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SAROMAN BLUE 鈴木健司

SAROMAN BLUE 鈴木健司

10サロマ湖100kmマラソン完走記~第3章~

エイドを離れた僕の走り方は、まるで短距離選手みたいだったかも知れない。

しかしそれも64キロまで・・・。

カラダに鞭打っている状況なので、内転筋がプルプルしてきた。

ゆっくりペースを落とし、立ち止まり、また走り出す。

木陰の中、今までよりは比較的涼しく走れるので、心拍数は上がらない。

なんとか1キロごとの表示から、ペースを把握。

65キロ  8時間00分23秒   44分16秒

なんとか目処が立ったか?

残り5キロを45分。

もちろん70キロで関門に掛かるつもりはない。

これからは5キロ40分、キロ8分で走らないと後々が厳しくなる。

走るペースをキープしながら、100メートル走っては20メートル歩く。

このリズムが適しているようだ。

魔女森を抜けて、ここからは私設エイドが増えてくる。

今年はとてもありがたい、オアシスだ!

普段はすべて立ち寄ると時間ばかり掛かってしまうのでパスするのだが

今年は確実に利用させて頂いた。

佐呂間大橋に掛かると、少しの登りや段差がキツイ!

もうすぐ斉藤商店に到着。

もうちょっとだ!粘れ粘れ!

黄色建物が目に飛び込んでくると、気分的に晴れやかになる!

暑い今年は冷たいおしぼりが最高!

顔を拭き、首を拭い、顔面に押し付ける。

しあわせ~!ありがとうございます!


冷たいお茶と水で中から外から冷やして、いざスタート!

ここから70キロ関門まであと15キロ。

このままならば、40分の貯金が確保できそうだ!

歩道を走ると、ちょっとの段差が厳しい。

路肩に降りて、脚を引き摺りながら進む。

70キロ手前のエイドに到着。

この先、72.5キロの被り水、74キロ手前の鶴賀リゾートとエイドの間隔が空く。

ここではバナナだけを貰い、脚に水を掛けてスタートした。


エイドを抜けて、70キロ関門の曲がり角が先に見えてきた!

あと600メートルぐらいだろうか?


その時!再び痙攣が発生!

内転筋とスネから指先に掛けて、部位は変わらない。

走り出すにも、今までよりも吊り感が強く、前に進めない。

今までにない不安に襲われた。

知り合いのランナーからも声を掛けて頂く。

『頑張って!(お仕事で来られなかった)Oさんの分まで!』

『まだまだ間に合うぞ!』

はっ!とさせられた!

自分は恵まれている。

アートスポーツに勤めているから、走りに来ることができる。

『鈴木は棚卸しが重なっても、サロマ湖には行くよな!』と周りから言って貰える。

こんな恵まれた環境はない。

今回、仲間で2人の方がお仕事の都合で休めず不参加となった。

その方々の為にも、リタイアでは終われない。

しかし、踏み出すものの脚が言うことを効かない。



最大のピンチだ。

そんな時は『サプリメントに頼るしかない!』

ドラえもんの四次元ポケット的なポーチにはたくさんのサプリメントが入っている。

藁にもすがる思いで、『なにか効け!』と摂取した。

まずはショッツエナジージェル!困った時のショッツだ!超即効性エネルギー!2本分!

続いてアミノダイレクト5500!乳酸分解のクエン酸プラス、血管拡張シトルリン!

そして脱水対策塩熱サプリ!中盤に摂るのを怠ってしまった!それが今の現状か?

これらのサプリメントが効かないと、この脚の状態では走れない。

70キロの関門が遠くに感じた。

何度も屈伸やストレッチを重ね、脚を叩く!


痙攣が引いてくると、歩きのペースから、進める歩幅を探る。

ピクピク違和感を感じながらも、徐々に走るリズムが出てきた。

が、30秒も続かない。

時計は8時間40分を回る。

関門は間に合う距離にある。

あとはどれだけ借金を少なく済ませるかだ!

50メートル先の70キロまでが走れない。

なんとか手前10メートルから走り出し、70キロの関門を通過した。

70キロ  8時間41分59秒  41分36秒

約3分前に関門突破!

この5キロのペースだと間に合わない、80キロ。

痙攣がまた酷くなると・・・あまり考えないようにした。

とりあえず、何度も通った道だ。

このコースに小細工は効かないと。

自らの脚で前に進まなければ、何も始まらないのだ。

70キロの通過から、ジッと立ち止まることはしなかった。

まずは歩いて前に行く。

お客さんのTさんとしばらく一緒。

しかしTさんは3分走って1分歩く作戦だと言う。

こちらは200メートル走って、30メートル歩く作戦。

このTさんと僕の走りは、一緒には走れない。

それぞれが持つリズムがあるのだ。

Tさんは僕より前に!と言う安心感(制限時間ギリギリ)が、そうさせるのか?

僕は必ず行きますから!

絶対に間に合わせますから!と言う気持ちで、走る。

僕はTさんの背中が小さくなるのを見つめながら、自らのリズムを優先させる。

このペースならば大丈夫だ!

この先の計算を口ずさみ計画する。

まずは74キロの鶴賀リゾートの到着時間だ。

実際は74キロ手前なので、あと7キロと思って計算する。


7キロを8分ペースだから、56分。

鶴賀出発は9時間04分と組み立てた。

これは70キロから約3分の借金を返せた場合。

とりあえずは鶴賀到着を目標とする。

とは言え、この直線は長い。

遥か先に霞む鶴賀リゾート。その前に72.5キロの被り水に辿り着いた。

ここでも氷をバンダナに挟み首から冷やす。

下半身はこれでもか!と言うくらいビシャビシャに濡らす!

陽射しはまだ高く、風向きからしてもまだまだ暑く感じるのだ。

今のところ痙攣の兆候はない。

何が効いたかな?

先程のサプリメント摂取の分析で、気分を紛らわせながら鶴賀リゾートを目指した。

ふと時計に目をやると、9時間06分をまもなく迎える!

えっ!ヤバ!

73キロに想定した鶴賀。

実際は74キロ目前。

1キロの誤差は8分のゆとりに繋がると言う考え方だが

この時点で9時間06分だと、出発は9時間10分くらいになる。

74キロを通過した時点でしっかりと48分の貯金ができないと、腹をくくった。


鶴賀リゾートに到着すると、いつものへろへろの応援部隊がいた。

『健司くん、まだこんなところに居たの?』的な(笑)励ましを受け、エイドに到着。

ふと脇を見ると、今まで見たことない光景が!

『おしるこの大群だ!』

前回食べたのは3年前?か4年前?

この時間の到着ならば、なくても仕方ない。

しかしこれだけ余っているのは、リタイアの方が多いと言うことを表している。

『鈴木さん!おしるこあるよ!』の声に、『食べたいけど、ゆっくり食べている時間がないです~!』

と、おしるこを受け取り立ち止まらずに歩いた。

甘い物は食べたかったので、汁だけ飲んでスタートした。

と言っても歩いているだけだが。

鶴賀を後にしたその直後に、『リタイアする方は、こちらのテントでお待ちください』とある看板が。

まだ制限時間は過ぎていないのに、この表現はいかがなものか?

間に合うはずの関門にもう間に合わないみたいに受け取る人もいるのでは?

また自らの意思で止めます。と言うのを、勧めているような感じがした。

もちろんまだテントの中には人はいなかったが、止めてなるものか!と闘志を燃やした!

すると前方のトイレ付近から出てきた安田さんを発見!

しかし、気が付くと前に安田さんの姿はなかった・・・あれ?また飛ばしたのかな?

安田さんとは、先月の野辺山でも71キロ以降一緒に走ったが、ダッシュ力が半端じゃない!

あっという間に視界から消えていく。

しかしまたエイドにはいるので、エイドをスタートするのは僕の方が早くなる。

前後しながら安田さんが先にゴールするのだ。

安田さんはここまで来ていれば心配ない。


問題は僕の方だ。

さて74キロ到着は9時間13分。

80キロまでは残り47分。まだキロ8分でも間に合わない・・・。

これからはサイクリングロードに入り、対岸のワッカにランナーの姿を見ながら走る。

75キロ通過が、40分を切ってしまうとかなり厳しい。

なんとかワッカに入りたい一心で、頑張る。

75キロ  9時間21分17秒   39分17秒

痙攣が収まっているので、40分を切るラップを刻むことができた。

被り水やエイドも最小限の時間で済ませた結果だ。

そして80キロまで40分43秒で走らなくてはならない状況は変わらない。

70キロ過ぎから抜きつ抜かれつをしていた、クリニック参加頂いたSさんと再び一緒になった。

今年はいつもよりもこのサイクリングロードにランナーが少ない。

Sさんと並走する中で、嬉しい言葉を頂いた。

『鈴木さんのブログは、何回も読み返しました!』

特に完走記はかなり頭に入っているようで、走りながらのレクチャーは不要だった。

内容的には80キロ手前500メートルにエイドがあるから

エイドでは飲み物を飲んで食べ物をゲットしてから走る!

関門を過ぎてから、補給をすると言うことだ。

2人で会話をしながら走ると距離が短く感じる。


77キロ過ぎの被り水では

給水車が来ていたので、被るだけではなく、冷たい水が美味しかった!

頭から脚までキンキンに冷えた水を被り、スタートする。

この先は大きな登りはワッカの入口までない。

まずは80キロ手前のエイドを目指す。

Sさんとの並走は78キロまで。

段々と調子が上がってきたので、先に行かせてもらった。


良いリズムだ!キロ7分くらいまでは上がってきた。

79キロを過ぎ、関門閉鎖まで9分となった。

これは大丈夫だ!

前方には63キロでお会いしたNさんが見えたので、コーナーを利用して手を挙げて存在を示した。

そして80キロ手前エイドに到着する。

ここには3回目のスペシャルドリンクがある。

そして今回は、ここに3本目のフラスクも用意した。

一緒のケースにショッツワイルドビーンが2本とフィードバックプロテイン1本が入っている。

まずはシェイカーの中身をそのままに、水をコップ2杯分入れる。

そして蓋をして完了!

スポーツドリンクを軽く含み、ワッカの入口の登り坂まで走る。

そして関門まであと500メートルの看板からは、坂道を歩き出した。

急な斜面は歩き、緩やかになれば走る。

関門ギリギリなので、僕を追い越していくランナーは増えてきた。

僕は80キロからの体力温存も含め、歩きを増やした。

しかしながら、77キロ以降バッチリ回復した!

ここまで貯金が作れるとは思わなかった。

70キロ手前の状態が嘘のようだ!やっぱりサプリメントが効いたのだ!

実際、80キロのラップを刻み、自ら驚いた。


80キロ   9時間58分30秒  37分12秒

2010サロマ湖60-80km


距離が短いか?いやそんなはずはないだろう。

明らかに鶴賀リゾート以降、リズムが変わった。

歩くにしても、呼吸や脚のダメージを最低限回復させる為だけにした。

そのリズムがこのラップを呼び込んだ。

さて、80キロの関門を過ぎてから行うことは、スペシャルドリンクだ!

Sさんも到着し、同じくスペシャルドリンクを作成する!

テーブルもないので、道路にシェイカーを立てるが、今回は水が先に入っているのだ。

カラダを冷やすのにまず使い、その後ショッツ・ワイルドビーンを2本。

それからフィードバックプロテイン!

本日3回目のシェイク&シェイク!

旨いぞ~!!

3本目のフラスクはポーチねじ込む。これは想定内だ。

ポーチの中身は減ってくるので、無理矢理だが詰め込んだ。

フラスクの方が量を調整できるから、細かい補給にはやはり便利だ。

スペシャルを飲み干し、ごみをシェイカーに入れてスタート!

次のエイドで処分する。

ワッカ到着!!いつもならば80キロ突破時点でカラダは目一杯になる。

しかし今回はかなり元気だ!歩くと言うよりも、走っていたい。

ゆっくりではあるが、歩いているより楽な感じがする。

やはりメンタル的なところは大きい。

80キロまで間に合うかわからないと言う状況から、解放された安心感だろう。

そして戻ってくるランナーには

『ラストガンバです!』と声を掛ける。



ワッカ折り返しランナー


ようやくワッカ原生花園までやって来た!

するとアシックスの草山さんがやって来た!

いつもはワッカでは会えない人なのに、暑さのせいでタイムにも影響が出たのだろう。

草山さんはラスト4キロ。

こちらはここに戻って来るまで、14キロあることになる。

まあそんなことは関係ない。

1キロごとの表示でしっかりとペースを刻めば、淡々と距離を踏むことができる。

アップダウンにあわせて歩きも混ぜるが、81キロではスペシャルも入れてキロ9分で刻めた。

意外だったが、カラダは動いている証拠だ。

まずは復路95キロにあるエイドを目標とした。

ワッカ前方には歩いているよりランナーも多く、抜き際に声を掛ける。

『走ったり歩いたりでいいので頑張りましょう!見える位置でついて来てくださいね!』

平坦でも歩いてしまうのは仕方がない。

しかし走ろうとリズムさえ掴めれば、歩きっぱなしにならずに済むのだ。

ワッカまで辿り着いたのだから、ここまで来たのだから諦めずに進んで欲しい!

サロマンブルーメンバーの役目ではないが、まだ間に合いますよ!と、背中を押したかった。


ボランティアまずはエイドに到着。シェイカーを水で洗う。綺麗にしてから真水だけを1/3くらい入れる。

飲んだり、カラダを冷やしたりする為だ。こうする為には、シェイカーも握れる太さが好ましい。

ここではたくさんの氷もゲットして、バンダナにしまう。

脚の状態はどうだ?70キロ手前が嘘のように快調だ!

登り坂は走れないが、立ち止まることはない。確実に距離を稼いでいる。


戻ってくるランナーに声を掛けると、笑顔が返ってくる!

中には『またギリギリで~!』と言う声や

顔だけはニコニコなんで、『ずいぶん元気だね!』と会話が弾む。

クリニックに参加された方や、知り合いの方とはハイタッチを交わし、互いにエールの交換をした。

85キロ  10時間44分35秒  46分05秒


ワッカトータルではここまでで借金はない。

46分でラップタイムを刻んだが

スペシャルドリンク調合の時間も含めてなので

実質42分くらいでは走れている。

休憩時間として3分取れると考えれば

この先、昨年のように痙攣が起きてもカバーできそうだ!

85キロを過ぎると

ワッカネイチャーセンターとの分岐点に差し掛かる。


ここにはへろへろや巨人軍団など、たくさんの応援団が集結している。

たくさんのパワーを貰える場所だ!

ここでも、『あっ、鈴木くん来た~!』とか、『やっぱギリギリだ!』と声が飛ぶが

『すいません、今年もギリギリで~す!』と笑顔で応えた!

ワッカ原生花園
ワッカ折り返しランナー


この先ワッカ折り返しまでが昔は長く感じた。

しかし今年はあっという間に折り返しを迎えた気分だ。

それはたくさんの仲間やお客さん

そしてブログを通じて僕を知って頂いている方などが、声援を送ってくれるからだ!

写真を撮ったり、ハイタッチしたり!楽しくて仕方がなかった!

折り返して90キロの関門ではあと3キロ。

30分のゆとりはないものの、キロ9分で間に合う計算も立った。

応援旗そしてサロマ湖の第2河口に掛かる橋を渡り折り返しになる。

橋を渡りいよいよ折り返しだ。

ここの景色はいつも通り変わらない。

橋を渡る時に初めて気が付いた横断幕があった。

応援には誰もいなくても、ランナーを支えてくれる。

さてあと1.5キロで90キロだ!


『その一歩の先に続くのは、歓喜の道』

折り返しを目指すランナーの中にお客さんを見つけた!

十分間に合うペース!後で追い付かれるかな?


折り返してから、向かい風に変わった。

すると今まで暑過ぎて大変だったところから、汗が乾きスーっと涼しい風を感じるようになった。

湿気はないので、腕捲りした袖には塩が吹き出す。

さっきまであんなに濡らしていたのに。

もちろん汗も出にくいペースになっているのだけれど、この辺りから少しだけ冷える感じが出てきた。

今回は54キロの時点でこれだけ暑ければと長袖を着ずに

アームウォーマーのピックアップも考えたが止めた。

これまでの流れでは吉と出たが、やはりワッカは冷える。

速い人ほど暑い中のレースとなったはず。

しかし時間が掛かる程、長袖なり、肌の露出を少なくして冷え対策にする必要性を身に染みて感じた。

残り1キロ。まもなく90キロだ。


90キロ折り返しを目指すランナーも居なくなり

ランナーの足音だけが聞こえる。

するとサロマンブルーの松村さんを発見!

松村さんもギリギリのタイムで完走される。

サロマンブルー達成までのゴールタイムを平均すると

僕よりもギリギリなタイムだ。

松村さんに会うのはいつも75キロ以降になってから。

これはリズムと言うか、走り方が違うんでしょうね。

ここ数年もワッカすれ違いで位置を確認するが、後方は僕の方だ。

ここまでくれば、完走は間違いない。

一緒に来ている仲間の話をしたりしながら、少しだけ並走。すぐにお互いのペースに別れた。

そして90キロ!


90キロ   11時間27分12秒  42分37秒


関門約3分前に通過!

予定通り42分台のラップタイムになった。

少し先に90キロエイドがある。

この先の関門はゴールの13時間までない。

エイドはワッカの中はここを含めて3箇所。

ラスト2キロ手前に1箇所だ。

コース的なことではラスト4キロにある登り坂。

ここを越えれば下りと平坦しかないので、30分あれば十分だ。


まずはしっかり補給!

ショッツをガッツリ飲んで流し込む!

それから脚元は、まだまだ動き続ける中で筋肉がオーバーヒートしないように、冷却し続けた。

心拍数を安定させてから、ラスト10キロへ向かう!

エイドでは白鳥を頭に乗せたさんしまるさんと一緒になり、話ながらスタートした。

さんしまるさんは折り返しの近くのトイレで相方さんといるのを見掛けたが、今は1羽だけだ。

低血糖でペースダウンしたらしく、相方さんは先に行ってもらったら様子。

ブログ村ランキングでもチェックして頂いているようで、ギリギリなのはご存じのようだ。

また女性ランナーの方からも声を掛けて頂いた。

『鈴木さんに付いていけば大丈夫ですよね?間に合いますよね!』

『大丈夫ですよ!でも僕の前に居てください!走ったり歩いたりしてますが、僕に合わせるよりも自分のリズムで走ってくださいね!』

とお伝えして、さんしまるさんと女性の方は少し前へ走り出した。

僕は自分のリズムで確実に進む。

2人との距離は徐々に離れていった。

ほら!お互いのペースがいいんですよね!

また途中でご夫婦でサロマンブルーメンバーのOさんの奥さんが道端で座り込んでいた。

『大丈夫ですか?』

『ものすごく眠くなってしまって・・・』

80キロの関門から前後しながらも、ここまで一緒に頑張ってきた。

『これ、甘いですけど飲んでみてください!』とショッツを差し出す。

かなり甘かった様子だったが、

『5分あれば歩けるようになりますから!』

と、先に走り出した。



93キロワッカ原生花園


そして93キロのいつもの景色が見えてきた。オホーツク海が広がっている。

風が強いので波がたっている。この海と空と花のコントラストが絶妙だ。

毎年ここに来れることを感謝しながら走る。今年はとても花が綺麗だ。

特にエゾスカシユリのオレンジが映える!そして今度は右手に、走ってきた75キロ付近が見えてくる。

対岸なのにすごく遠い。あの場所を必死に走っていたのは、たったの2時間前だ。

頑張ったな、自分!って思いながら走る。


まもなくすると遠くにブルーのテントが小さく見えてくる。

95キロのエイドになる。

Aさん下りから平坦になり、自力が問われるところだ。

その途中、Aさんが追い付いてきたので

『最高の笑顔で~!』と言ってポーズをとってもらいました!

ナイスランです!

さらに先程座り込んでいたOさんも復活の走りで、僕を追い越していく。

僕はここから時計とにらめっこ!

確実に間に合う!

もし痙攣が起きてもこのタイムならば大丈夫だ!

まずは95キロのエイドに到着。


95キロ手前少し先に95キロ表示がある。

しかしトイレに行きたい!

最後に行ったのは63キロのスペシャルドリンクの場所だ。

あれから4時間半が経過しようとしている。

70~80キロでは行くタイミングがなかった。

90キロでは、関門の手前にトイレがあるのだ!

もしトイレに行って、扉が開かなくなったら!?間に合わない!

などと考えると、行くに行けず95キロまでやって来た。


95キロ  12時間15分33秒   48分20秒

このラップタイムだが、90キロを越えてのエイドをプラス。

さらに細かいながらもアップダウンがあるコースなので、48分は許容範囲だ。

そしてラスト5キロで45分残せた。

野辺山の時は42分しかなくて、登り坂!

ラスト知り尽くした5キロだから、自信があった。

しかし、トイレに関しては止まったらいけないと思い、我慢して走り続けた。

ワッカ出口この先からはカウントダウンの表示に変わる。

あと4キロはあの登り坂の途中だ。

あそこまで頑張ろうとするが、やっぱり200メートルくらいしか走れない。

それでも確実にゴールへ近づいているのだから、問題ない!

ショッツを含みながら走る。

ゴール後のガス欠で低血糖になることが多いが、最後にもこまめに摂ることで回避できる。

先程のOさんの回復振りをみても、やっぱりショッツだ!

そして坂の麓まで行き、歩く!

今年は本当に綺麗なワッカ原生花園だった。

また来年!


さて、あと4キロ。

少し木々が立ち込める中をゆっくりと進む。

走れるところは下り坂。

骨盤の動きで前には行くが、早くもなるので脚への負担も大きく、あまり継続できない。

すぐに小さい歩幅に切り替えて走ったり歩いたりする。

前後にはかなりランナーは少なくなった。

そして80キロの関門があった場所を通過。

ここにもトイレがあったが、パス!

ワッカの出口へ向けての下り坂は、さすがに走れなかった。

エイドが近いこともあり、応援の方もいて、その前だけはしっかりとした足取りで進む。

最後のエイドでは手持ちのショッツを水で流し込む。

ラスト2キロの看板を左折した先に確認して、時計を見る。

残り18分。

沿道には小さいお子さんを連れた奥さんが応援している。

後方からパパがやって来るようで、

『パ~パ~!がんばって~!がんばれがんばれパ~パ~!がんばれがんばれパ~パ~!』

大きい声で声援が飛んだ!

いいなあ、みんな応援に来てるんだ。

その後も精一杯の子供達の声が響く!

その声を聞きながら、家の子供達も応援してくれているに違いない!

富士五湖では家族総出で応援に来てくれて、最後まで声を張り上げていた。

また昨年の信越五岳では、窓から見える

『あの山のもっと遠くの山で走ってるから、応援してね!』とお願いしていた。

帰ってきた時には『お山に向かってがんばれ~!って応援したよ!』と言ってくれた。

今回は北海道に100キロ走ってくると伝えたので、また応援してくれているに違いない!

段々と小さくなる声を力に最後の1キロへと向かう。

そしてラスト1キロ表示が見えてくると、今度はトランペットを演奏する男性が1人!

その男性は『ロッキーのテーマ』を吹いていた。

そして僕の時には『スーパーマン』に変わったのだ!

おそらく何曲か吹き流していたのだろうが、その『スーパーマン』がとても印象的だった!

あの『スーパーマン』のオープニングテーマだ!

これには思わず拳を挙げて応えた!

ありがとうございます!

そして前後の間隔を取りながら、国道を離れ、ゴールの常呂町民センターの緑を目指した。

残り時間はあと9分くらいはあっただろう。

しかしあの子供達の声援とトランペットの演奏に押され、ペースが上がる。

徐々に両側に人が増え始め、声援が大きくなる!

この場所は何度走っても嬉しい!

クリニックに参加された方も『店長~!お帰りなさい!』と迎えてくれた。

一緒に来た仲間達は、最後のゴールの直線に入って右側にいた!

すると『鈴木くん速過ぎ~!』の声が!

『いやいや、こっちだって必死なんですから!』

時計は12時間58分ですよ~!(汗)

そしてゴールテープに向かうと、前の方にランナーの集団が歩いてゴールを切っていて、前との間隔が詰まってしまった!

位置取りを修正して、立ち止まらずにゴールテープを切った!

ゴール!!

100キロ  12時間58分02秒  42分29秒

出発前にも話題にしていたゴールのポーズ!今回はこれでした!

わかります?そう15です!ワッカに入ってから考えました。ゴールが見えましたから!

ガッツポーズはありきたり。バンザイじゃないな?

今年は15回!来年は16回。回数を表現できるのは、今回しかないなと。

あとは15の出し方。お腹の辺りで15!じゃ、様にならなそう。

数字を並べようと、水泳のけのびのように伸びてもおかしいよな?

やっぱりこれ!となりました。

でも、人より手が長いので写真からはみ出ないか?心配に。

でもこの角度ならバッチリですね!

と言うことで、15回目のゴールを無事に達成することができた。

2010サロマ湖80-100km


暑さの中、なんとか我慢我慢で凌ぎ切ったレースだった。

昨年経験した痙攣よりも、今年の状態は酷く、ふくらはぎではなく太もも内側の内転筋だった為

70キロで立ち止まった時は半分諦めかけた。

それでも周囲のランナーからの激励を受け、サプリメントに助けられ

回復してからはいつもよりも楽しめたワッカ原生花園だった。

前半のペース配分も、例年よりは速かったが決して無理はしていなかった。

NEWTONと言うシューズを履いていく中で、自然に身に付いた心拍数とペースの関係だった。

しかし結果的にタイムが縮まっていないと言うことは

それに伴う練習不足&筋力不足が現れていると言うことだ。

カラダを楽に運べるシューズを履いても、練習量なくしては結果は伴わない。

これがすべての結果である。

ゴール後
(白鳥のお2人は顔出しNGと言うことで)


ゴール後はクリニックに参加してくれた方や、ワッカを共に走った方と言葉を交わした。

このコンディションだったので、初ウルトラには厳しかったと思うが

リタイアしてしまった方も『また来年、必ず!』と力強く出た言葉が嬉しかった。

完走率49.9%はワースト2位の結果だった。

途中水不足もあったが

4000人近いランナーのサポートに当たって頂いたボランティアの皆さんには感謝したい。

このような気象条件になることも考慮して

ランナー自身が準備頂くことをこれからは伝えていきたいと感じた。

また口蹄疫問題も浮上した中、開催を了解頂いた湧別町の地元の皆さんにも感謝しています。

また来年サロマ湖が開催されることを願うばかりです。

最後に、今年もたくさんの方々から声を掛けて頂きました。ありがとうございました。

本当に嬉しいですし、『ブログ見てます!』の声が、生き甲斐です!

同じウルトラマラソンを走るランナーでも、それぞれ大会に対する想いは違う。

でも一緒に100キロ先のゴールへ向けてスタートを切ると言うのは同じなのだ。

走るペースは違っても同じコースを走り、同じ匂いを感じて走る。

ゴールで味わえる達成感の為にランナーは走り続ける。

それが初めてでも5回でも10回でも、僕のように18回走っていても同じ100キロはない。

リタイアしてたくさん泣いたこともある。

すごく距離が進むごとに調子が上がってくることも!

ダメだと思って諦め掛けても、周りのランナーに励まされ

並走して、復活して、ゴールまで行けたことも!

簡単ではない100キロだからこそ、挑戦して見えてくるものがある!

ダメだった時にも、なぜダメだったのか?自分と向き合うことができる!

もっと頑張れたのでは?全力を出し切ったか?の自問自答もあるかもしれない。

結果がどうであれ、しっかりと自分が走った結果を受け止めて

次のマラソンだけでなく生かすことができる!

皆さんのサロマ湖どんな風に感じましたか?また来年会いましょう!!

第25回サロマ湖100キロウルトラマラソン完走記~第1章~

第25回サロマ湖100キロウルトラマラソン完走記~第2章~

第25回サロマ湖100キロウルトラマラソン完走記~第3章~


~レース分析に続く~


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