テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
亡くなる2年前の快演作 サックス奏者ソニー・クリスは繊細な性格で、物事を真面目に突き詰めるタイプの人間だったらしい。1927年生まれの彼は、1977年に享年50歳でこの世を去っている。ピストル自殺だったとされるが、直後には日本公演を控えていて、本人もこれを心待ちにしていたと思われる。なので、自殺と言っても突発的なものだったのだろう。それ以前にも精神的に問題を抱えて第一線を退いたりした過去もあった。 というわけで、浮き沈みがいろいろとあったソニー・クリスだが、大別して50年代半ば(『ゴー・マン』など)、60年代後半(『ソニーズ・ドリーム』がこの時期に該当)、そして70年代半ばという3度の充実期もしくは好調期が彼にはあった。本盤『アウト・オブ・ノーホエア(Out Of Nowhere)』は、そうしたうちの第3期に当たる、1975年録音の作品の一つである。この第3期を代表する作品としては、『クリスクラフト』というアルバムがあるが、同作がギター入りクインテットであるのに対し、同じ1975年に吹き込まれた本作はワン・ホーン・カルテットの編成ということもあり、自由に伸び伸びと吹くアルト演奏が印象的である。 全体の雰囲気作りはピアノのドロ・コッカーに負う部分も大きい。だが、何よりもワン・ホーンでかなり自由に吹きまくっているサックスをひたすら堪能するような一枚という印象を持っている。ソニー・クリスという人はサービス精神旺盛で、結構楽しく明るく吹くことも多い。そのキャッチーさがいわゆるB級アーティストの中では普通ではない人気を誇る結果となっているのだろう。それと同時に、過去記事で触れたように、微妙な音の揺れ具合が醸し出す情緒感がただの能天気サックスに終わらないという効果を出している。 収録曲は捨て曲のない好演奏が並ぶ。筆者のお気に入りを少々挙げておくと、1.「オール・ザ・シングズ・ユー・アー」はチャーリー・パーカーの演奏でも知られる。パーカー派などと呼ばれてきたクリスも、70年代のこの頃になると堂々とそうしたナンバーを吹き上げており、節回しが効いていながらも流れるプレイが心地よい。表題曲の5.「アウト・オブ・ノーホエア」も同じく流れるような心地よい快演。さらにアップテンポの7.「ザ・ファースト・ワン」では、演奏技術面の確かさも垣間見える。自作ブルース・ナンバーの2.「ザ・ドリーマー」、あるいは4.「マイ・アイディアル」といったテンポを落としたナンバーでは、得意の“泣き”のプレイが聴かれ、アルバム全体としても起伏に富む結果となっている。全体として、ピアノのドロ・コッカーの活躍ぶりも目立つ。既に十数枚のリーダー作を作り、ソニー・クリスの円熟ぶりとサービス精神がよく表れた、個人的にはお気に入りの一枚。 [収録曲] 1. All The Things You Are 2. The Dreamer 3. El Tiante 4. My Ideal 5. Out Of Nowhere 6. Brother, Can You Spare A Dime? 7. The First One Sonny Criss (as) Dolo Cocker (p) Larry Gales (b) Jimmie Smith (ds) 録音: 1975年10月20日 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011年01月25日 08時55分14秒
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