テーマ:Jazz(1958)
カテゴリ:ジャズ
人気盤にして私的愛聴版 アルト奏者ソニー・クリス(Sonny Criss)のキャリアには何度かのピークがあったが、そのうち中期と呼んでよいピークは1960年代後半のプレスティッジに吹込みを残した時期である。決して多作ではないが、1966~69年にかけてコンスタントにリーダー作を残していて、『ポートレイト・オブ・ソニー・クリス』、『ザ・ビート・ゴーズ・オン』、『ソニーズ・ドリーム(新クールの誕生)』なんかがその時期に該当する。 とはいえ、代表作はどれかというと戸惑う人も多いのではないか。何せ知名度が高くなく、“パーカーの影響”のような表現であっさり終わらされる傾向がある。そんな中で、知名度のある盤と言えば、ヒットした上述の『ソニーズ・ドリーム』か、日本のジャズ喫茶でも人気を博したという本盤『アップ・アップ・アンド・アウェイ(Up, Up and Away)』といったあたりではないだろうか。 でもって、この一応“人気盤”とされるアルバムは、個人的な愛聴盤でもある。他の作品が瞼に浮かびこれを代表作と呼ぶのは憚れるのだけれど、非常に“彼らしい盤”であることは間違いがないと思う。ある種の軽さ(軽やかさ)、聴き手へのサービス精神、演奏の上手さ、サックスの音色の哀愁、とソニー・クリスを評する要素がしっかり詰まっている。 いくつか私的好みでおすすめ曲を挙げておきたい。表題曲1.「アップ・アップ・アンド・アウェイ」は、ちょうどこの時期にヒットしたフィフス・ディメンションのナンバー(邦題は「ビートでジャンプ」)だが、爽快なアルトの吹きっぷりが心地よい。4.「サニー」もノルウェイのR&Bグループ、パブリック・エネミーがちょうど吹込みの前年に発表していた曲である。こうしてポップ系の曲を解釈する試みは、本盤の翌年(1978年)に録音された『ロッキン・イン・リズム』へと続いていくことになる。 1.がポップ由来の聴きどころとすれば、ジャズ然たる聴きどころは、パーカー曲の5.「スクラップル・フロム・ジ・アップル」と言えるだろう。とはいえ、時に甲高く時に伸びやかなソニー・クリスの演奏は、ただ明るいだけではない。落ち着いて聴けば聴くほど、その背後に潜むメランコリックな部分が気になり始める。その点で、個人的には、本盤では2.「柳よ泣いておくれ」が実は気に入っている。表題曲とこの曲の冒頭2曲は聴き逃せない。 最後に、余談ながら、本盤の日本語ライナーは村上春樹氏によるというのもよく知られた話である。別に仰々しい文章でも、特別凄いことが書いてあるわけでもないけれど、興味のある方は国内盤でご覧いただきたい。 [収録曲] 1. Up, Up and Away 2. Willow Weep for Me 3. This is for Benny 4. Sunny 5. Scrapple from the Apple 6. Paris Blues [パーソネル・録音] Sonny Criss (as), Cedar Walton (p), Tal Farlow (g), Bob Cranshaw (b), Lenny McBrowne (ds) 1967年8月18日録音。 CD-OFFSALE!ソニー・クリス/アップ・アップ・アンド・アウェイ 【CD】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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