カテゴリ:洋ロック・ポップス
伝説のバターフィールド、遺作… 1942年シカゴ生まれのポール・バターフィールド(Paul Butterfield)が、仮に生きていたら今年(2015年)で73歳になるはずだ。このような言い方をするのは、もちろん当の本人がとっくの昔に亡くなってしまっているからで、1987年に44歳で死去している。1980年代になってから腹膜炎に苦しんでいたというが、モルヒネの過剰摂取が死因となり、アパートで遺体が発見されたという。 ポール・バターフィールドの最大の功績はというと、マイク・ブルームフィールドをメンバーに含むバンドの初期活動(参考過去記事:1st作、2nd作)で、白人側からブルースにアプローチし、ブルースロックを確立した点にある。白人ブルースというとジャンルが限られてしまうようにも思うが、歴史的な流れを考えると、ブルースがロックの側に流入してくる道筋をつけた、という大きな評価が与えられてもよいと思う(そして、2015年、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドはついにロックの殿堂入りを果たした)。 死の前年、1986年に発表され、結果的に遺作となってしまったのが、本盤『ザ・レジェンダリー・ポール・バターフィールド・ライズ・アゲイン(The Legendary Paul Butterfield Rides Again)』である。“今どき(=80年代)のロック・サウンドで復活を狙うも失敗”というのが、世間一般の本盤の評価であろうか。 確かにのっけからトム・ペティの曲1.「ウィー・スタンド・ア・チャンス」(原作は本作の数年前にトム・ペティが発表した『ロング・アフター・ダーク』に収録)で始まり、見事なまでに80年代風のロック調の演奏にのせて曲が進んでいく。聴きようによっては、産業ロックやAOR寄りのロック・ヴォーカリストの作品と言われれば、信じる人もいるかもしれない。得意のハーモニカも演奏こそしているが、ほとんど前面には出てこない。 ブルース的なものと言えば、7.「マニッシュ・ボーイ」(マディ・ウォーター作)が収録されているものの、明らかに浮いている。加えて、かつてのソウルフルでブルース魂全開のバターフィールドのイメージに比して、アレンジは多分に80年代色が滲み出てもいる。 とまあ、悪口ばかり書いているように聞こえるかもしれないが、次のようにも考えられるんじゃないだろうか。病気で休業後に復帰のバターフィールドは、時代の音楽にキャッチアップしながら何ができるかを思案し、チャレンジしていた。たまたま遺作となってしまったが、もしも仮にそうなっていなかったならば、彼は90年代にも2000年代にも、時代の流れを踏まえて何ができるかを作品にしていくことになったのではないだろうか。その意味では、その後のバターフィールドの可能性を感じさせてくれるアルバムだったという評価もできるかもしれない(無論、翌年の死によってそれは見果てぬ夢となってしまったわけだけれど)。 そのようなわけで、初めてポール・バターフィールドを聴くという人には勧められないし、彼の作品を最初に聴くなら初期作の方がいいにきまっている。けれども、彼の偉大さを感じ、さらに聴いてみたいという向きには、“ただの駄作”も実は“(結果的には叶わなかった)未来の展望の片鱗”だった、あるいはそういう聴き方もできるんじゃないかという風に思ったりする。 [収録曲] 1. We Stand A Chance 2. Save Me 3. Heart Like A Locomotive 4. Don't You Hang Me Up 5. The Wandering Kind 6. Bad Love 7. Mannish Boy 8. The Night Ain't Long Enough 9. Changes 1986年リリース。 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015年08月06日 22時27分40秒
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