テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
ライブ演奏の解体と再構築から生まれた“静”の1枚 マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の本盤『マイ・ファニー・バレンタイン(My Funny Valentine)』は、1964年2月12日、リンカーン・センターのフィルハーモニック・ホールにて行われたライブ演奏をアルバム化したものである。このコンサートの音源から特定の5曲を編み、1枚のアルバムにまとめて発表されたのが本作というわけである。 ライブ盤とはいえ、このアルバムは単なるコンサートの再現ではない。そこには明確なコンセプトがある。同コンサートの曲目の中から、スロー~ミディアム・テンポのスタンダード系ナンバーの演奏を集め、とにかくじっくりしっとり聴かせるという趣旨が明確な一枚なのである。いずれの曲も長めの演奏(9分程度が1曲、残りはいずれも11~15分感の演奏)である。 ゆったりとした長尺の演奏が続くからといって、ぼーっと聴いていると眠ってしまうというような類のものではない。逆説的ながら、本盤は聴き手にとってある種“疲れる”一枚だと思う。それはマイルスの、あるいはこのメンバー一体の演奏姿勢そのものに由来するのだろう。 ところどころにアンサンブルのパートを含みつつも、基本的には個人演奏の聴かせどころがしっかりしている。1.「マイ・ファニー・バレンタイン」などはある種その典型で、予定調和のようであって実は全くそうではなく、グループとしての演奏が練り上げられていった末にこの境地に辿り着いたことを伺わせる。寂しげに吹くマイルスは、緊張感を保ったままフリーに演奏しているが、決して孤立しているのではなく、バックの演奏と一体化している。その聴かせ方の最大の特徴は、“甘くない叙情性”である。叙情的な演奏は甘くなるというのがよくあるパターンではないかと思うけれど、緊張感が持続されているところがこの曲だけでなく本盤全体の特徴と言えるように思う。 ちなみに本盤での筆者のイチオシは、4.「オール・ブルース」。この曲の初演はアルバム『カインド・オブ・ブルー』であるが、元のアルバムの演奏とこの『マイ・ファニー・バレンタイン』収録の演奏は全く異なっている。テンポを速め、とはいっても独自の叙情性は保ちながら、実にスリリングな演奏に仕上がっている。特にピアノのハービー・ハンコックの特徴がよく出ていて、本盤でいちばんの聴きどころになっているように思う。 なお、このアルバムのもとになったコンサート音源からはもう1つ別の盤が編まれた。『フォア・アンド・モア』という、本盤『マイ・ファニー・バレンタイン』とは見事な対比を成すアルバムである(なおかつ『フォア・アンド・モア』の方が有名盤としての地位を確立している)。こちらについては、あらためて別だてにして取り上げることにしたい。 [収録曲] 1. My Funny Valentine 2. All Of You 3. Stella By Starlight 4. All Blues 5. I Thought About You [パーソネル・録音] Miles Davis (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds) 1964年2月12日録音 【Aポイント+メール便送料無料】マイルス・デイヴィス マイルス・デイビス / マイ・ファニー・ヴァレンタイン[CD] 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年07月20日 06時59分47秒
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