抗がん剤は、増殖能の高いがん細胞に対して抑制的にはたらきます。よって、一定の治療効果があるわけですが、増殖能の高い細胞は何もがん細胞だけではありません。生殖細胞(卵子、精子)も非常に増殖能が高いので、ケモセラピーをうけると、生殖細胞が深刻なダメージをうけてしまい、不妊になってしまうことがあるわけですね。
ただ、精子はケモセラピーをうけるまえに凍結保存しておけば、治療完了後にチャンスが残りますし、卵子についても場合によっては凍結保存が可能になってきております。ケモセラピーを受ける前に必ずこのことを認識しておいてくださいね。
精巣精子採取術は無精子症の方に行われます。精巣から採れた精子を顕微授精で受精させ、妊娠が成立できる時代になりました。最近ではずいぶん成績も安定してきましたよ。
人工授精は子宮内に直接精子を送り込むので精子の数が少ない方でも、いわば、“近道”できるので妊娠しやすくなるわけですね。
ただ、どのくらい少なくても良いのかというと、やはり、総運動精子数(液量×精子濃度×運動率)が500万以上はあったほうが良いのでは?といわれておりますね。私の施設でも同様の傾向を認めており、500万よりもやっぱり1000万以上あったほうが良い結果を得られております。なんだかんだ言って、人工授精でも運動精子が多いほうが良いみたいですね。
代表的な異常受精について述べます。
1個の前核の場合
正常受精した場合には精子由来および卵子由来の前核が合計2個見えますが、1個しか見えない場合を言います。精子側あるいは卵子側のどちらかの前核が正常に形成されないためおこります。ほとんどは卵子側の質的な原因によりますが、未熟な精子を注入せざるをえない場合などにもこのような受精が観察されます。
通常の受精法で3個以上の前核の場合
これは、卵子内に2個以上の精子が侵入してしまったことが原因と思われます。本来なら、精子の卵子への侵入は1個であり、1個の侵入を認めると、通常は2個めの侵入をふせぐため卵子は透明帯という殻を硬くして、2個めの精子の侵入をふせぐのですが、卵子側の何らかの異常により、その機能がうまく働いていないと考えられます。
顕微授精を実施して3個の前核の場合
顕微授精を実施しているにもかかわらず(顕微授精では精子を1個しか注入しないので)、前核が3個みえる場合は、卵子側の前核が2個、精子側の前核が1個で、合計3個になっていることが考えられます。卵子側の核が2個になった原因は、本来なら第2極体として細胞質外に放出される核が細胞質内にとどまってしまうことが主な原因だと思われます。
胚盤胞を凍結解凍してから実際に移植するまで回復培養し、その間に胚盤胞の凍結によるダメージ等を判定するのですが、一般に回復培養時間は3−4時間に設定されることが多いようです。
ただ、先日の受精着床学会では、回復培養時間が3−4時間に満たなくとも胚移植して問題なかったとある施設が報告していました。
結局、ガラス化法の導入によって胚盤胞は大部分生存しているので、じっくり培養して生きているか確認しなくても、「生きているに決まっている」という前提で移植して問題ないということでしょうね。
2006年度の体外受精の成績ですが(2008年6月発表)、通常体外受精の新鮮胚移植は44778周期、顕微授精は52539周期、凍結胚周期では42146周期で、総計は年間で約14万周期にも上りました。また、それぞれの妊娠率ですが、通常体外受精の胚移植あたりの妊娠率は28.9%、顕微授精は24.3%、凍結胚移植は33.0%でした。ご参考までに紹介いたしました。
AMHは小胞状の卵胞でつくられ、これらは、発育卵胞数を反映し、卵巣の能力の判定に使えると注目されています。FSHと違い、測定時期を選ばないことが利点ですね。最近はこれらを測定しているクリニックも増えてきているかも知れませんね。