023768 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

BE★SEE -------- produced by Heiz Ginza

BE★SEE -------- produced by Heiz Ginza

宮崎さん

【スピードイエローのRSR】

第4話 男の矜持(オトコノキョウジ)
・・・磨きのハードボイルド 首都高バトル編

text= TAKAO MIYAZAKI
--------------------------
image

深夜0時過ぎ、ついに最終決戦の火ぶたが切って落とされた
クリスマスイブのせいか、幸いにして環状線外回りはガラガラ
まるで俺達のために用意された、貸切のサーキットのようだ

江戸橋JCTを過ぎて、本線の長い下りストレートに合流
ここで俺は、漆黒のGT‐Rの手綱を引き、スピードイエローのRSRに並びかけた
左にRSR、右に我がGT‐R    サイド・バイ・サイド
さあ、アクセル全開!!  いざ、パワー勝負だ!!

マフラーエンドから猛烈なバックファイヤーを放出しながら炸裂する、
我がGT‐Rの480馬力ツインターボエンジン
“一気に前に出てやる!”

ところが、水平対向6気筒3.8リッター400馬力弱のノンターボエンジンながら、
リアエンジン特有の優れたトラクションと軽量かつエアロダイナミックなボディを武器に、
RSRは一歩も引かない
まさにRSRは、レースに勝つために生まれてきた、生まれながらの戦士
「やはりな…  そうカンタンには抜かせてくれないか…」
譲らない2台
「RSRよ、おまえが生まれながらの戦士ならば、
このGT‐Rは、その戦士を倒すためだけに生み出された最終兵器なのだ!」

ピタリと並んで疾走する、黄色と黒のスーパーマシン

目前には、橋脚が左右を別けるタイトなS字コーナー
一歩間違えば、そこに激突!
危険極まりない最初の難関
コーナーが迫る!

“フウォ―ン・フォ―ン”
ヒール&トゥで5速から4速、そして3速へシフトダウン
闇夜にこだまする、美しいエキゾーストノート

「いくぞー!」

2台で橋脚を挟みながら左へターンイン
合流してすぐさま右へターンイン
両車とも美しいラインをトレースしながら立ち上がっていく
そして、まだ2台はピタリと並んだまま

次は、例の、銀座の高速S字コーナー
俺のお気に入りの、撃墜ポイント!
“さあ、ヤツはどう出るかな?”

…今、RSRは左車線   最初のコーナーでは有利なイン、だが出口はアウト…
…今、GT‐Rは右車線   最初のコーナーでは不利なアウト、
だが、出口ではインをとれる!

実は、江戸橋JCTからそれを見越して、わざと右側をキープ、つまり、仕込みOK!
ねらい通りのラインをキープできたってわけ
「これで勝てる!」
S字入り口では、イン側のRSRが一歩リードするだろうが、高速ゆえの
横Gでさしものポルシェですら、次の2つ目の右コーナーへの切り返しが苦しくなるだろう
そこを我がGT‐Rは一気に突く!
こちらの入り口はアウトでも、我らには秘密兵器“アテーサ4WD”がついている
アテーサが、我らをしっかりサポートしてくれるだろう

これぞ、勝利の方程式!

「さあ来い、高速S字よ!  目にもの言わせてやる!」

“フウォ―ン・フォ―ン”
2台並んで突入
インから、スピードイエローのRSR  若干リード
アウトから、我が漆黒のGT‐R
アテーサのおかげで、アウトからでも全く姿勢を乱さない

そして次、いよいよ次  切り返しの右コーナー
2台がまた並んだ
「女神が見えた!」
俺の前が、インコースがしっかり開けている
アクセル全開
「勝った!」

ところが……
RSRはアウトから、何とフェイントモーションを使い、
そこから豪快なパワードリフトに持ち込んできた
そしてサイドウェイ状態で、我が行く手を完全に阻んだ!…
「なにっ」
もつれるように立ち上がっていく2台のスーパーマシン
「くっ…………  やはり上手い…」
そうカンタンには、抜かせてもらえないらしい…

2台はテール・トゥ・ノーズのまま、汐留トンネルに突入
ノンターボ特有のカン高い音を浴びせながら逃げる、スピードイエローのRSR
そして、ターボ特有の重低音を響かせながら追う、我が漆黒のGT‐R
2つの音がトンネル内の壁面に反響、サウンドホールと化す

トンネルを出た先が、前回、RSRのロケットのような加速に
完敗した浜崎橋JCTへの高速区間  3車線あり、環状線の中でも最も広い場所
おまけに今夜は、一般車輌は、全くいない
俺達のための、貸切状態
「今度こそ、目にもの言わせてやる」

2台連なって、弾丸のようにトンネルから飛び出してゆく
フルスロットル
最初の高速コーナーをまたしてもRSRが見事なパワードリフトで制する
対する我がGT‐Rは、まるでレールにはりついて走るかのごとく、
しなやかに正確なラインを刻む
そして環状線随一の長いストレート
GT‐Rのツインターボが炸裂!  見る見る間に差が詰まる
そして今度は、左からRSRに並びかける
パワフルな漆黒のGT‐RがついにスピードイエローのRSRを捕らえかけた
「よしっ!」

ところが…
パワーで劣りながらRSRは意外とストレートスピードがのびる
あっという間に浜崎橋JCTの右コーナーが迫る
下りながら右に回りこむタイトコーナー
ここでは左車線は不利かつ、とても危険
仕方ない、ここはRSRに一歩譲るしかない
「チッ、あと50メーターいや10メーターストレートが長かったら……」
無念だがブレーキング
そしてまたRSRのテールに張り付き、タイトな右コーナーをクリア
「まだまだチャンスはいくらでもあるさ」

東京タワーを右手に、2台のバトルはまだまだ続く

芝公園  一の橋JCT  飯倉  谷町JCT

そして、前回俺が初めてあのスピードイエローのRSRに遭遇した、
そう、不意を突かれて左からブチ抜かれた、霞ヶ関トンネルへと続くストレート区間がやってきた
「ここで前回の仕返しをしてやろう  普段はめったに仕掛けない、ここで…」
アクセル全開
矢のように疾走するRSR
俺はGT‐Rをその背後にピタリと付け、スリップストリームに入った
スピードメーターの針が、急速に右へと振れる
「よしっ、トンネル入り口で仕掛けてみるか!」
そこで俺はスリップストリームから抜け出し、右側つまりインから
一気に差し切ってやろうと考えた
しかし、このトンネル入り口の右コーナー・イン側は、路面の舗装が
かなり荒れていてバンピーだが、我がGT‐Rには、そんなのカンケイない  行くしかない!

霞ヶ関トンネルが目前に迫る     「今だっ!」
一気にスリップストリームから抜け出し、RSRの右側に並びかけた
そしてトンネル入り口の右コーナーに突入

“ドドドドドドドド……”

200キロ弱のスピードで路面の凹凸に乗り上げ、我が漆黒のGT‐Rは激しく上下にピッチング!
しかし、マルチリンクのしなやかな足が必死でそれをいなしてくれる
アクセルオン    見事にクリア
RSRに遅れはとっていない…
いまだ真横に、ヤツはいる…
次はどの手で差すか…

視線を戻したその時!

何と、右側の合流ポイントから1台の大型トラックがもっさりとこちらの車線へ合流してくるではないか!
そして、我が漆黒のGT‐Rの行く手を阻もうとする
左側にはピタリとスピードイエローのRSR
ここはトンネルの中
つまり、俺には逃げ場はない!
このままでは、あの大型トラックに200キロオーバーで突っ込んでしまう…

「うおおおおおおお…………!!」

もう、フルブレーキングしかない   

“Gyeeeeee………”

悲鳴を上げるタイヤ
トンネル内にもうもうと立ち込めるタイヤスモーク
真っ赤に燃える、ブレンボのブレーキローター
意識が飛んでしまいそうに強烈な縦G
フルブレーキングにさしものGT‐Rも耐え切れず、思わず姿勢を乱す
テールが右へと流れ始める
アテーサが緊急発動  何とか姿勢を正そうとする
しかし、目前には大型トラックの荷台が……

「間に合わない!」

とっさに俺は、サイドブレーキを引いた
「もう、これしかない……」
そう、故意にGT‐Rをスピンさせて回避するしかない

“Kyeee eee………”

扇状にテールを振り出しながら、スピンターン!
どうにか大型トラックへの激突は回避できた

ところが…   

“ガツゥ――ン”
このスピンでGT‐Rの右フロントがトンネル内のコンクリートウォールに激しくキス!
ノーズスポイラーと右ヘッドライトを破損してしまった
そして進行方向と逆向きに鼻先を向け、漆黒のGT‐Rはようやく停止した


“フゥ―――――”


深くゆっくりと息を吸い込み、

そして大きく吐いた…


束の間の静寂…

聴こえてくるのは、俺の心臓の激しい鼓動のみ…

全身が、小刻みに震える…

冷や汗が、こめかみ辺りを流れ落ちる…

まるで宙に浮かんでいるようだ

「助かった……」

スピードイエローのRSRは、もうとっくに先行してしまっている


ホッとするのも束の間、激しく恐怖感が俺を襲う


…俺はなんてことをやってるんだ!…
…このコンクリートに囲まれたデンジャラスな首都高で…
…もし、さっき、あの大型トラックに200キロオーバーで激突していたら…
…コンクリートウォールに激突していたら…
…うおおお、恐ろしい、死にたくない、恐ろしくてたまらない、まだ死にたくない…

恐怖    あせり    困惑    喪失……

…こんな蛮勇、ここでやめても構わないんだ…

…だが、俺には王者としてのプライドが、  男としての矜持が………

意地    意気地    心意気、そして希望

「えいっ、やり直しだ!!」

俺と、隻眼となった手負いのGT‐Rは、もう一度立ち上がった
重低音のエキゾーストノートを霞ヶ関トンネルに残して

漆黒のGT‐Rは、また漆黒の闇の中へと消えていった……


つづく 

image

文・宮崎考雄(みやざき・たかお)

--------------------------------
■宮崎考雄プロフィール
20代はプロギタリストとしてロック・シーンの第一線で活躍する傍ら、峠や首都高などで「バトル」をしまくっていた・・という超ハードボイルド系職人。現在は車のことを知り尽くしたキャリアを生かし、トータルに車のサポートをする「車の磨き屋」美ワークスの代表を務める。

■LINK
美ワークス
・美ワークスのホームページ。かっちょいいクルマがいっぱい!

■Heiz新価値度AB91(止(ト)度100・TQ度100・BQ度100・銀座度100・EDGE度55)
・映像が目の前に浮かんできます。

■関連記事・「マリア・ヒタ」ライブ感想文へGO!

■Back Numbers
2008
------MarApr
May
Jun
July
Aug
Sep
Oct
NovDec


目次に戻る

Heiz銀座広報誌【新価値通信BE☆SEE 第10号】



© Rakuten Group, Inc.