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SAROMAN BLUE 鈴木健司

SAROMAN BLUE 鈴木健司

09サロマ湖100kmマラソン完走記~第2章~

60キロを過ぎると緩やかな登りが始まる。1キロくらいなのだが、異様に長く感じた。坂を登り切り、キムアネップ岬に向かって左折する。また湖畔まで緩やかな下り坂になる。途中被り水をタイツに掛け、オーバーヒートを防ぐ。

63キロにはスペシャルドリンクを預けたエイドがある。そしてこの先は75キロ過ぎまでまったくの平坦だ!脚力が問われる後半戦だ。80キロの10時間に合わせての計算しまくりの時間帯!この計算で集中力を高めてカラダを運ぶ。まずは乗り切る為の補給が、ホエイプロテイン&カーボショッツワイルドビーンのスペシャルドリンクだ!

しかし見通しがきくキムアネップは長く感じられる。見えるのになかなか着かない。やっとの思いで到着したエイドでは、学生がにこやかにスペシャルを差し出してくれた!『ありがとう!』すぐにシェイクを済ませ、飲みながら歩いていく。
(他店リンク)

ここから『魔女の森』に突入!いつもならば涼しくて気持ちの良い場所だが、今日の天候だとさほど変わりはない。まずは魔女の森を抜けた65キロでのラップを休憩込みで40分を切りたい!再び頭の中で計算を始める。

63キロで7時間48分くらいだったと思う。65キロを8時間で通過すれば70キロの関門まで45分ある。70キロは8時間40分以内にはクリアしたいが、どうだろう?
魔女の森へ

魔女の森からは一緒に来ている直江さんやお客さんと走る。しばらく進んだ先に一緒に悠林館に泊まっている有里さんに似た人がいたけど、歩いてうつむき加減だったのでわからず声を掛けなかった。すると!『あっ!鈴木さん!』の声。あわせて『てっことはギリギリですか?』的な表情に。

『走れますか?』『大丈夫です!』昨夜の自己紹介でも走るのはあまり得意ではないと話していたが、聞けばハセツネもしっかり完走しているフィットネス&トレイル派らしい。それを聞いて心配はしていなかったのだが。

65キロ 7時間59分45秒 39分24秒

65キロまで並走し、ここで改めて直江さんと有里さんにタイムの計画を説明。

『これから先、たくさんエイドが出てきますが、すべて寄っていたら間に合わないので、気をつけてください。今のペースが7分半くらいです。このペースで走って30秒貯金の計画でいきます!私設エイドが2つ続きますが、手前だけに寄って次は斉藤商店まで行きます。そこで時間を取った方がいいので!』

それを聞いて有里さんは『じゃあ先行きます!』と、スッと前に出た!『無理して上げなくていいですからね!』キロ7分で走っていった。素晴らしい脚力だ!

1つ目の私設エイドは大漁旗が掲げられている家の前に出してくれている。冷たい水でカラダを潤しバンダナも濡らした。滞在は30秒。再び走り出す。次は国道にぶつかる手前にある私設エイド。ここは誘惑に負けそうなので離れて走りパス。

佐呂間大橋を渡り、側道に入ると67.5キロの被り水があるが、先に黄色い建物の斉藤商店が見えてくるので、そこまで止まらずに走った。
斉藤商店

ここでは冷たいおしぼり、凍らせたゼリー、冷たいお茶と至れり尽くせり!タイツを濡らし、首を冷やし、次の70キロを目指す。斉藤商店でまた有里さんも合流。しかし並走はせず自分のペースで行ってもらう。自分はペースをこれ以上は上げられないので、あくまでも80キロを見据えた走り方しかできない。

斉藤商店を出てからも少しの歩きが入る。7分半でも無理しているのが良く分かる。これは練習量の差だとつくづく感じる。平坦なので、あの電信柱から!をリズムに走り出す。走ればリズムを作るのに時間は掛からない。たまに歩きを入れ、また走り、走る時間を長くする。

70キロのエイドは70地点よりもかなり手前にある。約1キロ手前だ。ここでは水を取り、クエン酸フリーダムを摂取!69キロ通過時点で目標の70キロ8時間40分は見えてきた。

ここで驚きの出来事が!

なんと仁野君が追い付いてきた!

さらに『絶好調です!』と自分を追い抜きドンドン前へ進んでいく。前を走る直江さんや有里さんも交わし、一足早く70キロに到着した。そのペースはキロ6分くらいに感じた。しばらくしてこちらも70キロ到着。

70キロ 8時間39分18秒 39分33秒

63キロ以降の走りは計画通りだ。40分を切る為に7分半で走り、休み時間を貯金する。

80キロまでの10キロにこれで1分の貯金ができた。

たかが1分、されど1分!アート鈴木にはこの1分がいかに大切か!この気持ちの余裕が救いだ。

70キロで国道238号線に別れを告げ、サロマ湖畔沿いを走る。これからはひたすら直線道路。74キロ手前にある鶴雅リゾートが小さく見える。この間エイドは被り水のみ。天気予報とは異なり晴れ間も覗いて来たので、寒くなることはなさそうだ。

関門を過ぎてからもやはり歩き走りの繰り返し。継続しては1キロも走れていないだろう。あとから心拍計のデータで明らかになった。黄緑色はケイデンス(ピッチ)。グラフが下がっているのは歩いている状態。明らかに70キロ以降歩きが増えている。
80キロ心拍数

この付近ではクリニックに参加して頂いた方が前後にいた。お互いに辛いながらも抜きつ抜かれつゴールに向かい走る。自分の前後を走る方に聞けば、いつもギリギリなのは実力通りとわかってもらえるだろう。

前方の空を見上げると、なにやらパラグライダーが飛んでいる!この直線道路を上空から狙っているようだ。天候も回復し、ワッカなどの風景が映し出されると思うと興奮した!あとから聞いた話では東京からわざわざ来てもらっているそうだ。

72キロ過ぎの被り水ポイントには飲める水もあり、カーボショッツを流し込んだ。それからだんだんと大きく見え始めた鶴雅リゾートを出発する時間を計算し始めた。

鶴雅リゾートは74キロ手前。80キロまでは7キロあると思って計算しよう。

キロ8分ならば56分掛かるので、9時間04分で出発しなければならない。

到着時間とほぼ変わらない・・・これは困った。

しかしこの時間鶴雅リゾートにはおしるこは残っていない。そうめんもこの人数からしたら足りてないだろう。今のところトイレに行く余裕もないので、ここは75キロの表示まで我慢して、ペース確保を重視しよう。

その為にウエストポーチを持っているのだから!『ながら補給』で時間の節約をする作戦とした。


パラグライダーが旋回して、今度は後ろから追い越していった。視界が開け、鶴雅リゾートが迫ってきた。

ここから80キロまでが勝負だ!

鶴雅到着はやはり9時間05分。

水分補給とバナナを貰い、歩きながら食べる。そしてカーボショッツとオキシショットも忘れない。

仁野君の姿も見えるが、こちらの位置を探るように、後ろを振り返っている。

『前に行け!』とジェスチャーで伝えると、また走り出すが先程の勢いはない。その差は数メートルへと縮まって来た。

75キロ付近はサイクリングロードにもなっていて整備されている。

ちょうど視界が開けた左側にワッカを走るランナーが米粒のように見える。『あそこまで走るのか!』初めてのランナーはそう思ってしまうだろう。サブ10ランナーが右に向かって走り、80キロを越えたランナーが左に向かっている。あの地点まであと6キロもある。その前に80キロを突破できるのか?不安な気持ちが芽生えてくる。

75キロ 9時間19分17秒 39分58秒

余裕ないなあ・・・素直な気持ちだった。鶴雅の補給を含めて辛うじて40分を切れた。これから少しだけ登りが出てくる。78キロからは平坦なので、この3キロが正念場だ。

しかし脚に少し違和感が出てきた。右足の内くるぶしが痛い。次の被り水で冷やそう。

少し前を仁野君が走る。なかなか差が広がらないことに不安になっている様子。77.5キロの被り水の手前の坂で、ようやく追い付いた。

ここでは被り水にあった氷のかけらをソックスに挟んで走り出す。痛みが出ると自分は必ず冷やして回復を図る。筋肉も関節も同じ動きで負担が掛かっているのでオーバーヒートを防ぐ為だ。いつもは溶けるまで入れっぱなし。それに因って痛みは消えてくれた。

この先は平坦になる。80キロの関門を突破する為の作戦を仁野君に伝える。

『80キロのエイドが関門の手前にある。関門までは600メートルあって登坂だから、エイドでは飲み物だけ飲んで、食べ物を持って行くんだよ!止まって食べていたら間に合わないから、必ず前に進めよ!』

このアドバイスは的確だと思ったが、まだまだ伝えきれなかったことが多かった・・・。

とりあえず脚が元気なうちに進みたい仁野君は、自分の先に出て貯金を作ることに専念した。

自分はと言うとカラダはキロ8分では動いているので、平坦になってからペースを上げた。

そしてこのまま自分のペースでギリギリなのはわかっていたので、歩いてしまっているランナーに声を掛けながら走った。

『まだ走れば関門間に合いますよ!この平坦頑張りましょう!エイドの先は登りなので、エイドまで行きますよ!』背中から歩いているランナーに向けての後押しだ!反応して走り出せる人。『もう諦めるよ。』と返す人。そんな人には『まだまだ!諦めちゃダメですよ!ガンバです!』と声を掛ける。

数人のランナーが後を着いてきてくれる。

『間に合いますか?』『とりあえず走れれば80キロはなんとかなります!エイドでは水を飲んで食べ物を持って進んでください!坂道は歩きながらでも大丈夫ですから!』

ワッカの入り口に向けて曲がろうとした時、後ろから『健司さ~ん!』の声!

『あの声は・・・まさか!安田さん?』

きつい顔になりながらも確実に走っている!魂の走りだ!

安田さんは昨年54キロで1時間近く休み過ぎてしまい、辛くも80キロを突破したのだ!

今年は脚の状態から前半自重していたようで、正直関門に引っ掛かってしまったと思っていた。あの走りならば問題ないだろう。

自分は3回目のスペシャルドリンクポイントだ。毎年時間のない自分はスペシャルのボトルを受け取り、シェイカーに水だけを入れて中身のプロテインとカーボショッツを持っていく。飲むのは関門を越えてからだ!まずは関門突破が最優先だ!

エイド到着地点に『関門まで500メートル』の看板。600メートルと想定していたので、余裕ができる。

安田さんに『行きます!』と合図をし、いよいよワッカの入口に突入した!

まずは急な登坂。降りてくるランナーはサブ10を逃してしまったが、確実に速いランナーだ。知り合いのランナーを見つけては声を掛けて走っていく。中には『またギリギリだね!』『間に合うぞ!諦めるな!』の声援も。そうは言ってもこの登りは走れる坂ではない。緩やかになるまで呼吸を整え、時間を確認し前へ進んでいく。

見慣れた風景を抜け、まもなく80キロの関門が近づいてくる。時間は問題ない、関門が見えて来たらゆっくり歩き出す。

すると『健さん、ガンバです!!1分前ですよ!』と仁野君の声が聞こえた。『わかってるって!仁野~!ずいぶん余裕だなあ。』
80キロ関門

80キロ 9時間58分53秒 39分36秒

80キロ心拍数

関門を突破し安田さんも追い付いて来た。

『ここを突破すれば!さあここから!!歩いて行きましょう!!』『よっしゃ~!いくぞ!』と意気込む安田さんと対称的なのが仁野君・・・。

『もういっぱいいっぱいです・・・。』

こちらはスペシャルドリンクの調合をして、歩きながら飲み始めた。仁野君は何も持っていない。

聞くと、エイドで食べ物を食べて飲み物を持って坂道を走ったら全く手元に残らなかったと言う。

『そりゃそうだ!反対だってば!』仕方ないのでスペシャルドリンクとオキシショットを摂らせて歩き続ける。

歩いているだけなのにどんどんと広がる距離。まだワッカ原生花園まで辿り着いていない。

ここまでペースを上げて痛みを忘れさせていた分、ダメージが来てしまったのだろう。

後で聞いた話だが、80キロの関門には5分前に到着していたらしい。しかし、自分のことが心配だと関門で待っていたのだ!

なんてことだ!自分の心配をしていたなんて・・・。

『80キロを通過したら歩いてでも先に行って自分に追い付かれるな!』と、そこまでアドバイスをすべきだったと後悔した。

共倒れはできない。『行ける所まで行けよ!頑張れ!!』と残し、前を急いだ。

しかしその後、なかなか走り出すことができないでいた。やっとワッカ原生花園の入口と言えるサイクリングロードの分岐点に到着。
ワッか入口ワッカ原生花園

今年もここにやって来た。14回目ワッカ。今年はどんなコースになるのか?空は朝と打って変わって明るい陽射しが出て来ている。また風もさほど強く感じない。絶好のコンディションのようだ。

この辺りから走って行かないと90キロの関門に間に合わなくなってしまう。

キロ表示は1キロごと。81キロで確認すると10時間14分を経過している・・・。

ここはキロ9分が条件だ。5分の借金を、残り9キロでカバーしなくてはならない。先程の入口からはやや下り坂に入り、走れる場所が出てくる。しっかりと歩いた分、走れる余裕は出て来ている。

走りながら帰ってくるランナーに『ガンバです!ラストです!』のエールを送る。応えてくれる人は笑顔で『ガンバ!』と返してくれる。毎年そうだが、このエールは自分に対しての叱咤激励だ!歩いているランナーが、しかも関門ギリギリだったランナーが、10時間台でゴールしようと言うランナーにエールを送れるはずがない。なので、自分もしっかり走って声を掛ける!自らのリズムを取り戻す為でもあり、皆で目指すゴールだからこそ応援したくなる。
82キロ

歩いたり走ったりを繰り返しながらリズムを取り戻す。82キロでは借金は返せず、10時間23分。走っているので落ちてはいない。残り8キロで5分。まずは85キロまでに2分は返そう。8分30秒で走れば90秒返せるので、プラスαと言う計算だ。

エールを送ると自然とペースも上がる。そのままの勢いで行きたい。この余裕がない状況では、ウエストポーチの補給食がまたまた活躍する。

エイドは往復のコースなので、ワッカ内で3カ所ある。3キロごとくらいにある計算だ。

しかしエイドでは水分補給のみに留めた。それは長居をしてしまうからだ。

80キロで受取ったスペシャルのボトルをしっかりと左手に持ち、次のエイドまでの水を入れて貰う。水なので、脚に掛けたりすることもでき、飲むことも可能だ。エネルギーをポーチの中身で補い、キロ8分を目指す。

85キロ 10時間48分17秒 49分24秒

このラップだけ見るととんでもなく遅いが、問題は通過時間だ。90キロまであと5キロに対して約42分。キロ8分で走って2分前だ。まだまだ十分な時間だ。

この時間帯一緒に走っていたのは、グランドブルーメンバーでナンバーカード10番の半田さんだ。

半田さんは太平サブロ-さんと一緒に走っていて35キロ辺りまで一緒だったようだが、ペースが遅いこともあり、関門ギリギリで進んで来たようだ。座骨神経痛も出てしまい痛み止めを飲み続けながらなんとか80キロパスしたと言う。

もちろん普段はこんな所にいる方ではない。自分に『キロ8分ってこんなに辛いのね、このままで間に合うかしら?』と問いかけられたので『微妙ですけど、大丈夫です!絶対行けます!』

2人での並走は自然とペースアップしながら、まずは折り返して戻ってくると90キロ関門となる87キロを目指した。

ランナーにエールを送り、笑顔で応え、力にする。知り合いのランナーもたくさんいて写真を撮りたかったが、今年はそんな余裕がなかった。初参加の方々もかなり頑張っている。
ワッカでのエール交換!!

目標としていた87キロ。そこを24分残して通過しておけば、関門突破は見える。まずは90キロ関門よりもゴール寄りにある。エイドに到着した。

ここからの3キロちょっとは先の景色を見ずに距離だけでイメージする。

1.5キロ行けば折り返しだ。折り返せば、我慢してあと1.5キロ。残り3キロでの時間をチェックし忘れてしまった。集中していたからか?集中していなかったのか?

半田さんに『87キロで11時間だからあと30分ある。大丈夫よね?』と言われ、我に返った・・・。

『えっ、そんなに余裕あります?』

言葉には出さなかったが、時計に目をやるも頭が働かなかった。かなり集中した走りができていたと思う。『キロ10分で大丈夫なの・・・?』と思った瞬間に、どっとカラダ疲れが出てきた。呼吸も荒く、姿勢も崩れてきている気がする。

折り返してくるランナーからは『ギリギリだぞ!諦めるな!!』の声が聞こえるようになった。見た目から辛そうな状況になって来ているのだろう。少し歩きも入りながら呼吸を整えて距離を縮めていく。
100キロ心拍数

ようやく見えたサロマ湖の第2河口に架かる橋。ここを渡れば折り返しはすぐだ。ようやく90キロに向けて前進となる。

橋を渡り切り、さあここから!!と思った瞬間にやって来たのは『左ふくらはぎ痙攣』だった・・・。

『うぉ~!』っと思わず声を出し、コースの左側に寄って立ち止まった。

痛みが出たのは50キロ過ぎの場所と同じ部分。エイドまでは1.5キロとまだまだ距離はある。

ポーチからカーボショッツを摂りオキシショットで流し込む。さらにスポーツミネラルを口に含む。歩きながら様子を見て行く。持っていたボトルから水を掛け、冷やす。

再び走れる状態に戻り、集中する。脚の運びに注意して関門を目指した。

そして長かった80キロから90キロの10キロがようやく終了する。

90キロ 11時間29分02秒 40分45秒

さあ今年もギリギリだが、90キロを突破した。

この10キロはこの前の10キロの失敗を生かして前へ進もう!

出足の1キロは重要だ。

先程のように脚が痙攣しては、後々借金を返すのは困難だ。できるだけ借金を作らないようにいかなくてはならない。

関門を抜け安堵感に包まれ、エイドまでは歩いて進んだ。こればかりは仕方がない。次を走るための積極的休養だ。そして決して座り込んだりはしない。ドリンクを取り前に向かって歩いていく。

そしてトイレ・・・65キロ付近から行きたい気持ちがあるが、行っている余裕がない。我慢できる程度なので、汗で出てくれればとあまり気にしないようにしている。

エイドを後にし、走ったり歩いたりの繰り返しでようやく辿り着いた91キロは借金が3分の11時間42分だった。

よし!3分ならば、キロ8分30秒で走って30秒ずつ返していけば問題ないタイムだ。

95キロを通過する際に45分残しておくことができれば、全く問題はないのだ。

しかし、1キロごとの計測で見ても3分の借金は縮まることがない。キロ9分で走ることが精一杯のようだ。

登り坂を歩き、平坦と下りは走る。この作戦でなんとか乗り切っているが、走ることが継続できていないのが理由のようだ。それでもワッカの写真を撮るのは忘れない。これは歩きのタイミングに併せてカメラを取り出し記録する。あとから思い出す必要なツールなのだ。
92キロ
そしてとても大好きな景色でもある『オホーツク海』。雄大な海と空とワッカ原生花園を走るランナーの姿がいつ見ても何とも言えない。

と、前から黄緑色のシャツが・・・仁野君だ!!

収容車が何回か通り過ぎたのと、折り返すランナーは全くいなかったので、収容されてしまったと思った仁野君が歩いている。

『健さ~ん!』『自分の意志で止めるなよ!頑張れよ!!』

当然、90キロの関門時間は過ぎている。収容されておかしくない時間だった。

ワッカで自分の力で前に進んだことは仁野君の中で大きな自信になっただろう。

結局86キロでリタイアとなったが、たくさんのお客様に応援され、歩くしかなかった自分悔しかったようだ。

来年また一緒に行きたいと言って貰えると嬉しい。

ワッカの出口は96キロ地点。

カウントダウンの始まるその地点は大きく登る坂の途中にある。そこまではアップダウンの繰り返しだが、比較的下り勾配だ。

ワッカネイチャーセンターへ向かう道を過ぎ、いよいよワッカも終盤戦を向かえる。

サロマ湖を挟み、反対側には75キロ地点が見えてきた。あそこからワッカ入口まで5キロ。ここからはそこまで長くない。

3キロ進めば、とりあえず95キロのエイドに到着する。少しでも貯金を作らなくては!
95キロ手前

95キロが遠くに見えてきた。そして時間を確認するが、すでに12時間15分を経過していた・・・。

95キロ 12時間18分05秒 39分03秒

残りキロ9分と言う貯金はできなかった。しかし12時間20分を切っているタイムなのでまだ安心だ。

95キロのエイドでは水だけを摂り再び走り始める。トイレが95キロの看板の脇にあったが、寄っている暇はなかった。

とりあえず、あの坂の手前まで走ろう!ラスト4キロの看板が小さく見える。

あの青い看板の麓まで頑張れば、あの20メートルの急坂は歩いてもいいんだ。

それでも走り続けることはできない。ランナーを交わすことができてもすぐに抜かれてしまう。

それでも脚が止まっている訳ではないので、諦める気持ちは当然ない。

なんとか96キロの手前に到着。そしてワッカともお別れだ。今年は振り返る余裕もなかった。ひたすら前を目指して歩き続けた。

この先ギリギリで約3時間前に越えた80キロの関門があり、ラスト3キロ。

たった3時間の中に色々なことがあったなあ。なかなか返せなかった借金・・・半田さんと並走した快調な時間帯と反動の痙攣・・・そして仁野君の頑張り。

なんとか時間内にゴールしなくては!!

ラスト3キロを残り25分で通過する。

下り坂を抜ければ、最後のエイドステーション。まだまだ学生が『ラスト頑張ってください!!』と声援を送ってくれる。

しかし、もう止まることはできない!水を貰い『ありがとう!』と返すのが精一杯だった。

視界の開けたコース上をランナーが左に曲がっていく。

そしてラスト2キロの看板が見えてきた。自分も左折して後方のランナーを確認する。

するとお台場・富士五湖とご一緒しているN川さんがやって来た!あれ?いつ抜かしたかな??

ラスト2キロを17分前に通過。キロ8分30秒でピッタリだ。

これなら行ける自信がある!

歩いては走り、走っては歩くの繰り返しではあるが、確実に自分の把握するペースでは走っている。

コースは一旦国道に戻り、ラスト1キロを過ぎてから再び常呂町民センターに向かう直線道路へと入って行く。

ラスト1キロのポイントで後ろを振り返るとN川さんが『記念写真撮りましょうか?』と20メートル後ろから走って来た。

いつものウルトラならもちろん応じるのだが、今回ばかりは『いやいや、余裕ないですよ~!』と逃げるようにラスト1キロ8分30秒の時間との勝負を取った。(N川さんごめんなさい!)

ラスト1キロは止まらない!そう決めた!ラストに甘えを作らないことで、次に繋げたい。

それは9月の『信越五岳トレイル100キロ』だ。いい形で次のレースに臨むように心掛けた。

しかし、段々と左足が重くなりふくらはぎをかばう様になって来た。

ラストは『お帰りなさい!!頑張ったぞ!』の声や『店長おめでと~う!!アートスポーツバンザイ!!』の声援に押された。

沿道の応援がどんどん大きくなるに連れて今回の厳しかったレースを思い出し、久しぶりに涙を我慢できなくなった。

どんどん引きずる左ふくらはぎの痛みもあるが、この声援では止まれない!

自分で決めた1キロだけでもしっかりと走らなくては!

沿道にはたくさんのお客さんや仲間がいた。最高の瞬間だ!!

いつも以上に力のこもったガッツポーズとなった!!

ゴール!!!

100キロ 12時間59分02秒 40分57秒

12時間59分02秒これはサロマ湖の過去の大会でもワースト記録ではない。

これまでのワースト記録は12時間59分09秒とわずかながら遅いタイムだ。

2005年サロマンブルーを達成した年だ。あの時も厳しかったが、今回はそれ以上に苦しかった。
100キロ心拍数

ゴール直後、すぐにへたりこんだ。左ふくらはぎはなんとかゴールまで保ってくれた。

ゴールで待っていてくれたたくさんの仲間やお客さんに迎えられ、なんとか14回目の完走を果たすことができた。

途中お会いしたお客さんとも挨拶を交わし、お互いの健闘を讃えた。ガッチリと握手を交わした手にはたくさんの気持ちがこもっていた。レース中何度も前後しながら走っていた方もしっかりゴールされ、『間に合いましたか?』と心配されるのは自分の方だった。
お客さんとお客さんと
自分がゴールしてから余裕もなかったので、13時間のゴールを見届けなかったが、N川さんは12秒前にゴールできたらしい。ラスト3キロでトイレに行ったらしく、それで入れ替わったようだ。

また54キロ手前で会った大野さん達も『店長に聞いておいて良かった!完走できました!』と抱き合って喜んだ。

サロマンブルーの控え室に向かうと、いつものメンバーが迎えてくれた。

『どうだった?』『いつも通り58秒前で(苦笑)』

『さすがだね!計算尽くされた走りだ!』

『いや~今回ばかりは辛かったです。』と14回目の完走を祝ってくれた。

着替える余裕もなかったので、冷えないようにシャツだけを変えて、ジャケットとパンツを羽織り部屋を後にした。

会場でお会いしたクリニック参加の方からも無事完走の報告をもらい嬉しかった。

皆どうだっただろうか?心配だ。

それぞれのサロマ湖100キロウルトラマラソンがあった。

完走できたランナー、惜しくもリタイアしてしまったランナー、すべての方がサロマ湖を頑張ったはず!

決して1人ではない100キロマラソン。

ランナーにボランティアに支えられてこの大会が作られている。

また来年もこの地に帰って来たい。

来年は第25回大会だ。サロマンブルーメンバーとしても盛り上げたいと感じている。

2009年サロマ湖100キロウルトラマラソン参加の皆さんお疲れさまでした!

そしてありがとうございました。


総評:2009年サロマ湖100キロウルトラマラソンを振り返って。

今年で17回目となったサロマ湖。18歳で参加し今年で35歳になる。随分年を取りました。

やはり練習量が少なかったことが、今年の厳しさと肉離れのお土産を持ち帰った理由だろうか?しかし2007年以外距離を踏む練習よりは、カラダを動かすことを重点的に行い走り続けてきた。

この春の富士五湖でも50キロでの借金生活・・・途中リカバーしたが、80キロでも借金を返せず、不安の残るサロマ湖だったことは間違いない。更に振り返ると、3月のお台場24時間走でも終盤かなり失速し、目標とする最低ライン150キロを越えられなかった。

『なんとかなるさ!』ではなんともならない年齢を考えざるを得ないのかもしれないと思ったりもする。

今回の貴重な体験を生かし、しっかりと次に繋げていきたいと切に感じている。

内容としては51キロ過ぎの脚の状態を考えるとよく踏ん張ったと言う感じだ。グランディアでの休憩を減らし、前半の借金をチャラにすることができたのは、完走に大きく近づいた要因であろう。

また80キロからの1キロごとの攻防。早く走れない自分に苛立ちを感じることもあったが、自分を見つめ直し走れるスピードを守ったことが良かったと思う。

結果を見ればいつも通りのタイムだが本当に収穫すべきことがたくさんあった17回目のサロマ湖だった。

しかし、最後に今回やりきれないこととしては、日比谷店の仁野君を完走させられなかったことだ。

80キロさえ突破できれば、なんとかなる。これだけでは完走が転がり込んでくるものではなかった。仁野君も自ら経験した中で、こうすれば良かったとか振り返ると悔やまれる部分も大きいようだ。この経験を糧に来年もサロマ湖に挑戦して欲しい!また自分もなぜ仁野君がダメだったのかをしっかり分析をしてクリニックなどに生かしていきたいと感じた。また来年も一緒に走るぞ!

今年はたくさんのウルトラマラソンクリニックを開催しました!その数150名以上!初めてのウルトラマラソンをサポートすることができたならば、非常に嬉しいことです!

たくさんの反響も頂いているので、今後も開催していきたいと思っています。秋のウルトラマラソンに向けても、アートスポーツ池袋店での講義のみとなりますが、充実した内容で行いますので予定のある方、そうでない方でも大歓迎です!

今後ともアートスポーツ鈴木健司をよろしくお願い致します!

グランドブルーまであと6回!40歳で20回を達成したいと思います!来年のサロマ湖は第25回大会です。記念大会で盛り上がると思いますので、是非参加してくださいね!今後ともよろしくお願い致します。

最後に心拍計ポラール『RS800CXRUN』で取り込んだデータを添付します。

RS800CXRUNデータ

完走記の中でも20キロごとの拡大版を添付しています。上記のデータはトータルです。

一番上の赤ラインは心拍数。重なるように見えずらい黄緑のラインはストライドです。

真ん中から下の黄緑色はケイデンス(ピッチ)です。その下が5キロごとの平均ペース。

一番下の青のラインもその時のペースです。

完走記にも書きましたが、基本的に自分のペースの把握は心拍数です。時計に表示されるペースや距離は必要ではありません。

しかし今回初めてフットポッドを使用して、なぜペースが落ちているのかが明らかになりました!!

それはストライドが短くなっているのです!!ピッチ自体は変わっていないのです。

それはレース後、このデータを見ることで改めて確認できたことです。

20キロごとの細かいデータを良く見てみてください!面白い結果です。

これを知ってからストライド確保の為の筋トレを強化しています!

自分のスタイルは変わりませんが、今後このデータがどのように変化するのかが楽しみです!!

2009年サロマ湖100キロウルトラマラソン完走記~第1章~

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