地上1mで2011年8月:0.080→2012年3月:0.087(マイクロシーベルト/時) 地表面で2011年8月:0.106→2012年3月:0.127(マイクロシーベルト/時) 特に地表面で線量が1.2倍増加しました。調査地点を個別にみると、落ち葉の多い場所や吹き溜まりで線量が増加しました。葉に付着した放射性物質が落ち葉とともに落下したために地表面の線量が上がった可能性があります。 (魚類の放射性セシウム) 震災前:2011年2~3月採集 ギンブナ1検体、ゲンゴロウブナ1検体、オオクチバス成魚2検体 いずれも1Bq/kg未満 震災後:2011年12月採集 オオクチバス成魚4検体で平均110Bq/kg(範囲:93~122) オオクチバス幼魚1検体で148Bq/kg ギンブナ4検体で平均64Bq/kg(範囲:61~66) ゲンゴロウブナ3検体で平均72Bq/kg(範囲:69~74)
伊豆沼・内沼では春に堤防に火入れして、ヨシなどを大規模に焼く野火という作業を行っています。しかし、放射能汚染されているため、焼却灰にどの程度の放射性物質が含まれるか心配です。 渡良瀬遊水地では、ヨシから42Bq/kg、下草の焼却灰から780Bq/kgの放射性セシウムが検出され、安全性の確証が得られないため、ヨシ焼きが中止となりました。なにはともあれ伊豆沼でもデータが必要です。堤防4箇所でヨシを試験的に刈って調べてみました。 4箇所平均でヨシ本体から67.5Bq/kg(範囲:57~102)、その焼却灰から1050Bq/kg(範囲:450~2110)の放射性セシウムが検出されました。このデータをもって再度会議を行ったところ、基準値はないものの渡良瀬遊水地での事例があること、予防原則を適用すべきという観点から、土地改良区の方々など含めた主催者全員一致で野火は中止となりました。 もしデータがなければうやむやのまま野火を行ってしまい、放射能汚染された焼却灰を周辺地域に飛散させることになっていました。あらためて、データの大切さが身に染みました。
今年はお世話になった先生の退官が続きます。昨夜はM先生の最終講義&祝賀会がありました。 M先生は安定同位体比分析という技術をもっています。最終講義では安定同位体比分析を用いた化学的なお話かと思いきや、戊辰戦争に使われた弾薬など当時の歴史的遺物を安定同位体比で分析し、さまざまな遺物の由来をたどっていくと、大英帝国の繁栄に行き着く、という壮大なスケールのお話でした。 先生のもつあらゆる対象の中で、私は鳥という接点で仕事をご一緒させていただくことができました。単に技術力をもっているだけでなく、対象への卓越した視点をお持ちであったことがたくさんの業績を残すことにつながっているのだと思います。 仕事をご一緒させていただくことができた私は幸運でした。
立場上、いろいろな書類をチェックしなくてはなりません。報告書や申請書など多岐にわたりますが、中でも一番大変なのは論文です。 2本の論文を同時並行で指導しているのですが、2人とも論文を書くことが初めてなこともあり、まずは日本語の壁を乗り越えなくてはなりません。毎回原稿を真っ赤にして返すのですが、それでもめげずに書いてきます。だんだんといい原稿になってくるのがわかるので、こちらも励みになります。 でも1日に何度もそれを繰り返すと疲れてしまって自分で論文を書く気が起きなくなります。2本とも共著に入っているからまあいいか、と言い訳しきりです。
伊豆沼・内沼の放射能について、これまで公表されたデータ((1)は環境省、(2)は宮城県による調査)をみると、 (1)伊豆沼の沼出口の底質でセシウム合計値で900ベクレル/kg、周辺土壌で790ベクレル/kg検出されました(ちなみにこの数値を65倍するとおおよそのベクレル/m2の数値に変換でき、790×65=51350ベクレル/m2はチェルノブイリ原発事故では放射線管理区域に指定される線量です)。また、伊豆沼上流のダムでは、栗駒ダムの底質、周辺土壌それぞれで1100、840、花山ダムではそれぞれ440、2010のセシウムが検出されました。 (2)伊豆沼のオオクチバスから66ベクレル/kg、上流ため池のギンブナから54ベクレル/kg検出されました。同時に発表された水産物20品目の中で突出して高い数値となっています(バス、フナ以外での最大値はヒラメで14.1) 上記に加えて、もともと海抜高度が低く、水が溜まりやすい地形であること、栗原市山間部にホットスポットがあることを考えると、放射性物質を含む土砂が、河川や用水路を流下して沼に蓄積していると考えられます。 一方で、1m高の空間線量では0.08~0.09マイクロシーベルト/時で低く安定しています。ある程度低い空間線量でも底泥や土壌には多くの放射性物質が含まれていることを示す例と思います。
季節柄、学校などで子供たちに渡り鳥の話をすることが多くなります。 発表しながら子供たちの気を引くためにときどき質問をします。どんなにとっぴな答えでもたいてい驚かないのですが、思わずのけぞってしまった答えがありました。 「ガンやカモなどの渡り鳥は北の国から渡ってくるんだけど、なぜ渡ると思う?」「北の国が暑くなるからです。」 ・・・これはちゃんと説明しなくてはならない。ということで、「宮城県と北海道、どっちが寒い?」という身近なところから始めて、北へ行くほど寒くなり、雪や氷に閉ざされて食物をとれないため、北の国では鳥たちは冬越しできないのだ、ということを理解してもらいました。 答えに窮する質問をするのは大人より子どもの方が多いです。
南三陸沿岸でコクガンの仕事を始めました。藻類を採食するコクガンは藻場との関係が深いため、震災後の藻場復活をモニターする上で重要な鳥です。分布、行動パターンなど多少の知見はありますが、基本的に未知の鳥です。調査に行くたびに新しい発見があります。 しかし、まわりは瓦礫の山。何とも言えない気持ちになります。
宮城県北部でマガンが15万羽を越え、40羽を越えるシジュウカラガンも観察されるようになりました。月2回を基本にマガン羽数合同調査をしていますが、特に塒入りのカウントでは緊張感がみなぎります。 遠くから黒い雲のように沼に向かってくるマガンの群れをいち早く見つけることから仕事は始まります。北から東から沼に向かうターゲットを次々に捕捉し、次々にカウントして数を記録していきます。自己評価をして、数をだいたい抑えられたという実感を持てれば、ひとまず成功です。そして日没後、全体的にきちんとカウントできたと思えたときに満足感とともにミッション終了です。 群れをみたときに、私は数を数えたくなる衝動にかられます。数を数えるという行為は、人間の根元的な行動のひとつではないかと勝手ながら思っています。
たまたまですが、書くべき原稿があれこれ重なってしまいました。対象も専門家から一般の方までさまざまです。 原稿を書くときいつも思うのですが、これを伝える、という核たるものがないと私はまったく筆がすすみません。なんとなく文章を書いているのですが、まったくダメです。図表などですでに論理ができている論文の方がむしろ書きやすいと言えます。しかも論文には、これを伝えたいという自らの明確な意志があるのです。 明確な意志もなく、受け身で頼まれたテーマで、論理を構築して文章を書くということは、私にとってかなりハードルの高いことです。とはいえ、原稿には締め切りがありますので、できるだけ早く書く内容を決めるようにしています。 何度も経験済みですが、それができない度に生みの苦しみを味わいます。今日は長らく心残りだった原稿に一区切りつきました。ビールで乾杯です。
学会やらなにやらでバタバタしているうちにあっという間にマガンが渡ってきました。もう2000~3000羽くらいにはなっているでしょうか。 今年の鳥学会では、震災や放射能問題にかかわる自由集会もあり、私も参画させていただきました。放射能の鳥への影響について、いろいろな方と議論させていただき、今の自分の能力でどうかかわることができるか、あれこれ考えていました。 チェルノブイリではツバメのさまざまな形質に放射能による影響が認められています。これらのうち、部分白化個体の割合の増加と繁殖成功率の低下の2つについては、家族構成のはっきりとわかる大型の種で、羽色が白色でない種であれば、比較的簡便にモニターできるのではないかと思いました。繁殖成功率は幼鳥数や幼鳥率で代表できますし、部分白化個体も目立つからです。 マガンはそれにふさわしいテーマの鳥ではないかと思っています。今、渡ってきているマガンはこれから被曝します。今年と来年、また被曝地とそうでない地域で比較してみる価値はあると思います。 ハクチョウも!と思いましたが、部分白化個体をたぶん見つけられないので無理でしょう。 │<< 前のページへ │一覧 │ 一番上に戻る │ |