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カテゴリ:観照
それでは再び、復元回廊の入口に戻り、右側(内周側)の壁画(誓願図)を眺めて行きましょう。 左側 右側 これは「主題1」です。 中央の仏は左下の菩薩に右手をさしのべているようなしぐさで描かれています。 ご覧の通り、片足ずつを蓮華座に乗せた立像として描かれています。私には左手が肘掛けに腕を乗せたような感じで描かれているのがなぜなのかちょっと不思議です。椅坐像で肘掛けに腕を置いているならこの左手は違和感がないのですが・・・・・。 左側から斜めに撮ると、さしのべられた右腕を奇妙に長く感じるのがおもしろい。 右腕の肘から先が胸部につながり1つに見えるからでしょう。 真っ正面から仏の全身を撮れれば、腕の長さのバランスはとれていることと思います。 主題1という表記は、この15窟の誓願図全体にストーリーがあると考えるならば、最初の場面ということになります。少し調べてみましたが、番号を振られた主題がどういう意味を持ち、どういう場面が描かれているのかについての情報は「主題11」以外見つけることができませんでした。 左側 右側 主題1の左側に復元された「主題4」です。 中央の仏は、その描き方から主題1の仏と同じと推測します。 これは最初の概説でご紹介した画像です。回廊が90度折れ曲がる内周側壁面の角の部分になります。上掲主題4の左側とリンクしているのがお解りいただけるでしょう。 左側 右側 こちらは「主題5」です。内周側の壁画としては最後の壁画になります。この先は回廊の出口です。 この壁画には、前回のご紹介とはまた違った地域からやって来て仏に供物を捧げ布施をする人々が描かれています。それは、人々が異なる帽子を被り、異なるタイプの服装であることからの推測です。シルクロードにあるトルファンには様々な人々が交流していたことでしょう。馬や駱駝も描かれています。 左側で仏の前に臨み布施する人々。仏は施無畏印、与願印の印相を示して人々を迎えています。 これをまとめながら1つ気づいたことがあります。日本で見る彫像や図像の仏(如来)は基本的に1枚の衣をまとうだけで、装飾品を身につけることはありません。大日如来は例外的に胸に瓔珞(ネックレス)、腕に臂釧や腕釧(ブレスレット)という装飾品を身にまとっています。 一方、このベゼクリク石窟の壁画に描かれた仏はいずれも大変長い瓔珞を身につけた姿で描かれています。 復元回廊模式図 復元回廊における誓願図の位置関係を改めてご確認ください。 最後に、過去世の仏と前世の釈尊に関連して調べていて、学んだことを少し覚書として記します。 *ゴーダマブッダすなわち釈迦牟尼仏の現れる前に6人の仏が現れた。併せて7人を「過去七仏」とされる。釈尊の伝えた教え(法)は普遍的なものであり、釈尊以前のはるか昔から、これら諸仏によって順次説き継がれてきたものである。こういう過去仏信仰がある。 この七仏が共通に伝えた戒が「七仏通戒偈」である。つまり、「諸悪莫作、衆善奉行、自浄其意、是諸仏教」の一偈である。 (資料1) *過去世の仏・燃灯仏に関わる「燃灯仏授記」は『ブツダヴァンサ』という過去仏の系譜を説くパーリ小部にある韻文聖典の中に収載されている。(資料2) *釈尊の前世が語られている。「ジャータカ」と称され、釈尊が「前世において菩薩であったとき、生きとし生けるものを救ったという善行を集めた物語」である。「パーリ語聖典にはジャータカとして547の物語が収められている」という。日本では「本生話」「本生譚」と訳され、漢訳経典には『本生経』がある。ジャータカは、「その形式は、現在世物語・過去世物語・結び、という3要素から成り立っている」という。(資料1) たとえば、国宝の玉虫厨子の側面に描かれている薩埵(さった)太子の捨身飼虎図はジャータカに出てくる捨身布施の物語である。 *前世における生という考え方は、今生・後生とあわせて「輪廻思想」にもとづくものである。(資料1) これで終わります。ご覧いただきありがとうございます。 参照資料 1)『岩波仏教辞典 第二版』 中村・福永・田村・今野・末木 編集 岩波書店 2)「燃灯仏授記と『ブッダヴァンサ』の成立」 勝本華連著 印度學佛教学研究(2010.3) 補遺 燃燈仏授記図浮彫 :「MIHO MUSEUM」 燃燈仏授記図浮彫 2 :「MIHO MUSEUM」 燃燈佛 :「Wikidharma」 仏種姓経 :「ウィキペディア」 ジャータカ :ウィキペディア ジャータカ物語 :「日本テーラワーダ仏教協会」 玉虫厨子 捨身飼虎図 :「アーサーバイオ株式会社」 ネットに情報を掲載された皆様に感謝! (情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。 その点、ご寛恕ください。) 観照 京都・下京 龍谷大学龍谷ミュージアム ベゼクリク石窟の回廊壁画復元 -1 へ 観照 京都・下京 龍谷大学龍谷ミュージアム ベゼクリク石窟の回廊壁画復元 -2 へ こちらもご覧いただけるとうれしいです。 観照 京都・下京 龍谷大学龍谷ミュージアム 特別展「アジアの女神たち」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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