10野辺山ウルトラマラソン完走記~最終章~まずは信号待ちをして左側車線に渡るが、まだまだ回復してこない。安田さんに先に行ってもらい、自分のリズムを優先させた! 少しだけ膝に手をつき大きく深呼吸。 ショッツを早速摂る。やっぱりワイルドビーンのコーヒー味が効く~! さあ、行こう!信号待ちの5~6人の集団で走るのはあまり得意ではない。 サロマ湖でもそうだが、最初に歩き始めるのは僕だ。 もちろん練習量の差だと実感している。なので、なるべく最後尾に、もしくは距離をとる。 そして200メートル先行する集団を追いかけて走る。 そして歩く、走る!十分な休息によりペースアップ!ここでは約1キロ維持できた。 そのペースはおそらくキロ7分くらい。当然前の集団をパスし、前に出る。 そして後ろの間隔を確認して走っていると、抜いた集団のランナーのペースが上がり着いてくる。 ある程度の加速の後は歩いて休憩。 皆、僕がギリギリランナーなのを知っているのか、あっという間に置いていかれた。 そして90キロと思われる計測テントが山へと繋がる道の途中に見えてきた。 『結構な坂だこと!ここに来てこれですか!』 野辺山が日本で一番厳しい大会である理由がわかった気がする。 さてこのまま、最後まで坂なの?下りは高低図を見る限りない。う~ん厳しい! 90キロ 12時間31分14秒 46分26秒 またキロ9分の貯金がなくなった。しかし、諦めずに行くしかない!絶対に間に合うぞ! と、前方に見たことのある赤いユニフォームの男性が! 後方を見やり、『ニヤ(汗)、やっぱり来ましたね。』的な顔をするランナーがいた。 それは富士五湖ステラシアター手前でお会いしたコアスポーツの渡辺さんだった! 富士五湖では脚がすでに固まり、歩くのもままならずペースアップはできなかった。 しかし今回はまだ動けている。 『行けますか?このまま歩いていたら、間に合わないので、一緒に行きましょう!』 コースはまだ登り坂。酷な話だ! 『違う筋肉を使いたいので、電柱1本分で良いので、走りますよ!それ!』 渡辺さんのカラダは引き締まって絞られたランナー体型! しかし、上半身は丸まり股関節が痛いようだ。 『間に合いますか?』の問い。 『大丈夫です!大丈夫!猫背になっているので、しっかり胸を張ってください!歩幅は小さく、腕を振って!』 30メートルくらいのランを繰り返し、坂を登る。 歩きに入るとフラスクを渡し、ショッツを摂ってもらった。 補給食などは持っていないようだったので、ガス欠に注意が必要だ。 周りのランナーの大半は歩いているので少しずつ距離が離れていく。 『歩きだけよりもキツいですけど、(周りの人より)速いですよね!ほんのちょっとずつでいいんです!頑張りましょう!』 坂の勾配も少しずつ緩やかになるが、電柱1本の繰り返しの間隔は変えない。 僕としては少し離れて着いてくる渡辺さんのリズムが徐々に良くなってきたのを感じた。 すると『電柱2本行きます!』と渡辺さんから! 『いいですよ!さっきよりも姿勢も良くなったし!良いリズムです!』 『さっきよりも呼吸が楽になりました!胸が開くからなんですね。』 歩きだけから坂道での回復は大きい。 この先に平坦や下りが出てきた時に挽回の余地有りだ! 普段ならば身の上話などをしながら、気分が紛れるようにするのだが、今回は初の野辺山。 自分にも余裕がなかった。 また渡辺さんの表情は険しく、ゴールに対する熱意が伝わってきた。 『このペースならば大丈夫ですから!下りが見えてきましたよ!もうすぐエイドですからエイドまで頑張りましょう!』 到着のエイドは93キロだった。時間は12時間59分くらい。 7キロあってキロ9分だと63分。 相変わらず8分30秒くらいで走らないと厳しいペースだが、今の走りならば問題ない。 ラスト3キロくらいからは自然とペースが上がるものだ!渡辺さんの気力に掛けた。 ショッツと塩熱サプリを2人で摂りエイドを離れた。 この先は長く続く道。先までランナーの姿が見えている。 JRの踏み切りを渡り走り続ける。この踏み切り、ゴール近くにもあるよな? 踏み切りに捕まってゴールに間に合わなかった!って話は聞いたことがないので、大丈夫だろうけどちょっとだけ不安になる。 僕はトイレ休憩をしたかったので、渡辺さんに『先に行ってください!自分のリズムで良いですからね!』 全工程で3回目のトイレだ。 100メートルぐらい離れた渡辺さんを追いかけるが、同じように走って歩いてなので、少しずつしか距離は縮まらない。 僕もカラダは一杯一杯だった。 チームメイトを応援するYさんから 『あの盲人ランナーの方は必ずゴールするから、前にいれば大丈夫だよ!』 とアドバイスを貰う。その方々は87キロの出発から前後しながら走っていた。 90キロから前に出てからは、30メートルくらい後方を常にゆっくりではあるが、確実に走っていた。 なるほど、あの走りは確実だ・・・。 95キロ 13時間17分25秒 46分11秒 95キロを過ぎ渡辺さん追い付き、タイムを確認する。 『どうですか?』と渡辺さん。 『あと40分ちょっとなので8分ちょっとで行ってギリギリですね。でも大丈夫!最後頑張れば!火事場の馬鹿力ってヤツですよ!』 休憩を入れて46分。実際は45分で5キロを走っている状態。 このペースのままでは無理だ。 しかし、間に合わないとはまったく思ってはいない。 まだまだ坂道が時折出てくるので、そこは歩きを混ぜる。 段々とゴール会場のアナウンスが耳に届いてきた。 しかし、本店林くんの攻略マップには『ラスト3キロで折り返す』とあったので、『もうすぐラスト3キロですよ!』と伝えた。 ゴールまでのカウントダウンの距離表示に変わり、ラスト4キロでは残り34分。 坂を登り切り、左折して最後のエイドがあった!が、ラスト3キロ表示で26分だった。 『このまま行きますよ!』とエイドに寄らず走り続けた。 ゴールに背を向ける方向で、遠くにゴールを目指すランナーの姿が米粒のように見えた。 しかしコース的には下り坂。 一層険しい顔になる渡辺さん。歯を食い縛り痛みに耐えている。 少しだけ前を走り、ペースを上げる!それにしっかり着いてくる渡辺さん。 遠かった90キロからの旅がようやく終わる。 もちろん時間内完走と言う形で終わりを迎えるべく、気合いを入れ直した。 ラスト2キロの看板が見えて来た時、渡辺さんの仲間が応援に駆けつけて来た! 『ラストだよ!絶対間に合うぞ!諦めるな!!』 その人数は1人、2人、3人と増え、大きな集団となった。 サプライズの応援に渡辺さんのペースも上がる! 緩やかに右カーブを切り、次の交差点を右に曲がれば後は野辺山駅前まで一直線だ。 そして左折し坂を登ってゴールとなる。 僕は渡辺さんの完走を確信した。 その直後、気持ち悪くなってしまい『先行ってください!!』少し歩く。 気を抜けない状況だったので、一気に疲れが来たがすぐに持ち直し、ショッツを注入! ラストスパートに切り替えた。 渡辺さんの後方に追い付き、『あと11分の我慢ですよ~!我慢我慢!!』 もちろんこれは自分への掛け声でもある。 あと1キロちょっと!走り切れ!!と鞭を打った。 最後の踏み切りで電車は来なかった(笑)。良かった・・・。 あと1キロを切って時間はあと9分・・・。 行ける行ける!!渡辺さんの前に出て『頑張れ~!粘れ~!』 ゴール会場に近づき観衆も増えてくる。 『良くやった!間に合うぞ~!お帰りなさい!!おめでとう!!』の声援が嬉しい! 走り終わったランナーの中に、50キロのお蕎麦行列で一緒だったカップルの方を見つけてガッツポーズで応えた! バンダナ姿にしておいて良かった!『アート鈴木さんがやっぱりギリギリで戻って来た!』と一目でわかるから、応援も大きく感じる。 それが嬉しい!! サロマ湖もやっぱりニコちゃんバンダナかな?なんて思いながら、最後のコーナーを曲がった。 渡辺さんは10メートル後方を着いてくる。 そして前方のランナーとの距離を確認。 後方を見ると、渡辺さんを交わし走るランナーがいたので、こちらはラストスパート!! 両脇にランナーを見守る人垣ができてハイタッチで応える! ようやく約14時間掛けて戻って来た! ライトアップされたゴールゲートへ向かうと、高瀬みどりさんが 『鈴木さん~!戻って来た~!演出してくれますね~!』と(苦笑)。 十分に前と後ろの間隔を空けてフィニッシュテープを切った!!ゴール!!『よっしゃ~~!!』 100キロ 13時間58分22秒 40分57秒 たくさんのお客さんに迎えられた!そして安田さんもゴールしていた!! 気になるのは後方の渡辺さん!!見事に13時間58分32秒でゴールした!! おめでとうございます!!!たくさんの仲間に囲まれて完走の喜びを分かちあっていた。 そして僕も渡辺さんの元へ!!ガッチリ抱きしめ合い、喜んだ。 僕も1人ではダメだったかもしれない。渡辺さんの頑張りが僕を奮い立たせてくれた。 そして残り1分30秒の間にも途中でお会いしたお客さんが駆け込んできた!! そしてあの盲人ランナーの方も伴走者の方とキッチリとゴールされていた。 これには脱帽です。素晴らしい伴走者との信頼関係ですね。 ゴールしての感想は、野辺山に比べたら他のウルトラマラソンはコース的には楽だなと言うのが一番だ。 もちろん、それぞれの大会での厳しさもあるが、この完走は自信になる! これで来年からは『野辺山直前クリニック』も開催できそうだ! こうして初めての『八ヶ岳野辺山高原100KMウルトラマラソン』が終了した。 アートスポーツからのもう1人の本店林くんは12時間27分24秒でしっかり完走。 後半歩きばかりと言うのに速いタイムだ。詳しくはこちらでチェック!! http://arthonten.exblog.jp/11146718/ レース直後は、富士五湖と違って興奮状態で疲れを一切感じなかった。 また途中並走してお話をしたお客さんと写真を撮ったり、会話ができるくらい大丈夫だった。 リタイアのモチベーションと完走のモチベーションの違いに自分で驚いた。 しかし食べ物はやはり受け付けず、レース後30分以内に摂取したベスパも戻してしまった。 今回は帰宅に関しては、アートスポーツの車送ってもらえたので安心だった。 暖かくして回復してくると、撤収作業を手伝う。と言っても軽い物の持ち運びだけ。 すると異様にふくらはぎが軽いことに気が付く。触ってもまったく張っていない。 また大腿四頭筋の疲労も富士五湖よりは軽かった。 その後、月曜日から池袋に出勤。月曜日よりも火曜日に太ももに筋肉痛が来たが、ふくらはぎ部分は大丈夫だった。 またSKINSを着用して過ごしていたので、筋肉痛やだるさは水曜日にはなくなっていた。 この結果、あの野辺山の起伏でこのダメージであればやはりサロマ湖は『NEWTON』&『CEP』は絶対決定となった!! タイムが速くなるとは考えにくいが、可能性はありそうだ。 八ヶ岳野辺山高原100KMウルトラマラソンを振り返って まず、春のウルトラマラソン第2戦目と言うことで、富士五湖に続いてリタイアしなくて良かった・・・と言うのが本音・・・。 そして富士五湖を完走できなかったことをまたしても後悔してしまった。 しかし、すべては富士五湖の失敗があってこその完走だったと言える。 出発前日までに富士五湖の反省記を完成させ、気持ちをしっかりと野辺山1本に持って行けたこと。 さらに反省記を読み返すことで、同じ失敗を繰り返さない!対策を練ることができたのが大きい。 大会間隔2週間。富士五湖直後の発熱などにより、練習は1回の高尾~陣馬山マラニック30キロ5時間34分のみ。 暑い中、トレイルをNEWTONで走れたこと。 また高尾山山頂からはアスファルトの1号路を下りることで、下りの走り方を研究できたことが何よりも収穫だった。 そして脱水症状対策。 ショッツの積極的摂取により回復した富士五湖後半を、今回は前半から実行した。 58キロまでに7本。58~87キロまでに3本。87~100キロまでに3本。 この他にスペシャルドリンクで2本用意した(1回摂取)。 塩熱サプリ(ラムネタイプ)の使用による電解質の摂取。前半は乳酸対策にメダリストアミノダイレクト5500を3本摂った。 63キロから約10キロは暑さの為にやはり低血糖に近い状態になってしまったが、これは今思うと、やはり固形物の摂取ができなかったことに因るものだろう。 これを生かしてサロマ湖ではゼリー状で摂取しやすいものを用意しても良いと感じた。 あとは早い時間帯でのショッツと固形物の併用だ。 今回は吐き気を催すのが怖くて、前半からほとんど食べなかった。 また今回も薬は頼らずに走った。サロマ湖はどうしようか?考え中・・・。 レース全体を振り返ると、やはり2年前に71キロを経験していたのも有利な方向に働いていたと思う。 それにより前半からの下りの飛ばし過ぎを注意できたり、71キロまでの登りのペースに関しても把握できたのだ。 準備編にも上げたが、まずは計画がしっかりと練れたのは大きい。 20キロ・50キロ・71キロの到着時間の計画は前日計画でありながら的確であった。 また計画を実戦できた実行力も今回は評価したい。 心拍数を見ていこう。一番下の1~20までは5キロごとのラップ(1、5キロ 2、 10キロ・・・20、100キロ) 色の濃い部分は標高 20キロまで まずは5キロ過ぎまでは標高も上がってこないので、心拍数もオレンジよりも下で推移している。 そして10キロ手前からはオレンジの上の方で、決して超えて赤に掛かることはない。 標高に応じて心拍数も合わせて下がっているのもわかる。 40キロまで 20キロから25キロまでの下りはグリーンの範囲内。 そして25キロからは登っているのでオレンジに移行。 35キロまでのアップダウンでも標高と見事にシンクロしているのがわかる。 60キロまで 40キロ手前から下りだして50キロまではグリーンの範囲内に収まっている。 50キロでお蕎麦待ちなどあり。その後はオレンジの中程150のラインで安定している。 60キロ手前では着替えエイドがあり10以上休んでいるのがわかる。 80キロまで ここから徐々に体調の変化が見られる。65キロからの登りになっても心拍数が上がってこない。 これは走れていないのがわかる。 本来ならば、下りで140以内(グリーン以内)で走れたのであれば、徐々にオレンジに推移しながら登りを走れなくてはいけないのだ。 レース中は単純にツライだったが、心拍数を見ても良くわかる。 75キロからの登りでは心拍数は一定ながらも標高は上がっているので、ペース的には落ちている。 馬越峠頂上手前でエイドで休んで、それからは頑張って登っているのもわかる。 100キロまで 馬越峠の下りは慎重に下っている。 また85キロ以降は平坦になってペースを維持しようとしているので、心拍数は上がっている。 そして87キロで休憩(約10分)し、90キロからは、もう止まれない!と言う状況で走らないと間に合わないと言うのが伝わってくる。 ラストに向けて心拍数もアップし、ラストスパートに繋がっている。 このように振り返ると、次回参加する場合は63キロから87キロの24キロの走り方が重要になってくる。 ここをしっかり走る為には、繰り返しになるが前半からしっかり固形物を食べながらここまで余力をもって走ってくると言うことだ。 最後に今回この八ヶ岳野辺山高原100KMウルトラマラソンに参加して本当に良かったと思います。 自分の自信にも繋がりましたし、日本一の難コースを走ることができて楽しかったです。 やはり、たくさんのお客様が声を掛けてくれることで、楽しく走ることができました。 周りの皆さんにもアート鈴木さんを見掛けることができて良かった。 話せて良かったと思って頂ければ、1人で参加していると言う思いもなく走れると思います。 今回もギリギリでしたが、やっぱり自分にはスピードは似合わないかな?と認識しました。 これからももちろん努力はしますが、あまり期待しないでください。 そして前半早い位置で見掛けましたら、どんどん前に行ってください! 休憩の長い自分は、制限時間5分以内のテリトリーまで下がって来ますので・・・(笑)。 それが自分のスタイルです。 また皆さんと一緒に大会でお会いできることを楽しみにしています!! 参加したランナーの皆さん、大会ボランティアの皆さん、本当にありがとうございました!!また来年??? 八ヶ岳野辺山高原100KMウルトラマラソンに初めて参加する方へのアドバイス ポイントはなんと言っても『下り』。如何にダメージを最小限に抑えられるか? 次に後半の平坦や緩やかな登りで走れる脚力。 最後には食べることのできる内蔵の強さ。 そして、事前の計画性。 2010野辺山ウルトラマラソン完走記~準備編~ 2010野辺山ウルトラマラソン完走記~第1章~ 2010野辺山ウルトラマラソン完走記~第2章~ 2010野辺山ウルトラマラソン完走記~最終章~ ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|