映画「ミリオンダラー・ベイビー 」で、クリント・イーストウッド扮する老トレーナーが、好物のレモンパイを食べて、「今死ねたら幸せだろうな」とつぶやきます。大げさな、まさに文学的表現です。"幸せはいつまでも続かない"という事実を連想させます。
言葉の綾ですから、彼には死ぬ気はありません。レモンパイは、また、いつでも、食べることができます。幸せはまた来ます。それが普通の人生です。次のレモンパイを思い浮かべることができるから、次に来る幸せを信じることができるから、人はつらい浮き世を渡っていけます。
主人公の女性は、頸髄を損傷した後、死ぬことを選択します。
彼女には、次のレモンパイを思い浮かべることも、次に来る幸せを信じることもできませんでした。
彼女が選んだ道は私には選択肢となり得ません。
彼女の轍を踏まないために、私には"レモンパイ"のようなものが必要です。
私のレモンパイの仕込みを始めました。
リハビリでもなく、インターネットでもなく、ましてや、仕事などではなく。
6月12日から動き出しています。