テーマ:最近観た映画。(38637)
カテゴリ:その他の映画
実は私、ラグビーをやってまして、南アで開催された第3回ラグビーワールドカップもリアルタイムで観ているんですよね。アパルトヘイト時代は南アのほとんどすべてのスポーツが国際交流が禁止されていて、でも禁止される前はオールブラックス(NZ代表)と世界一を競うほどの実力があったんですよ。そのため対外試合が禁じられていたスプリングボクスは『幻の』世界最強チームといわれ続けてきました。 そしてアパルトヘイトが廃止されてようやくスプリングボクスは国際舞台に復帰できたんですが、南アのラグビーはワールドカップが開催されるようになってからのラグビーの進化についていけてなかったんですね。それがワールドカップ前の度重なるテストマッチ(国代表同士の対戦)での敗戦という結果になります。 そんなスプリングボクスが、フランソワ・ピナールというこれまた類まれなリーダーシップを持ったキャプテンを抱いて自国開催のワールドカップを戦ったわけで。 後半はほとんどスプリングボクスの話になってくので、ラグビーに興味のない人が果たしてどの程度この映画を楽しめるのか?私には判断できません。 映画の前半では、ネルソン・マンデラ、通称『マディバ』の何とかこの国を一つにしよう、と心を砕く人間としての圧倒的な度量に感心するばかりです。それまでは国民のごく一部の白人が支配階層として圧倒的な力を持っていて、マンデラ自信も長年にわたり投獄されていたんだけれど、南アを導くためには黒人と白人の心を一つにしなければいけない、ということで、大統領府の職員はおろか、自分のSPさえも黒人と白人の混合チームにする。国のために寝る間も惜しんで執務を行いながら、身近なSPの好物を聞き出して、外遊先からのお土産にしたりする人心掌握の名人ですな。 白人支配の象徴ともいうべき南ア代表『スプリングボクス』の愛称を変えようとスポーツ評議会が決めたときに、マンデラは白人層の離反を懸念して『スプリングボクス』を残すために説いていく。自ら白人に虐げられていながら、仕返しをするのではなく国を一つにするために白人たちにもしっかりと目を配る。 これまではラグビーなど目もくれなかったマンデラだが、自国開催のワールドカップが国を一つにするいい機会だと考えた彼は、イングランドとのテストマッチでスタジアムへ行き、アパルトヘイト時代の国旗が振られたり白人のブーイングが鳴る中でグランドへ降りて挨拶し、観客席にまで入っていく。その試合はスプリングボクスの大敗で終わったが、キャプテンのピナールを大統領府に呼んで、一緒にお茶を飲む。あからさまにワールドカップで優勝しろとは言わないけれど、何か国民の誇りがほしいと話すマンデラ。 マンデラの熱意がピナールを動かし、ピナールの熱意がチーム全体に広がる。目の前の試合だけを見ていた代表選手たちが、ワールドカップ前に黒人地区でラグビー教室を開催したりして、唯一の黒人代表チェスターは子供たちに大人気だ。 いよいよ大会が始まる。マンデラ大統領は激務の過労で倒れるが、スプリングボクスの結果が気になって仕方がない。一方スプリングボクスは、初戦で競合ワラビーズ(オーストラリア代表)を下すと予選プールを一位で通過して、マンデラ大統領は決勝戦当日の予定を空けておく。スプリングボクスは試合の合間にマンデラ大統領が収監されていたロベン島の刑務所などを見てリラックスしつつも決勝トーナメントを順当に勝ちあがり、準決勝では大雨の中フランス代表に辛勝する。 決勝の相手は怪物ジョナ・ロムーが大活躍しているオールブラックス。予選プールでジャパンに145-17で大勝という字幕がでたときには会場中で失笑がおきてました。さて決勝戦、予定を空けていたマンデラ大統領はスプリングボクスのジャージを着てキャップをかぶってスタジアムに入り、両軍選手と握手を交わして激励する。 白熱の決勝戦だけど、当然試合はたぶんNZかどこかのクラブチームがロケでやったのでしょう、ロムーの迫力は出ていたし、激しくタックルしていたりしたけれど、やっぱり人が違うからなあ、違和感ありました。接近戦では実際の試合のビデオは使えないだろうけど、キックシーンなんかはやっぱり実際の試合を使ってもらいたかったなあ。観衆の盛り上がりから、観客席は実写なのかもしれません。冒頭のマンデラの釈放と大統領就任演説が実写映像だったように。 試合は両軍譲らぬ熱戦で、ワールドカップ史上初の延長戦になり、最後はドロップゴールで劇的な南アの優勝。試合中は南ア全体がテレビやラジオに夢中になって、警備車のカーラジオをまた聞きしていた少年は、最初はばれないふりをして聞いていたんだけど、だんだん近づいていって、勝った瞬間には警備員にだっこされるまでになる過程が面白かった。 最初にも書いたけど、ちょっと後半のラグビーシーンが長いから、ラグビーに興味のない人がどういう感想を持つのかちょっと心配。でもエンドロールではしっかりと、本物の選手たちの写真が映し出されてちょっと感激しました。マンデラを演じたモーガン・フリーマンの英語がゆっくりで簡単な単語を使っていて、聞き取れたのがちょっと嬉しかったかな。 7人制ラグビーが2016年のリオでオリンピック競技になるし、2019年のラグビーワールドカップは日本開催だし、この映画を観てラグビーに興味を示す人が少しでも増えればいいな。後は『スクール・ウォーズ』を毎年再放送するとか。 公式サイトはこちら。 1/20 東京九段会館 シネスイッチ銀座で公開中! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.01.24 23:24:20
[その他の映画] カテゴリの最新記事
|
|