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厚みのない壁のようなその建物は、バイパス道への上がり口の道のカーブに沿うように建てられていたため、建物自体も曲線を描いていた。
バルコニーや出窓、鉄格子などがなく、一切の凹凸のない建物だった。 まるで安いビジネスホテルのような風体を見せていたが、ぽっかりと開いたあちらこちらの窓の中には、確かに生活の色があった。 窓に吊るされたカーテンや部屋の中に干された洗濯物が、時折開け放たれた窓から入る風に吹かれてはためいていた。 100室以上はあるかと思われるその窓の半分以上は、いつもそのように開いていた。 しかしこの周辺には車の音以外、何の音もなかった。 人の気配がまるで感じられなかった。 何度もその近くを通りがかったが、人影を見ることがなかった。 果南(かなん)はそのアンバラスさに、いつも違和感を覚えていた。 ある日、その建物の下の方を徒歩で通りがかった。 いつもはバイパス道へ上がる途中、車で通り過ぎる際に道の上から見ていただけだったが、初めてそのビルの下の部分を見た。 いつも見えている住居部分と思われる上階部分のすぐ下は向こう側の壁一枚を残して空洞になっていて、モノレールの線路が通っていた。 果南が生まれるずっと前に使われなくなってしまったモノレールの橋桁の残骸は、まだこの街のあちらこちらで見かけることが出来た。 そこから考えると、この建物は少なくともそのモノレールが出来た頃から建っているに違いなかった。 ざっと見積もって50年位か…もしくはそれ以上経っていると思われる。 壁にはその時代を感じさせる細かいタイルが貼り付けられていた。 モノレールの線路は、建物を貫通していて、、バイパス側は建物の終わりの部分でバッサリと切れていたが、反対側は建物から出た線路が100mほど続いて残っていた。 このモノレールが走っていた頃、ここの住人は直接この建物の中の駅からモノレールに乗ったのかなぁと果南は想像した。 その下の部分は、いくつかの店舗になっていた。 その店舗の種類はバラエティーに富んでいて、パン屋に焼き鳥屋、ブティックにラジウム温泉の看板まで出ていた。 しかし一番表通りに面しているパン屋は、看板は新しいのに、入り口のガラスの開き戸は固く閉ざされ、ガラス戸から見える何もなくガランとした店内は溜まった埃で白っぽく濁っていた。 その隣のブティックも然りだった。 焼き鳥屋とラジウム温泉はその反対側にあったが、入り口はバイパス道の陰なっていてよく見えなかった。 ただ温泉の入り口は昼間なのに派手なランプが灯っていた。 一応営業しているのだろうか? しかしこの薄っぺらい建物の幅から考えて、本当に中に温泉が存在しているのだろうかという疑問が浮かんだ。 果南にはそんな考えもあって、さらに異様な光景に見えた。 果南はざっと見てみたが、上階へ続く入り口を見つけることが出来なかった。 そしてこの建物の異様さをさらに引き立てていたのは、20分ほどその辺をウロウロしていたのに、誰とも出会わなかったことだった。 相変わらずバイパス道の上を走り去る車だけが後を絶たなかった。 To be continued... 面白かったらポチッとお願いします→ ![]() ついでにコチラもポチッとお願いします→ ![]() 掲示板の方でぶちぶち独り言も呟いていますので、お暇だったらお付き合いくださいませ。 [短編小説]カテゴリの最新記事
ありがとうございます。お互いよいサイトつくりがんばりましょう。ランキングぽちっとしておきました。また私のサイトに遊びにきてくださいね。(August 5, 2006 11:45:20)
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