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2011年10月04日
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テーマ:ニュース(99457)
カテゴリ:文化
 作家の赤川次郎氏は、9月16日の朝日新聞夕刊にユニークな日本人論を展開している;


 「制服向上委員会」という、中高生の女の子たちのアイドルグループが、「脱原発の歌」を歌っている、と新聞で読んで、ユーチューブの動画で見た。ミニスカートの少女たちが、飛んだりはねたりしながら歌う「ダッ!・ダッ!脱・原発の歌」。なかなか爽快だ。歌詞は結構厳しくて、

 「忘れないから 原発推進派
  安全だったら あなたが住めば良い」

 なんて、まことにその通り、と思ったりする。

 この少女たちを冷笑するのは簡単だ。しかし、この少女たちも間違いなく原発事故の被害者であり、またその子供の世代にも放射能の被害は続いていくのだ。被害者である以上、誰でも原発に対して発言する権利がある。この歌の車内広告が断られ、CDショップでポスターも貼ってもらえず、TVでも全く流れないと聞くと、そんな情けない大人たちへ、少女たちが抗議するのも当たり前だと思える。

 新しい野田首相を、経団連が歓迎しているということは、原発再稼働へと民主党が方向転換すると期待されているのだろう。「脱原発」を社説で唱えながら、管首相を辞任へ追い込んだ新聞は、命がけで再稼働を止める責任がある。

 このコラムも次回で最後になるが、ぜひ1本、推薦しておきたい映画がある。知り合いの女性が、国際交流基金の日本を紹介するための映画会を手伝ったとき、全く知らない作品があり、「時代劇?」と少々戸惑いながら見たそうだが、その衝撃は強烈なものだった。

 今井正監督の「武士道残酷物語」(1963年東映・DVD)である。時代劇なのに、映画は現代の東京で、救急車が夜の町を走って行く場面から始まる。サラリーマンの主人公飯倉が、婚約者が自殺を図ったと聞いて病院へ駆けつけ、そこで己の一族の歴史を回想する。戦国の老武士から現代の青年まで、7代にわたる一族を中村錦之助がすべて演じ分ける。気迫に圧倒される熱演だ。

 主君の失敗の罪を引き受けて切腹する武士に始まり、ここに描かれているのは、主君の暴虐に耐え、踏みつけにされても、なお忠誠を尽くすことに喜びを覚える日本人の姿である。ことに、美少年であったために主君の男色の相手としてもてあそばれた揚げ句、去勢される悲惨な元禄の臣下。さらには好色な主君のために妻と娘を失う剣の達人など、正視するのも辛(つら)いような物語が続く。

 原作は南候範夫の「被虐の系譜」。文庫本70ページほどの作品だが、ここには日本人の精神構造の一面が鮮やかに描き出されている。

 明治になり、旧藩主を自宅へ引き取った飯倉家の当主は、婚約者を旧藩主に犯されながら、「気の毒な殿様を慰めてやってくれ」と彼女に頼む……。

 封建時代の長い記憶は、日本人に自らを殺してお上に尽くし、何の報いも求めないことを喜びとする性質を植え付けた。「武士道残酷物語」は今、見直されるべき傑作だ。

 これを見た知人の女性は、「日本人の辛抱強さ、諦めの良さの裏には、こういう精神があるのでは、と思った」と言った。


2011年9月16日 朝日新聞夕刊 3版 5ページ「三毛猫ホームズと芸術三昧-『お上に忠誠』に喜び」から引用

 この記事が指摘するところの、日本人の「自らを殺してお上に尽くし、何の報いも求めないことを喜びとする性質」というのは、一面で真実を言い当てていると思います。戦前の婦人雑誌には、一人息子を日清戦争だか日露戦争だかで戦死させた老母たちが集まって座談会を開き「息子が戦争に行って死んだのは、天皇陛下のお役に立ったわけだから、自分は大変幸せだ」などと発言しているのは、正にそれを証明していると言えます。そのような精神構造というのは、1789年の人権宣言や1872年に出版された「学問のススメ」に引用された「天は人の上に人を作らず・・・」の認識からはるかに遅れた江戸時代の心性というもので、現代では、政府や大企業を批判すると理由も無く反発する人々に受け継がれているのではないか、と思われます。しかしこれは、私は、日本人の特徴であるとは言えないと思います。確かに一部の日本人に見られる現象ではありますが、そうではない日本人も、江戸時代の昔から存在し、日本の各地で百姓一揆を起こして「お上」に反抗し、そういう力が明治維新を成し遂げる原動力となったからです。そして、そのような「お上」に楯突く精神構造もまた、現代に引き継がれて、例えば制服向上委員会の「脱原発の歌」などに現われているのだと思われます。だから、そういう精神構造こそが、これからの日本の未来を切り開いていくものであろうと、大いに期待しています。








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最終更新日  2011年10月04日 18時54分43秒


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