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省兵たちが満州に出向して暫く経ったある日、省兵の許へ兄の訃報が伝えられた。 その時省兵は任務で本部を離れていたため、連絡が彼の許へ届いたのは葬式も済ませた1ヶ月も後の事だった。 省兵は残された母や妹たちのことが気になったが、帰国することを断念した。 ちょうどその頃、藤岡が軍の用で日本へ一時帰国することとなった。 藤岡にはその間、3日程休暇が与えられることになっていたので、姫路へ戻った際に、叔父のところへ託(ことづけ)を頼んだ。 母の実家へ直接託ければよかったのだが、連帯兵舎の近くにある叔父のところならまだしも、折角の休暇に少し離れた高砂まで用を頼むのは申し訳ないような気がした。 しかしそれは建前で、本当はまだ大阪での迫害のキズの痛手は心の奥深くに残っていた。 それ故に、省兵は軍の中でも日本語のあまり話せない妻と妹の存在を知られたくなかった。 中国植民地をめぐって、他国間とも緊張が高まってきた今、特に省兵はその思いを強くしていた。 だからと言って彼女たちの存在を重荷に思っているわけではない。 彼女たちの存在は自分にとって一番大切で何よりも守りたいものだった。 しかし時代が悪すぎるのだと省兵は思った。 彼女たちも必死で日本語を憶えようと努力していたのだが、ある種の強迫観念が大きすぎ、逆に萎縮しすぎて憶えられないようだった。 上手く話せないので他人とも会話が出来ない、話すことがないので憶えられない…悪循環だった。 兄の葬式は姫路の叔父さんが出してくれたそうだ。 何もかにもお世話になってしまった叔父に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 藤岡には兄が亡くなった事を伏せ、叔父にお礼と母たちに手紙と託を託した。 藤岡は「なぜ母親の許ではないのか?」と訊きた気だったが、何も訊かずに引き受けてくれた。 To be continued... ![]() ついでにコチラもポチッとお願いします→ ![]() 掲示板の方でぶちぶち独り言も呟いていますので、お暇だったらお付き合いくださいませ。 [連載小説]カテゴリの最新記事
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