南の島のコンシェルジェのお仕事(2)

2001年12月19日
クリスマスへの気合

もうすぐクリスマスです。
ホテルでは、サンクスギビングが終わればデコレーションは一気にクリスマス仕様に変わります。そろそろ冬休みですから、お客様も増えてきました。日本の会社と違い、欧米ではクリスマス休暇など休暇を長くとるのは普通です。この時期に限らず欧米のお客様は、最低でも1週間以上のまとまった期間ホテルに滞在されます。働くときはびしっと働き、休むときは思いっきり休む。このメリハリは、日本企業も見習うべきではないかと常々思っている私です。
さてさて、前にクリスマスデコレーションについて書いたことがありますが、他にもやはりクリスマスは年間の最大イベントだ、と思うことがあります。
当ホテルにお泊りのとあるお客様、滞在初日にショッピングの場所をご案内しました。早速翌日にはレンタカーを借りてお買い物です。滞在期間も長いので、食べ物、飲み物その他滞在中の必要雑貨などご夫婦両手に大荷物で買い物から戻られました。
ここまではよくある光景です。旅慣れていらっしゃるお客様は、簡単なお食事や飲み物はご自分でご用意されます。そしてその分、夕食や他の楽しみにお金を使われます。
ところがその翌日、また大荷物でお帰りになりました。ベルボーイのカートにそれらを乗せて、ご自分でお部屋にお持ちになりました。ラッピングペーパーなども見えていましたから、クリスマスプレゼントかなと思ってみていました。そしてその翌日の今日、またもや大きなお荷物の数々、「Wow!」とびっくりする私にご主人が「Chiristmas shopping!」とウインクされました。きっとあれもクリスマスプレゼントに違いありません。お子様はたった2人。欧米でよく見かけるクリスマスツリーの下に置く、色とりどりのプレゼントの数々。あれをきっとホテルのお部屋でやっているのでしょう。もちろんすべてがお子様用ではなく、ご主人から奥様へ、奥様からご主人へのプレゼントもあると思います。
でもあの量、半端じゃないですね。リゾートにバケーションに来るのがクリスマスプレゼント、なんてけちなことは言わないようです。きっとクリスマスの朝、自宅にいるのと変わらないようにみんなでプレゼントをあけるんでしょうね。
そしてみんなでクリスマスブランチを食べ、夜はクリスマスショーをおしゃれして観覧。何だか目に見えるようです。
欧米のかたにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、何だかとてもうらやましく思えてしまいました。

もしかして、明日もショッピングは続くかなあ・・・


2001年12月20日
仕事が好きですか?

今、うちのホテルにいる研修生の一人がホテル関連の本を読みあさっています。彼女は来た当初、ホテルよりも旅行会社に興味があると話していました。でも6ヶ月たとうとしている今、各部署で実際働いてみて、ホテルでの仕事のおもしろさに気付いたようです。彼女は有名なホテル学科のある大学に在籍中で、単位を取るためにここで研修しています。
現場たたき上げ、すべてを現場で学んでここまで来たわたしとは全く違う、いえばエリート街道まっしぐら路線です。
わたしもこの業界に興味を持ちはじめたとき、その手の本を読みたおしました。学校で勉強したものではなく、実地で自分が感じ、やってきたことが本に書いてあったりすると、やはりわたしのやっていることは間違いないんだとうれしくなったものです。
どこでどんな仕事をしていても、好きでその仕事をやっているのと、お金のため、もしくは生活のための手段としてその仕事をやっているのとでは、ずい分変わってくると思います。最初は好きでやっていても、いつのまにか惰性になってしまったり、理想と現実のギャップで自分のやりたいことをあきらめてしまったりすることもありがちです。でも、彼女と話をしていると二人で熱くサービスについて語ったりして、なかなか楽しい今日この頃。
よく、会社でも新入社員がはいってくると現場の士気が一気に上がったりしますよね。あれっていいことですよね、昔のやる気と夢にあふれた自分を思い出させてくれて。
今日彼女に2冊本を借りて読んでいます。日ごろの些細な事柄にかくれて忘れていた、自分の理想とする姿勢を思い出しました。
私は自分の仕事が大好きです。また明日から気合を入れなおしていこうと、やる気がわいてきました。
同僚の中には「仕事」だからやってるという人もいます。一生懸命やってる自分がばかばかしく思えて、何で自分だけ・・・と悲しくなることもあります。でも、私は彼女のように手を抜けない。抜いてる自分が嫌だから。そんな仕事の仕方は自分自身が納得できないから。
これから殺人的に忙しくなってきますが、いい時期にその気持ちを思い出せてよかった。
仕事が好きですか?好きになると楽しいよ。いきいきと仕事が出来るし、その気持ちはお客様にも伝わるはず!
どんな仕事でも、その仕事が好きでやってる人を私は尊敬します。


2001年12月23日
台風接近?

と書いてしまえば、わかる人にはどのあたりかわかると思いますが。クリスマスも目前なのに台風が接近しています。今日の夜中にピークを迎えるとか。夜のフライトは、早々とキャンセルという情報がはいっていました。
ビーチのレストランも開けられるかどうか心配していましたが、とりあえずとりあえず、外の席のみcloseで屋内は開けています。でも、座席数が少ないので、大変。明日の予約ももういっぱいです。もう、ただでさえ忙しいこの時期に台風????勘弁してよ~
外から強風のゴーっていう音が聞こえるし、テレビのアンテナも強風でおかしいらしく、島全体テレビは映らないし、外に住んでるマネージャーをやたらと施設内で見かけると思ったら、外では電気も落ちてる場所もあるらしい。
風台風なので、雨は降ってないのですが、そういえば昨日出掛けた時、道路の上や脇のクリスマスデコレーションを回収していた!
「まだクリスマス終わってないのに何やってんだ?」と思っていたらそういうことですね。
幸い、うちのホテルは自家発電もあるし、水も大丈夫。こういうときはホテル内に住んでてよかったな~とつくづく思います。何かあってもみんないるから。っていうか、何かあったら仕事が休みでも、呼び出されて仕事になっちゃうんですけどね。

オー、また風が泣いています。夜のうちに通り過ぎてくれるといいんだけど・・・いくらなんでもサンタは台風に乗ってこないと思うし。


2002年01月01日
A Happy New Year

本当にごめんなさい。更新が遅れました。毎日満室+αの忙しさです。
今、ちょうどカウントダウンパーティーを終えて帰って来ました。
無料シャンパンを5杯も飲んで少々酔っ払い気味です。
この時期、なんと言ってもリピーターのお客様が多い!おなじみの顔と会えることも多いのですが、その分苦情も多い。
レストランの床が滑って子供が転んだ、排水が悪い、スタッフの対応がよくない・・・・
年末になって急にお客様が増えたので、苦情も3倍です。せっかく高いお金を出して楽しみに来ているのに、苦情ばっかり、何でかなあ。高いお金を出してるからこそ厳しい目で見られるのですね、みんな。
今日のカウントダウンパーティーも最初は雨のせいもあって盛り上がりにかけたのですが、カウントダウン7分前、シャンパンを配り始めたころには、大盛り上がりでみんなステージで踊り、シャンパン片手に乾杯!2002年の幕開けの後はキスの嵐でした。楽しかった~。お客様も、スタッフも関係なくみんな一緒に2002年の幕開けを祝いました。
新しい年の幕開け、日本ではしんみり、しっとり祝うことが多いのですが、海外ではパーっとのんで騒いで迎えます。新年の幕開けはHUG(抱擁)とキスの嵐!イギリスにいるときは通りすがりの人も、誰でもはぐとキスの嵐!びっくりしたけど、それはそれで楽しかった。今ごろ日本は除夜の鐘をきいているのかななと思うと、何か不思議な気がします。
わたしの2002年の目標!彼を見つける!1人前のコンシェルジェになる!でもなく・・・ウクレレマスター!!!でした。
旅先での音楽は心和ませますよね?ギターは大きすぎるけどウクレレなら持ち運びにも便利。と言うわけで今年はうちのセールスマネージャーにウクレレを習いたいと思います。
皆さんの今年の抱負は?
2002年が皆さんにとって素敵な年でありますよう・・・・
今年もよろしくお願いいたします。


2002年01月04日
復活しました!

クリスマス前から体調が悪く、その上年末から元旦までの7連勤でさらに体調が悪化し、正月早々寝込んでいましたがやっと復活しました。
忙しいだけあって、ねたは山ほどあるのですがとりあえす、風邪悪化の原因となったベビーシッターの話から。
わたしは子供が大好きです。そして子供にも好かれます。上司や同僚いわく、子供に好かれるというか、子供は友達だと思っている。つまり、わたしは5歳くらいの子供レベルで子供と話しているとか?いいんですけどね、別に。そういえば、チェックアウトのときによく子供に手紙をもらうんだけど、たいてい呼び捨てか、ちゃん付けで宛名が書いてある・・・ははは、そうだったのね。
とにかく、子供好きなのでベビーシッターの依頼があると、時間が許す限り受け持ちます。クリスマスも夜9時からという依頼がありました。アメリカ人の子供、6歳の男の子。ママはエアラインのクルーで、クリスマスの最終のフライトで子供を連れてやってきました。到着後、ほかのクルーとディナーパーティーへお出かけです。
実はこの日、当ホテルでもクリスマスの特別ショーがあったので、私は結構楽観視していました。ショーを見ている間は楽であろうと。たいていの子供はショーにくぎ付けで、終われば結構疲れてて、すぐ寝てくれるだろうと・・・・
ところが現実はそう甘くありませんでした。部屋で待っていたのは、「本当に6歳?」と疑いたくなるような大きな体の男の子。かなり興奮状態で、今すぐプールで泳ぐというのです。とりあえず、ショーはプールサイドで行われていたので、連れて行けば気も変わるだろうと思いきやプールに直行。いくら常夏とはいえ、夜9時のプールの水は冷たい。最初は見ているだけだったのですが、彼にせがまれ、しかも部分的に彼の足がつかない深さのところもあるので、仕方なく下に「念のため」着ていた水着になってプールに入りました。つめたーーーい!!
それから約2時間、彼と2人でスライダーに、水中バスケット、水球・・・体が大きくてもしょせん6歳、と思いきや調子に乗ると、ボールはぶつける、ビキニははがす、深い所に飛び込んで半べそになる、とにかく大変でした。ほんとにビキニをはがされたときはあせったけど、プールサイドのお客さんみんなショーにくぎ付けでよかったよ。もーこれでもお嫁入り前なんだから!プールの中にいたのは、わたし達以外にたった3人。ライフガードの子も、「あ~あ、寒いのにかわいそうに」とわたしを見ていました。
その後も部屋で1時までカードゲーム、わたしの目論見はまんまとはずれ、彼は眠ることも、疲れることもなくママの帰りまで起きていました。久しぶりの休暇で興奮してたんだろうけど、わたしは疲れた~。
せっかくのクリスマスの夜はこうしてふけていったんですね~。
そして、クリスマス前から悪かった体調はさらに悪化し、しかし何とか元旦までお勤めを果たし、7日ぶりのOFFまで待って倒れこんだんですね~。イヤー仕事の鬼!われながらえらい!!
ああ、この仕事も体力勝負ですよ。


2002年01月05日
気おつけよう!

クリスマスあたりから急にお客様が増え始め連日満室の嵐です。
日本では冬休みだから特に子連れ、家族旅行の方が多い。

そのひは10時出勤で、私はのんびりと部屋でコーヒーなど飲みながら優雅な朝を満喫していました。本当はそういうことはめずらしく、ぎりぎりまで寝て30分くらいでぱっと用意し、仕事に向かうことが多いのにそのはなぜか余裕がありました。
9時過ぎにマネージャーから電話がかかってきました。
「今から仕事出られる?」
「いいですけど?何で?」
きけば、子供がベッドから落ちて頭を切って病院に運ばれたとか。で、通訳に病院まで行ってほしいと言うことでした。後は制服に着替えるだけだったので、制服に着替えゲストサービスの車で急いで病院へ行きました。子供と両親はすでに緊急治療室にはいっていたので、病院につくとすぐにその部屋へ通されました。
「緊急治療室!???」わたしは、血だらけで意識のない恐ろしい状態を想像し、恐る恐る入っていったのですが、中に入ると子供はイスに座っていて、両親が心配そうにドクターの処置を見ているだけでした。どうやら怪我は思ったほどひどくなく後頭部を3センチほど切っているようでした。その時点では血も止まり、落ち着いた状態だったのでわたしは少し安心してドクターの言うことをご両親に通訳しました。幸い傷も深くなく、縫わなければいけないほどではなかったので、処置も30分ほどで終わりました。
怪我をしたのはユカチャン、6歳。朝プールに行こうと水着に着替え、自分で日焼け止めを塗っていてバランスを崩しベッドから落ちて壁で頭を強打したと言うことでした。
治療の途中は一生懸命我慢して泣かなかったのに、治療が終わったとたん、泣き出して「痛いの?」ときくと震えながら「こわいよ~」とひとこと。頭から血が出て、病院に運ばれ、英語を話す大きいドクターに治療を受け、病院のいろんな設備を見ているうちに不安がどんどん増してきたんでしょうね。
「大丈夫、大丈夫。もう終わったよ。えらいねユカチャン、いっぱい我慢したね。」ユカチャンは少し安心したのか、泣きやんでおとなしくしていました。
残念なことに到着日の翌日の事件で、それから3日はプールにはいってはいけないとドクターに言われました。せっかく楽しみにしていたプールなのに・・・
その後経過はよく、急変もなく、最終日には朝少しプールで遊べたとか。ユカチャンの出発の日、わたしはオフで会えなかったのですが、翌日出勤すると手紙が残っていました。せっかくの休暇が痛い思い出だけで終わってはかわいそうと、プレゼントした小さなお人形とわたしの似顔絵。宛名は「jujuちゃんへ」。うーかわいい!
やっぱりわたしは「さん」ではなく、「ちゃん」で呼ばれてしまうのね。でも、ユカチャンの痛い思い出も、少しは軽減されたかな。

この時期、怪我をして病院へ行く子供たちがたくさんいます。興奮してベッドの上を飛び跳ねて落ちたり、プールの周りで転んだり、子供に怪我はつき物だけど、やっぱり心配です。海外の病院は場所によっては設備が不充分だったり、すごく待たされたり、日本とは勝手が違います。旅先での病気、怪我にはくれぐれも気をつけよう!

2002年01月07日
かっこいい客になりたい。

今年の目標、「ウクレレマスター」頑張っています。今日で、5日目そのうち4日は弦をさわってる。3日坊主はとりあえずクリアーしました。今日は初の曲「大きな古時計」を課題曲として与えられ、練習しました。指の先も痛ければ、力の入りすぎで手首や使わない親指まで痛い・・・でも、サイコーに楽しいです。う~はじめてよかった。
さて本題。ウクレレの練習の後、先生(セールスマネージャー)がディナーに連れて行ってくれました。彼はこのホテルが出来た当初から働いている、超年季の入ったホテルマンです。独身で、ぱっとみ普通のおじさんだけど実はかなりの芸術教養があります。休みの日は、お客さんとテニスしたり、子供たちにテニスを教えたり。はたまた楽器も得意で、ギターにウクレレ、バンジョー、マンダリン、ピアノ、キーボード・・・・部屋には楽器があふれていて、たまに彼の部屋の前を通ると中からポロンと楽器の音が聞こえてきたりしていい感じです。そんなわけで、わたしは結構こうやって年をとりたいな~(独身は嫌だけど)と思っています。
また話がそれてきたか?
彼いわく「楽器でもスポーツでもこうなりたい、と思っている形があると頑張りやすい」「必ず壁にぶち当たっていやになるときがあるけど、それをやり過ごせばある日、自分が思い描いていた理想に近い形までいってることに気付くんだよ」
同じように彼はホテルマンとして、たくさんのお客様を見てきました。いまは、「かっこいいホテルマン」より「かっこいい客になりたい」そうです。う~ん奥が深い。
そういえば、時々とってもスマートなお客様をみることがあります。何があったわけでもないのに印象に残るような。
スムーズなチェックイン、滞在中はホテルの各施設を充分使い、スタッフとのコミュニケーションも見事。チップの渡し方もスマートでわがままも言いません。苦情の言い方も、帰り際にさらりと「こういうことに気付いたんだけど」と言う感じで伝え、ホテル側に気を使わせません。アメリカ人のビジネスマンだと思いますか?
私の知っているのは、これが日本人のリピーターご夫婦です。別に何も変わったことはしていない。でも、とても素敵なんですね。
ふと思いました。ホテルに泊まる時は、スタッフとのコミュニケーションをたくさんとりましょう。ただ、泊まるだけ、食事をするだけではなく。それだけでずい分そのホテルでの居心地が変わってくるような気がします。
スタッフも人間、「どのお客様にも同じサービスを」が原則でもやはり感じのいいお客様には「喜んでいただこう」と言う気持ちが増しますからね。
わたしもかっこいい客、かっこいいホテルマン、かっこいいウクレレ弾きになりたいと思います。


2002年01月09日
盗難事件発生!

正月早々大変だ。今日は、ホリデーで休みの人がいっぱい。うちのマネージャー陣も休みでした。うちの部署は今2人体制なので、働いていたのも2人だけ。そしてなぜか日本人スタッフも今日はホテルでわたし一人・・・と言うわけで、1日中通訳や日本人のお客様のお世話にかかりっきりでした。
やーっと仕事を終え、友達が部屋に遊びに来てのんびりしていたところフロントデスクから電話がかかってきました。
「ちょっと問題が起こったんだけど、出て来て来れる?」
わたしはビール片手にスウェットでしたが、着替えてる間もないのでとりあえずGンズをはいて走っていきました。
フロントでは、お客様(日本人)が3人、MOD(Manager On Duty)とフロントのスーパーバイザーが待っていました。
話を聞いてみると、「無くなったのは$350。バスルームに封筒に入れて置きっぱなしにしていた。絶対置いたはずなのに・・・」
お客様は落ち着いていて、淡々と聞いたことに答えてくださいました。
「最後にお金を見たのは?」「お部屋に帰ったのは?」「お金がなくなったのに気付いたのは?」「その間どちらにお出かけでしたか?」「間違ってどこかに入れたと言うことは考えられませんか?」「なぜ、金庫に入れなかったのですか?」「そこに置かれたのは確かですか?」etc....
とりあえず状況をお聞きし、警備スタッフも呼んでお部屋の様子を確認し、お客様は夕食にお出かけになると言うので、お帰りになるまでに調査することをお約束してお客様と別れました。
もしかしたら部屋を掃除したスタッフがごみだと思って捨ててしまったのかも、ハウスキーピングでその日のごみも調べました。もう帰っていたそのお部屋担当のスタッフにも電話をかけました。担当はベテランのハウスキーパーでしたから、相当の記憶力です。どこに何がおいてあったか、部屋の状況を細かく記憶していました。彼女いわく「部屋に入ったときはそんなものは見なかった」
結局、何も見つけることが出来ませんでした。仕方がありません。
帰ってこられたお客様にもそのようにご説明しました。「今から警察を呼んで、レポートを出すことも出来ますが?」と提案しましたが「それでお金が出てくるとは思えないから」と断られました。
お客様は怒ることも無く、「金庫にいれずおきっぱなしにしていた自分も悪いから」と言ってくださいました。

難しいのはその後の対応です。「お詫びの品を何か送ったら?」と聞いてみたのですがMODは「いらない」と言うのです。「お詫びの品を送ると言うことは、ホテルが非を認めたことになる。お客様は、本当は何かあるのかも、とホテルを疑うだろう。」
・・・確かに一理あります。
もしかしたら、お金は最初から無かったのかもしれない、外で落としたのかもしれない、同室の友達が取ったのかもしれない、ハウスキーピングスタッフが嘘をついたのかもしれない、もう見つかったけど言い出せずにいるのかもしれない・・・全くの第3者による盗難とは考えられない状況でした。
はっきりした結果が出なかった場合、さまざまな仮定を立ててみます。ホテルとしてはやれることはすべてやったと言う自信があれば、それ以上に何かを送る必要は無い。それがMODの判断でした。
お客様が落ち着いておられたおかげで、「騒ぎ」と言うほどのものではありませんでしたが、何となく後味の悪い事件でした。
ホテルとしても誰も疑いたくないですからね。うちのベテランハウスキーピングスタッフも、ましてやお客様も。なので、お客様が納得されればそこで事件は終了となってしまうのです。

嫌な思いをしないためにも、自分のものはしっかり自分で管理しましょうね。というか、してください!!旅行に出たら。


2002年01月13日
海の中がいいのです。

久々にダイビングに行ってきました。
「グランブルー」と言う映画を知っていますか?ジャックマイヨールという実在の人物を題材にした、ちょっと不思議な感じの、でも映像がすごくきれいな映画です。
その中で、ジャックがこういいます。
「海の中がいいんだ」
彼の中で、水の中にいることは自然だったんでしょう。もう10年以上も前、初めてこの映画を見て以来この言葉が私の頭から離れなかった。いるかと泳ぐシーンも、ペルーの山のシーンも好きだけど、この言葉が一番心に響きました。
私は水泳をはじめ、泳ぐことの楽しさを覚え、今のホテルで働き始めてからダイビングの免許を取りました。
今日行ったのは私の1番好きなポイントです。真っ白い砂が海の底にずっと広がっていて、珊瑚の山がぽつんぽつんとあります。視界は50メートルくらい。水の中にいるのを忘れそうなくらい、真っ青な世界が底に広がっています。深さは16mくらいなので上を向くと水面が見えます。自分のはく息がゆっくりとふくらみながら上へ昇っていって、水面近くではじける様子が見えます。海の底は静かで、自分の呼吸の音だけが聞こえます。もちろん周りにはきれいな南国の魚がいっぱい泳いでいて、魚達と遊ぶのも楽しいですが、水中の浮遊感を楽しみます。天国みたい。まるで時間が止まっているみたいです。
正直言ってダイビングはあまり好きではありません。というか面倒なのです。ウエットスーツを着たり、機材を準備したり、それを背負わなければいけなかったり。スノーケリングでいいや、と思うこともしょっちゅうです。でも、いったん海へはいってしまうと、「ダイビングって素晴らしい!」といつも単純に感動してしまいます。ダイビングでなければ見られない世界が海の底にはあります。
そりゃあ、出来ればジャックのように素もぐりで海の底を楽しめたらいいと思うけど、凡人の私には無理ですからね。
水の中の一番いいところは、音がしないことだと思う。自分の呼吸音と、水の音。それだけです。水泳をしていても、ある程度泳ぎつづけると頭の中が真っ白になっていつまでも、永遠に泳げそうな気がしてきませんか?
今日は、久々に海の中を堪能して心地よい疲れとともに帰ってきた休日でした。


2002年01月17日
震災から7年

阪神大震災から7年が経ちました。
兵庫県出身の私は、この日どこにいても日本時間5時47分に黙祷します。なのに、今年は初めて忘れてしまった・・・後悔。
でも後に、気付きました。私はいつもと違う時間に今日は起きてたんですね、なぜだか。時差を考えるとその時間だったんですね、これが。後でそれを言われて、ちょっとゾーっとした。本能なのか?
でも、黙とうはしなかったな。だから、さっきお香をたいて黙とうしときました。
関西から遠い人は、まだそんなこといってるの?と思うかもしれない。でも、私は、忘れてはいけないと思うのです。
何年経っても、思い返すと涙が出ます。今日1日は、友達のメールや、神戸新聞の特集を読んで泣きます。今日1日だけ。

たくさんの人々と同じように、私も震災以降人生がすごく変わりました。震災がなければ今のわたしはないと思う。もっと幸せだったかもしれないし、もっと不幸だったかもしれない。やっぱりここにいたのかもしれない。起こってしまった事を、考えても仕方ないので私は今の人生を肯定することにしています。そして、行き詰まったときにはいつもこう思います。

明日何が起こるかわからない、だから、今を後悔しないように生きたい。明日死んでもいいくらいの気持ちで。

皆さんの魂が安らかでありますように。


2002年01月18日
チップは義務ではありません。気持ちなんです。

日本人のお客様によく「チップはいくらくらい・・・」と聞かれます。
いくら「チップはお気持ちですから、サービスに満足されたときにお支払いいただけばいいんですよ」とご説明しても「平均どのくらい・・・」とか、
「このホテルはチップ制はどうなってるの?払わなくちゃいけないの、それとも込み?」とか聞かれてがっかりします。
例えば必ずガイドブックに書いてある、飲食代金の10~15%、荷物1個につき$1、ベッドメイクにも$1。確かに相場と言えば相場でしょう。欧米にあってアジアにない習慣なのでもうまるっきりそれに従ってしまう気持ちもわからないではありません。
でも、正直言えば多分それは払いすぎだと思います。
ハウスキーピングにトレーニングに行ったときスタッフが話してくれました。日本人は毎日ベッド1つに$1その上オムツなどごみがあればそこにも$1、韓国人は部屋に$1、欧米人はいろいろ、ロシア人はチェックアウトの日に一気にまとめて高額を払うことが多いそうです。
昔カナダにいたときに、アルバイトのレストランスタッフがよくチップの額の話をしていました。特に日本人旅行客の多いレストランでは、ある意味日本人はいいカモです。というか、チップを払って当たり前と思われているふしがあります。だからたまにチップを払わない客がいると「あのお客はけちだ」と言うことになります。
決して「自分のサービスがいたらなかったせいだ」とは思わないのです。
新しくベルボーイになった男の子。最初は楽しそうに一生懸命仕事をしていました。ところが仕事に慣れてくると、どの仕事はチップがもらえてどの仕事はもらえないかとか、どの国籍の人はチップの払いがいいかが分かってきます。そうすると彼はチップのために仕事をするようになってしまったのです。チップがもらえる仕事は率先してやるけれど、もらえない仕事はサボったり人に押し付けたり。あげくに荷物をお部屋まで運んで、お客様がチップを払わないともの欲しそうにドアの前で待っているのです。これを見たときはさすがにわたしも恥ずかしさで顔から火が出そうでした。
VIPのお客さまをお部屋にご案内していたときだったのでよけいです。慌てて、「ではごゆっくりご滞在ください」とごあいさつをして、彼を引っ張ってその場を離れました。とほほ・・・
私は日本人なので日本人のお客様からチップをもらうことはあまりありません。たぶん対日本人だと気が緩むのでしょう。それにコンシェルジェという部署はお客様の相談に乗ったり、苦情を聞いたりするためにあるのでチップにはあまり縁がありません。
でも、でもね、チップのために働いているのではないけれど、「昨日とおととい、枕もとにチップを置くのを忘れたからスタッフにこれを届けて欲しい」といわれいくら「お気になさらなくても結構ですよ」といっても、渡して欲しいと言われて、その日のその部屋の担当者を調べて、チップを届ける私のほうがチップをもらいたいくらい、とか思ったりすることもあります。
やっぱり、チップはスマートに渡して欲しいですよね、例えば病院に通訳でついて行って、その翌日に「チップ払うの忘れたんですけど、いくらくらい払ったら・・・」なんて言われても「では$10。」なんていえないですよね、「いいですよお気になさらなくても」と言ってしまった後で「そうですか」と引き下がられたら、実はちょっとがっかりします。
チップを期待して働いているわけではないので、たまにチップを頂くとかなり嬉しく思います。欧米のお客様は特に渡し方がスマートで、ご出発のときや何かをお手伝いした後にさりげなく渡しに来られます。「It is my treat.」とキャンディーと一緒に渡されたり、「 You ’ve been very helpful. Thank you.」とウィンクして去っていったり。
目にはっきり見える形で自分のサービスを評価してもらえると本当に嬉しい。多分そのときの私はいつもの10倍はいい笑顔をしていると思います。
うちのレストランにもものすごくチップを稼ぐベテランがいます。ゲストコメントにもしょっちゅう名前が出てきます。休みの日に一度様子を見に行きました。スムーズなサービスだけではなく、お客様に声をかけたり、時にはかくし芸のマジックを子供に披露したり。彼がプライドを持って楽しんで仕事をしている様子が伝わってきました。彼が一晩に時には数百ドル稼ぐのもうなずけます。

「チップは気持ちです。払わないといけないものでも、恥ずかしいものでもありません。自分のサービスの満足度で払ってください。それがスマートなチップの払い方だと私は思います」


2002年01月22日
男と女の友情は成り立つか

日記の本題とは離れてしまうのですが・・・
今日お部屋の鍵が壊れてお手伝いをしたお客様と、ひょんなことからこの内容で盛り上がってしまいました。
彼らは男2人と女1人で1つの部屋に泊まってます。社員旅行だから、他にももちろん会社の人はいるのですが3人は同期で仲がいいので、同じ部屋にしてもらったとか。
しかしそれについてはいろいろあったようで、年配の社員に変な顔で見られたり、女の先輩に「最近の女の子は・・」なんてな嫌味を言われたりするそうです。おまけに、ひとりの男の子の彼女が部屋に電話をかけてきて、それを女の子がとったものだから、彼女は「どういうこと~」と社員旅行というのも疑うくらい怒ったらしく、日本に帰るのが怖いといっていました。
着替えはバスルームでするし、どっちにしてもここはビーチリゾートで水着になればほとんど裸だし、そんなに困ることはないと、彼女の弁。
私にも仲のいい男友達がいます。しょっちゅう私の部屋に来て、ビールを飲んだり話したりしています。でもだからと言って、男と女ではありません。お互いの恋愛の話や、これからの話を男と女別々の観点から見れるからおもしろい。彼はアメリカ人なので、HUGくらいはするけど、それ以上はありません。
・・・なのにやっぱり人によってはそれが理解できずに、噂話の種にしたり、付き合ってると思い込んだり。幸いにも、私にも彼にも現在恋人がいないのでそれでトラブルになることはないけれど、(だからよけいに噂をされるのか?)そういうのは、本当にうざい!!今日も、体調が悪いわたしを心配して朝から様子を見に来てくれた彼が部屋を出て行くときに、他のスタッフにあって、「朝帰り?」みたいにいやらしく言われてむっときたと言っていました。
3人のお客さんもそうらしく、朝3人で部屋から出てくるとなーんかみんなの目がいやらしいとか。人によっては、「若いもんはいいなあ」などどいやらしく言うとか。
なんとでも言っておれ!!と思いつつ、やっぱりうざいよねと話しました。
私は「成り立つ」派です。だって成り立ってるから。彼の好きな女の子の話とか聞いて、「こうやってせめなよ」って言ったり、彼からも男の行動の意味を学んだり。持ちつ持たれついい関係なんだけどなあ。時々、私たちの関係と、恋人同士の関係はどう違うんだ?って話になるけど、考えた挙句二人して、「うーんやっぱり違う」となります。言葉で表すのは難しいけど。でも違う。
恋人がお互いにできて、この関係が崩れたらいやだねとは言うものの、それはそれで仕方ないと思ったり。
彼は恋人のためには無理をするけど、私のためには無理をしないと言っていました。そういうことなのか?
私には仲のいい女友達もいるけど、やっぱ男友達は男心を知る上でとっても重要なのですね。それと力手が必要なとき(笑)
だから、自分の彼氏になる人にはそれは理解してもらいたいと思う。操は守るって約束するから!(笑)
お客さんの女の子も、なんか彼に悪いかなあ、と思うこともあるけどやっぱり彼はいい友達だし、やましいことがあるわけでもないし、彼も同じことを言ってるので関係は変えたくないと言っていました。ちなみに彼女にも彼氏がいるそうですが、大人なのでとやかくは言わないそうです。いい彼氏だ!大人の余裕か!
やっぱりこういう関係でも、一歩転べば恋人になったりするのかなあ?でもやっぱり恋人と友達は絶対違うと私は思うのですが・・・


2002年01月26日
お行儀の話。

男女の友情について、結構反応があってびっくりです。日記の主旨とは離れちゃったけど・・・
この件についてはまだ不完全燃焼なのでまた後日第2弾を書こうと思います。

今日のところは、今読んでいる本にいいことが書いてあったので。
作者は昔とても行儀が悪く、それを鍛えなおすために父親に柔道場に通わされました。
相変わらず行儀も悪く、自己中心的だった彼に老師範はある日言いました。
「君はずい分威張っているねえ。威張ると言うのは人間としてとても恥ずかしいことだよ。」
行儀が悪いとかふざけてばかりじゃダメだとか言うお叱りではなく、「威張っている」と言う表現を彼はしたそうです。
「威張ると言うのは相手を見下していることなんだよ。相手と同じ立場にたって、相手を重んじようとする人は決して威張らない。自然と態度が謙虚になるんだよ。お行儀というのはそこから生まれるんだな。」
深い、実に深いと思いませんか?
マナーブックに書いてあることをマニュアルどおりに満たしていれば、それでお行儀がいいわけではない。心がねじ曲がっているといくら立ち居振舞いが優雅でも、醜く見える。逆に、相手に対して謙虚な気持ちでまっすぐな心をもって接すれば、たとえマナー上分からないことがあって粗相をしたとしても、美しく見える。まず一番最初に気持ちが無ければ、話にならないのである。
作者はそう締めくくっていました。
これって多分基本的なマナーなんですよね。
ホテルには、様々な国からたくさんのお客様が来られます。国によって習慣は違うので、マナーが悪いとは一概にはいえません。例えば韓国では、立て膝をついて食事をするのは正式なスタイルだとか。日本だとお父さんにバシッと足をひっぱたかれそうだけど・・・
中国では、食べ終わったかすをテーブルの下にバンバン捨てていくし、考えてみれば日本人がそばやうどんをずるずるすするのも欧米の人から見たらまゆをひそめたくなることでしょう?欧米の人がパンで、スープや料理のソースをぬぐうようにして、まるで舐めてきれいにしたの?ってくらいきれいに食べてしまうのも最初はなんだか私には不思議にというかいやらしく見えました。
なんだか話がそれてきましたが、わたしが言いたいのは、マナーと言うのは国や場所によって違うので、それをすべてマスターするのは難しい。でも、相手に対して謙虚な気持ちでまっすぐな心をもって接すれば、そういう心があれば心は伝わるのではないかということです。
相手を不快にさせない、と言う謙虚な気持ちがあれば、その気持ちは相手に伝わると思う。それがないと、いくらスマートなふるまいをしているように見えても、人には嫌味な印象しか残らないのかもな、と思いました。
でも基本的には、郷に入れば郷に従え!その場、その国のお行儀マナーを尊重するのがいいと思います!
今日はこの話を読んで、ひとつえらくなった!とちょっと嬉しい私です。


2002年01月27日
やば~いい!

数日前からホテルのオーナーがきています。
なのに私は知らなかった・・・
この間ホテルのSafety committee(安全委員会?)のミーティングに出ていて、知らないおじさんがいるなあと思っていました。
知らないおじさんだけど、どこかで見たことあるぞ?と思っていた、実は。そのミーティングには時々ゲストが来てスピーチをするのでその人だと思っていた。私はのん気にケーキなど食べながらミーティングに参加していました。いつものように。
次の日、私はデスクに座っていました。経理のマネージャーと彼が歩いていました。その朝はとてもとても暇で、お客もいなければやることもない。私は朝届いた日本の新聞をのんびりと読んでいました。ふと顔を上げると、彼らが通りかかったので私は「おはよう」と挨拶をして、また新聞に戻りました。彼らは私を見てにっこりすると去っていきました。
その日のランチのときでした。同僚が彼とGMが一緒に食事をとっているのを見て、「あ、またオーナーが来てる」と言いました。「えーそうなの?」私は振り向きました。そしてそこにいたのはもちろんあのおじさん。
そうです、そうなんです。そりゃあ見たことあるはずです。オーナーなんだから。そして彼は半年に1回視察にくるんだから。
ああ、やばい。私はあまりにも気をつかわなさすぎていたかも。あまりにもナチュラルすぎたかも・・・
まあ、見られて悪いことは日ごろからしていないつもりだけど、それにしても気を抜きすぎいていたような。
ちょっと気合を入れなおします。もうオーナーの顔は忘れません。
というか、だれに見られても恥ずかしい行動はしません!


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