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北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2008.09.15
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お友だちの坂之上洋子さんのブログに「品がなくて朝日新聞の連載却下されたブランド論」というエントリーがあって、楽しく読ませていただきました。坂之上さんのボツ原稿は、しっかり単行本に収められているようです。
実は私も、日本の某金融機関のPR誌向けにコラムの執筆を依頼されたことがあったのですが、「品が無い」というよりは、コンプライアンス重視の日本の金融機関ではとても出せない内容だったのか、ボツになってしまいました。ほとぼりも冷めた頃ですし、せっかくなので初稿のままブログのほうで公開させていただきます。




出資先の中国企業の会議室に入ると、普段なら整然としている空スペースに、使い古されたサーバーが山積にされた異常な光景に遭遇しました。その会社のCEOは「ちょうど今日、運び出してきたんだ」と上機嫌に説明します。その日は、その会社の売掛金の評価について話し合うことになっていたのです。

私たちが出資しているインターネット広告エージェンシーは、前年比数倍と言う驚異的な売上の伸びを遂げていましたが、それと比例して売掛金の残高も増えていました。しかも支払期限を半年以上も過ぎた売掛金が全体の1割ほどを占めるようになっていたのです。ここまで放っておいたのも、以前北京で総経理を務めていた広告会社の売掛金の回収も遅延気味でしたが、期の節目ごとに”気合いを入れて”対策に臨めば何とか回収できたと言う”成功体験”があったからでした。
とは言え、顧客の多くが日系企業だった前職の時とは異なり、そのインターネット広告会社のクライアントは大半が中国企業で、しかも例えばオンライン・ゲームなど、インターネット上でのサービスを提供している新興企業が多いのも不安材料でしたから、支払期限を過ぎた売掛金について一つ一つ回収状況を確認する作業を始めたところだったのです。
会議室に山積にされたサーバーは、売掛金の”形”として顧客であったオンライン・ゲーム会社から強制執行で運び出してきたものでした。

多くの日本企業の皆さんが、中国での売掛金の回収を心配されているのではないでしょうか。
中国では、日本のように請求書を発行すれば自動的に期日めでに送金されるようなことは滅多にありません。中国企業の会計責任者は支払を遅らせれば遅らせるほど評価されるのです。ですから支払期限が過ぎても入金されない場合には、仕入れの責任者に支払を督促しても埒が空かず、会計責任者に支払をお願いしなければならないようなケースに遭遇します。
とは言え、私の経験上、支払期限が過ぎた売掛金であっても回収不能になることは滅多にありません。取引先が倒産した場合や、契約書に不備があった場合は別として、それなりの努力が必要な場合もありますが、何とか回収できるものです。

コンシュマー商品を製造・販売する日本企業の多くは、中国における売上代金回収リスクを過剰に警戒して、ホールセラーやリテーラーに対し現金取引を前提としてきました。
これは堅実な方法ではありましたが、商品の販売チャネルを絞り込む結果となり、外資系量販店や資金力のあるリテーラーの店頭にしか日本製品が並ばない、と言う状況を生み出すことにも繋がりました。いくら商品力に自信があっても、コンシュマーが手軽に手に入れられる環境を整えなければ販売は伸びません。せっかくテレビを使って広告活動を行っても、身近な店先で商品が見つからなければコンシュマーは買うことができないのです。メディアを使った宣伝よりも、店先に商品が並んで、それを購入するコンシュマーがいて、購入者がその商品を評価して、或いは友人・知人に口コミで評判を伝播することによって、ブランド力や商品力は高まるものです。
ですから私はかつてのクライアントに、何百万元ものお金をテレビ広告に費やするくらいなら、そのお金を売上代金が回収できなかったときの損金に充ててでも、販売チャネルとの取引条件を緩和してより多くの店先に商品を並べるべきだ、とお勧めしてきました。そうは言っても、売掛金の焦げ付きは販売責任者にとって不名誉なことですから、多くのクライアントはリスクが顕在化しない広告宣伝のほうを選んだものです。
結果として、日本企業の商品の多くは都市部のコンビニやスーパーやデパートでしかお目にかかることができず、中国のマーケットを”面”として攻略することができずにいます。
もちろん富裕者層が多く生活する都市部に、リソースを集中投下する方向が間違いとは言えないでしょう。

農村部の貧困地帯で代用教員を務めることになった少女とその教え子のこどもたちを描いた張藝謀監督の映画『あの子を探して』に、チョーク一本ですら貴重な貧しい農村のよろずやで先生と子どもたちが一本のコカ・コーラを買い、みんなで回し飲みするシーンがあります。貧しい村で暮らす子どもたちにとっては高価で容易には買うことができない”憧れ”の飲み物も、実は中国のどこに行っても売っているのです。

欧米のコンシュマー商品の多くは、都市型マーケティングから脱却して広大な中国を”面”として捉えた戦略を取っています。
もちろん、ホールセラーやリテーラーに現金前払いを強いたのでは販売チャネルは広がりませんから、市場導入時には取引条件を緩やかにして、売掛金の焦げ付き覚悟でも配荷率を高めていきます。そして、商品がマーケットに浸透した途端に取引条件を厳しくするのです。コンシュマーが買いたがる商品に成長すれば、販売店は前払いで仕入れてでもその商品を店先に並べておく必要に迫られるはずだからです。
このように、販売当初は回収リスク覚悟で拡販に努め、売上が大きくなってから回収リスクを小さくしていく、と言う方法で成功している商品は少なくありません。

さて話を戻しますと、私たちが出資したインターネット広告エージェンシーの”不良債権”の8割は、支払期限を最長で1年以上もオーバーしたものの、なんとか回収することができました。残りの2割クライアントが倒産したり、夜逃げしたりしたため回収が危ぶまれたのですが、その一部は冒頭のサーバーで現物回収して公的競売によって債権とほぼ等価の現金にすることができました。
この会社の法務部には弁護士資格を有する社員がいて、契約書類がしっかりしていました。法廷に持ち込まざるを得なかった事案についても、自社弁護士を増やして迅速できめ細かな対応が取れたため、訴訟が長引くことは無かったのです。

相手先の倒産のため回収不能と諦めていた債権に関して、CEOはトンでもない”裏技”を行使しました。クライアント(広告主企業)から回収不能に陥ったことを盾に、仕入先であるメディアと交渉し、その分の代金を帳消しにしてもらったのです。つまりデフォルトとなった売掛金と相応分の買掛金をデフォルトにしたわけです。
こうした対応は、商品であるメディアの直接原価がゼロに等しい広告業界だからできる技でしょう。無形の商品を販売する以上、売掛金が回収できなくなったからと言って在庫商品を引き上げてくるわけには行きませんから、業界全体の暗黙の了解のもと、広告主から回収できなくなった代金はメディア側が面倒をみてくれるという”セーフティ・ネット”が形成されているのです。インターネットに限らず、テレビ局や新聞・雑誌社などのメディアであっても、日頃お世話になっているエージェンシーに対してはこうした措置を取ることもあるようです。

期限を過ぎた売掛金問題が一段落したとき、買掛金が心配になりました。
案の定、支払期限を過ぎた買掛金がたくさん存在することが発覚….。会計責任者に尋ねると「取引先のメディアから、まだ督促を受けていないから大丈夫。」とのこと。

中国では、まだキャッシュフローが流暢な状態とは言えません。若い経営者の中には、キャッシュフローの重要性を理解した上で、期限どおりの入金と支払の管理を重視する人たちが増えてきましたが、売掛金と買掛金の管理を軽視する企業がまだたくさんあることも事実です。
現金取引を原則としたり与信管理を厳しくしたりしてリスクを減らす方法もありますが、ダイナミックに展開するためには信用取引が必要になることもあるでしょう。その場合、机上のキャッシュプランどおりには運ばないことを念頭に入れた、余裕を持った資金計画も大事になるでしょう。




最後のほうは、依頼もとの金融機関にも気を使ったつもりだったのですけど....。






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Last updated  2008.09.15 19:00:44
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