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まあ、どうしても最後はこういうことになるから……、しかたないのでこの状況を受け入れるしかなかった。 自宅では私とあゆみとレイはいつも同じ部屋で寝ているので、それと同じと言えば同じである。 でも、せっかく女性専用の部屋を用意してやったのに、わざわざこっちに来る必要は無いハズだが。 あゆみはベッドに横になった。 そして両手を胸元で合わせて目を閉じた。 まだ接続が済んでないジャン! なのに何かを期待するような無邪気そうな顔だち。 「……………………。」 なので私はあゆみのゲームマシンのセッティングをしてやった。 基本的にヘルメットから出ているプラグをゲームマシンに接続して、同じくスーツから出ているプラグを接続する。そしてゲームマシンの電源ケーブルをコンセントにさし込む。 モニターとキーボード、マウスもちゃんと接続されているかチェックする。それとセーブ用のフラッシュメモリもさしておく。これは”緊急バックアップ”もしてくれる。 これで接続は出来た。 でも普通は逆だろ?こういうのはアンドロイドがしてくれるはずだが。 あゆみはずっと幸福そうな顔をして目を閉じていた。 私は最後にあゆみのヘルメットのシールドを下ろしてやった。 レイは自分でセッティングを始めた。 レイは自分でしてくれるらしい。任せておいても問題はないだろう。 私はレイの方にはかまわなかった。 すると……、 レイ「ご主人様!!これでいいんですね?!」 と半ば怒った口調で聞いて来た。 私はレイの所にも行かずに、 「たぶんそれでいいと思う」 と答えると、今度はレイが軽くかんしゃくを起こした。 やばい!やばい!そんなつもりじゃかった。 レイなら任せておいても大丈夫だと思ったから……。 それで私はレイの所へ行き、丁寧に接続を点検する。 もちろん、ちゃんと接続されていた。 そしてレイの着けたヘルメットのシールドをしずかに閉じてやった。 レイのその印象的な瞳がずっと私のことを追っていた。 ……………ふう。 私はマイさんに携帯電話で電話してみた。隣の部屋にいるんだけど。 たぶん向こうももう接続しているからベッドからあまり動けない。 ケーブルの長さはせいぜい3メートル程度しかないからだ。 するとマイさんから「セッティングは終了しました」との連絡があった。 「ゲームがスタートすれば、後はゲーム内で使う携帯電話で通話出来ますから!」 もう各ゲームマシンが『リアル・バーチャルタウン』の専用インターネットを通してつながったので、後はゲームを起動さえすれば「ゲーム内のバーチャル携帯電話」で連絡できる。それはもちろん”スマートフォン”である。 これで準備は全て完了した。 あゆみとレイはすでにベッドに横になって目を閉じている。 私もベッドに横になった。 「じゃあ、ゲームを起動するよ。」 すると、目の前、ヘルメットの透明なシールド部分に映像が映った。 ゲームタイトルである『迷宮都市』が表示されていて、その下に「START」の文字が点滅していた。 私は手を伸ばす。するとその画面がつかめそうになる。それで「START」を押す。 今、実際に私は「腕を伸ばした」のかどうかは不明。 神経に直接信号が送られているので、実際には腕は「かすかに動かしただけ」かもしれない。 でもゲーム内では腕をいっぱいに伸ばした感覚があった。 ゲームがスタートし、まずは女性の案内係が映った。 暗い背景に女性だけが立っている。目の前、数メートルの所に制服を着た女性がいる。 それは確かに本物の女性に見えた。単なる映像ではなく、実在しているように見える。 案内係「はじめまして。 『バーチャル・ロールプレイングゲーム』の世界にようこそ。 私がこのゲームの案内役を務めさせていただく”ミュウ”です。 ではこれより、みな様にはゲームの中に入っていただきます。 今回、お客様のご希望で”2時間でゲームがいったん終了”と設定されましたので、お時間が近づきましたらまたアナウンスいたします。 その時までにゲームが終了していなかった場合は、セーブされ、いったんゲームからログアウトすることができます。」 女性はゲームの概要の説明を始めた。 案内係「今回のゲームは基本的に『リアル・ロールプレイングゲーム』と同じシステムです。各プレイヤーがあらかじめ持っているHPが0になりますと”ゲームオーバー”です。 クリーチャーや悪人、モンスターなど、「敵と思われるもの」を倒しますと得点が得られます。 得点を得るとプレイヤーのレベルもじょじょに上がっていきます。 今回お客様が選択なさった『ストーリー』の最終目標は「お姫様を探し出し、この迷宮都市から救い出す」ことです。 ゲームの細かな説明などはそのつど、ゲーム内で使用するスマートフォンを見てください。そこにある”解説”というソフトを開きますと、いつでも解説が出ます。 行き詰まったら解説を見るようにしてください。そこに”ヒント”が隠されているかもしれません。 それでは、ゲーム進行中にも最初の方は解説が流れることがありますので、私からのご説明はこれにてひとまず終了です。 ではゲームをごゆっくりお楽しみください。」 女性の映像がスーーと消えた。 そして、映画館で「映画上映前に鳴る旧式のブザー音」のようなものがした。 目の前には大きなカーテンのような物が見え、それがゆっくりと開いていく。奥には真っ白な光を放つ大型スクリーンがあった。 まるでこれから映画が上映されるかのような雰囲気である。
私は怖くなった。 なっちゃんが行った方の道は川の方に続き、そこから小高い丘になっていた。 自分が泊まっている親戚のおじさん・おばさんの家に戻るには反対方向に行かなくてはならない。 でもさっきのメイちゃんの話が本当なら、なっちゃんらしき子供が走って行った道は「川」ある方角だ。 でも……、さっきのは本当にメイちゃんだろうか? なんだか……、わからなくなってきた。 どうしよう?辺りは暗い。真っ暗になって何も見えなくなる恐怖が迫って来る。 そうだ! 走ろう! 走って、走って! 全速力で走れば幽霊はおっつけない! そう考えて走った。道を先の方まで。 道は軽トラックが走った所だけ草が生えておらず、その他は背の低い草が茂っていた。 それはまるで線路のように、草の生えてない部分が2本続いていた。 はぁはぁはぁ………。 ”川”が見えてきた。 川と言うより、それは”用水路”で、端っこを木材の壁で囲まれていた。川幅はせいぜい1メートル半程度。 そこに木製の小さな橋がかかっていた。 それを渡る。 渡ると向こうは一段低くなった土地。そこからちょっとした平坦な草むらがあり、やがてそれがスロープになって小高い丘へと続いていた。 その丘のため、向こう側は見えない。向こう側はどうなっているのかわからない。 その手前の草むらの中に男の子が立っているのが見えた。白い服を着ている。体操服のよう。 それが暗い草むらの中で、「まるで蛍光塗料でも塗っているかのごとく」、白くボーーーと浮かび上がっていた。 どうしてそんな所にいるのだろうか? 幽霊?それともなっちゃん? 「なっちゃーーーーん!!」 私は両手を口の脇に当てて叫んだ。 するとその服装の子どもがこっちに向かって走って来た。 それは……、 やはり”なっちゃん”だった。 「なっちゃん!どうしてこんなところに?!」 するとなっちゃんは、 なっちゃん「アメ売りのおじさんに会ったの。 それでアメを買っていたの!」 と言った。 無くしたアメの代わりに新しいアメを買っていたと言うのだ。 でも、こんな時間こんな所にアメ売りのおじさんが? どう考えてもおかしい。 私が考え込んでいるすきになっちゃんは私の横をすり抜け、私がやって来た方向の道に走って行った。 私が気付いて振り返ると、もうなっちゃんの姿は無かった。 辺りは暗がりが広がっているが、草むらや道がうっすらと見えた。 なっちゃんは一人で先に帰り始めたのだろうか? もうかなり遠くの方まで来てしまった。私も早く引き返さないと! 私は小橋を渡って元来た道を戻り始めた。道は背の高い草が生える草むらに沿って左に曲がる。草むらを曲がると、なんとそこにアメ売りのおじさんが立っていた。 ウソだ! アメ売りのおじさんがこんな所にいるハズはない! こんな時間にこんな所に来てもアメは売れない。 おじさんは大きくて平たい木の箱を持っており、その箱にヒモを付けて首に回して、それで箱を下げていた。箱の中は水アメのお菓子でいっぱいだった。箱からは水アメの棒が無数に立っていた。 アメ売り「アメはいらんかね?」 おじさんの声だ。 でも幽霊かも知れない。ダマされないぞ! 私がその横をすり抜けて行こうとすると…、 アメ売り「おっと、もう帰るのかな?今日は買って行かないの?」 いつもと変わらぬおじさんのやさしそうな顔と口調。 ”幽霊”じゃなさそう。私は振り返ってこう言った。 「買いたいけどお金を持って来てないもの。」 そう言ってズボンのポケットに手を入れる。 すると、さっき草むらにいたメイちゃんらしき子供からもらった包装のビニールが出てきた。 アメ売り「シールをめくってごらん。”当たり”が出るかもしれないよ。」 え?これシールまだめくってないの? 暗くてよくわからなかった。 裏側は真っ白。そこはシールになっており、手でめくれた。 すると「当たり」の文字が出てきた。 アメ売り「良かったね。じゃあこれと交換だ。」 そう言っておじさんは水アメをくれた。 アメ売り「それとこれは”サービス”だよ。」 なんと、もう一本アメをくれたのだ。 「ありがとう!」 私はうれしくなって走り出した。 そのままずっと走っていると夏みかんの畑の所まで来た。 そこにはなんとおばさんの姿があった。私が泊めてもらっている家の親戚のおばさんだ。 脚立を立てて木から夏みかんをハサミで切り落としていた。 そして切った夏みかんを青色のプラスチックのボックスに入れていた。 また道には軽トラックが駐まっており、そこにはおじさんの姿があった。 おじさん「おおい!もうそろそろしまいにして、帰ろう! あれ? アメ売りのおっちゃんはどこへ行った? 乗せて帰らんと。」 どうやらアメ売りのおじさんはトラックに乗せてもらって、ここへ来たらしい。 だからこんな時間にこんな場所にいたのだ。 おじさんもおばさんも農作業用のかっこうをしていた。 おじさんはまだ麦わら帽子をかぶっていた。 「おばさん、どうして今ごろ夏みかん取ってるの?」 おばさん「今夜は”月夜”だから。月明かりがあって明るいから作業できるんだよ。」 そう言えば……、周囲は真っ暗ではない。ちゃんと月明かりがあった。周りが見えるのだ。 それはやや青みがかって幻想的だったが。 そしてその月明かりが”影”を作り出していた。 あの子供の帽子の影は「月明かりが作り出した影」だったのだ。だから顔面に影が垂れていた。 軽トラックが駐まっている道の先には作業着姿の男の子と白い体操服の子供2人が歩いて行く姿が見えた。 THE END
その男の子はまるで喋らない。 「…………誰か見なかった?」 びどうだにせず、こっちを見ている。でも帽子の影になって目が見えないのでどんな表情をしているのかわからない。 唇は凍ったような印象がある。まったく動かないのだが、じっと見ていると、それが少し笑ったようにも見えた。 私は急に寒気がして走り出した。左側には道がある。 走って、走って、走って! さっきの男の子はここでたぶん迷子になったんだ。 そして家に帰れなくなった。 それもずいぶん前に。 誰も探しに来なくて、自分一人では帰れなくて、 それで……、今もあの草むらの中にいるんだ。 きっとそうに違いない! 私は不意に誰かとぶつかった。 「うわあー!!」 それはなっちゃんを探している私の友だち”メイちゃん”だった。 白い体操服と白い帽子。その帽子はつばがはねあがり、赤くなっているのが見えた。 裏返してかぶると赤い帽子になるのだ。 メイ「いたいなあ!」 「ゆっ、幽霊を見たんだ!早く帰ろう!」 メイ「でもなっちゃんは?」 私は怖くなっていたので早く帰りたかった。 「なっ、なっちゃんは幽霊にとらわれたんじゃないか?!」 メイ「なっちゃんみたいな子供がこの先の道を走って行くのを見たよ。 なっちゃんかも知れない。あれはきっと”なっちゃん”だよ!」 聞けば「最初道から離れた”左右を草むらに挟まれた場所”にいたのだが、そこからこの道の方を見ると、一瞬子どもが通り過ぎたのが見えた」と言うのだ。 私はその道の先の方を見た。誰もいない。 先の方まで道が続き、そして右側に折れ曲がり、草むらの向こう側になって見えなくなっていた。 それはたぶん”小さな川”がある辺りである。 「でっ、でも見えたのは一瞬だろ?」 メイ「行ってみましょう!!」 「でも、幽霊が出るんじゃないか?」 メイ「……………………。」 怖いけど……、 このままなっちゃんだけ残して行くことは出来ない。 今は2人いるのだ。1人っきりの時より幽霊は怖くない。 2人なら怖さも少なくなる。 「わかった、行こう!」 私は道の先の方に行こうとした。 メイちゃんの方を振り返ると……、 今度はそのメイちゃんの顔が、光の加減で見えなくなっていた。 赤い帽子のつばが見え、そのつばの影が顔面に垂れており、唇とあごだけ見えていた。 その唇は妙に赤く感じられた。 さっきまで元気だったそのメイちゃんが立ちつくしたまま動かない。言葉も発しない。さっきまでの活発さがすっかり消えていた。まるで”別人”である。 ?「……………………。」 すると、メイちゃんらしき子供は無言で何かを差し出して来た。 「え?」 差し出したのは小さなビニールにシールが張られた物。 私はそれを受け取る。 なんだろうか、これは?何かマークが描かれた丸いシールが貼られていた。 どこかで見た事あるなあ。 そうだ! なっちゃんが持っていたあの水アメ!あれの包装をしているビニールだ! あっ、あれ、”当たり付き”なんだよな? そう思って裏をめくったのだが、丸いシールの裏側は真っ白だった。 ”ハズレ”? じゃあ、なんでこんなも物くれるの? 目を上げてメイちゃんの顔を見ようとすると……、 いない!! いないのだ! 周囲を見回してもメイちゃんらの姿は消えていた。 「……………………。」
私は”子供”だった。 5歳ぐらいの年齢だ。 夏休みに親戚のおじさん・おばさんの家に遊びに来ていた。 そこに宿泊させてもらっている。都会から離れて、”田舎”にやって来たのだ。 もう季節は9月近い。 空には夕焼けが広がり始めていた。 私の友だちもここに遊びに来ていて、私を含めて5人いた。 全て同い年ぐらいの子供たちだ。 今遊びに来ている場所は畑や草むらが続く広々とした場所。 夏みかんの畑もある。そして軽トラックが入れるような道もそこまで続いていた。 道幅はけっこう広い。 その脇は草むらである。 空はまだ今は”夕焼け”だったが、もう40分もすると暗くなるだろう。 私は今、”道”の所にいた。 親戚の子供である”なっちゃん”がいて、いっしょに遊んでいた。 しかし突然、なっちゃんが「お菓子が消えちゃった!」と言った。 お菓子を親戚のおばちゃんにもらっていたのだが、それが「消えてしまった」らしい。 それは短い割り箸のような木の棒2本が束ねられ、その先に水アメが丸いだんご状になって付けられており、それがオブラートのような物で包まれ、その外側をビニールで包装されていた。ビニールの内側には丸い形のシールが貼られていた。そこにお菓子の名称などが細かい文字で書かれていた。 「でも、なっちゃん!消えたってどういうこと?」 なっちゃん「スカートのポケットの中に入れてたの。そしたら消えちゃった!」 ……なっちゃんは子供だから、おそらくポケットから棒だけ突き出していて、それが草か枝に当たっておっこちたのではないだろうか? 草むらを私は見る。あちこちに背の高い草が生い茂っており、辺りは暗くなり始めている。 もうお菓子を探し出すことは難しい。 「なっちゃん!それ、消えたんじゃない!おっことしたんだよ! もう見つからないよ!暗くなる前に帰ろう!」 私はそう言った。 なっちゃん「でも……、」 あきらめ切れなそうな声がした。 私は草むらから目を離して、なっちゃんの方を振り返る。 すると……、 そこになっちゃんの姿はなかった。 いないのである。 「なっちゃんが……、消えた?」 私は辺りを探し始めた。 だんだん暗くなってくる。 友だちのコウちゃんと草むらで出会う。 「なっちゃん、見なかった?」 コウ「いいや、見なかった。 ボク、もう先に帰るよ。」 「うん、わかった。 じゃあ、先に帰って。 さよなら。」 マモル君もちょうど草むらから出て来た。 マモル「じゃあ、ボクもいっしょに帰るよ。」 「え?2人も先に帰るの?」 これで2人減った。 ここに遊びに来た友だちは私を含め3人だけになった。 もう暗くなりかけである。 「なっちゃん!もう帰らないと!道がわからなくなるよ!」 私は付近の草むらに向かって叫んだが、誰も答えない。 私以外の2人の姿が消えた。 周囲には街灯も何もない。 私は不安になってきた。 懐中電灯さえ持って来ていない。 どうしよう?真っ暗になったら。何も見えなくなる。 なっちゃんたちといっしょに帰らないと! なっちゃんを連れて帰らないと、なっちゃんの家のお父さん・お母さんに怒られる。 「なっちゃん!!メイちゃん!」 私は草むらの中、友だちの名前を呼び続けた。 すでに辺りの様子がわかりにくくなっている。 すると、目の前の背丈1.5メートルぐらいの細長い植物が無数に生えている草むらの中に一人の男の子が立っていた。 それはまるでお地蔵さんでも立っているかのように、静かにそこに立っていたのだ。 たぶん注意してないと気付かなかっただろう。なぜだか「そこに存在している」という気配が感じられないのだ。 その子は灰色の作業着のようなデザインの服を着ていた。それに作業着と同じデザインの帽子。子供にしてはめずらしいかっこうだ。 その男の子は不思議な雰囲気を持っていた。帽子の長いつばで影が出来ており、唇とあご以外は見えなかった。 こんなに暗いのに影が……。 その影のせいで顔が見えない。 「あのう……、このへんで”なっちゃん”か、他の子供を見かけなかった?」 私は勇気を出して聞いてみた。 だが、その男の子は無言で私の顔を見つめているだけだ。その目は影で見えないが、顔がこっちを向いているのがはっきりわかる。 私が立っている所は草むらではなく、”土”の部分。でもその男の子が立っているのは長い草が生える草むらのど真ん中。 どうしてそんなところにいるのだろうか?”かくれんぼ”でもしてたのか?虫でも追っていたのだろうか? 私は何か背中にゾクゾクッとするものを感じた。
私は浴室の横にある「着替えが出来るスペース」に行く。 大きなバスルームの脇に作って置いたスペースだ。これは内装こそ変更されたものの、スペース自体はそのまま残っていた。 私はそこで着替える。 スーツは直に肌に着けるものらしい。そうしないと神経に信号が送りにくいのだ。下着は着たままでも大丈夫らしいが上の方のシャツは脱がないといけない。 よくクリーニングされた、少しだけごわごわした印象の生地のスーツを身に着ける。 まあ、なんと言うか着心地が今ひとつなのは仕方ない。 内側は白いメッシュ状の物でその部分は肌触りも良く、やわらかい素材。 でもその内側にセンサーやら信号を発生する装置があるらしい。それがごわごわの原因。 それでもバイク用の革つなぎを着た程度の窮屈さに収まっているが。 私はさっそく着替えた。 着替え終わってから、さらに5分ほど待って、リビングに向かう。 「みんな、着替えた?」 そう言うと、ドアの向こうからあゆみの「はいはい。」という軽いノリの声が小さく聞こえたので、ドアを開けてリビングに入る。 あゆみ「きゃああああああああああああああああああああああ!!」 そう叫んで、あゆみは両腕で自分の身体を隠す仕草をした。 うわぁ!なに?まだ着替え済んでなかった?そりゃゴメン! マズイな、こりゃ! 待てよ……、 よく見ると……、あゆみは着替え済んでるジャン。他のみんなも。 あゆみは小さく舌を出しながら笑う。 からかわれたのだ! クソッ! 私はすごく恥ずかしくなった。 こういうからかいは……、 男の自尊心などをふみにじるものだ。 覚えていろ!あゆみ!ゲーム内ではこのしかえしをしてやる! 「あゆみはゲーム内では私の”部下”だ! 私の命令を聞き、どんな時でも私の言う事には絶対服従するのだ!」 そう言ってやった。 でもマイさん、ネイ、レイが無表情になっている。反応無し。 今の言葉は女性には”受け”が悪いようだ。しかしあゆみは、 あゆみ「まあいいです。」 と軽く返事した。いいのかよ?(笑) 「ではみんなでベッドルームへ行こう!」 2階のベッドルームに行く。 なんと、ベッドは以前私が運び入れた簡易型の組み立て式ではない。今やちゃんとしたベッドが置かれていた。 ホテルに置いてあるような豪華なデザインのベッド。 茶色の毛布が掛けてあり、大人のムード。 それも幅が広くてゆったり。インテリアも置かれていて、頭の方にはちゃんと電気スタンドとそれを置くための家具が配置されていた。 ベッドの頭の側にも棚が置かれ、いろんな物を収容できる。本などを置くのにちょうど良い。 これは他の入居者がデザイン・配置したものだ。 だが……、その時本館のベッドの数は合計4個しかなかった。 ベッドルームが2部屋あり、そこに各2つずつのベッド。 4人家族の旅行には良いだろう。また別館の塔にもベッドがあるのでそこにも数人泊まれる。そういう風に改造されていた。 私はここに来る前にインターネット上でベッド数だけは追加しておいた。それなので、今はベッドはちゃんと5つ以上ある。 ベッドルームは大小2つ。大きな方の部屋にはベッドが4つ。この広いスペースは残っており、「リビング」となっていたが、そこに無理矢理4つのベッドを置いた。 そして小型のベッドルームには一つベッドを追加して3つのベッドが並んで置かれた。 これは前回の教訓から。 どうせ……、たぶん”例のごとく”になるから。 でも一応、マイさん、あゆみ、レイ、ネイには「広い部屋」のベッドルームの方を進めた。 女性たちは広い部屋の方に入った。このままそこで全員寝てくれればいいが。 私は別の3つのベッドが置いてある部屋に行く。 さあて、私はここでプレイしよう。 すると……、 ガチャ! ベッドルームの鍵が開いた。そこにはレイが立っていた。 レイ「……………………。」 レイはジト目で、この部屋で私がプレイの準備をしているのを確認してから、部屋に入って来た。そして私のすぐ隣のベッドを占領した。 また! やっぱりだ! 次に、 ガチャ! またベッドルームの鍵が開いた。 今度はあゆみが入って来た。 「……………………。」 やはりこういう展開になったか? 私は端っこのベッドに寝ていた。その隣はすでにレイに占領されたので、あゆみは軽くかんしゃくを起こす。 しかたないので私が「真ん中のベッド」を使い、その左右のベッドをレイとあゆみにそれぞれ使ってもらうことにした。 マイさんとネイは大きな広い部屋にいるらしい。 やはりこのパターンになったか。 まあいい。 これは「想定内」のできごとである。
確かにそういう設定変更も可能らしいが……、 まあいい。 このゲームマシン、操作方法はデスクトップパソコンなどとほぼ同じである。 ゲームマシン本体に付属のモニターとキーボード、マウス、フラッシュメモリなどを接続する。 このゲームマシンの性能はノートパソコンなどに比べるとはるかに高い。 また”ゲーム専用機”なので、3Dグラフィックスの描画などは特に高い能力を持つ。 最初にこのゲームマシンにディスクなどからゲームを読み込ませる必要がある。もしくはインターネットを使って、データをダウンロードしてくる。 ディスクから読み込ませる場合、このディスクは大容量を持っているので、インストールにはかなり時間がかかる。 そのディスクを何枚も高速で読み込ませ、ゲーム機内の大容量ハードディスクに記憶する。 このゲームマシンの記録装置はSSDと大容量ハードディスクの組み合わせである。 今回インストールする必要があるのは『バーチャル・ロールプレイングゲーム』の基本システムと基本データ。それと『迷宮都市』の通常設定版のプログラムとデータだ。 しかしこのゲームマシン、貸し出し前にすでに『バーチャル・ロールプレイングゲーム』の基本システムと基本データが本体に読み込ませてある。 これは読み込ませるデータが膨大なためと、インストールにあまりに時間がかかりすぎるためだ。そのためユーザーになり代わって『ギルド』であらかじめインストールしておくのだ。それに基本システムのインストールに失敗すると、「このゲームマシンは脳波や神経に直接影響を与えるため」危険なのだ。 しかし、『ツアーパック』などのデータは、ユーザー自身がダウンロードしてくるか、ディスクを借りてそこからインストールすれば良い。 その後、インターネット接続するとインストールが成功したかどうかプレイ前にチェックしてくれるのだ。 今回は『迷宮都市』の『ツアーパック』をインターネットを通じてダウンロードする。私はさっそく全員の分のダウンロードを開始した。これには少し時間がかかる見込みだ。 それから『ツアーパック』内の一部の「設定」だけ変える場合は、各自それに合わせた専用データのみダウンロードしてくる。 たとえばゲーム内で使う”コスチューム”は、サイトに行くといろいろなコスチュームが用意されている。気に入ったコスチュームを選ぶとそのデータをダウンロード出来る。 『ツアーパック』のダウンロード中なので、その間あゆみは勝手にコスチュームの外観の変更を始めた。ダウンロード中でもゲーム機は使えるのだ。 専用サイトに行くと、いろいろなデザインの中から気に入った物が選べる。 レイもコスチュームの外観を変更するらしい。 マイさんもネイも勝手に選び始めた。 なんだかなあ……。 みんなで黒服のコスチュームで統一するからおもしろいんじゃないか? もしかすると……、雰囲気がメチャメチャになるかもしれない。 ……まあ、いいか。 女性たちのコスチューム変更は許そう。それぐらいなら。 女性を縛るのは良くない。女性に自由に生きさせるぐらいの度量の広さが男性には求められるのだ。(笑) でもこの間の『宇宙戦艦』みたいにならなければいいが。 しばらくすると女性たちのコスチューム変更の設定が終わった。 あれからだいぶ時間が経ったなあ。 もう午後9時半ぐらい。 まあ、いいか。後2時間ぐらい遊んで、その後は寝るとしよう。 私は「ゲーム開始から2時間を過ぎると自動的にセーブされ、いったんゲームを終わる」ように設定した。その後までゲームが長引くようであれば、後日”続き”をする。 『リアル・ロールプレイングゲーム』でも実は『セーブ』は可能だったのだ。 途中でゲームを中断することが出来る。だが、あちらはいったんゲームのアトラクションから出て、コスチュームを脱いで、それを返却しなくてはならない。面倒なのだ。やはり”現実”というやつは何かにつけて手間がかかる。 だが、こちらの『バーチャル・ロールプレイングゲーム』のセーブはそれに比べると少しお手軽である。 普通のコンピューターゲームといっしょだから、コスチュームも何もかもが簡単にセーブできるらしい。専用スーツを含む『プレイセット』は「そのつど返却しなくてはならない」ということはなく、『リアル・バーチャルタウン』滞在中は手元に置いておけるのだ。 さて、これで一通りの準備を終えた。後はいよいよ専用のスーツに着替える。 女性たちが着替えるというので私はいったんリビングから出た。 別の部屋に行き、そこで私だけ着替える。リビングはそのまま女性たちの「着替え室」となった。 │<< 前日へ │翌日へ >> │一覧 │ 一番上に戻る │ |
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