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SAROMAN BLUE 鈴木健司

SAROMAN BLUE 鈴木健司

2003サロマ湖100kmウルトラマラソン

2003年サロマ湖100kmウルトラマラソン完走記!!

今年で数える事11回目のサロマ湖100kmウルトラマラソン。
ここまでの成績は10戦7勝3敗!ここ2年連続リタイア!
何としても完走の想いを胸に・・・しかしこの1年で変わった事がある。
93年の大学1年生から1人で参加して多くの知り合いができ、その方々と一緒に毎年サロマ湖を訪れていた。今回は自分に連れがいる。彼女ではなく妻(HANA)である。しかもHANAもウルトラランナー!サロマ湖は初挑戦、100kmは2回目になる。さらにさらに2人の結婚式は5月26日出雲大社、6月1日披露宴と正直この1か月しか練習していない(約150kmくらい)不安が多いものの初100kmを二人の助け合いで昨年のえちご・くびき野で4分前に完走できていたので、二人でなら必ずという気持ちではいた。
また今回のサロマ湖に合わせて大会後『北海道新婚旅行』も兼ねている。そんなイベント続きの中しょっぱなからつまづいていたのでは、後半のテンションも上がりやしないだろうと、またまたプレッシャー!


前日の土曜日入りをして、友人が女満別に午後の到着という事で、華とドライブ!日差しがある所は結構暑く感じる、明日もこんな感じかな?天気予報では曇り。降水確率も40%。う~ん微妙・・・。
友人たちと合流し一路スタート地点の湧別町へ!途中から低く垂れこめた雲が空を覆う。会場に到着。『日中は晴れて暑かったのに、夕方からは肌寒いですよ!』とアシックス談。空を見上げるとさっきよりもドンヨリとした重い雲が立ちこめていた。明日もこんな感じなら絶好なんだけど・・・。
ウルトラマラソンになると、コンディションは完走率を左右する。個人個人好きな条件は様々・・・これなら安心と昨年一昨年も猛暑にやられた自分はホッと胸を撫で下ろした。


今年の宿は『悠林館』夕飯も豪勢で北海道を満喫できた!ケンさんのスポーツアロママッサージを受け、21時には眠りについた。


朝2時起床、2時半朝食のお弁当を食堂で頂く。
今年の仲間は、昨年サブ10を達成し9時間半を狙う門脇さん。
100kmは2回目(初は野辺山)距離に不安を持つもののフルはサブ3の野村君(ノム)。
そして昨年60kmでリタイア。今年はリベンジの祐子さん。
50kmには昨年富士登山の為に走り始めハーフ・30km・フルとステップアップして更なる距離に挑戦するほっすぃー!
そして練習不足を不安に抱えるHANA、サポーターケンさんである。
ノム・ほっすぃー・HANAと自分のチーム名は『兔虎BBQ』である。ここ1年で仲良くなった友人の集まりでバーべキューをやり、その仲間が寅年・卯年だからである。なんとも単純なチーム名だがお揃いのTシャツもバッチリ決めて走った。


スタート1時間前。4時に会場に到着!
北海道の東の果てだけあって外は明るい・・・だが予想通り曇り更に霧雨・・。気温は10℃くらいかな?
スタート地点では毎年恒例のご挨拶廻り。今回はHANAの紹介も含めてお客さんや友人と会話が弾む。ノムは不安そうに、ほっすぃーは50kmスタート前に応援に駆けつけてくれた。中間点での着替えを預ける前にトイレか?預けてからか?ちょっと時間の掛かる方がしたい・・・。「5分前になれば空くよ」とケンさん。兔虎メンバーは言われるがままギリギリにトイレへ駆け込みギリギリにスタートの列に雪崩れ込む。


スタイルは足下からサロマLSD・CW-Xパフォーマンスショートをインナーにパフォーマンスアップを着用。シャツはドライアイス!頭にはスマイリーバンダナ。ドライアイスの赤いTシャツとバンダナは兔虎のチームアイテムだ。スタートから濡れるのは避けたかったので、ビニールポンチョをまとった。


午前5時スタート!
霧雨の降る中、ノム・HANA・アート鈴木は揃ってスタートゲートを抜け100km先のゴールへ歩を進めた。


当初の予定はキロ6分でフルぐらいまで行ければ先が見えてくる。始めから5km35分で80kmで制限時間の20分前だ!6分で走れていれば貯金、貯金などと先の不安を机上の計算でかき消していく。スタートからの霧雨はしばらく続いたが、5km辺りから昇降状態。31’34”こんなもんだね。3人共同じペースでいい感じだ。ノムは元々のスピードがあるから先に行ってもいいよと勧めたが先に不安があるからと自重して走っている。一HANAは、なんか身体が重い・・・と珍しく早くから不調を訴える。まあ先は長いし徐々に調子は上がってくるだろうと心配はしていなかった。


10km1:01’57”(30’23”)雨もあがり安定したペースでレースは進んだ。雲は一向に晴れそうにないが、体温は上がりちょうど良い気象条件だ。10km過ぎには早くもトップ集団が折り返してくる。約2500人のランナー全員に会えるのはこの竜宮台の折り返しだけ。後半のワッカ原生花園ではサブ10ランナーには会えないのが僕達である。


仲間でトップは門脇さん。さすが気合いが入っているが、ちょっと早すぎやしないか?HANAの走り仲間の方々も笑顔ですれ違っていく。お客さんも多い。みんな早いなあ。ここでいつも僕はお仕事タイム!すれ違うお客さんや、知り合いランナーを激写!お店のPOP用にカメラを持参し、撮影するのが毎年の恒例だ。しかし、ここ2年僕のリタイアと共にこの写真たちが店に飾られる事はない・・・。そんなプレッシャーも感じつつ、竜宮台の折り返しを過ぎて15km1:33’30(31’33”)ここでトイレに行きたくなってきた(汗)いつもの事だが、大きい方なのでタイミングが重要!下手に待つようだと5分は確実に掛かる。目星を付けていた僕は女性が出てきたばかりのトイレを発見!300mくらい先から確認し、誰も入るなよ~!と念じて走った。ノム・HANAに別れを告げていざ!・・・3分後・・・。スッキリ!今回はおなかの調子もバッチリだ!20kmは2:06’38”(33’07”)勝負はこれからだ。前回前々回はこの後23km過ぎから右足の痛みが出てきて、歩きを混ぜながらの状態に・・・嫌な思い出が頭をよぎる。今回は右足をカバーしている分両足共に重たかったが、痛みは出ていなかった。


この不安の対策として今回初登場の秘密兵器はCW-Xのパフォーマンスショートタイツだ。股関節の安定と腰高を意識させてくれるショートタイツで今回はアンダーショーツとしてロングのCW-Xの下に履いた。帰宅ラン20kmで試走、かなり良いと確信、今回最も頼りにしているアイテムである。
この秘密兵器のおかげでこれなら行ける!と確信した。


25km2:36’36”(29’58”)過ぎにトイレ待ちの華と合流。ノムは先に行ったと言う。ここでは3人待ちのHANA、我慢できないからとストレッチしながら待つこと6分。まだまだ貯金があるから焦らず行こう。30kmは3:16’34”(39’57”)トイレ待ちもあったし、いいペースだ。エイドでしっかり補給もしてフルを迎えたい。まだまだ30km楽しんで行こう!


ここで事件発生。HANAが「なんだか眠い・・・単調なコースのせいか・・・先に行って・・」と急激にペースダウン。35km手前に来て1km8分ぐらいになってしまった。エイドまで先に行き待つものの500m位なのになかなか来ない。「大丈夫?低血糖かも?とりあえずフルまで行って様子を見よう。」とエイドで糖分の補給にアンパンを食べさえ35kmの国道へ向かった。


ここからはサロマ湖に来てやっと最初のアップダウンである。といっても丘のような感じ程度なのだが・・・。国道沿いは片側をランナーは一列になって走る。相当集団もバラけ始めている。所々にある商店街の前には地元のおばあちゃんたちが応援してくれている。その応援に答えながら40kmを通過。


やや上りの道、木々が両脇を埋める国道を進むと左に折れる・・・「月見が浜」だ。ここまで来てもHANAの調子は上がらない。時計に目をやることが多くなってきた。「8回目の完走がかかっているから先に行って」とHANA。「じゃあワッカで逢おう、ダメになっても行ける所まで頑張れよ!」と約束をし42.195km手前で前に出る。フルマラソンの通過は4:56’00”だ。50kmの6時間半、80kmの10時間の制限時間が頭をよぎる。まだまだ余裕はある。脚の状態もいい!ギリギリのペースで進んで、HANAを待とう。月見が浜から国道に戻り後ろを振り返ると300mぐらい見渡せるが、HANAの姿はそこには無かった・・・。

月見が浜から国道に戻り約3km進むと、サロマ湖では目立った山越えがある。上り下りを何度か繰り返し、エイドステーション緑館後がピークで60kmの手前まで続くアップダウンである。
45kmを通過しまず登りに差し掛かる。一昨年、非常に暑く給水のバケツは底をつきへたり込んだ場所を横目で見ながら通過し、再度身体の状態を確認しながら進む。大きな上り・下りを一つ越えると50km。北海道らしい長~い直線道路の先に上り坂が見え、その途中が50kmの関門だ。ここの制限時間は6時間30分、華も無事に通過できる距離だろう・・・。
この坂を越えればサロマ湖が見える!50kmという中間点を過ぎ丘の上からサロマ湖を見下ろせるビューポイントだが、今年は厚い雲のせいでサロマンブルーは望めなかった。
50km以降は1kmごとのキロ表示が出てくる。スタートからあると非常に邪魔な表示も後半になればペースを確かめる手段にはうってつけである。1km何分が大事になってくる後半にこそだ。(自分のように制限時間に迫られていない方にとっては邪魔かもしれないが・・・)


坂を下りるとエイドステーションがある。サロマ湖畔に面したにぎやかなエイドだ。ここから54kmの緑館が見える。あと3kmなのだが、これがまた長い。しばらく湖畔沿いを進みアップダウンを越えなくてはならない。緑館でしっかりとした休養を取りたかったので、ここは黒飴だけ拾って前に進んだ。


緑館到着前にお客様に遭遇。サロマ湖前にご来店してCW-Xのショート丈を購入していただいた方である。「調子はどうですか?」「少し足が重いけどまずまずかな。」こんな会話が繰り返された。「制限時間を考えたら6時間30分で出発しなければ、ギリギリになってしまいますよ。」これは自分自身に言った言葉でもあった。
緑間到着は6時間22分。荷物を受け取り、後半に備えて着ていた半袖の下にカッパのウインドバリアのロングスリーブを重ね、バンダナ(迷彩)を用意。足元のシューズとCW-Xは着替えずそのままのスタイルで臨んだ。やはりワッカの中はサロマ湖とオホーツク海に挟まれるので、風が冷たく感じる。ここ緑館では時間は11時22分とまだ日中で気温は暖かい状態だがあえて長袖を重ねた。今までの経験上ペースの落ちる後半は、体温の維持が難しくなる。サロマ湖に面するコースが多くなる分風も冷たく感じるので、必ず気象条件に関係なく長袖は用意すべきだ。


緑館に到着後着替えを済ませ、コースの後方を見やる。500m位の見渡せる上り坂の道である。ストレッチをしながら華を待つ。6時間40分で出発しよう。身体の調子からして1km7分でなら確実に走れる!華が回復してきていればもうすぐ緑館に着くはずなのだが・・・。トイレにも行き万全の体制だ。
しばらくすると祐子さんを発見!エイドステーションの中にいた。聞くところによると42.195kmでリタイアだったという。膝の故障もあったみたいだし、寒いのが苦手といっていたので、今日の気温は堪えただろう。
頼みの綱はケンさんである。35km地点で眠気を訴えていたのは知らせていたので、魔法のアロマグッズでHANAを回復させてくれている事に期待しよう!
僕は祐子さんに別れを告げ、緑館を後にした。すぐに急な上りが始まる。サロマ湖の最高地点だ。また緑館を振り返るが赤いTシャツのHANAの姿はやはり見えなかった。
この時間帯になると雨の降りそうなドンヨリ雲は無くなり、やや明るい状態になった。昨年は緑館を出発したのが、60km関門の35分前で6分ペースで爆走して何とか関門は抜けたが、以降まったく走れずに69kmでタイムオーバーとなった。そんな思いの中、ゆっくり行こうとしてもペースが上がる。着替えもしてリフレッシュできた事もあるし、今回は約20分休息したからだろう。
58kmを過ぎた頃近づいてくる車から「世界にひとつだけの花」が流れてきた!ケンさんだ!この曲はケンさんが結婚式の披露宴でお気に入りになり、サロマ湖での応援ソングにしていたのだ。そこには祐子さんも同乗し嬉しい報告をしてくれた。HANAが緑館を通過したというのだ。「すぐ2kmぐらい後ろにいるよ!追いつかれちゃうよ!」とケンさん。「ちゃんとした足取りで走れてるよ!」と祐子さん。
とりあえず、60kmまではそのまま行こう!ペースは6分半ぐらい、ちょっと力み過ぎな感じ。先はまだ長いイーブン、イーブンと抑えながら走った。


60km到着。2km後方にいるならば待とうか?10分くらい時計を見ながら待ってみたが来ない・・・。また歩いちゃっているのかな?先へ進もう。
60kmを過ぎ上り坂を上がると左折する。キムアネップ岬への入口だ。ここからは下ってサロマ湖畔へ。前方には先行するランナーの姿が見え、森の中へと消えていく。あそこまで行くのか・・・先が見えると精神的に苦しくなる。北海道の雄大さを感じさせてくれるキムアネップは毎年一番苦しい思い出の場所だ。
風が少し冷たく感じ、見渡せるランナーの姿・エイドステーションがとても遠くに見え、なかなか着かない。60kmを走ってきた身体に精神力の問われる場所となる。今年もペタペタ省エネ走法で走るものの、ここでも歩きが入ってしまった。
キムアネップを過ぎ、サロマ湖沿いの林の中へ入る。約2km続くこの林は行けども、行けども同じような景色で、かなり参ってしまう。今年はゆっくりとしたペースで刻んでいるためかさほど辛くはなかった。雑誌『クリール』の取材の方が走りながら写真を撮っている。自分はこの記者の方とほぼ同じペースで進んでいたので、60km付近で走っている姿を撮られた、というか映っていた。(『クリール9月号参照』)
林を抜けると67kmサロマ湖ユースホステルだ。もう5年くらい前だろうか、サロマ湖ツアーを安く行くためにこのユースに泊まった事がある。4人の相部屋でベッドの場所は早い者勝ち。午後の到着だった自分は、案の定2段ベッドの上で翌日のレース後は大変苦労した思い出がある。ユースの前には応援に出てくれており元気をもらった。
またまたケンさん・祐子さん応援団の車が前からやってきた。門脇さんリタイアの報告を聞き、びっくりした。さすがに前半飛ばし過ぎかな?
後方を見ると赤いウエアのランナーが・・・。HANAかな?目を凝らしてもハッキリとは見えない。とりあえず70km辺りで合流できればいいだろう。ペースを守りつつ進む。そして大橋に掛かる。ここは昨年『時間制限の為ゼッケンをはずしてください。』と言われた場所だ。『70kmまで走って良いですか?』と了解を得て結局収容バスの居た69kmで拾われてしまったのだが・・・。またまたそんなリタイアの悔しさが込み上げ、今年はいけるぞと自分に言い聞かした。
しばらく行くと50kmランナーとの合流地点、さらに私設エイド『白帆』がある。ここは毎年評判のエイドステーションで暑い時には冷たいおしぼりと冷たいお茶が、今年のように寒い時には暖かいおしぼりと熱~いお茶が出る。頂いたおしぼりで顔を拭い、首の汗を拭く。50km出場のほっすぃーにも会えるかと思っていたが、時間的に見て先に進んでいるようだった。


70kmの制限時間は8時間45分だ。ギリギリに通過するとなると80kmの関門まで1時間15分しかない、キロ8分では間に合わないのだ。少しでも貯金が欲しい。自分は8時間40分で通過。貯金が5分できた。HANAはすぐ来るだろうか?70kmを過ぎるとすぐに左折。ここから『鶴雅リゾート』まで約4km、長い、長い直線道路である。頭の中では80kmの関門をいかにギリギリで通過できるかを計算中!
「えーと鶴雅が74km手前だから、6kmを8分で48分。74kmまでも少しあるし・・・ってことは9時間10分には出ないとダメか?いや、HANAを待って、9分ペースでしか走れなかったら間に合わない。そうだな、9時間5分まで待とう。」文系出身の自分だが、サロマ湖と100kmの計算についてはバッチリだ!完走タイムが毎年12時間50分台ということからも伺える(笑)。


鶴雅には待望のおしるこが待っている。この寒さから少しでも回復できるように2杯は食べたいかな?後半の為にもね。しかし毎度の事ながら、この直線道路はなかなか終わらない。見えているのに近づかない、足が進まず歩く人も多い。あと2kmでおしるこだ、もうすぐおしるこ!といった看板が余計に距離を感じさせる。
そしてやっと到着!時間は8時間59分だった。待てるのはあと6分か。おしるこ1杯目を食べながら、ストレッチ後方をまた確認。赤いシャツは見えない。おしるこの他にはコーンスープなどもあり、身体を暖めてくれる。テント脇にはイスが用意され、足を大きく投げ出して身体を反り返している人や、芝生部分に寝転がりストレッチ姿があった。しかし、諦めている方は少なく聞こえてくるのは「大丈夫、間に合う間にあう、余裕だよ。キロ7分で走ればなんてことないよ。」という声。『7分で走れるならもっと前にいてもいいんじゃないの?』なんて思いながら、2杯目のおしるこをいただく。時間は経過し、9時間3分。やはり300mくらい先まで見ても赤いTシャツは見えない。『関門で捕まっちゃったかな?仕方ない、行くか。』と決心しおしるこをゴミ箱へ。もう一度振り返るとそこにHANAの姿が!かなり辛そうな顔でエイドへと進んできた。びっくりしておしるこを取り、HANAの所へ。
『おーよく来たね!ダメかと思っていたよ!しかも兎虎Tシャツじゃないし!』緑館で着替えていた華はブルーのロングスリーブシャツに着替えていたのだ。そりゃ見えないはずだよ。話によると60km付近から同世代の女性に声を掛けられ、『まだ間に合うから、頑張ろう!』と引っ張ってもらいここまで来られたのだと言う。60kmが5分前、70kmの関門も3分前と、ここまでかなりギリギリで来たのだ。疲れているHANAに確実に80kmの関門まで行け
るから、ここでしっかりエネルギー補給をして頑張ろうとおしるこを食べさせ、予定の9時間5分を少し回ったところで鶴雅リゾートを出発した。


鶴雅から少し行くと、サイクリングロードが始まる。ややアップダウンのあるコースになっていて、サロマ湖を挟み反対側にワッカ原生花園が望める。ワッカに入ったランナーと帰って来るランナーの姿が見えるのだけれど、入口に向かっている自分達にとってはどこまで行けば入口なのか、ちょっと参ってしまうので、なるべく見ない様に歩を進めた。75kmの通過は9時間20分。
10時間まで、あと40分。ヨシ!平気だ!でも立ち止まっては間に合わないという関門ギリギリの走りをしていたHANAは、不安を抱えていたからであろう、ペースを落とす事はなかった。二人無言で走り続ける。
やっと自分には見覚えのある開けた風景が広がった。まもなくワッカの入口である。遠くに左折するランナーの姿が見えてきた。さらにワッカからゴールを目指すランナーもいる。『この人達はサブ10ランナーだ。速いなあ。』と感心するも、時計を見れば9時間48分だ。80km手前にあるここのエイドステーションには、正直ゆっくりと寄りたかったけども寄れなかった・・・。先を急ぐHANAにスポーツドリンクを手渡す為に、ちょっと離れる。ワッカの中は往復コースなので95km・85km・90kmの順番で3ケ所のエイドがあり、往路でも復路のエイドに立ち寄る事は可能だ。この先80kmの関門通過後すぐにエイドはないので、少しでも水分補給は重要だと感じていた。
そしてキーポイントとなる80km地点。ワッカの入口からは約1kmの上りになる。ここからランナーは結構団子状態だ!なんとか厳しい関門を越えて念願のゴールまで辿り着きたい気持ちが80km走ってきた身体を走らせるのだろう、ペースが上がる。自分もHANAに遅れを取りながらも紙コップを持ちつつ、追い掛ける。80km手前で追い付き、やっとの思いで80kmの通過。時間は9時間58分だ。『ここからはキロ9分でも間に合うよ。少し歩こう。』ストレッチを少ししてからワッカが見渡せる上り坂の上まで歩きと走りを交ぜながら進む。この場所からの景色は自分の好きな所である。ここで記念撮影。すると後ろのランナーが『撮りましょうか?アートスポーツのお兄さんですよね?いつも利用していますよ。ハイチーズ!』パシャッ!二人とも元気そうな様子です。良い笑顔です。


左側サロマ湖右側がオホーツク海である。毎年いろいろな姿を見せてくれるワッカ原生花園。初めて参加した93年は大雨で、ワッカ内は水たまりばかりでシューズはグチャグチャ、風も冷たく完走率も低かった。今年気温は低いものの、風があまり強くなかったので寒さはさほど辛くなかった。
ワッカの中は小刻みなアップダウンが続く、折り返して来るランナーに会えるので、声を掛け合い、元気を貰い、与え合い頑張れる。しかし、80km関門を2分前とギリギリだったので、後続のランナーは少ない・・・。帰って来るランナーの中にはお客さんが多く、途中で会った方々には『結婚したんだって!おめでとう!』など、思わず照れてしまう声援を戴いた。また、『間に合ったんだ!ゴールで待っているよ!奥さん置いて行くなよ。』と言った声もあった。嬉しい限りである。85km。


隣のHANAはやはりペースは上がらないものの確実に歩を進めている。でも常に話し掛けていないと蛇行してしまうので、自分はすれ違うランナーで歩いてしまっている方に『ガンバです!』とこちらから声をかけていった。顔は苦しいそうな表情はせずに、もちろん笑顔で!(営業スマイルか?)普通は帰って来るランナーが、『頑張って、もうすぐ折り返しだよ。』とか『諦めないで!』といった声を掛けるのが一般的だが、HANAの集中力を途切れさせない為に頑張った。見ず知らずの方も声を掛ければ手を挙げて答えてくれるし、『そっちも頑張って!』と答えてくれた。
しばらくワッカを進むと、仲間のランナーが見えてきた。
まず初めに会ったのは、50km参加の美和ちゃんだ。速いよ!フルマラソンでも力をつけている美和ちゃんは結局50km一般女子の部で8位に入っていた。
次に見えたのは、兎虎BBQの赤いTシャツである。見えてきたのはノムだ。25km手前で離れて以来7時間振りぐらいになるだろうか?ここでも写真を1枚、パシャ。


今大会2回目の100kmとなるノムは、12時間前後で通り過ぎた。さすがに疲労感が見える。しかし、笑顔で声を掛け合い『ほっすぃーは?』と聞くと、『もう少し後ろだよ。ゴールで待っているよ!』とすれ違った。ほっすぃーも確実にゴールを目指しているようで安心した。兎虎BBQは皆素晴らしい快走である。『なんとしても全員完走してやるぞ』とまた再び気合いが入った。

そして、細くアップダウンの続くワッカが見渡せる丘の上から、ほっすぃーの姿が見えた。兎虎のアイテムニコチャンバンダナをネックウォーマーにして寒さを凌いでいた。元気そうである。HANAの事を心配してくれ、それにHANAも答える。


見えてきたのは、90kmの関門だ。ここの制限は11時間30分。がしかし、自分達はまだ折り返しを過ぎていない。そう、ここは折り返したランナーにとっての関門だ。折り返しまであと1.5kmってことでここは87kmくらいかぁ。今の時間は11時間3分。あと27分を3km。う~んピッタシ!この足取りならば大丈夫。すれ違うランナーからは、『90km時間ギリギリだぞ!ここまで来てもったいないぞ!』と激が飛ぶ。『はーい!必ず行きます!』と答え折り返しを目指す。


『サロマ湖はオホーツク海と繋がっている湖なんだよ。その繋がっている部分の橋を渡ると折り返しだからね。折り返したらあとは、ゴールだよ!頑張るぞ!』とHANAを励まし、折り返し地点で記念撮影。


さあここからが正念場。今来た道を折り返すのは、気分的にもなんと面倒な事だろう。そしてこの折り返しを目指すランナーも極端に少なくなる。足を大きく引きずる男性ランナー。『頑張って!』声援を贈る。痛い足を前に進めていく表情は決して諦めてはいない眼差しだった。また50kmの女性ランナーもいる。しかし彼女は自分の脚が動かない事にだろうか?また90kmの関門に間に合わないという悔しさからだろうか?目に涙を溜めながら一歩一歩進んでいた。

最後尾車を見送り、いよいよ90kmの関門へ!
あと200m付近まで差し掛かると、関門地点では役員の方の『あと4分!』の声が聞こえてきた。『よしクリアだ!少し歩こう。』ここまで関門のストレスを感じ続けながら走るのは、並大抵の事ではない。HANAに一時の休息を与え、最後の10kmに望みたかった。そして90kmを11時間27分で通過。エイドステーションに立ち寄る。


次々に90kmに駆け込んで来るランナー。そのランナーの中に諦めている人は一人もいなかった。表情に安堵感が溢れる人もいる。
十分にストレッチを行い走り出す。出足はびっこを引くような状態だが、リズムを刻めれば自然と脚は進むものである。上り坂は歩いて、下りは走る。下りの得意なHANAなので、その走りの戦法をとった。遠くにワッカネイチャーセンターが小さく見える。ワッカの出口はそこよりもまだまだ先である。往路の85kmのエイドステーションが見えてきた。サロマ湖のエイドステーションは地元高校生がボランティアとして頑張ってくれている。走っているランナーにこの気温は調度良いが、ジッとしている人には寒い気温だ。そんな中でも、大きな声を出して応援してくれる。『元気になる水ですよ~!頑張って下さい!』すごく元気になる応援だ。元気になる水を受け取り、残り約8km先のゴールを目指す。
坂道で抜き、抜かれ走るランナーの顔ぶれは同じになってきた。その中で一番騒がしいのは恐らく自分だっただろう・・・。HANAに声を掛け『1.2.1.2頑張れ!1.2』と繰り返していたからだ。元気がなかったら脚が止まってしまいそうだったので、常に気合いを入れていた。(自分に対しても)
そして見えてきたのは、ワッカの入口で写真を撮って貰った丘である。ここからは95kmのエイドステーションのテント、そして帰りはかなりの上り坂になる丘、前を走るランナーの姿である。
ここで前方に赤いTシャツを発見!ほっすぃーだ。まだ500mくらいは離れているだろうか?さすがに4月の小笠掛川で初のフルマラソンを4時間52分で完走したばかり。初の50km、この気温とコースには苦労しているのだろう。見る見る内に距離が縮んで来るので、ちょっと心配していた。後半ペースダウンする場合は低血糖でフラフラになることが多いのだ。しっかりと食べていないとそういった症状があらわれる。だが、エイドに立ち寄ったりもしていたのでなかなか追い付かない。HANAにも『ほっすいーが前にいるよ!追い付くよ!』と目標を作る事で、回復を期待したがダメだった。


95kmを 12時間12分で通過。少し小雨が降ってきた。
そしてワッカも終盤を迎え、大きな上り坂。来年はどんな表情を見せてくれるだろうか?厳しい暑さか?寒さか?ワッカ原生花園。また来年。
ワッカを後にして、あと4kmの表示が!ここからは96・97と増えていくのではなく、ゴールまでのカウントダウンが始まる。不思議と気持ちに余裕が生まれるからであろうか、ペースが上がる。とりあえずほっすぃーに追い付く為に一歩先を走る。
見渡しの良い所で40m先の彼女に声を掛ける。『ほっすぃー!』の声に気付き、振り返る。ビックリした表情でペースをあげるほっすぃー!また距離が開いた。あと3kmの表示を通り、4分前に通過した80kmの関門地点を過ぎる。『ほらもうすぐだよ。HANA、頑張れ!』ここからワッカの出口までは下り坂。ペースは多少上がってきたようだ。坂を下り切ると姿が見えたのはなんとケンさんである。毎度ギリギリの自分であるが、やはり心配だったのだろう。ラスト2km手前まで応援に来てくれたのだ。
ワッカを完全に離れ、道に出て左折する。そしてあと2kmの看板。
長かった100kmのサロマ湖もいよいよ終わりが近づいてきた。この場所を通る時いつも感じる事があった。それをHANAに伝えた。
『ラスト2km。ここからは98km走ってきた人にしか味わえない場所なのだ。この2kmは最高の笑顔で応援に答えて、この充実感を身体全部で満喫して走ろう!』
ケンさんの姿が見えてから、俄然HANAの調子が良くなってきた。『なんだ?今まで自分が何を言っても、眠そうだったのに・・・』そう思わず口にしてしまうぐらいの変わり様だった!現に95kmまで45分掛かっていたラップタイムはラスト5km40分だったのだ。


ラスト2kmはほぼ一直線。ゴールは常呂町民センターである。ほっすぃーは約100m先を先行する。ケンさんは自分達と共に平走。『また制限時間ギリギリ狙ってるんじゃないの?』とケンさん。『うーん確かにそれはおいしいんだけど・・・なぁ。狙わないとできないですよ。トイレでも行こうかな?(笑)』


そうこう言っているうちにあと1kmの表示が見えてきた。この辺りでは前後のランナーの位置取りを気にしてしまう。ラスト1kmになるとガーッとペースを上げて追い込んで来るランナーもいて、ビックリすることがある。また前後にたくさんのランナーがいるとゴール前足踏み状態で、ゴールテープを張り直すのを待ったりするのだ。それを避ける為に、ゴールシーンの写真をきれいに撮ってもらう為に、うまい位置取りを心掛けてしまうのは自分だけだろうか?前のランナーと距離が詰まったので、前に出て後続と一定の距離を保つ。なんて余裕をかましているのは自分だけ?
今回もベストポジションをキープし、交通規制されたランナーだけの、100kmのゴールへ続く直線道路に入る。前方に見える林がゴールの常呂町民センターだ。段々と音楽や歓声・アナウンスが大きく聞こえて来る。
毎年楽しみにしているのは、ゴール直前に知り合いランナーの彩の国さん(ハンドルネーム)が、ゴールへ向かうランナーの名前を呼び、万歳の掛け声をしてくれるのだ。8時間半前後でゴールする彩の国さんは今年も4時間後にゴールするかもわからない自分達を待っていてくれたのだ。ましてや、ここ2年間はリタイアでまた今年もダメだったかな?と思わせていたに違いない。自分は『○○さーん!(本名)帰ってきましたよ!』と声を掛け、『鈴木健司、バンザイ!』と激励して戴いた。
そして最後の曲り角を右折し、正面にはゴールが!
両脇にはランナーを拍手で迎えてくれる応援の方々が、知り合いのランナーとハイタッチと交わし、HANAと手を取り両手を挙げてゴール!


タイムは12時間56分00秒
自分自身サロマ湖8回目の完走。100kmは通算11回目の完走となった。
『サロマ湖8回/四万十川1回/えちご・くびき野1回/秋田1回(時間外)』
HANAはえちご・くびき野後2回目の完走&自己ベスト更新だ。


ゴール後迎えてくれたのは、大勢の仲間達。ノムは11時間51分で2回目の完走。『やっぱり100kmは自分の距離ではないよ(汗)』と苦笑い。ほっすぃーは6時間55分。ラブドリの3人は全員自己ベスト更新と素晴らしい結果となった。
完走後は完走メダルを頂けるはずなのだが、数が足りないという事で後日発送となってしまった・・・。ゴール後はたくさんの知人に激励され、お祝の言葉も戴いた。本当に華と一緒に完走できて良かった。2人とも練習不足で、不安な状態。更に完走しなくてはというプレッシャーを感じながら走る100kmは本当に長かった。
何度走ってもウルトラマラソンは面白いものである。以前からHANAはウルトラのアットホームな感じが好きだと言っていた。今回はより実感したと思う。60km付近から声を掛けてくれた女性ランナーに励まされなければ、絶対に諦めていたという。ワッカの中でも多くの人激励があってこそ、走れたと思う。
またウルトラは自分のリズムでないと、人に合わせているといくら遅いペースでも辛く、脚は動かなくなってしまう。今回もフルマラソンの地点で自分が先に行かず、華にペースを合わせていたら自分が逆に潰れてしまっていただろう。自分が行ける確実なペースで前を走り、そこに追い付いてきたという形だったので一緒にゴールできたと思っている。

自分はゴール後友人との歓談で盛り上がっていたが、着替えを終え体育館で食事をしようとした時に、奴がやってきた!力石モードである。
力石モードとは・・・ウルトラ完走後にやってくる身体の症状で、顔から段々と血の気が引き、真っ青になってしまう。また寒気と眠気と気分が悪くなってしまうのだ。
当然完走パーティーには参加できず。疲れた身体をお風呂で休めたい気持ちで一杯だった。この状態になるのを自分は分かっているのだが、どうしても止められない。完走後の安心感なのか?身体を痛めつけている結果なのか?気持ち悪いのが過ぎれば回復の傾向に向かってくれるので、宿舎までの車中はみんなに迷惑を掛けてしまったが、夕飯には回復した(汗)。


夕食時から『今夜は完走パーティーだ!夜10時頃から飲むぞ~!』と威勢の良かった面々だが・・・結局夜9時にはみんな夢の中だった・・・。


翌日は、お土産屋に寄りノムは大きいホタテを購入!1枚¥150でかなり大型だ。送料はもったいないので、持参で帰る。すごい荷物なのに大変だ。その後、網走監獄は入口で引き返し、網走監獄ラーメンを食べ、みんなと女満別空港まで行き見送り。
こちらはまたレンタカーを借りて知床方面へ再出発!
今年のサロマ湖100kmマラソンを振り返ると、大好きな仲間と参加でき兎虎BBQメンバー全員完走、良い思い出になった。また来年もこの仲間で来て楽しく走りたいと思った。
ありがとうサロマ湖。来年はもう少し美しい姿を見せて下さい。また逢おう…。



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