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マンション管理相談室

●マンション管理士になった理由




マンション管理士になるまで、そして、なってから



今、日本ではきちんと管理ができないために資産価値の落ちていくマンションばかりです。

マンション管理士はその現状を少しでも改善すべく誕生した資格です。

そのことを頭の片隅において、この後を読んで頂ければ、より深く私の考えることをご理解いただけると考えています。





【マンション購入とトラブル】


私がマンションを購入したのは、2000年のことです。

安月給の私には新築など夢のまた夢でした。

購入したのは公団分譲の築20年以上の中古団地でした。

ここを選んだ理由は、以前自分が両親と住んでいたからです。
管理の状況がよくわかり、おかしな心配をしなくてよい、と考えたからです。

ところが、とんでもないところに落とし穴がありました。

古い建物ですから仕方ないのですが、ドアクローザーと水道の一部に不具合がありました。

問題だったのは、売主が中古だから、壊れていて当然だし、そもそもすでに買った後で文句を言うなんてもってのほか、だと言い出したことです。

私は、不動産関係にまったく知識がありませんでした。
それでも、契約書はきちんと読みました。


売主の瑕疵担保責任という項目がありました。

そこには、引渡しから2年間は瑕疵については、売主が責任を持つ、という内容が書かれていました。

さらに、物件を下見した時、仲介の不動産業者の担当者に確認しました。

「買ったは、いいけど、壊れていて使い物にならなかったら、どうなるの?」


回答は、瑕疵担保責任 がつくから、大丈夫です、ということでした。


しかし、不具合を見に来た売主さんは激怒でした。

「ふざけるな!引っ越すまでの間にあれだけ時間があって、何を今さら言い出すのだ!」

本当に怒鳴っていました。

売主さんは、いわゆる一部上場企業に30年以上、勤務している方です。

契約の時、私と一緒に重要事項説明を聞いていました。
瑕疵担保責任についても聞いたはずです。


しかし、真っ赤な顔で、怒り狂っていました。

私は、不動産業者の方を見ましたが、黙ったままです。
業者は買主より、売主に頭が上がらないかのようでした。

さらに売主さんの奥様が、とんでもないことを言いました。

「ドアクローザーは、あれで普通でしょ。」

ドアクローザーは、とても大きな音がして、壁が震えるほどの振動がします。
そして、内部から油がたれていました。

いったい、どういう神経をしていると、「普通」と言えるのでしょうか。



私はどうしようもないほど悲しくなりました。

私たち家族はこれから何年もここに住むのです。

最初の思い出がこれです。悲しすぎます。


それでもこらえて、

「別に不良品を売りつけられたとは思っていません。」

と伝え、しっかり相手を見ました。


少し沈黙の後、売主さんも興奮がおさまったようで、不具合を一緒に確認しました。
そして、売主負担で直してもらうことになりました。

気分はどうにもなりませんが、一応目的は果たしました。

もし、あの時、何事もなければ今もマンション管理に関係した仕事をすることはなかったと思います。

とても苦い思い出ですが、今になれば、貴重な経験だったと思います。


「しあわせはいつもじぶんのこころがきめる」


相田みつを先生の言葉が胸に深く染みてきます。







【初めての定期総会】



入居後、半年近く経ってから、定期総会に出席しました。

その時、ちょうど大規模修繕の話が出ました。

管理会社からの提示金額が、かなりの高額であり、修繕委員会ができました。
そして、半額以下でやれることがわかったそうです。

それから、4ヶ月ほどで臨時総会が開かれ、その議題が特別決議を通りました。

当時、区分所有法では、共用部分の変更について、多額の費用がかかる時、
特別決議でなければいけないことになっていました。

そして、大規模修繕は共用部分を維持することが目的ですが、時代が変われば維持だけでなく、改良も必要となります。

つまり、考え方によって特別決議が必要なわけです。
管理組合の理事会は、後からクレームがついて、大規模修繕ができないことになったら、団地全体のマイナスになるので、特別決議にしたわけです。

※注;現在は区分所有法が改正され、大規模修繕の決議は普通決議でよい、ことになっています。

私は総会に出席して、この団地を選んでよかったと思いました。

同時にマンションは管理が非常に大切であるということを知りました。

総会の決算を見て驚きました。1軒あたり100万円くらいの修繕積立金が残っていました。
大規模修繕の費用を払い終えた後であるにも関わらずです。






【マンション管理士資格を知る】


同じころ、会社の別の課の上司から、マンション管理の新しい資格ができるという情報を得ました。

その上司は、すでに区分所有管理士を取得しており、業界内では区分所有管理士がその新資格に移行するとか、管理業務主任者が移行するとか、いろいろうわさになっていると教えてくれました。

※注;区分所有管理士は、高層住宅管理業協会が認めた資格です。
管理業務主任者は、管理会社にある一定の数、置かなければならない資格です。
宅建業の宅建主任に似た資格です。

バスの中で、話題もないから、と水を向けたために得た情報ですが、これが大きな転機になりました。

当時、私はビルメンテナンス会社に勤務していました。
しかし、仕事は総務部ですから、ビルのことはほとんどわかりません。

せいぜい、掃除の基本と総務の前に従事した営業のことがわかるくらいでした。

ところが、その年の夏になるころ、総務部長の猛烈なパワーハラスメントによって退職に追い込まれました。

そして、次をどうしたものかと思い、考えている時、例の新資格のことを思い出しました。

調べてみると、すでに「マンション管理士」という名前もついていました。

そして、専門学校での講義がちょうどスタートするところでした。
急いで、受講前のセミナーに参加し、自宅から40分くらいの校舎に通うことにしました。

マンションの現状についてはすでに知っていたので、ぜひ、この資格を取得して自立したい、と思いました。

しかし、法律の勉強はほとんど初めてです。
条文を少し読むだけで眠くなってしまうのです。

どうしたものか。

困り切っていましたが、ふと、ひとつのことを思い出しました。







【法律の勉強を克服】


マンション管理士受験を決意し、勉強を始めましたが、初めての法律に戸惑い、眠気ばかりの時間が続きました。

困り切っていましたが、ふとあることを思い出しました。

携帯電話のタイマーを使ったのです。

集中しようとしても眠くなる、だったら、時間を区切って15分でどこまでやるか、あらかじめはっきりさせようと考えたのです。

そして、これが実に効果的でした。
15分を意識するので、眠くなりません。
また、どこまでやるかも決めてあるので、早く読めれば残りは休み時間です。

これを繰り返すと2時間くらいはあっというまでした。

区分所有法、民法、マンション管理適正化法など、ドンドン進めました。


同時に、専門学校に行く時は質問を集めておいて、講義終了後にバンバン質問しました。

必ず最後まで残り、他の受講生の質問もすべて脇で聞いていました。
全員が終わってから、自分の質問をします。
時には、覚えたくても覚えられない部分を理解しているのに質問しました。
おかげでその部分が試験に出ても正解できました。

マンション管理士試験の全体が見えてきたのは、2ヶ月位してからでした。

ところが、まだ、大きな問題がありました。

通常、国家試験は過去の問題があって、それに合わせて勉強します。
マンション管理士はできたばかりなので、何もありません。

どうしたものか。

また、考えなければなりませんでした。






【問題集の選択と模擬試験】


次の問題は、過去の試験がないため、ポイントが絞れないことです。

対策のひとつは、玉石混交でしたが、予想問題を大きな書店で集めることでした。
中にはひどいものがあって、使い物になりませんでした。
それでも、おおよその傾向がみえてきました。全部で800問集めました。

ふたつめは、模擬試験を受けることでした。

予想問題を集めるためだけでなく、本番で落ち着くために必要だと思いました。

模擬試験を4回受け、予想問題は集めた800問と合わせて、1000問になりました。
これを本試験までに3回やりました。

ちなみに模擬試験では、4回とも、合格圏内でした。
安心は失敗の元と思いました。

なにしろ、実務を知りません。
テキストと問題集がすべてです。

案の定、本番で、大変なことになりました。







【マンション管理士試験当日】


私は模擬試験の好成績にも油断は禁物と思っていました。

学生時代は将棋部にいました。

将棋の格言で、こんなのがあります。

「うますぎる時は注意せよ」


何度も痛い目にあっていたので、充分注意していました。

しかし、試験当日は大変でした。

なにしろ、時間が半分過ぎても、思うように回答が進まず、しかもそれまでの回答も自信のないものが多かったのです。

絶対に40点を獲るつもりでしたが、絶望的でした。

理由はよくわかっていました。

模擬試験や問題集とは傾向が明らかに違っていたのです。

諦めそうでした。

それを思いとどまらせたのは、費やした時間と努力でした。

よく考えると、模擬試験で好成績を取れるまで努力したわけですから、それなりに実力は着いたはずです。

その自分ができないのですから、40点に届かなくても合格はできるかもしれません。
だとすれば、諦めている場合ではありません。

気を取り直して、問題に取り掛かりました。

試験終了時には、まったく自信がありませんでした。

帰宅途中に専門学校に寄り、回答速報を確認しました。

38点でした。実に微妙な点数です。

専門紙には、合格ラインが40点を超えると報じていました。

それでも自分を信じていました。
妻にも「あの問題で、合格点が40点を超えるのは考えられない。」と話していました。


そして、発表日。

ギリギリ合格していました。

本当に嬉しかったです。
間違いなく、高校や大学受験より嬉しかったです。

そして、この経験はとても貴重なものでした。
勉強が本来、楽しいものであることを知りました。
そして、知識を増やし、考える能力を鍛えるのが好きになりました。

合格の次に考えたのは、マンション管理会社に勤務して、実態を知ることでした。

ところが、ここにも思わぬ落とし穴がありました。









【マンション管理会社に応募】


マンション管理士に合格できたので、すぐに管理会社に就職しようと応募しました。

ところが、なぜか書類選考で落ちます。

まったく理由がわかりません。

半年近くかけてようやく、ある管理会社に就職しました。

入社して初めて書類選考で落ちたのかがわかりました。

会社の人が言うには、マンション管理士は管理組合の味方であり、管理会社からすると敵に近い存在に思われている、ということでした。

てっきり、管理業務主任者だけでなく、マンション管理士も取得している方が管理会社就職には有利だと思い込んでいました。

本当にとんでもないところに落とし穴があるものです。

私は手当たり次第に応募していましたが、数10社から断られました。
そんなことなら、管理業務主任者だけだと履歴書に書くべきだった、と思っても後の祭りです。

話を戻します。


私は東京支店勤務の予定でした。

自宅から遠いのでイヤだったのですが、文句は言えません。

初出勤は連休明けの日でした。
そして、そこの責任者がどうしたわけか、当日、お昼近くまで会社に来ませんでした。

ここからまた、少し私の道は思わぬ方向に進むのでした。







【初出勤】


東京支店だと言われて初出勤の日、責任者が遅れてきました。

すぐに昼食の時間になり、食事に誘われました。

そして、お寿司をご馳走になり、お酒まで飲まされました。
連休明けでお客様からの電話もない平和な日だったようです。

責任者の方がすっかりご機嫌で話しかけてきました。

「東京では遠いねえ。神奈川の支店に変更しよう。どうかな?」

「はい、ありがとうございます。」

何とラッキーなことでしょう。
お酒を飲んでご機嫌だったために勤務地が近くなりました。

そして、翌週、神奈川支店に行きました。

何かがあったようで、事務所がバタバタしています。

支店長にあいさつはしたものの、少しも話ができません。

30分ほどして、支店長から、今日は話ができそうもないので、明日、出直して欲しいと言われました。

よくわからないまま、翌日、再び出社しました。

その日は落ち着いた感じでした。

いろいろな説明を受けましたが、いっぺんに言われたのでよく覚えていません。

そして、私の指導担当者が決まりました。

ずいぶん年配の方で、メガネを掛けた真面目そうな感じでした。

この方が私に大きな刺激とエネルギーを下さることになるのです。







【最高の指導者】


私の指導担当の方は、元一部上場企業の部長でした。

それも転職をしてから、その会社に勤務し、新しいシステムを社内で作り、
その部門のトップになった人です。

実行力、発想力、問題解決力、交渉能力のいずれも私の欲しいスキルを
見事なまでにそなえた人でした。

しかし、その方の最高の能力は、指導する相手の気持ちを察することができる点にありました。

何度も不思議に思うほど、私の気持ちを見抜いていました。

指導を受け始めると、

理事会への出席
資料作り
総会への出席
重要事項説明
各マンションへの巡廻

など、非常にさまざまな経験を積むことができました。

最初に教えられたのは、徹底した

「現場主義」  です。

社内のことは何があっても、お客様に迷惑さえ掛けなければどうでもよい、しかし、マンションの現場ではそれは絶対に許されない。何があっても対応と処理をしなければならない。そして、そのためには管理員さんの協力は欠かせない。

と教えられました。


今、マンション管理士の仕事をしていて感じるのは、

管理会社の担当者が会社の都合や社内の処理を優先しているのではないか、



ということです。

それを変えるだけで、すごく進歩するはずだと思いますが、そのような思考回路を持っている人は限りなく少ないと思います。

話を戻します。

もうひとつ、教わったのは、とにかく前進する、ということです。

物事を進めると必ず障害が発生しますが、やれることから進め、障害をバンバン取り除き、乗り越えて行きます。

それはムリではないか、と思う案件もどこかに突破口を見つけ、最終的な目的に向かって進むのです。

すると、なぜか、道が開けてきます。

そして、驚くことにその経験が次の案件でも生きてきます。

すべての仕事が勉強であり、スキルアップであることを教わったわけです。







【最高の指導者2】


電車で移動する時間が多いので、いろいろ話をしました。

すぐに私の考え方や抱えている課題、様々なことを理解して頂きました。

1ヶ月もしないうちに、「いつごろまでこの会社にいるつもりですか?」

と聞かれました。


ビックリしました。そう長くいるつもりがなかったことをいつの間に気づいたのだろう、と思いました。

ウソを言っても仕方ないので、「あまり長くはないと思います。」と答え、
マンション管理士の仕事をしたいことを伝えました。

すると、「じゃあ、今のうちから、シナリオを作っておこう。」と言います。

そして、状況確認をして、打ち合わせを済ませました。


ある時、総会の資料を作りました。

ポイントだけ教わり、あとは自分で数字をあわせ、前回の資料に添った形で作り終えました。

これは貴重な経験でした。長くいないつもりの会社ですから、ひとつひとつがすべて大事なのです。

そして、総会を迎えました。順調に資料の順番どおりに総会は終わりました。
これも気分のよいことでした。手伝っただけですが、やはり嬉しいものです。

続いて、別のマンションも総会を迎えるのですが、こちらは大変です。

途中から管理を委託され、初めての総会だったからです。

2ヶ月くらい前の理事会で数字を合わせたものを会計担当理事に見せましたが、見解の相違で仕訳がゴチャゴチャになってしまいました。

やはり管理会社変更は、細かい部分まで苦労をします。

何度もやりとりをし、どうにか合意にこぎつけました。

このマンションでは、総会前に契約更新をすべく、重要事項説明が行われました。
契約更新はマンション管理適正化法で厳しく規制されています。

いい加減な更新で管理組合が損をしないように配慮したためです。



この時は、清掃の仕様がわずかに変わり、金額も微妙に変更されました。

これが同一条件ではない、と考えられるため、区分所有者に向けての重要事項説明が行われたわけです。

いずれも大事な経験でした。

マンション管理の現場での、毎日は実用書100冊でもかないません。







【最高の指導者3】


マンション管理会社で毎日勉強をしていた時、いくつか悲しいことがありました。

ある時、ひとつの管理組合にプレゼンテーションに行くことになりました。

その先方の希望で、30代の担当者を頼まれていました。
支店長は私に話を持ってきました。
そして、入社間もないのに、

すでに経験は3年あり、マンション管理士まで取得して張り切っている、

という設定にして欲しい、と言いました。

あまり深く考えず、「はい、わかりました。」と言ったものの、考えるうちにどうにも我慢できなくなりました。

一晩考え、指導の方にも相談しました。

「君の思うとおりにするのがいいよ。」

と言われました。

気持ちの迷いはなくなりました。

昼食後に支店長に、そのことを伝えました。

私「ウソはイヤです。」

支店長「ふ、それなら、それで構わないよ。」

と言いながら、鼻で笑っています。

「青いことを言っているな。」

というような表情でした。

自分でもへこんでいくのがわかるほど、がっくりして自分の席に戻りました。

隣に座る指導の方は静かに言いました。

「気にしてはいけないよ。ああいう人なんだ。君のせいではないよ。」

はっとして、隣を見ると、何とも温かい表情です。
穏やかさと優しさがにじみ出ていました。

「はい、ありがとうございます。」

と答えるのが精一杯でした。



ある時、修繕工事の見積が業者から届き、担当の若いフロントマンが会社宛の見積を管理組合宛に書き換えています。

金額の25パーセントを上乗せしています。
もちろん、サポートやフォローはしますが、いくらなんでも儲けすぎです。

普段から注文の多いマンションで、しかもかなり古いために手間もかかっているのですが、それとこれは話が別です。

手間がかかる分の費用が欲しいなら、委託管理契約をする時、更新する時にそれを話せばよいのです。

しかし、それでは管理先を失いそうなので、こんなずるい方法をするのです。

私の指導の方は、カンカンに怒っていました。

お客様のためになっていないからです。

企業である以上、利益は必要ですが、適正な割合は10パーセントくらいではないかといっていました。
そして、現実には8パーセントくらいしか、上乗せしないと話していました。

実力のある人ですから、儲けようと思えばいくらでもやれる人です。
しかし、それは気持ちが許さないということでした。

私は、今までの経験から

ウソはいつか、知られてしまう

と思っています。

そして、この出来事から、お客様に見えないことこそ、誠実にしておかないといけないのだと教わりました。

「ウソの経歴」を使うことがどうしても我慢できなかった自分を温かく、優しい表情で見てくれた気持ちも理解できました。

あまり良い会社ではありませんでしたが、この方に指導して頂けたことが
こころから嬉しく、奇跡的な偶然を与えてくれた神様に感謝しています。(宗教的な意味合いはありません。)


ちなみに、「ウソの経歴」でプレゼンテーションをしたマンションは、私と指導の方が担当しているマンションの理事さんと知り合いの方が理事長をしていました。

もし、あのまま「ウソの経歴」を使っていたら、新規先を獲得するどころか、得意先を失うところでした。







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