BibLaTeXパッケージに同梱されている仕様書は詳しすぎてわけがわからないし、sampleフォルダーに入っているものはあくまで引用形式についての実例なので限界がある。
ざっと見たところ、BibLaTeXを機関レベルで使っているのはコンスタンツ大学のみである。つまりここだけが初心者向けの解説ページを機関レベルで設けている。やはり理系ではなく文献学関連(つまり図書館)である。理系ではBibTeXで十分で、BibLaTeXは必要ないということではないだろうか。他には、http://tex.stackexchange.com/のタグ"BibLaTeX"から得られる情報は貴重である。それ以外には検索した限り、英語も含めどこからも「BibLaTeX入門・解説・使い方」的ページは他は出ていない。(ケンブリッジのはBibTeXで実現されていることをBibLaTeXの独自メリットとして挙げていたりして、間違いあり。)
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http://www.ub.uni-konstanz.de/serviceangebote/literaturverwaltung/bibtex/bibtex-und-biblatex-benutzen.html のページの要旨。
BibTeXとBibLaTeXを利用する
1.BibTeX
(省略)、英語wikiを参照せよ(邦訳者注:日本語もほぼ同内容)。またjurabibの利用を文系の利用者の事例として紹介している。
2.BibLaTeX
BibLaTeXはBibTeXの拡張であるが、書誌情報を使う際にBibTeXを利用する以外は全く新しく書かれたプログラムである。2010年7月現在βバージョン(邦訳者注:2011年7月現在1.6)であるが、ほぼ全てのLaTeXパッケージで使えるほど安定している。ダウンロードすると極上の仕様書が手に入る。
2.1.セットアップ
*****KLaTeX-Dataのヘッダ*************
\documentclass[11pt]{scrartcl}
\usepackage[T1]{fontenc}
\usepackage[latin1]{inputenc}
\usepackage[german]{babel}
\usepackage{typearea}
\usepackage[style=authortitle-icomp]{biblatex}
\usepackage[babel,german=guillemets]{csquotes}
\bibliography{Pfad/zur/Bibliographie-Datei/Dateiname}
*****Ende des Dateikopfes*************
重要なのは最後の三行である。
\usepackage[style=authortitle-icomp]{biblatex}
ここではauthortitle-icompという引用スタイルを採用している。現在26の引用形式が用意され、様々な分野での投稿に備えられている。(邦訳者注:それぞれの実例はsampleフォルダにある。また、http://www.ctan.org/tex-archive/help/Catalogue/entries/のページを文字列"biblatex"で検索せよ。)
\usepackage[babel,german=guillemets]{csquotes}
これはドイツ語の引用形式の一つである >> ... << という形式の採用を意味する。(german=quotesでもう一つの形式になる。)
\bibliography{Pfad/zur/Bibliographie-Datei/Dateiname}
これはbibファイルの所在。
2.2.bibファイルの形式について
BibTeXと異なるのは、ウムラウトが直接使えるようになったことである。(邦訳者注:このサイトでは触れられていないが、Biberとの連携が視野に入っている。Biberはこの書誌情報を扱うためのUTF8コードに対応したperlプログラムである。)
データフィールドのshorttitleは書名引用を短く行う際のもの。subtitleは副題。副題は脚注での引用の際に表記されない。
2.3. biblatex.cfg
BibLaTeXの言語を知らなくてもここをいじればたとえば著者名と書名をカンマで区切らずコロンで区切る(Eisenmann: Der Mann aus Eisen)などのちょっとした変更ができる。(実例は元URLをクリックせよ。)(邦訳者注:オリジナルのパッケージではcfgファイルについての解説はなかったはずなので、この実例ファイルを使って、どこまでが「ちょっとしたこと」として行えるかを確認しておくのが望ましい。この実例ファイルの記述は他に例がないようなので要チェック。)
3.独自の引用スタイルの発明
さらなる拡張がcbxファイルの拡張によって可能である。実例(歴史家):http://biblatex.dominik-wassenhoven.de/index.shtml
4.FAQ
上記歴史家のDW氏によるもの。(邦訳者注:現在は余り役に立たない。)
5.ヒント
(大学サイトからは残念ながらBibLaTeXのパッケージをダウンロードできない、云々といったこと)
(要旨ここまで)
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私見では、文系の利用者のほうがBibTeXでなくBibLaTeXをあえて利用するメリットは大きい。
- bibファイルにおけるshorttitle、shorthandフィールドなどの採用・.bibファイルのフィールドを用いることで、splitbib+thebibliographyにて手作業でやっていたことを自動化出来るようになった。つまり、文章を書きかけの時点で今の文献一覧を作成しても、「一次資料」「二次資料」などといった区分がきちんと出来る
- またcfgファイルの登場により、わずかな自前改良が容易になったこと、同じく言語のヒューマン化によりcbxファイルの改造がやや容易になったこと(ただしこれはTexファイルを誰かに送るときにbiblatex.cfgファイルや*.cbxファイルも同梱しないといけないことを意味する。事情はBibTeXでも同じだが、BibTeXの場合にはスタイルファイルなので.texファイルに直接記述することが可能だった。cbxはたぶんそれを想定していない気がする)
- 法学、歴史、哲学(能書きがイタリア語のみなのには参った)、文系の古典的引用形式であるchicagoがそろっており、さらに可能性は広まりつつある
- また何より、外国語の同一ファイルへの混在は現在のLaTeXシステムでも可能なものの、UTF8(unicodeと親和性がある)を採用したシステムの普及は時間の問題であり、その恩恵を十分生かすBibLaTeX/Biberの導入は、特に文系の利用者にとって意味があるといえる。数式や化学反応を記述するためにはUTF8とかunicodeである必然性はないが、ウムラウトやアクサンを含む単語を検索するのにUTF8ならたぶん便利である
ただし、これを書いていて気がついたが、
- 日本語での引用・参考文献表記スタイル(PhD ThesisなのかDiss.なのか博士論文なのか、cf.なのかvgl.なのか参照なのか)はまだ存在しない。
これは要するに日本人で使っている人がまだいないか、japan.lbxをうかつにもまだ公開していないか、どちらかだということである。しかしこれは120語程度の対応表を作るだけなので、 それほど大変ではない(と思う)。