「あたしには幼い頃の思い出が全然ないの」。7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。そこで二人を待ちうける恐るべき真実とは…。超絶人気作家が放つ最新文庫長編ミステリ。
どんな作品でも読み易い東野さんらしく、あっという間に読み終わりました。
今作の大部分の舞台となるのは主人公と昔の恋人が訪れる家なのですが、登場人物がほとんど2人という規模の小ささが特徴です。
読んでいて思い出したのは西澤保彦さんの「夏の夜会」ですね。
登場人物が少なかったり、曖昧な過去の記憶を思い出そうとする展開も似ている気がしますが、こちらは一から思い出さなければならないので読んでいてドキドキしますw
随所に怪しげな伏線が張ってあり、それが巧妙に左右して浮かび上がる過去の話は中々に怖いですね。
どうしても話の中心が過去にあるので、未練の残る昔の彼女と行動する心中複雑な主人公「私」がリアルですが、人間的な魅力は薄いです。
登場人物は所詮、狂言回しに過ぎず最後まで過去に主眼が置かれいている所は正に「心の旅」ですねw
東野さんお得意の仕掛けが昇華する終盤は圧巻でした。