カテゴリ:ジャズ
オルガン・ジャズがコテコテ・ファンキーでなければならない理由はどこにもない ブルーノートの売れっ子オルガン奏者だったジミー・スミス(Jimmy Smith)。ブルーノート盤『クレイジー・ベイビー』や『ハウス・パーティ』、ヴァーヴ盤『ザ・キャット』なども好きなのだが、今回は違った観点からのジミー・スミスのよさを考えたい。 そもそもオルガンというのは、ジャズの世界では異端的な楽器のようだ。オルガン奏者の地位をジャズ界に確立したのもスミスであれば、最高峰として君臨し続けているのもスミスだとされる。マイルス・デイヴィスが彼を評して「ジャズ界8番目の不思議」といったこともよく知られている。加えて、ファンクやR&B界などに影響を与えたせいもあってか、ファンキーでアーシーなオルガン奏者のイメージが強い。 上記のような評判を耳にすると、ジミー・スミスのアルバムを手に取る人の層は逆に限られてくる。一種のルーツ音楽としてスミスを求めるという図式である。しかし、ちょっと待ってもらいたい。ファンキーでコテコテなオルガン演奏だけを求めてはいけない。もっと静かに内に秘めた感情をじわじわと表出させる演奏のスミスもいるのだ。それを再認識する上で、聴いてもらいたいのが本作『ミッドナイト・スペシャル(Midnight Special)』である。 確かに、オルガン入りのジャズは「くどい」。理由はおそらく2つあって、ひとつは楽器の音そのものに起因する部分。それから、もう一つはベースの部分もオルガンが引き受けるので、やはり音色的にベースがリズムセクションの一角を担うよりも、くどくなる。そして「オルガン=コテコテ、ファンキーでアーシー」なイメージが作られてしまうわけだが、本作でのスミスは実にツボを心得た演奏を繰り広げる。一言でいってしまえば、「くどくなる一歩手前」の演奏なのだ。おそらくそれは、テナーサックスのスタンリー・タレンタイン(本作が初競演)、さらにはギターのケニー・バレルの組み合わせではないだろうか。いや、他のアルバムでもスミスは彼らと競演しているのだが、本作ではとりわけバランスの取れた演奏を見せてくれる。盛り上げるところは盛り上げ、抑えるべきところは抑えて演奏しているのだ。このことは、タレンタイン(サックス)の後ろで弾いている箇所と、バレル(ギター)の後ろで弾いている箇所を聴き比べるとよくわかる。 こうした観点からおすすめなのは、1.「ミッドナイト・スペシャル」、3.「ジャンピン・ザ・ブルース」、4.「ホワイ・ワズ・アイ・ボーン」といったあたりの演奏。抑制がきいているようでありながら、それは決して「抑圧」ではなく、出るところと抑えるところのメリハリなのだ。ファンキーに、コテコテに爆発するのではなく、おそらくは計算しつくされた上の演奏にスミスの凄さをあらためて感じることができる。 [収録曲] 1. Midnight Special 2. A Subtle One 3. Jumpin' The Blues 4. Why Was I Born 5. One O'clock Jump Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Kenny Burrell (g), Donald Bailey (ds) 録音:1960.4.25 【ブルーノートRVGコレクションTOP50】ジミー・スミス/ミッドナイト・スペシャル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年02月09日 10時44分37秒
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