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月は晴れても心は闇だ。。
大好きな人と結ばれて、月が晴れているような気持ちのはずなのに、 その後の長い生活のしがらみで心は闇になっている。。 そんな夫婦はこの世にさぞかし多かろう。。 人を好きになるというのは、その人個人に惚れることであり、その人の地位、年齢、立場、貧富などは関係ない。情事の時は男も女も裸であるのはそれの象徴であり、その人が持っている金や地位に抱かれているわけではない。 ところがこれが結婚を伴うとなった場合、本人同士が好き合っていればよいというわけにいかないことは、かつてのように家と家の結婚という要素が薄くなった現代社会ににおいても同様。 なぜならば、結婚した以上は生活が伴い、子供ができれば親という立場となり、互いの家族、親族との交流も続くのであり、一方、出会った頃のような恋愛感情というものはあまりも儚く、たよりないものであることを後から気がつく。 こんな現実があることを先人は知っているから、周りの反対にあい、愛し合いながらも結ばれない、という悲恋の物語を生み出す。 ところがそんな悲恋で終わった恋でも、そんなしがらみを無視して結ばれていたならば、人生の悲劇になっていたかも知れず。 それは、まさに憧れの人と結婚しても、「月が晴れても、心は闇」 そして始めから結ばれるはずがないのに、不倫の恋をする男女は過去も現在も変わらずにあるのは、不倫の恋のほうが互いのそんな立場を気にせずに、対等に気持ちだけで交わせるからなのかもしれない。 最近の婚活ブームは、そんな男女の気持ちよりも先に、相手の条件を重視するものであり、就活にも似たような雰囲気なのは見ていて何とも寂しいことだが、自分の一生の伴侶を見つける以上はそんな条件を無視してはいけないことも理解できないこともない。 しかし、好きになったら命がけ。。という情熱も忘れてはならない。 その情熱が二人の間の障害を乗り越えていける力でもあるのだから。 「惚れてしまって、可愛くて愛しいものなら、なぜ命がけになって彼女をもらおうとしないんだ。 結婚をした後で、かたわになろうが、肺病になろうが、またその肺病がうつって、そのために二人とも倒れてしまったって、そんなことを構うものか。 ましてや嫁にしようとする家の財産がどうだとかなんてもってのほかだ。 実家が困窮したならば、可愛い女房の親じゃないか、自分にとっても親になるんだ。余裕があったら貢いで、人情があるならば三杯食べる飯を一杯ずつわけるくらいに覚悟を持て」 このくだりは泉鏡花の「婦系図」という小説において、妙子という女性に惚れ嫁にもらおうとしているのに、その家の財産、妙子の健康状態などをいろいろと調べている友人に対して一喝する主人公 早瀬の台詞を私なりに表現を少しくだいて転記したものです。 この早瀬本人も、芸者上がりの美女お蔦と同棲しているのを、自らの師に将来ある身なのに芸者上がりの女を選ぶなどもってのほかと諌められ、師を選ぶかお蔦を選ぶかの選択を迫られ、無情にもお蔦を捨てるのです。 (この別れの場面が有名な「月は晴れても心は闇だ」、「切れるの、別れるのってそんなことはね、芸者の時にいうことよ。今の私には、死ねといって下さい。」の台詞なのですが、これはこの作品を新派の劇にした時に加えられたもので、原作には登場しません。 原作ではお蔦はひっそりと引き下がりますが、別れた後に病に倒れます。その時にお蔦を見舞う反対したはずの師の行動に泣かされます) 惚れてしまったならば、何事にも負けないほどに覚悟を決めて惚れぬき通す。 言葉では簡単なのですが、惚れるということのあまりにのうつろいやすさと弱さに多くの男と女が泣いてきたともいえるでしょう。 そんな恋のうつろいやすさの中であっても、損得抜きで今そこに自分が想いを寄せる人がいる、寄せてくれる人がいるという実感があるのならば、 「月が無くとも、心はあたたか」となれるでしょう。。 ~~~~~~~~~~ (「婦系図」(おんなけいず)は文庫本で400頁を超える長編ですが、読み出したら止まらなくなり、ほとんど一気に読んでしまいました。 美女(たおやめ)を表現する美しい言葉、お蔦をはじめとする数多く登場する女たちの艶やかさ、女らしさに魅了されつつ、急転直下の物語の面白さにどっぷりつかり、圧倒的な日本語の凄さを満喫できる作品でした。 泉鏡花としては比較的読みやすいですが、それでも一般の小説よりは難解です。それでもご興味があればぜひ挑戦なさってみてください。 │<< 前へ │次へ >> │一覧 │コメントを書く │ 一番上に戻る │ |
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