父のくれた思い出私は、幼いころとてもいたずらっこだった。 りんごをむこうとして、包丁で、 手を切ったときは、随分と叱られた。 みつかることが、怖くて家中を逃げ回ったのに、 ポタポタと血が落ちて、居場所をすぐにつきとめられた。 国道に面した家の向かいにある、駄菓子やへいき、 20円のおもちゃの時計や、 60円のパズルを眺めるのが好きだった。 いつか、お金をためて、買うことを夢見ていた。 ある日、いつものように、お菓子を買い、 道を渡って帰ろうとした時、 わたしは、車にひかれそうになった。 びっくりして、こけて、立ち上がろうとした時、 目の前にタイヤがあったのだ。 これは、叱られると思った。 いつもより、数段悪いことをしでかしたのだから、 何が起こるのか考えるだけで足が振るえ、 家のガレージに隠れて、じっとしていた。 しかし、驚いたことに、 私をみつけても父は、一言も怒らない。 それどころか、4歳の私を抱え上げ、 ぎゅっと抱きしめるだけで、何も言わない。 何故、その時叱られなかったのか?! あんなに、心配をかけたのに・・・ そのなぞは、ずっと私の心の奥に残っていた。 そのなぞが解けたのは、 私が子供を産んで、数年たった頃。 もし自分の子供が、交通事故にあったなら・・・ そう考えたら、すぐに謎は解けた。 それが、数年前に亡くなった父の一番の思い出かな・・・。 |