紹介文
明日から夏休みという終業式の日、小学校を休んだS君の家に寄った僕は、彼が家の中で首を吊っているのを発見する。慌てて学校に戻り、先生が警察と一緒に駆け付けてみると、なぜか死体は消えていた。「嘘じゃない。確かに見たんだ!」混乱する僕の前に、今度はS君の生まれ変わりと称するモノが現れ、訴えた。―僕は、殺されたんだ。半信半疑のまま、僕と妹・ミカはS君に言われるままに、真相を探る調査を開始した。
向日葵の咲かない夏
面白いんですが、後味の悪い本。
読み進めていくうちに、3歳なのにこの会話力や
理解力は何なんだ?という妹の存在など
不自然なところが多々出てくるのですがそれは大体
結末あたりで理由がわかるので(一部ほうりっぱなしのモノもありますが)
それは良し。
ただ、妊娠初期に主人公の少年が母親を喜ばそうと
ちょっとした”嘘”をついて、その結果母親は流産してしまい
その後おかしくなって主人公にもつらく当たるという
設定ですが、万が一にもこんなことがあったとしても
母親、ここまで息子を憎悪するものでしょうか?
実の息子ですよ?
この流産でもう子供は望めなくなってしまい、それが原因で
父親が浮気してしかも離婚を迫られている・・とか
更なる不幸に打ちのめされたとかあったら
もう少し納得できたのかもしれないけれど。
そしてこの母親、実は全部正気の上流産した赤ちゃんに見立てた人形を
主人公と一緒の部屋に”寝かしに来る”のだとしたら
どうしてこの母親はそんなに残酷になれるのかそれはそれで不思議。
はじめはこんな風に虐げられた”可愛そうな”主人公が
事件に遭遇して・・という視点で展開するのですが終盤
それがガラリと変わってしまいます。
登場人物は皆孤独や悲しさを抱えていてそのはけ口を
残虐性として発揮します。
母親>主人公>S君(いじめられっこ)>殺された犬猫
といった具合に。
ラストはワタシの苦手な”読み手に判断をまかせます”的な
終わり方ですが、それでいて書き手には確たる
結末がイメージされているような印象。
ワタシ的には最後のほう、死んだものが生まれ変わるとしても
世の中は広くてあまりにたくさんの生き物がいるのだから
自分の身近に生まれ変わってくる確立はどれくらい
小さいものだろう?と主人公がウッカリ考えるところに
すべての答えがあるんじゃないかなと思いました。
ってことは妹も事件に関わった2人も本当ならありえない確率なのに
ちゃんと主人公の身近に生まれ変わっているということは・・
すべて主人公のつくりだす”脳内物語”にすぎないのではないかと。
そのことに主人公自身気づいてしまったのに気がつかなかった
フリを続けていくのではないかと。
この主人公、間違いなくこの後も犯罪に走ると思いますが
その続編もぜひ読んでみたいです。