中塚清【 創業魂の創出 VOL 3】自分を定義すると・・・ text= KIYOSHI NAKATSUKA ------------------------ 自分は、すべての繋がりの中に存在する。 第一節:どれだけ知っているか? ・意識している自分/無意識な自分 ・言い訳する自分/言い訳をしない自分 第二節:どう生きるか? ・なんで生まれて来たのだろう?/なんで生きているのだろう? ・私に出来るコトってなんだろう?/ほんとうに自分らしく生きる。 第三節:「自らを分かち合う」自分。 ・「素直」「自由」、そのまんまで、とても幸せで楽しい。 ・自分を信じて行動すれば、自信が持てる人生を生きられる。 ・ 自分にとって大事なコトは、本当は自分が一番良く知っている。 第一節:人間の心には、自分で分かっている意識と五感の世界、現代の心理学用語で言えば、 <表層意識>の部分と、それ以外に、自分でも気がついていない部分がある、という。 そして実は、それこそが人間の心を大きく動かしている。現代の深層心理学でいう深層意識がそうである。 <深層意識>として、まず自分と自分でないものを分離していると錯覚した上で自分に過激に執着する<マナ意識>という領域があり、さらに命と命でないものを分離していると錯覚した上で命に過剰に執着する<アーラヤ識>という心の領域があるというのである。 意識に五感・五識を加えて<六識>と呼ばれ、さらにマナ識とアーラヤ識を加えて<八識>と呼ばれている。 人間が執着する心・・・・マナ識(自己の執着)とアーラヤ識(命の執着) 唯識の八識説を学ぶ事によって見えてきたことは、 人間は、意識のうえでどんなコミュニストになってもエコロジストになってもヒューマニストになっても、 腹の底、心の奥では『自分と自分の命が一番大事だ』というこだわりを抱えているものだというのである。 心の奥底に、自分の命が一番大事という本音を人間は抱えている。これが普通の人間・凡夫の心の状態だという。 <自我>という言葉を、「自分にとっても人にとっても適切なこうどうができるように意識的に意志決定・ 行動する主体」という意味で捉えれば、人間が生きていく上で、そういう自我はたしかに必要なのだが、 そういう自我がでてきても、その奥底には「自己の執着」と「命の執着」が働いている。 普通の人間の心の奥底には、自分というものが実体として存在していると思って自分にこだわる心、 命と言うものが実体してあると思って命にこだわる心が深く根付いていて、 それが人間の感情や欲望や行動を規定している。 だから人間というものは、いけない、やめた方がいいと思って、つい憎んだり、恨んだり、ごまかしたり、 いじわるをしたり、へつらったり、いばったり、ねたんだり、攻撃したり、・・・ といったことをやるのだという。 ここで分かってきたのは、例えば国のためや民衆の為だと言ったり、意識のうえでは、 自分でもそう思ったりしていても、心の底では自分の地位や権力や富みや名誉のほうが大事という人間が、 スローガンとして「国のため」とか「民衆のため」というと、それにだまされて、 死んで犠牲になってしまう純粋で無私な人が山ほどいるということだ。 だから自分にこだわらない、無私な心を持った人間がかなりの数いても、 リーダーの中には本音は自分にこだわっていながら、建前はいいことを言う人間が出てきて指導すると、 指導された人たちが純粋な善意のつもりで残酷なことを行うといったことが、 歴史の中にしばしば起こっているということが見えてきた。 本音はエゴイストの指導者と献身的な無私な追従者の組み合わせは、しばしば悲惨な結果を招く、 さらに、指導者と追従者のどちらもがエゴイズム、建前は高眼な理想という人間からなる集団が、 ほかの集団と敵対し時、いっそう恐るべき事態を招く。 ここでヒューマニストもコミュニストもエコロジストも充分気付いておらず、唯識だけがはっきり気付いている事は、 人間の心は意識の層だけでできているのではなく、その奥底の、とことん自分に執着するマナ識、 命に執着するアーラヤ識から成っており、むしろその方が広く、深く、強いということである。 凡夫、すなわち普通の人、ほとんどの人は、そういう八識の心を抱えている。 だから人間の世界には煩悩が絶えず、争いが絶えないのだという。 八識から四智 人間は心の奥底までエゴイストだと言っているだけなら、唯識は鋭く正しいとしても、希望のない思想である。 だが、唯識の人間論は、それで終わりではない。確かにそうした八識の心を抱えた、 煩悩だらけの存在であるにもかかわらず、 「修行次第では四つの智慧を持った存在に成長・変容することができる」という。 その四つの智慧を完璧に備えた存在のことを「覚った人」「自覚した人」「魂で行動する人」と言えるだろう。 八識がどのように四智に変容するか、次回VOL4をお楽しみに・・・。 文/中塚清(なかつか・きよし) ----------------------------- ■関連記事 ・【今井義満氏インタビュー】・・・七條正 ■【中塚清創業魂・バックナンバー】
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