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2007年07月21日
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大船渡農 2-6 山田

スコアボードに記されていた熱戦を証明するイニングスコアが
音もなくフッと消えた。
それはまるで大農野球部の終わりを告げるかのようであった。
来年以降『大農野球部の夏一勝』を目指すことは もうできない。
しかし その夏一勝に向けて 人間の成長を勝ち取ろうとした
約150人の選手達の想いというのは
消えることはない。
大農野球部にかかわったすべての人の中に
ずっと生き続けるだろう


1.プレイボール前一年間

 一年前、その年の選抜大会に出場した一関学院を相手に2点を奪い、21点を奪われてそのたたかいを終えた選手達。ところが、そのときに次年度に残るだろう5選手の内、2選手が野球部を後にした。さらに、ほかの部から選手を借りようにも、ただでさえ男子生徒が少ないところにほかの部活の大会と日程がダブってしまい、秋春の公式戦は辞退せざるを得なかった。

 先頃紹介したスポーツ新聞の記事によると、5月上旬に2試合対外試合をする事ができたが、実際は盛岡農、遠野緑峰両高校から選手を借りていて「紅白戦に大農の選手を混ぜていただいた」という状態であった。
 しかし、こういう状態にあっても、三年生のエース、センスに優れたキャッチャー、努力家の三塁手の3人は、個々を磨き続けていた。私も時々通りかかっては野球部の練習を遠くから眺めていたが、3人とも手を抜いている様子は全くなかった。噂では「夏の大会も辞退か」「いや、他校との連合チームで出るかもよ」という話も聞いてはいたが、私個人の心境としては「何とか同じ学校にいる人達でこの大会に臨ませてやりたい」。連合チームも悪いとは言わないが、意気投合するまでには時間がかかるからだ(04年の北上農・翔南チームが機能していたのは、事実上は同じ校舎・学校であったから)。それなら、同じ釜の飯を食っていた面々で、この大会に臨ませてやりたい。

 抽選会の記事を見て(拙稿第255号を)大農単独チームで最後の夏に臨む事を知った。
 「最後の舞台に立てるか…よかった。」
 彼らの頑張りを見続けてきた人も多いはずだ。
 その人達の前で『積み上げて来たモノ』を見せてほしい。
 そういう思いを抱きながら、今年も私は野球場に足を運ぶ事にした。
 大農野球部を見届けに。

2.攻勢食らう“雑草チーム”

 初戦の相手は山田高校。部員は16人(選手13人)。人数こそ少ないものの、大農に比べれば長く野球チームとしての鍛錬を積んできた。投手もタイプの違う3人いて、練習前のノックでも動きの違いを見せ付けていた。
 一方大農は…チームとしての練習をしてから一ヶ月も経っていない。同じく試合前のノックではエラーをしている光景が多かった。

 「…頼むぞ、エース」
 ブルペンに目を移したとき、左上手から角度のある重そうな球を放っているエースの姿があった。実戦の機会には恵まれなかったものの、ひたすら鍛え続けてきた成果を出そうとしているエースの姿がそこにあった。
 「ここまで来たら、ジタバタしても仕方がない。みんなができる事からしていけばいいんだ。」

 試合は始まった。先攻めは山田高校。
 「先ずは初回…しめていこうぜ!」
 試合前のノックでは不安視されていた守備陣だったが、先頭打者はサード、2番打者はピッチャー、3番打者はショートに打たせとった!
 「よし、これで入りは良かったぞ!」
 …先制点を取られ、どうにかしようと気をあせって大量点を奪われる事の多かった大農だったが、初回をいい形で終える事ができた。

 しかし…2回に安打の走者を牽制球の間のディレードスチール→二塁けん制の暴投→サードゴロを一塁手がエラーという形で1点を失い、3回にはエラーで傷口を広げた後に2安打を打たれ0-3とされてしまった。だが、大農の選手達の間には、それまであった「あせり」を見る事はなかった。そこにあったのは「一つ一つのプレーを大事に全力で」という姿であった。
 そう、後ろを振り返っているヒマはなかった。

3.反撃開始…そして2-4。

 4回。ここまで相手の先発投手の前に四球一つに抑えられていた大農打線だったが、この状況の打開に動いたのは2人の二年生の攻撃からだった。
 この回先頭の打席に立ったキャッチャーの選手の初球攻撃は右中間へ!二塁打にして反撃ののろしを上げた!続く「努力家のサード」は送りバントをしたが、どういうわけか、相手の一塁手が一塁への送球をカットしてしまい(記録上ヒット)ノーアウト一、三塁とした!
 「頼むぞ、キャプテン!」
 去年、5年ぶりに大農に得点をもたらしたエース兼主将が打席に立った。最後の夏の力み?から最初の打席ではゲッツーに打ち取られてしまったが、この打席こそは…と期待したが高めのボールを振らされて三振。その後の二人も凡打に打ち取られ得点0に終わった。

 しかし、この回あたりから相手投手の投球を捕らえはじめて来た。
 次の回は7番の巨漢の一塁手が体を投げ出してレフト前に、8番の外野手がうまく間を抜いてライト前に持って行った。この回も0だが、期待は膨らむ。
 この日好調の4番以降3連打を食らい、1点は失ったが、キャッチャーの機転と、一年ショートのセンスあるプレーでこれ以上の失点を防いだ6回裏。この日最大の反撃が始まった。

 2番打者が凡退、3番のキャプテンが四球で出たものの、続く4番の投手ゴロでツーアウト。「この回も…無理か」と思った私は馬鹿だった。
 続く5番のセンターの選手がレフト前にはじき返して、打席には美術部からの助っ人選手が入った。ここで、ランナーにいた2人が一気に走り出す!ダブルスチールだ!キャッチャーあわててサードに投げるも成功!
 「すげーな、野球部員差し置いて4番に座ったわけだわ。」
 4番・ショートに座った一年生の選手は、別競技でより上のレベルを目指していた、という話だが、その上のレベルのすごさを知ってしまい、その競技を中断し大農に来たという話を聞いた。先の守備といい、センスはいい。

 そのすごさに圧倒されている間に、6番打者は必死に粘っていた。そして7球目のストレートを…思い切り引っ張った!
 打球は…レフトの頭上をはるかに越えた!一人返った。二塁ランナーも三塁をける!外野からボールが返って来て…二塁ランナーが早くホームを駆け抜けた!2点返して2-4!
 大農応援団は沸きに沸いた。練習参加一ヶ月未満の助っ人選手の活躍で返した2点。しかし、練習期間は短かったとはいえ、彼らもまた「大農野球部の仲間」であった。
 この興奮が冷めやらぬまま攻撃終了。2-4と差を詰めはじめた。このまま勢いに乗って逆転に。ボルテージは一気に上がり始めていた。

4.最後まで 彼らはあきらめなかった。

 この回まで79球を投げてきたキャプテン。点をとった後のこの回をしめていきたかった所だが、山田高校も一年間野球の練習をし続けてきた意地があった。先頭の9番打者が左中間を破る二塁打を放つ。続く打者はセカンドゴロに打ち取ったものの、2番打者のセカンドゴロをファーストが取れず1点を失った。さらに4番打者の強烈な打球をサードが処理しきれずまたも1点を失い2-6に。
 「頼む、このままズルズル行くな!」
 しかし、ここでもキャッチャーの機転がピンチを救った!二塁へのけん制でランナーを挟みタッチアウト!打者も打ち取ってピンチの拡大を食い止めた。それにしても、視点の広いキャッチャーだ。恐れ入った。

 この後も7回にそのキャッチャーが四球で出塁後機動力を発揮したが三盗を失敗して生かす事ができず、8回にもキャプテンがヒットを放ったものの、いい当たりが正面をついたりして、得点に結びつけることができないままでいた。
 試合も終盤に差し掛かり、曇天だった空模様が明るくなってきた。この日の天気予報では、むしろ雨が降るのではないか、とも思われていたが、天気もにくい演出をするものだ、と思った。試合は9回に入った。何年ぶりだろう。9回まで試合するのも。

 その9回。内野安打とエラーでまたもピンチを迎えていた。ワンアウト一、三塁。ここで相手の3番打者が投手ゴロを放つ…投手の守備体勢を見た三塁ランナーはダメを押さんとホームに突っ込んできた!しかし、連携よくホームに投げ三塁ランナーを刺した!ツーアウト!
 「ここで4番打者と相対するか…」
 ここまで4打席、全打席で安打・安打性の当たりを放っている強打者が登場した。
 「どうせなら、この打者を打って取って後の反撃につないでしまえ!」
 9回に来ても、キャプテンの投げる球は勢いを失わなかった。
 相手4番を2ストライク1ボールに追い込んだ、この試合118球目!

 一塁ランナーが走った!キャッチャー二塁へ投げた…と同時に三塁ランナーが突っ込んできた!
 「ホームを殺せ!」
 ショートが機敏な動きでボールをカットしホームへ投げた!判定は…アウト!
 ずっと野球をやっていても、必ずランナーをアウトにできるわけでもなかった。
 だが、こういう急造のチームでも、いい連携のプレーを見せてくれた。
 ムードは最高潮。

 これではまずいと、山田高校は9回に投手交代を告げた。
 一年生のアンダースロー投手。

 大農応援団は、最後の最後まで「あきらめんな、こっからだ!」と叫び、選手達にエールを送り続けた。
 選手達も、必死の反撃をこころみた。

 だが、最後の打者もセカンドゴロに倒れ、スリーアウト。
 曇天ながらも夏の太陽がグラウンドを照らす中
 大農野球部の挑戦…
 「夏一勝」への挑戦は 幕を閉じた。

※後編に続きます。





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最終更新日  2007年07月21日 14時11分47秒
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