最近の我が体たらくなファッション…昔の私はどこへやら
今でこそ、トシもトシだし、両親のスネをかじってまでシャレッ気を出して買い物三昧…という訳にはいかない状況であるけれども、物心ついた頃から、母に言わせると、私には私なりの断固とした好みがあって、普通なら親が勝手に着せても文句を言わない年齢の頃から、嫌なものは絶対に着なかったらしい。高校の頃になると、すでにコム・デ・ギャルソンを軸として、あれこれ着道楽をやっていて、ニューヨークに渡ってからも、その勢いは衰えず、年に2度程帰国してきては、コム・デ・ギャルソンやヨージ・ヤマモトなどを山のように買ってニューヨークに戻っていたものであった。何しろ、あっちでは靴やバッグはサイズが関係ないので好きな物が手に入ったけれども、服がもう、デカくて、デパートの「プチコーナー」に置いてあるものの種類も限られていて、ほどんど触手が動かなかった。ニューヨークのエンポリオ・アルマーニには、私の担当者がいた。あの店はおもしろい店で、セールになると、大だい的に宣伝する前にお得意さまに案内状が届き、行くと、担当者がそばにやってきて、耳元で、『全部、40%オフですよ』とささやくのであった。ニューヨークで一番優雅で高級なデパート(のうちに入るのだろうか)である「バーグドルフグッドマン」は映画「ミスター・アーサー」の冒頭でライザミネリが父親へのプレゼントのネクタイを万引きするところで出て来る。その「バーグドルフグッドマン」にも、私の担当者がいて、衣類から化粧品から下着まで、とにかく、すべて、面倒を見てくれていた。高い買い物をするとニュージャージーの友人宅に郵送して、消費税を払わなくて済むように手配もしてくれた。とにかく、3000ドルのコートを買うと、当時のNYのTAX8.25%だと、約248ドル(約29,000円)の無駄な税金を払わねばならないのだけど、それを州が違い、また、支店のない隣の州、ニュージャージーに送ると、それを払わずに済み、それをNYに送る送料はわずか20ドルくらい、これは大きい。高い買い物をしている割には、ケチなのである。「上質のもの」というのは、長く使え、また、ちょうど使用感が出て来た頃が一番カッコよかったりする。私はロンドンのバーバリー本店で父から買ってもらった真っ赤なダッフルコートを10年以上着ていたけれども(そのために、まだ子供だと間違えられたこと数知れず...)袖がすり切れるほど着ていても、何度も道行く人に「素敵なコートですね」と言われていたものだった。白洲次郎に言わせると、ツイード(正確にはトゥイードであるが)の服は、新品を着るなんてえのは、成り上がりものの格好であって、あんなものは、1年くらい軒先に吊るしておいて、雨ざらしにして、くたびれた頃に着るのが本当の「粋」なおしゃれなのだそうだ。まあ、うちの母は物忘れがひどくなってきて、嫌でも、洗濯物が雨ざらしになっていることはよくあるが。そんな私であったはずなのに、いつの間にか、多分、ディノを亡くしてからだろう、余り頓着なくなってしまった。昨日、あるオークションでウサギさんのついたスウェットパンツを落札した。その前に、その人からとてもそんな値段では手に入らないだろうという価格で某フレンチブランドのとても上品なオフホワイトのワンピースを手に入れていたので、お取り置きをお願いしていたのだけど、まさか、ウサちゃんのついたスウェットの落札日を待っていたとは...と「ちょっと意外でした」と言われてしまった。私はそのウサギがディズニーのキャラクターであることすら、知らなかった。ただ、部屋にいるとき、私はほとんどスウェットを着ている。ジャージではなく「スウェット」である。私は男性を見る時、決まって、服よりも「靴」を見る。靴を見ると、たいてい、その人なりがわかる。さすがにスニーカーでは判らないけれども、ちゃんとした靴を履いた時、どんな靴を履いているかで、だいたい私のカンは当たっている。その点で言うと、やはりエリック・クラプトンは「いい男」だなあ...と思うのであった。