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悩殺ジャンキ- (読書・コミック)楽天ブログ 【ケータイで見る】 【ログイン】
箱庭のお茶会
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悩殺ジャンキ-


月とネコ・・・悩殺ジャンキ-







「は-い、いいね~!ウミちゃん」





           パシャ パシャッ






シャッターの刻む音が、オレを引きずり込む。





「じゃあ次 目線外して──そう、いいよ-!」




流行りの洋服は、戦闘服



スタジオは戦場



笑顔とポ-ジングは、勝ち抜くための戦術だ



梶原海から



ウミへ



オレの血も、心んなかも戦闘態勢に変化する。





「お疲れ様でしたあ!」



笑顔全開。



目の前にいるスタッフを骨抜きに
するくらい、朝メシ前だ。



「お疲れ-。最高だったよ!ウミちゃんっ」

「ホントですかあ!?完成が楽しみですっ」


「うわぁ、こんな時間かぁ・・・
ウミちゃん、気をつけて帰ってね」


窓の外を見ると、うっすら淡い月が上がってる。
マジ、中学生が働く時間じゃねぇって。





「さて帰るか・・・ん?」





            ザワ・・・ッ





隣のスタジオもまだ撮影中か。
ご苦労サマなこって。




「ナカ!」


「!」


「手だよ、手!!お前は有り難みのない
千住観音かっ そんなポ-ジングじゃ、
全然服が見えねぇだろうが!」


「ははは、はいっ」




(───ナカ!?)



ドタタタッと駆け寄って、扉から中を
覗きこむ。したら、ライトに照らされて
春服を着たナカが見えた。


スタジオ入口に掛けられている
ホワイトボ-ドを見ると・・・
女性読者層向け雑誌の、春物の撮影だ。


ついでに書かれているブランドを見て、
ん?と首を捻る。新ブランドか・・・




(・・これ、ナカには大人過ぎねぇか?)




いくら背があったって、所詮は中学生だ。
下手したら、浮いてチグハグに成り兼ねない。


真っ黒で長い髪は結われて、尻尾みたいなそれは
アイツの妙な動きに合わせて ひょんっと揺れた。



「・・・相変わらず挙動不審だな、オイ」



シャッタ-を切る度に、よくそれだけ
ヘンなポ-ズを思い付くなと関心するくらい、
目付きの悪いバカモデルが動く。


つか、あいつは読者を笑わせてぇんだろうか。




「ナカ!創作ダンスの発表会じゃねぇぞ!!」



(───あ・・・)




オレの目に飛び込んで来たのは、直球な言動と
仕事にむちゃくちゃ厳しい事で有名なカメラマン。


まさか、ナカを撮影してるとは・・・。



よっぽとの素材でないと、新人を
撮影するような仕事は受けない人だ。

キャピキャピした 仕事と呼べんモデルの撮影をして、
そいつの練習相手なんぞするつもりはない と
大手エ-ジェンシ-相手に依頼書をつき返したという
武勇伝は あちこちで語り種になってる。



「ナカッ 下を向くな!泣くなら止めるか!?」


「ややや、やです!止めません!!」


真っ直ぐに、ナカがカメラマンを見据えた。


怒鳴られてなじられて泣かされても、それでも
撮られたいと思っているモデルは多くいる───
そいつにとって、最高の物を引き出してくれるから。


オレも過去に組んだ事があるし、それは確かに
オレのモデルとしてのキャリアに プラスに働いた。



「ナカ!お前は犯罪者か!?
警察のブラックリストかよ!」

「はははいっ」


「愉快痛快お笑い図鑑じゃねぇんだ、笑わせんな!
読者が本 閉じちまうだろうが!!掲載するだけで
売り上げ下げるモデルなんぞ いらね-んだからな!」


「はいいぃっ」




「うわ-・・・ナカちゃんやられてるね~」


隅で様子を見ていたスタッフからも、
憐れみと同情の視線が飛び交う。


ここから脚光を浴びる奴もいりゃ、泣いて逃げる
奴もいる。どちらが多いかと言われたら 当然後者。


ワタワタと妙な方向に動いていた手足を揃えて、
ナカが大きく息を吸い込んで もう一度立ち向かった。



「お願いします!」


「よ-し、歩いてみろ!そう・・・振り返れ!」





            カシャッ




(な・・・!)



「わ・・・っ」


ざわっ とスタッフが波打った。

アイツの一手一投足に、撮影に目を向ける
ヤツラが増えて───目が、離せない。




「綺麗・・・」


「ナカちゃん、少しずつ研ぎ澄まされてく
みたいだよね。一瞬、ドキッとする」


「時々、ナカって年齢にそぐわない
カオするから・・・あれ?ウミ!?」


近くにいたスタッフが、ハッと気付いて
こっちに視線を寄越した。やべ。


「・・・あっ すみませ-ん!前を通ったら、
ナカぴょんの撮影だったから・・・つい」

「あぁ、ウミちゃんも隣で撮影してたもんね。
入ったら?ナカちゃん、あと少しで終わるから」

「は-いっ」


紅茶でいい?と言い置いて、若い女性スタッフが
部屋の隅にあるポットへ歩いてく。


長居するつもりは全く、これっぽっちも
なかったのに・・・仕方ね-な。



「ナカぴょん、大丈夫なんですか~?なんか
いっぱい怒られるみたいですけど・・・」


「あ-・・・そっか。大草カメラマンとは、
ウミちゃんも組んだ事あるんだっけ」

「あの写真集話題になったもんね。俺も買ったよ!
CMだけでTV露出の殆どないモデルなのに、
マスコミ取材入ってすごかったよね~」


───んなこた聞いてねぇ!




「あ、そうだ。もう遅い時間だし、
ナカちゃんと帰るでしょ?」



「ナカ!!『このカオにピンと来たら110番』
じゃねぇんだ!このさい笑わなくても良いから、
カメラをちゃんと意識してみろ!」


「・・・っ はい!」





           バシャ!



           バシャ!!





「袖をくわえてみろ!よし・・・
そう、目線はそのまま。こっち!」




           バシャ!



「あいつ・・・」


「ナカちゃん、色気が出て来たね-」


「ウミと組んでた頃のジャンクや、初期のキモリは
まだ可愛さや元気さが誌面から溢れ出てくる感じ
だったけど・・・微かに香る色気って言うのかな。
ホント、断然大人っぽくなったよね」

「珠苑と組んだのも面白かったけどさ。
シンプルにキモリだけ見ててもね・・・
変わってってるのが、すごくよく解るよ」






         ウミ、見てて!!




         ウミがいるから、頑張れるんだよ!





         絶対ウミに追い付いて、




         いつかウミを追い越すから!!







「はは・・・っ」



───バカモデル



お前、自分だけがそうだって思ってるんじゃねぇよ







「え、ウミ・・・!?」



「おつかれさま-!ナカぴょんっ」


「えええ、ななんでここに」

撮影を終えたナカが目を丸くしてる。


こいつ、いつの間にこのテの服 
着こなせるようになったんだろう。



「隣で撮影してたんだよ-!ナカぴょんは
新しいブランドの撮影なんだってね~」


「あ、うん。20才直前っていうコンセプトで
いつもより大人っぽ・・・く、て・・・」




             ポロ・・・




「あ、れ?」

「ナカ!?」

「ち、違います違います。こここれはですね
そう!あ、汗が目から出てきたのですよ!!」


慌ててナカが手の平で顔を覆った。

見開いた目から、涙が隻を切ったように
溢れ出てくる。最初は笑っていた口許も、
ふいにきゅっと噛み締められた。


「・・・かやろ」


終わってホッとしたんだろう。

キツイ撮影だったから、気が緩んだんだと思う。


あう~とか、ぐぬぬ~とか、変に我慢してる
ナカから 奇妙な声がしてる。


周りのスタッフが距離を取ってるのに気付いて、
オレは 黙らせるためにカバンから取り出した
タオルをぐいっとこいつに押し付けた。


「・・・ぷは!」

「拭け。ブスんなってるぞ」

「はわわ、服!!これ衣装だった!!」

「着替えてこい。も-終わりなんだろ?」

「あ、うん」


「お前さ、カオも洗ってこいよ。
目ぇ真っ赤だぞ」


「ほほほ、ほんと!?」

ガシャンと鏡にぶつかるナカの力に負けて、
扉が悲鳴を上げる。壊すなよな。


「あ-・・・腫れちゃうかな。
ウミのカオ見て、ホッとしたみたい」

「・・・なっ!!」




(──に、言ってんだコイツは!!)




「・・・か、帰るぞ!!さっさと
更衣室行けよ、オラ!」



「へ?い、一緒に帰れるの!?」


「───!」


あ-もう!!

だから怖いんだ、こいつは。




お前、今 どんなカオしてンな事言ってるか
自分でちゃんとホントに解ってんのか!?




「・・・くそっ」



───こいつを手に入れるのは、大仕事だ!





<終わり>
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