ネコは都合のよい赤ん坊?
ネコと30年以上暮らしている。考えてみると、連合いと過ごした時間の三倍近いのだから、自分でも呆れてしまう。いままで暮らしたどのネコも、個性的で皆愛しく、喪った時には大きな空白が出来、今でも夢に出てくるほどだ。出来れば化けて出て来て欲しいとも思う。要するにどうしようも無いネコバカなのだ。それは他の家族も同様のようで、傍らにはアメリカン・ショートヘアーの雌が居る。これが異常に人間が好きな困った奴で、周りにいる人間は、全て自分を可愛いがってくれると信じ込んでいるふしがある。なにしろ初対面でもすぐに足元にまとわりつき、可愛らしい声で甘えるのだ。少しは家族と他人の区別をしてくれよ。そうじゃないと世話をする甲斐が無いじゃないか。それにしても、人は何故ネコに惹かれるのだろうか?勿論ネコ嫌いなどそこらじゅうにいるのは承知しているし、猫毛アレルギーの方が当家に訪問された時など、本当に恐縮してしまう。それでも惹かれる理由があるのだ、と思う。それは「赤ん坊との類似性」だ。生き物は通常、幼子をみると「可愛い」と思うようにプログラムされているらしい。「可愛い」を保護したいという欲求と言い換えても良いだろう。「可愛い」は「可哀そう」の同意義でもあるのだ。小さく弱々しい者は、可愛いという事が生き延びる強力な武器となるのだ。勿論食物連鎖の中では、単なる餌にしか見えない物もあるだろうが、人は他種族の幼子や無生物にも可愛いという感情をいだくものだ。そういえば犬・ネコ・猿あたりも、他種の幼子を世話する例もある。人がある存在を可愛いと認識するには、可愛いと思わせるある種の「記号」が存在する。例えば顔で言えば「丸く小さな顔」「顔の中心より下に存在する目」「黒目がちな眼球」「小さな目鼻などの器官」等だ。これは大人でも、男女を問わず通用する記号だ。周囲にあなたが「可愛い」と思う人がいたら、その外観から何故可愛いと思うのか、その記号をさがしてみて欲しい。勿論人には「偏愛」というモノもあるので、あくまで一般的な記号でしかないのだけれど…。ネコはその「可愛い」記号を、多く持つ生き物だと思う。例えば…・ほぼ赤ん坊と同じ体重、大きさ・柔らかな体躯・大きく黒目がちな目・赤ん坊の泣き声に近い鳴き声 ~等だ。特に鳴き声はかなり幼子に近く、個人的に何度か間違えた経験がある。加えてネコは、実に手の掛からない生き物だ。犬のように散歩に連れ出す必要もなく、1日程度なら、食事と水とトイレさえ用意すれば、放っておいても大丈夫だ。勿論病気やケガに悩む飼い主も多いし、ちょっと食事の量が減ったりすれば、気が気でない方も居るだろう。それでも人間に比べれば、はるかに手が掛からない生き物である事は確かだ。健康管理をしっかりすれば、20数年生きる事もあるのだ。さらに人間に都合の良い事に、ネコはある程度の大きさで成長が止まる。ちょうど赤ん坊位のまま一生を終えるのだ。ネコとは赤ん坊に近い「可愛いらしさ」を終生持ち、しかも人間よりもはるかに手が掛からない、実に都合の良い存在なのだ。(写真は今の飼い猫:マナ)