カテゴリ:洋ロック・ポップス
創作意欲溢れ過ぎの本作を聴き手はどう受け止めればよいのか ~前編~ イエス(Yes)というグループの名を聞いて、多くの人がはじめに思い浮かべるのは、『こわれもの(Fragile)』(1971年)や『危機(Close To The Edge)』(1972年)といった盤ではないだろうか。もちろん、これらの作品は超名盤であり、彼らの頂点を示す代表作と言ってよいと思う(特に筆者は『危機』が好きである)。そして、というか、それゆえに、その陰であまり注目されないのが、これらよりも少し後にリリースされた『海洋地形学の物語(Tales From Topographic Oceans)』という2枚組の大作である。 イエスは、ジョン・アンダーソンを中心に結成され、1969年に最初のアルバムをリリースした。当初はサイケでジャズ的という、幾分わかりにくい音楽性だったが、上述の『こわれもの』と『危機』という、見事な緊迫感とアンサンブル、完成された演奏技術で頂点を極めることになる。そうして成功を収めた彼ら(というか主にメンバーのアンダーソン)が、大作志向を押し進めて1973年末に発表したのがこの『海洋地形学の物語』だったという流れである。 このアルバムには、“何度聴いてもよくわからない”、“難しすぎる”といった定評(?)がある。そもそも2枚組なのにたったの4曲入り(つまりLPではA面~D面の各盤面に20分前後の曲が1曲ずつ収録)という構成からして実に大仰である。創作意欲溢れる、というか、これはさすがに溢れ過ぎで、曲名も(英語も翻訳の邦題もどちらとも)何とも仰々しいものが並ぶ。いやはや、筆者自身も、この難解とされるアルバムを本当に理解しているのかと訊かれれば、我ながら定かではない。 でも、ちょっと立ち止まって考えてみたい。“音楽を理解する” (ジャズ・ファンに多い物言いだが、プログレなどでもわりとよく耳にする)という狭い了見に囚われる必要はないんじゃないだろうか。通常、音楽作品は“正しく理解される”ためにそこにあるわけではない。言い換えると、聴き手は聴き手なりの解釈や理解をするのであって、その受け止め方は人それぞれでいいように思う。 しからば、“名盤”とは何なのか。おそらく、そうした人それぞれの独自の観点での評価が積み重なって、素晴らしいと思う人が多ければ“名盤”や“名作”と呼ばれるようになるのだろう。その一方で、世間では“駄盤”と言われつつも、その盤が誰か別の人の心を打つ(その聴き手にとっては“名盤”と化す)ことだってあり得るように思う。たぶんこのことは、音楽に限らず、文学作品や絵画等の芸術的創作に共通して言えるような気がする。ある意味で、創作物(芸術的作品)は、それを作製した人の手を離れ、鑑賞者や読者、あるいは聴き手の手に渡ったとたん(言い換えれば、展覧会で人目に触れたり、レコードやCDなどとして発売されたとたん)、作者の意図のみに捉われず、様々な解釈や理解がなされていく運命にある。つまりは、人目に触れたとたん、それぞれの受け止め方をされ始めることになる。 1回での掲載にするには、少々長くなりそうなので、続きは後編に(収録曲の情報等は次回記事更新の際に掲載します)。 関連記事リンク: イエス 『海洋地形学の物語』(後編)へ 【送料無料】海洋地形学の物語/イエス[CD]【返品種別A】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年07月20日 07時05分42秒
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