テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
濃くとも品位を失わず… キング・カーティス(King Curtis)といえば、R&B、ファンク、ソウル・ジャズの巨匠。ジミー・フォレスト(Jimmy Forrest)もR&B色の強い、ソウルフルなテナーマン。これら二人に加えてオリヴァー・ネルソン(Oliver Nelson)がテナー3管で共演しているのが、本盤『ソウル・バトル(Soul Battle)』という作品である。 テナー3管という時点で、既にこの盤に拒否感を示す人もいるかもしれない。実際、このアルバムは、タイトルが示すように、いわゆる同一楽器(テナー・サックス)による“バトルもの”である。バトルものの難点は、時に“濃くなり過ぎる”ことにある。いや、それはそれで筆者は嫌いじゃないのだけれど、名の知れた盤で言うと『テナー・コンクレイヴ』(ハンク・モブレー、アル・コーン、ジョン・コルトレーン、ズート・シムズの共演盤)みたいにしかめっ面で聴かなきゃいけないみたいな印象を与えるのは事実だろう。あと、バトルものは一つ間違えば、各々が吹き散らかし放題の、聴き手が疲れるばかりの演奏になりがちというのも、傾向としては確かにそうだと思う。おまけに、本盤に参加のキング・カーティスとジミー・フォレストはソウルフルな演奏を得意とするミュージシャンである。つまり、楽器編成からしても、演奏者の面子からしても、“濃い盤”になるようにしか思えない組み合わせのセッションだったと言える。 ところが不思議なことに、本盤は“濃過ぎない”。程よい濃さにとどまっていると言った方が正確かもしれない。コーヒーに喩えれば、苦味がしっかり感じられるが苦過ぎない、ラーメンに喩えれば、こってりしているが後で胃にもたれないスープではない、といったところか。コーヒーのつぼを押さえた苦味も、こってりもたれないラーメンも、ある種の職人芸で、その道を極めた人のみが編みだすものである。そして、それを見事に仕上げた職人とは、このアルバムでは、オリヴァー・ネルソンに他ならないと思う。 オリヴァー・ネルソンは、別の機会(過去記事『ミート・オリヴァー・ネルソン』)にも書いたように、サックス奏者としてのみならず編曲家としての才能も存分に発揮した人物である。言い換えると、個の演奏を紡ぎだす以外に、演奏されて出来上がってくる音楽全体に目配りのできるミュージシャンだった。本盤の演奏に関して言えば、オリヴァー・ネルソンも“黒っぽく”演奏しようとしている。けれども、全体の“濃さ”を調節し、ソウルフルさが過ぎる出来にしなかったのもまた彼であった。 いちばんバトルっぽいのは、4.「パーディド」であろう。この曲の演奏を聴く限り、確かに盛り上がり抜群のバトルが展開されている。けれども、他の曲の演奏を聴いていると、ふっと緩む瞬間というのが随所に見られる。その時にカギとなっているのが、柔らかに吹かれるネルソンのテナーなのである。それゆえ、本盤に収録されている演奏の中では有名な4.が一般には注目されがちだが、実は筆者はもう少し別の曲の方がより好みだったりする。もっと言えば、本盤の真髄は上記の曲ではなく、他のところにあるのではないかとすら考えてみたりする。具体的には、1.「ブルース・アット・ザ・ファイヴ・スポット」、2.「ブルース・フォー・M・T」、5.「イン・パッシング」といったところがお勧め。アレンジもよく、テナーの競演がスリリングさを見せながらも、どこかに和やかさが残されている。 [収録曲] 1. Blues At The Five Spot 2. Blues For M.F. (Mort Fega) 3. Anacruses 4. Perdido 5. In Passing 6. Soul Street (CD追加曲) [パーソネル・録音] Oliver Nelson (ts) King Curtis (ts) Jimmy Forrest (ts) Gene Casey (p) George Duvivier (b) Roy Haynes (ds) 1960年9月9日録音。 Oliver Nelson / King Curtis / Jimmy Forrest / Soul Battle 輸入盤 【CD】 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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