テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
深まる秋におすすめの1枚 (その2) ~マイルス編~ 秋におすすめの1枚として、2つ前の項ではニール・ヤングの『ハーヴェスト』を挙げた。そこでも述べたように、ふつうは"秋盤"とでもいうべきものが、レコード会社によってア・プリオリに設定されているわけではない。聴き手が秋にあうと感じた瞬間に1枚のアルバムが"秋のアルバム"になるといったものである。 その意味で、本盤も別に秋に直接関係するテーマを扱っていると言うわけではないのだが、筆者にとっては、通常の名盤であると同時に秋に楽しめる1枚でもある。ちなみに、個人的なイメージとしては、先回のニール・ヤングのアルバムが深まる秋の午後に聴く感じであるのに対し、今回のマイルス・デイヴィス『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』は秋の夜長に聴く1枚といったイメージである。 この『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』は、マイルス・デイヴィスの代表作としてよく挙げられるアルバムの1枚である。その中でも特に有名な曲は1.「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」。"秋の夜長の1枚"として挙げた理由として、1曲目をイメージした方も多いのではないかと思う。実際、その通りであるけれど、別にこの1曲だけというわけでもなく、アルバム全体が秋の夜長にぴったりだと思う。 その一因は絶妙の楽曲の配置にあるように思う。1曲目の名演で静かに盛りたてておいて、続く2.「アー・リュー・チャ」ではフィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)とジョン・コルトレーン(テナーサックス)を中心に本当に盛り上げる。かと思うと、3.「オール・オブ・ユー」は再び静かにマイルスがすすり啼く。4.「バイ・バイ・ブラックバード」を経て、5.「タッズ・デライト」では再びテンポが上がったかと思うと、6.「ディア・オールド・ストックホルム」の出だしは再度マイルスの哀愁を湛えたプレイからはじまり、ゆったりとした各メンバーのソロが堪能できる。 この楽曲配置こそ、聴き手を退屈させず、かつ緊張させ過ぎないという効果を生んでいるように感じられる。つまるところ、マイルスの繊細なミュート演奏だけが聴き所というよりも、それを非常にうまく出して(時に出し惜しんで)いるところに本盤の妙がある。前所属レーベル(プレスティッジ)との契約が残っているのにコロンビアで録音を始めたのが本作であった(残っていた契約の録音が1956年5月と10月のいわゆる"マラソン・セッション"で、本盤の録音日は下記を参照)。メンバーに変更はなくとも、新たな契約会社での第1弾として、入念に考えながら編まれたのだろうと想像する。 ちなみに、CDに加えられたボーナス・トラックは、どちらかというと本編の雰囲気を大きく壊すことなく、続けて聴いても大丈夫だと感じる(いや、10.はちょっと余計かな…)。本編の中で、筆者が特に好むのは1.と6.だが、上で述べたように、アルバムを通して聴いていく方がその繊細さが際立つので、曲単位よりもアルバム全体を通しての鑑賞をおすすめしたい。 [収録曲] 1. 'Round About Midnight 2. Ah-Leu-Cha 3. All Of You 4. Bye Bye Blackbird 5. Tadd's Delight 6. Dear Old Stockholm ~以下、CD所収のボーナス・トラック~ 7. Two Bass Hit 8. Little Melonae 9. Budo 10. Sweet Sue, Just You Miles Davis (tp) John Coltrane (ts) Red Garland (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds) 録音: 1955年10月26日(2.、7.~9.);1956年6月5日(4.~6.);1956年9月10日(1.、3.、10.) 【2500円以上お買い上げで送料無料】【CD】[SICJ-11]ラウンド・アバウト・ミッドナイト(MONO) [ マイルス・デイヴィス ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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