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扉-DOOR- [全67件]
エピローグ〜神話世界〜 二人の神が衝突し出来た世界。 その戦いを知るものはいないが、その神は世界に知られている。 まだ誰もいない世界で、一人だけが存在していた。 神の戦いで消滅した力を持つ存在。 彼のみが世界の始まりと、九つの流星を知っている。 そして、世界に残された闇なる存在を・・・。 魔導を極めし存在。 彼の名は”ロード=マグナ” End
最終話〜Dark&Blue 神話の創生〜 遥か昔の話だ―――。 まだ、月という存在が崇高なもので、神聖なものだった時代だ。 世界には、知的生命体である人間の他に、天使と悪魔と呼ばれる者たちがいた。 人々や天使等は月を崇め、月を恐れていた。 月の持つ魔力が地を変えるといわれていたからだ。 神の使いといわれている天使でさえ月を恐れていた。 現在残っている文献には、聖の月と、闇の月と言われる、 2つの種類の月のことが書かれている。 聖の月は3年に一度輝くといわれていてブルームーンと呼ばれた・・・。 闇の月は6年に一度輝くといわれ、ダークムーンと呼ばれた・・・。 空は晴れ渡り、そよ風が緑を流れる。 天空には黒き月と蒼き月が互いに輝いている。 それぞれが力に満ち溢れ、互いに消滅させようとしている。 この日、世界は終わりを告げ、世界は始まった。 蒼き戦士は世界に立つ漆黒なる存在と対峙する。 邪悪なる気を周囲に撒き散らし、蒼き光と拮抗する。 「無の帰結・・・俺がいる限りそれこそが無としてみせる」 「くだらないことを・・・世界は無に帰すために存在するのだ・・・」 互いが一言づつ発し、衝突する。 言葉のキャッチボールとは言いがたい代物。 互いに投げ合うだけで、取ることはしない。 「神々の黄昏”ラグナロク”!!」 「終焉の帰結”ヴァルハラ”!!」 蒼き戦士は、この世の全てを知る神なる剣を手に、漆黒なる戦士は、この世の全てを消滅させる無なる剣を手にした。 意志ある剣のラグナロクは、主である蒼き戦士と思考を繋ぐことによって、シオンでは為しえなかった力を発動することが出来る。 蒼き戦士は一直線に漆黒の戦士へと翔ける。 もう二人にとって地面という定義は無い。 そこに立っていれば彼らにとってそこは地面となる。 消滅の力を持つ剣ヴァルハラは、闇なる存在が手にすることによって強大な力を発揮する。 漆黒の戦士はヴァルハラを正面に構えて、ラグナロクを受け止め、そのまま弾くように筋肉を動かして蒼き戦士との距離を再び開く。 「終刃・・・光麟剣っっ!!」 蒼き戦士は、ラグナロクの第一の力を開放する。 刀身全体に蒼き光を纏わせ、絶対攻撃力を付与する。 「黒剣・・・終刃」 漆黒の戦士は刀身を、闇で染めて絶対防御力を付与する。 互いが同時に飛び出し、拮抗するほどの力で衝突した。 『矛盾』という言葉が存在するが、この言葉は超常的な世界では通用しない。 全てを破壊する剣と全てを守りきる剣の正面衝突・・・。 凄まじい衝撃波が生まれ、蒼き戦士の手によって復活した大地も再び破壊される。 そして、絶対的な力を持つ剣は二つとも消滅した。 いや、消滅と言うよりも世界から存在を抹消されたに等しい。 既に、二人の力は人々が崇めていた神の力を超えた。 この世界に既に人類は存在していないが、二人は神として崇められ、恐れられるだろう。 剣が消えた後も、二人は互いに戦いを続ける。 回避も防御も行わない。 泥仕合とも呼べるかもしれないが、天空で続く衝突はそんな小さな言葉で片付けられるものではない。 衝突する時に生まれる衝撃波は、大地だけではなく世界というこの空間に影響を与える。 この世界に現在、過去、未来は存在しない。 終わりが見えない衝突は、その都度世界を構築する。 世界は原子レベルで破壊され、今までの世界全てを含んだ物へと構築される。 破壊と再生を繰り返した。 どれほどの時が経ったのだろう。 正確な時間軸は既に崩壊し、二人が存在する時間軸も変わり始めていく。 互いの衝突する速度は光の速度を超え、互いの崩壊が始まる。 「あぁ・・・世界を無に帰すためにある存在の俺が、貴様との戦いで世界を創生してしまうとはな・・・笑える話じゃないか?」 既に、半身が消滅しかかっている漆黒の戦士はその場で両手を広げて大げさに言った。 そうは言うが、当初の目的は果たされたようなものだ。 衝突によって、”今までの世界”は無に帰したのだから。 「言っただろう?世界を無に帰すことなど不可能だとな。まさか、俺自身が消滅するとは思わなかったがな」 同じく半身が消えている蒼き戦士は憂鬱そうにその場に立ち尽くしている。 蒼き戦士も、漆黒の戦士と同じく、目的は果たされた。 世界は違うが、無に帰してはいないからだ。 「だが、俺は何度でも世界を破壊するために復活するぜ。それが俺の宿命だ。あらゆる時間軸を超えてでも、必ず貴様の前に、世界の前に立ちはだかってやる。消滅する前に覚えておけ、俺の名はアラル=エレボス!!記憶の隅にでも残しておきなっ!」 漆黒の戦士”アラル=エレボス”はそう言うと全てが消滅して、霧散した。 「アラル=エレボス・・・俺がお前の前に立ちはだかるときは来ないだろう。だが、俺の力だけは世界に残す。世界は消えない」 蒼き戦士”アクゼリュス=シオン”は静かに目を閉じ言葉をつむいだ。 「シェマド・ローナス・クゼノ・ディクロス・リュオレ・ヴェクルス・オルア・リセグベルス」 残り少ない時間で、シオンは世界に自らの力を残した。 世界の遥か彼方からその力は降り注ぎ、シオンは消滅した。
第十九話〜重なり合う翼×蒼光の聖天士〜 俺は消えた。 邪神の持つ空間消滅の力で”世界”から消えた。 どれほどの空間が消えたのか分からないが、大地も空も無いこの場所には”世界”の破片が散らばっている。 手元にはラグナロクは無い。 ここに無いと言うことは、俺が最後にしたことは成功したということだ。 俺はラグナロクを”世界”へ遺した。 邪神と戦うために作られた神剣、世界の光となるべくして作られた。 だが、その力も使用者の力次第。 俺は選ばれた存在ではなかった。 所詮未完成である存在が、完全なる闇に立ち向かうことが徒労だった。 天使と悪魔と人間の中間の存在。 だれでもなく、どれにも似ている。 しかし、俺と言う個はそこに確かに存在していた。 遥か未来で取り戻した記憶、現在を生きるための力。 しかし、破壊を望む純粋なる力には遠く及ばなかった。 心は力と言うが、始めから俺の心は折れていたのかもしれない。 「この私を追い詰めた者がこんなところで何をしている??」 ただ無造作に”世界”が散らかっているこの場所に声が響く。 反響する場所ではないのにそれはよく響いた。 声の発せられた方向には灰色が立っていた。 未完成で完全なる存在に近づき消された存在。 相反する存在と正面から衝突し、共鳴を感じた。 そして、邪神の手によって存在は空間から消滅させられた。 「ここにいるということは、十獅楼に消されたということだな」 俺たちは戦いの中で互いの弱点を探しながら戦っていた。 しかし、互いを知れば知るほど近づいた。 個としての相似点が多すぎるのだ。 無の帰結。 それは灰色にとってどうでもいいことなのだろう。 だが、あの時感じた共鳴は何だったのか。 それは互いの心に深く残ったままだ。 「ちょうどいいじゃないか、続きを始めよう」 灰色はそう言って再び剣を抜いた。 既に刀身は半分に折れて、ボロボロの剣だ。 「いいだろう」 俺も無いはずの剣を抜く。 柄も無い、上から半分残った刀身だ。 互いが、お互いの破片を持って対峙する。 パズルの足りないピースが揃っていく。 何もかもバラバラな破片空間で、一つだけが組みあがっていく。 不完全体にして完成した存在。 完成形にして不完全体の存在。 何かが足りず、何もが揃っている。 この世界で唯二つだけの矛盾なる存在。 互いの持つ剣は既に結晶となり二人を取り巻いている。 ひょっとしたら知っていたのかもしれない。 互いが存在を世界から消し去られたときに、気が付いたのかもしれない。 記憶の隅で眠っていた記録。 翼は結晶となり更に密度を増していく。 互いが両手を前に翳した。 互いの両手は触れてはいないが少し押されただけで触れられる距離にある。 『FolcLeyoT・VaLycaaY・DyjeLytiaRc・AL・RayD・FoLtDiack・ValdYeLd・G・AlfaMana』 二人は同じトーン、同じスピード、同じ言葉を発した。 それは聖歌のように聞こえ、秩序も何もないこの世界に響いた。 結晶の壁は密度を増し、光り始める。 互いの姿は既に見えず、光の中ただひたすらに歌った。 『Ama・MaFla・G・dl・EYD・Lav・Kcaid・Tlof・Dyarla・CRai・TyLejy・dYa・Acy・Lav・Toyel・CLOF・・・』 結晶は次第に収束していき、一つの点となる。 その点にこの空間の全てが吸収され、膨張し、融合する。 点が光を放ち、線となり、扉が開く。 扉は蒼く光り、時と世界を繋ぐ。 光につつまれた空間が開き、足元には廃墟となった街並みが見えてくる。 崩れ去った世界の空から光が降り注ぐ。 銀髪の長い髪、架空世界の魔導士のようなローブを身にまとい、背に6枚の蒼光なる翼。 光の流れに沿って、大地から緑が広がっていく。 「ReVerThinG・Alfamana」 蒼き光が世界を包んでいく。 光に覆われた世界は静かに再生して、緑の大地と蒼き海、青天へと還った。
第十八話〜消滅〜 十獅楼・・・いや既に邪神となった奴は最後にそう言うとゆっくりと立ち上がった。 空を覆っていた雲は見渡す限りでは見えず、頭上には黒く輝く月がある。 随分と遠くにあるはずの月の波動が邪悪なものとなっている。 俺たちのいた未来とは異なる、世界の終焉。 これが本来の未来だ。 滅びるかどうかは別として、未来はこれから作り出される。 永遠の闇か、永久の光か、混沌か・・・ 「選択肢はいらねぇ!!雅、ラスボスだ、ラスボス!!とっとと終わらせてエンディングとしゃれこもうぜ!!」 ”・・・あぁ、そうだな” 俺の叫びに、雅の声が思念として直接脳へと届く。 既にラグナロクとして覚醒している雅と、それにリンクしている俺は一心同体だ。 明るさがとりえの雅でも、このときでは明るくはなれないのか・・・。 同じなんだよ、俺もお前も。 雅は明るさを封じることで、俺は叫ぶことで恐怖から逃げている。 見るもの全てを恐怖へ引きずり込む瞳がある。 邪神、生気の無い闇に満ちた瞳。 見たものを石化させるメデューサの瞳とは違う、恐怖のみを持った瞳。 「フィンヴェード・・・」 邪神が、右手を俺に翳してそう言った。 大気が震え、温度が急激に下がっていく。 体感温度は既に−100℃を超えている。 戦うというレベルではない。 次元が違いすぎる。 ”ムスペル!!” 既に思考が止まりかけていた脳内に、雅の声が響き、再び覚醒する。 再び大気が振るえ、次は温度が上昇していく。 体感温度が通常に戻ったあたりで上昇は止まった。 ”古代魔術だ、あまりの強さに禁術とされたものだが奴は使えるようだ。ちなみに俺は今のだけしか使えない・・・” 何でもありかよ、神って名の付くやつにはろくなのがいなさそうだ。 まぁ、お前が使えるのは納得できるが、不利だろ。 だがここからが、反撃開始だ。 俺は、今まで使っていなかった全ての力を爆発させた。 頭にある、身体能力のリミッターを切り、一時的でも限界を超えることが出来る。 俺はラグナロクを両手で構え、邪神へと突撃していった。 邪神は、再び俺に手を翳すが動きが遅い。 「遅いっ!!」 俺は、邪神の右腕を肩から切り落としその場で粉々に切り刻んだ。 さらに、邪神の背後から横に一閃。 邪神が胴体から半分になる。 だが、胴体を斬る間に、邪神が呟く。 「ユグドラシル・・・」 また古代魔術だと!? 詠唱が無い分、直ぐに発動するこの魔術は卑怯だろ! 俺は、その場から一旦離れる。 すると、邪神の周囲に漆黒の光が集まり、邪神を包む。 ”まずいっ!!” 雅が叫んだ直後、光の中から傷一つ無い邪神が出てくる。 何の代償も得ず、完全回復している。 漆黒の光は徐々に散り、邪神が纏う。 よく分からないが、俺の攻撃は全て無駄になったということだ。 あの光は傷を治す力がある。 「エイン・ヴァルハラ・ヘイムダル・・・」 邪神は両手を空に翳して再び古代魔術を発動する。 三連詠唱という高等技術を、古代魔術でやってのける。 邪神の周りには、影がそのまま実体化したような奴らが出現した。 皆がそれぞれ漆黒の光をまとい、邪悪な剣を持っている。 剣と呼ぶにはあまりにも細い剣。 だが、その切れ味は俺が身をもって知った。 邪神本体が剣を振るうと俺の左手首から先が消滅した。 ”空間消滅剣ヴァルハラ・・・ッ!!” そんな剣を持っているのが約10体。 勝ち目が薄れていく。 次々と俺の周りが消えていく。 空間ごと消滅させるため、消えた部分には次元の裂け目が現れる。 次第に、この空間は別の空間へと変わっていく。 視界に入っている限りでは、既に別の空間になってしまっている。 そして、俺と言う存在自体もその空間に半分足を踏み入れている状態だ。 翼は全て消滅し、右腕も無い。 かろうじてこの世界に残っているという感じだ。 「ちっ、これほどとは・・・」 俺を取り囲むように、邪神の影が立っている。 一人また一人と増え、俺の周囲には約20以上の邪神の影が出現した。 こうなると、本当に勝ち目が無い。 弱音は吐いたことは無いのだが、勝機の無いこの状況では弱音とは言えないのかもしれない。 俺は再び舌打ちをして、ラグナロクを両手で持って呪文の詠唱を始めた。 「遠き闇より渡せし翼、砕けき刃と永久の庇護、翔ける天空、幾重の黒煙、我が翼神と集いて回れ、強制空間転移・天翼神羅!!」 邪神とその影は、俺の詠唱と同時に斬撃を放った。 斬撃はラグナロクを外して、全て俺に直撃する。 詠唱が完全に終わったとき、俺と言う存在はその空間から消え失せた。 世界に一筋の光明を残して・・・・。
第十七話〜真天使X不完全体〜 十獅楼は俺たちの前から姿を消し、8枚の灰色の翼を持つ堕天使が俺たちの前に立ちはだかった。 ディバイデット・アダムとディバイデット・イヴの融合体。 既に廃墟と化した都心で、俺たちは対峙している。 「俺は既にアダムとイヴという存在では無い。十獅楼が何をしようと構わない。俺は貴様という存在を打ち倒すために、存在する。同じ翼を持つものとして創り出されたが、俺と貴様では扱いが違った。英才教育を受けて育った貴様と違い、俺は・・・俺たちは実験動物として存在していた。俺と貴様で何が違う!?逆恨みと言われようがどうでもいい!単なる私怨で世界を滅ぼすつもりはないが、十獅楼が俺に与えてくれたものは世界よりも価値が高いんだ。その十獅楼の邪魔をする貴様を俺は打ち倒す。よく覚えておけ、俺の名はディバイデット・エクスだ。冥土までこの名を持っていくがいい!!」 自らをディバイデット・エクスと名乗り、そいつは巨大な剣を持って俺との距離を詰めてくる。 俺はラグナロクを正面に構えて、戦闘体制を取る。 「あぁぁぁぁぁぁっ!!」 俺の目の前まで超スピードで駆けてきたエクスは、そのスピードに自重を乗せて俺に切りかかってくる。 ただ、真っ直ぐ右から左へと大剣を振りぬいてきた。 力も、スピードも融合する前とは数倍になっている。 十獅楼が、こいつになにをしたのか分からないが強くなっている。 俺はラグナロクを斜めに構えて大剣を受け流し、隙が出来たエクスの袖を掴んで投げ飛ばす。 「フォトンレイズッ!!」 宙を舞うエクスに向って、左手の五本指から光の矢を放つ。 その矢は、一直線にエクスへと飛んでいくが大剣で全てを薙ぎ払われた。 「エクステッドヴァンッ!!」 「バルディッシュリァルド!!」 翼で飛んでいるエクスは大剣を左手一本で持ち、空いた右手で炎の龍を俺に放つ。 それと同じくして俺は光の龍をエクスへと放つ。 翼を持つもののみが使える、属性龍の魔術だ。 しかし、その威力には制限があるため最大限の威力で衝突した龍は互いにその場で消滅した。 龍が消滅した地点で、俺たちは剣をぶつけ合っている。 超高速でぶつかり合う金属で火花が散り、音が鳴り響く。 しかし、俺たちは剣を振るうことをやめない。 お互いが既に理解しているのだ。 いくら真天使であろうと、不完全体であろうと同じ体を媒体としている以上その頂上は同じだと。 体力の消耗、肉体の消耗、全てが同じだけ減っていく。 十獅楼は言っていた。 この戦いを不毛な戦いと。 どちらかが手を抜き、どちらかが倒れても終わりなのだ。 俺たちは異なる存在にして同一なる存在。 矛盾からなり、正へは変われぬ存在。 だから真であり、不である。 表と裏。 ・・・・・ 1時間ほど打ち続けただろうか。 エクスの剣は所詮唯の大剣である。 俺の剣は錬金術師至高の剣。 たかがそんなことで決着は着いてしまう。 共鳴する。 武器は違えど力は同じ、存在としての個も同一。 お互いが至近距離で剣をぶつけ合った直後、エクスの剣は刀身中ほどから折れて、地面へと堕ちていく。 それが地面に着地するまで、時が止まる。 砂煙を上げて折れた剣は地面に消え、俺の前からエクスは消える。 今までの闘いが嘘だったかのように・・・。 遠くの空が白み始めている。 十獅楼が笑っている。 まだ崩壊していないビルの上で狂ったように笑っている。 狂っている・・・いや、彼は既に狂い終わったのだろう。 そして、たどり着いた。 極論とも正論とも言える答え。 無の帰結。 所詮あと数百年やそこらで滅びてしまう世界。 それを自分の手で起こそうとしている。 闇狭十獅楼・・・。 永遠なる世界の創世者にして、8枚の翼を持つ史上最悪の邪神。 漆黒の翼を手に入れた十獅楼の前では、光すら速度を失い消滅する。 十獅楼の周囲では時間の速度も一定ではない。 「世界では相手にならない。 十獅楼が世界を作ったから。 何故世界を作ったか。 十獅楼は創世と破壊の神だから。 何故、何故、何ぜ、な故、なぜナゼな故なゼナぜ・・・・ 何故、十獅楼とイう個とシテ俺ハここにイル・・・?」 十獅楼は目をぎらつかせながら笑って一人問答を続けていく。 次第に言葉は加速し聞き取れなくなっていく。 そして、十獅楼が最後に口にした言葉は・・・。
第十六話〜盛大なパーティは長い夜の始まり〜 張り込みが始まって早4時間が経過しようとしている。 周囲のオフィスビルは全てライトアップされ、街全体が煌びやかに輝いている。 空には、幾つもの星が輝いてその中に月も輝いている。 本当であればもっと多くの星が見えるのだろうが、街の明かりでそれらは見えない。 全ての星を見たいのであれば、世界が破滅すれば見れるのだろうがそうはいかない。 しかし、奴らを放っておけば現実となってしまう。 オフィスビルの一つに奴らは潜んでいる。 どのようにしてそこにいるのかは分からないが、見事に社会に溶け込んでいるようだ。 「奴らを雇っている奴はこのことを知らないんだろうな・・・」 俺は、そう言ってビルの入り口の看板に目を向けた。 ”闇狭財閥本社ビル” そう書いてあった。 闇狭と言えば、世界中であらゆる商売に手を出していることで有名な組織だ。 エネルギー開発から土地開発など幅広い組織だ。 特にこれと言った悪い噂は聞かないし、やつらとかかわりがあるわけではなさそうだ。 「シオン、奴らビルの最上階へ登ってる・・・最上階には社長室しかないよ」 ・・・前言撤回だ。 一社員が社長室に呼ばれることなどめったに無いことだ。 俺はまだ学生だが、それくらい分かる。 しばらくして、そのビルの屋上の扉が開く。 その屋上にあの二人と、もう一人現れた。 新聞やテレビで見たことがある顔。 ”闇狭 十師楼”だ。 マスコミの前に出ているときには感じられなかった邪悪さがある。 十獅楼は真っ直ぐこっちを見ている。 始めからここにいることが分かっていたようだ。 そして、十獅楼はその場から一瞬にして消え、俺たちの目の前へ現れたのだ。 「なっ!?」 十獅楼はあの場で何の動作も起こさなかった。 その証拠に、あの二人も突然十獅楼が消えたことに驚いていた。 恐らく、十獅楼の力を見くびっていたのだろう。 しかし、一瞬にしてここまで移動してくる際に何の力も行使しなかったわけでは無いだろう・・・。 何らかの力を使ってここまで来たはずだ。 俺が、頭で整理をしていると十獅楼が口を開いた。 「あらゆる全てを破壊し、蹂躙してもまだ足りないんだよ・・・。」 両手を広げて更に続ける。 「壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊しても、俺は満たされないんだ・・・」 そして、頭を抱えるように両手を顔の横に持っていく。 「だから、滅ぼすんだ消し去るんだ、消滅させるんだよ!!あははははははははっ!!止められるのか?この俺を!?無駄なんだよ!所詮君のような不完全体には完全体である俺に適うわけが無いんだ!無駄な足掻きなんだよ!!やめろよ!諦めろよ!全てを受け入れて死ね!消えろ!救いなんていらないんだよ!!あはははははっ!!」 こいつは、闇狭十獅楼と言う男は悪だ・・・純粋なる悪。真なる闇だ。 「ふぅ・・・さて、まず手始めにこの場所にさよならを告げよう!!止められるものなら止めてみろ!堕天使!!剣神!!世界は既に俺の手の中にあるんだよ!!さぁ、パーティを始めようじゃないか!盛大にね!!」 十獅楼の言葉が終わると同時に周囲のビルが爆散する。 地上からは悲鳴が上がり、ビル郡は火柱と化した。 俺たちの立っているビルも大きな振動と共に崩れていく。 そんな混沌とした空間の中、十獅楼は笑いながら宙に立っている。 「ちぃっ、オル・レイド・フォルト・ディアック!!」 俺は、未来で得た力を使って転身する。 8枚の蒼き翼と銀色の髪へと姿を変える。 「エネルギーバイパス開放!ブルースフィア開放!神剣ラグナロク展開!!結晶解除、合身!!」 雅がラグナロクの力を解放して自らも、剣と一体化した。 そして、俺がラグナロクを操るのだ。 既に東京の街は半分以上が壊滅状態だ。 たかが数分の間で都心を機能停止させた。 いまだにやつの力は不明、このまま戦うことも不利な面ばかりだ。 いくらラグナロクがあると言っても、相手にはアダムとイヴがいる。 3対1という状況は初めてじゃないが、相手が悪すぎる。 「さて、君はこの状況をどう切り抜けるのかな?俺が手を出すのはフェアじゃないな。君たちが不毛な戦いを続ける間に俺は世界を相手にしよう。くくくっ!相手にするか・・・あははははははっ!!相手にもならないものを相手にするなんて可笑しいじゃないか!!ははっ!これは君たちへの猶予だ。あの不完全体二つを早々に壊して俺の元まで来れるか!?強くなったのは君だけじゃないんだよ!!あれだって不完全なりに上があるのさ!さぁ、頑張れよ真天使!!俺を、失望させないでくれよ!?はははっまた逢おうじゃないか!!」 十獅楼はそう言うと、俺たちの前から完全に姿を消した。 何の痕跡も残さずその場から消えた。 そして、俺たちの前には8枚の灰色の翼を持ったやつが一人いる。 アダムとイヴ・・・それぞれが不完全である存在。 精神と肉体を一つとすることで完全体になろうとした不完全体だ。 黒煙があがる中、空には黒き雲が立ち込めて俺たちだけが空で輝いている。 お互いの衝突で、パーティの幕が開いた。 それは長い夜の始まりだった。
第十五話〜現状と原状〜 空は青々と晴れ、初夏が近い4月の始めでもまだ風は冷たいが、朝の日差しは寝覚めの俺にとって心地よく暖かい。 あの日、早蕨と戦い意識を失った時、俺たちは膨大なエネルギーの衝突によって時空を歪ませて現在へと戻ってきた。 意識を取り戻したときには既に自宅にいたのだが、恐らく無意識下でここへ自分を導いたのだろう。 電子カレンダーの日付は4月15日と、俺たちが未来へ飛んだ日から数日経っていた。 どうやら未来で過ごした時間の分だけ現在も進んだらしい。 玄関を見てみると、数日分(約1週間)の新聞が山積みにされている。 雨が降らなくてよかったというくらい積んである。 何部かは夜露で読める状態ではないのだが、それでも情報を得ることは出来る。 新聞とネットで情報を集めると、奴らに関しての情報を見つけた。 俺たちを打ち倒したあの日以降、やつらは活発に動き出したようだ。 敵となるであろう俺たちを倒したことで、世界中に進出し始めたようだ。 写真も取られているとは、奴ら無用心だな。 だが、相手も数段強くなっているようだ。 翼が4枚へと変わっているのが、写真で分かった。 翼は、推進力の塊のようなものだから、その数が増えるだけで強さは一変する。 だからと言って10枚20枚も付けたくはないが・・・。 世間では数年ぶりの天使だとかスクープ騒ぎのようだ。 「まぁ、翼人なんてシオンが作られた以降いなくなっちゃったんだけどねー」 雅、起きていたのか・・・。 そして、気配も無く俺の背後に立つな。 「俺、結晶体だから気配なんていくらでも消せるけど?」 まぁ、そうだけど・・・って、心を読むな!! 「あー、そんなことはどうでもいいよ。シオン、奴らが動き出す前に叩かないと・・・」 雅が、自分のことは置いといて話を始める。 「奴らのやろうとしていることは、世界の破壊と再構成だ。俺たちのいた未来はまだ破壊の後すぐだから、荒野だったけど、あのあと数年もすれば世界は奴らが神となる。翼を持つ者のみが許された世界だ。そうなる前に元のあるべき世界に戻さないと・・・」 そうか、やつらが動き出したということは神人が既に創られている可能性があるということか。 だが、奴らの位置を特定するには時間がかかるのではないか? いくつかの情報は手に入れたが、マスコミすらやつらの居場所を特定しているわけではない。 様々な情報が行きかう世界ではなおさらだ。 「まぁ、そこは情報屋でも使うしかないんじゃない?」 雅は、そう言って携帯端末を取り出した。 この世界では何に使うのかすら分からない、ロストテクノロジーだ。 勿論早蕨が作ったものなのだろうが、雅いわく、衛星回線や電話回線に強制進入して連絡も取れるらしい。 他にも電子ロックの解除やちょっとした暗号解析も出来るというガジェットらしい。 雅は、電話回線に進入して使われていない番号を使い”情報屋”と連絡を取った。 数日中に奴らの居場所を特定することが可能だそうだ。 場所が分かれば俺の携帯に連絡が来る。 情報屋なんて聞きなれない商売だが、どうやら闇商売の一種らしい。 だが、その情報は正確で迅速だと言う話だ。(雅談) 世界の半数を占める組織の一部らしいが、俺にはよく分からない。 俺達が現在へ戻ってきて1週間がたった。 情報屋と連絡を取って6日だ。 俺が自宅で精神統一をしているときに、突如携帯は鳴った。 「特定出来ました、場所は新東京都内新橋地区座標158・267地点です」 要点だけを言って、相手は電話を切った。 位置を特定させないためなのだろうが、愛想はない。 まぁ、いいのだが・・・。 俺は、ラグナロクを手にして呼びかける。 「雅、行くぞ。ていうか聞こえただろ?」 雅は結晶化して、その場に姿を現した。 「新東京都内新橋地区座標158・267・・・だろ?」 正解。 これ、俺が出る必要なかったんじゃないか? ただ、俺一人では場所はわからない。 全世界の座標が分かる雅がいてこそ追跡できるのだ。 自分の意識を衛星と直結させて、座標点の状態を確認できる。 今考えると、こいつ自体ガジェットだ。 「オッケー、確認した。オフィスビルの一角に隠れるようにしているな。どうやら夜にならないと活動はしないようだ。昼間のうちに移動したほうがよさそうだ。力を使って移動するとばれるから、車出すよ。根源の力も出来るだけ消しておいて」 雅は、そう言うと外へ出て車を取りに行った。 見た目は大人だからいいけど、一応高校生だぞ、俺ら。 といっても、帰ってきてから一回も行ってないけどさ。 数分して、家の前にこの前とは違う車が止まった。 あぁ、あれだと目立つからな。 今回は普通のミニバンだ。 車内が機械で埋め尽くされている点以外はまともだ。 何の機械だか全く分からないが・・・。 雅の運転する車は、ハイウェイを疾走して目的地へと移動した。 しっかりと整備されたハイウェイでは、一定のスピードで車が走っている。 そういう風にプログラムされているらしい。 目的地に着いた俺たちは、あるビルの屋上に立ってやつらが活動するのを待つことにした。 力を使わず、ビルの屋上に行くのは、力を使うより疲れる。 なるべく人に見つからないようにして屋上まで行かなければいけないからな。 長剣なんて持ってるからなおさら見つかってはいけない。 危険な場所は、雅の特殊能力のひとつである光学迷彩でなんとか切り抜けた。 さて、あとは時間の問題だ。 |一覧| |
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