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Act.4その日、デュエルアカデミアは喧騒に包まれていた。 授業の一環としてプロデュエリストが3人、アカデミアに招かれたのである。 世界有数の設備を誇るデュエルドームの観客席は、 授業開始を今か今かと待ち受ける生徒たちでごった返していた。 「生徒がこんなに授業を待ち遠しく思うのって相当珍しい光景よね」 私、七瀬奈津美もそんな観客席の中にいた。 「寮を出る時から凄かったよね。皆いい席に座るんだーって急いでて」 隣に座るのは姫宮愛美。その時の光景を思い出したのか笑顔が少し引きつっている。 「それも我々Aクラスには無関係なお話ですわ。オーホッホッホ」 一方、現在Aクラスが優先的に設備を使えるのをいい事に、 他のクラスを見て楽しんでいる生徒が1人。 「必死に席を取り合う生徒を見るのは気分がいいですわ。 わたくしがクィーンなのだと実感できますもの」 「…ってなんでアンタがここにいんのよ!?」 いつの間にか愛美とは逆側の席にいたのは八御門百合子。 足を組んで扇子を広げ、さも当然のように私の隣に座っている。 「なんでって、ここが一番いい席だからに決まっていますわ」 「ハァ…よりによってアンタの隣とはね…」 「何かおっしゃって?」 「ま、まぁまぁ2人とも。もう授業が始まるよ」 Act.4 来訪、プロデュエリスト「それでは、プロデュエリストの皆様の入場です!」 ドーム内のスピーカーからお腹の底まで揺るがす大音量の放送が響く。 今回も放送を行っているのは多分放送部の男子生徒だろう。 「まず1人目! そのデュエルは豪華絢爛な海のミュージカル! “氷海のマーメイド”こと深海 嶺奈(ふかみ れいな)さんだー!」 入場口から最初に出てきたのはウェーブのかかった青緑色の髪が印象的な女性。 ボリュームのある髪と、豪華なドレスが煌びやかな印象を振りまいている。 「フン! 真っ先に出てきたのが磯臭い海鮮女とは、肩透かしですわ」 そんな彼女に憎々しげな視線を送る百合子。 それもそのはず、嶺奈さんはプロデュエリストにして深海財閥の令嬢。 プロとしても人気の高い彼女を同じ“お嬢様デュエリスト”として、 百合子は激しくライバル視している節がある。 「アンタより断然人気みたいだけど?」 私達が座る場所とは対面にある巨大スクリーンに中継される深海嶺奈は、 その柔らかい美貌に温和な笑みを浮かべてステージへ上がっていた。 彼女が手を振る度に生徒達の声援がステージを満たす。 「ぐ…ぬぅぅぅ…!」 ギリギリと歯軋りしながら悔しそうにステージを睨む百合子。 そんな事しなきゃ彼女ももっと人気を取っていそうなものなのに。 「続けてこの男が来てくれた! 荒れ狂うドラゴン達の支配者! “暴竜王”の異名を持つ男、叢雲達也(むらくも たつや)だー!」 続いて入ってきたのは額に巻いたバンダナが特徴的な男性。 皮のジャケットにカーゴパンツ、重そうなブーツと厳つい格好をしている。 「何を言ってるんだ」と言わんばかりの仏頂面を放送席に向けつつ、 男子生徒達の熱い声援に、無言で拳を振り上げる。 パワフルで荒々しいデュエルは男子を中心として人気を得ており、 前年度では決勝リーグに駒を進めるなど実力も本物だ。 「あの人ってこういうの来てくれるんだね」 「確かに、ちょっと意外かもね」 「そしてラスト、3人目! なんとあの…ぎゃあああっ!?」 「3人目ェ! 前年度はほぼ無敗でグランドリーグを突破した現チャンピオン!」 突然、スピーカーから聞こえる声が女性の物に変わった。 最後の悲鳴と物音から察するに女生徒にマイクを強引に奪われたものと思われる。 「弱冠17歳にして“剣聖”の異名を持つ最強の美少年デュエリスト!! 私達は貴方を待っていた! 天野雅紀(あまの まさき)様ァァァーッ!!」 放送の様子がおかしい。 だが呼ばれた本人は慣れているのか、そんな事はどこ吹く風と姿を現した。 気品のある真っ白なスーツに赤いワイシャツ、 堂々と輝く金髪は目元に届くか届かないかのところで揺れている。 女生徒の悲鳴のような声援も気にすることなく、彼は静かにステージへ上がった。 「あぁ…美しい! 流石は我が八御門財閥がスポンサーにつくデュエリスト! その気品、優雅さ、美しさ。どれをとっても別格ですわぁ…!」 気付けば百合子もヨダレでも垂らしそうなくらい弛緩した表情で彼を見ていた。 それでもさりげなくスポンサーである事をアピールしている辺りは彼女らしい。 「凄い人気…だねぇ」 一方で愛美は苦笑いを浮かべていた。 1人目の頃から盛り上がっていたが、ここまで来ると恐ろしいものがある。 「ホント、迂闊に悪口なんて言ったらヤバいわよ」 「い、以上3名のプロデュエリストがお越し下さいました!」 などと愛美と話していると、放送が再び男子の声に戻った。 「ではこれより我が校生徒とプロの皆様によるエキシビジョンマッチを開始します!」 その宣言に再び会場が揺れる。正直そのせいで全然話が進まないのはどうかと思うのだが。 いい加減うんざりして視線を泳がせてみると、熱心に写真を取るパルトさんの姿が見えた。 そういえば記録係だっけ。あの中から何枚が外部へ流出するのやら。 「では対戦相手となるラッキーな生徒を発表します! まずは七瀬奈津美さん!」 「ぶほっ!?」 突然、ドームに自分の名前が響き渡った。 驚いて咳き込んだ私に周囲の視線と羨望が集中する。 「ステージに上がってください!」 「あぅ…。こういうのって事前に知らせて欲しいわね」 あまりの不意打ちに体が火照って思うように動かない。 ギクシャクとした動きでなんとかその場を離れると、 一度客席を出て舞台裏の通路からステージへ向かう。 「ふぅ…」 誰もいない通路はとても涼しく、心地が良かった。 しばらくここで休んでいたいくらいだ。 「ハイ、デュエルディスク。落ち着いて頑張ってね」 しかしその先に待ち受けていた教師がそうはさせてくれない。 デュエルディスクを渡され、私はそのままステージへと向かった。 「ナッちゃんファイト!」 途中、パルトさんにエールを貰いながらステージへ上る。 そこにいるのはそわそわと落ち着かない教師と3人のプロデュエリスト。 嶺奈さんの優しげな瞳が、達也さんの無愛想な双眸が、雅紀さんの鋭い眼光が、 一斉に私へと向けられる。 ただそれだけで感じられる圧倒的な存在感。 だが、それで怖気づいていてはプロになるなど夢のまた夢。 「よろしくお願いします」 私は腹を括って会釈すると、3人の前に立った。 丁度その頃、実況が2人目の生徒を発表する。呼ばれた名は八御門百合子。 彼女はその場で高笑いをすると、足早にステージへとやってくる。 「よ・ろ・し・く、お願い致しますわ」 なんと平然と嶺奈さんにメンチ切って堂々と私の横に来た。 流石にプロと普段から出会う機会のあるセレブだけの事はある。 ここまで普段通りでいられる生徒は彼女くらいだろう。 「では3人目です! ひめ…」 「ハーイハイハイハイ!! 俺! 俺がやるーッ!!」 いや、もう1人いた。観客席から飛び上がってアピールするバカが。 赤いツンツン頭に金色のV字アンテナのような前髪。 着崩した制服の裾を周囲から引っ張られつつ、 観客席から飛び降りようとするキング・オブ・バカ、小鳥遊英太。 「た、小鳥遊くん! いいから席につきなさい!」 ステージ傍の教師が慌てて制止しようとする。 だが、そんな彼からマイクを奪い取った男がいた。 「いいぜ坊主! チャンスはそうやって掴み取るもんだ!」 さっきまで仏頂面でいたプロデュエリスト、達也さんだった。 反論しようとする教師を一睨みして黙らせると楽しそうに話を続ける。 「さっさと上がってきな!」 「おっしゃー! 話がわかるぜおっさん!」 「おっさんじゃねぇ!」 そのまま本当に観客席から飛び降り、ダッシュでステージへ上がる英太。 ステージの袖から慌てて教師がデュエルディスクを届けに来る。 「で、では少しハプニングがありましたがエキシビジョンマッチを開始します! まず栄えある1回戦のカードは――」 スクリーンに表示されたスロットが同時に2つの名前で停止する。 「“暴竜王”叢雲達也VS八御門百合子! 両者、ステージ中央へどうぞ!」 「あらまぁ。達也さんのデュエルを間近で見るのは久しぶりですわ」 「フン。お互い様だ」 隣の嶺奈さんをぶっきらぼうにあしらい、達也さんはさっさとステージ中央へ向かう。 「あの海鮮女をこの場でギッタギタにしてさしあげようと思っていたのですが…。 代わりに彼を倒してプロリーグにわたくしの名を知らしめるとしましょう」 一方、百合子は自信満々といった様子でゆっくりと向かった。 その間に残された4人はステージ横に用意された席に着く。 「それではエキシビジョンマッチ1回戦! デュエル開始ィ!!」 「「デュエル!!」」 説明『モンスター名<攻/守☆Lv>』(ランクは★で表記) BATTLE!! ◎:戦闘勝利 ×:戦闘敗北 △戦闘引分 <<1ターン目:百合子>> 「先攻は貰いますわ! 『ワン・フォー・ワン』を発動! 手札を1枚捨て、デッキから☆1モンスターを特殊召喚!」 百合子のフィールドに最初に現れたのは光輪と羽根を持ったカエルのモンスター。 条件を満たせば毎ターン蘇ってくる事が可能な『黄泉ガエル<100/100☆1>』である。 「そして『黄泉ガエル』をリリース、『炎帝テスタロス<2400/1000☆6>』!」 『黄泉ガエル』が墓地へ送られ、代わって赤を基調とする甲冑が現れる。 百合子が主力とする帝モンスターの1体だ。 「アドバンス召喚に成功した時、相手の手札1枚を捨てさせますわ! 更にそれがモンスターであればレベルの100倍のダメージです!」 『テスタロス』が掌に生み出した炎を投げつける。 それは鋭い炎の矢となって達也さんの手札を撃ち抜いた。 ●達也LP8000→7700 「この瞬間、捨てられた『双生のドラゴンエッグ<0/0☆3>』の効果発動! このカードが効果によって墓地へ送られた時、2体のトークンを生み出す! 来い! 『ドラゴンキッズトークン<300/300☆2>』共!」 現れたのは未発達の翼を背負った巨大トカゲのようなモンスター。 2体とも馬ほどの大きさがあり、とてもキッズというイメージではない。 「そんな弱小モンスターではわたくしの帝は倒せませんわ! これでターンエンドです」 <<2ターン目:達也ターン>> 「テメェもこれ以下の弱小モンスターを出しただろうが。 それをどう使ったか思い出してみるんだな」 「さぁ…リリース専門の雑魚モンスターなど知った事ではありませんもの」 「今言ったじゃねぇか!」 私が思った事と全く同じツッコミが達也さんの口から飛び出した。 あの人、思ったより怖い人じゃないのかもしれない。 「2体のドラゴンをリリースし、『ドラゴニック・タクティクス』を発動! デッキから『タイラント・ドラゴン<2900/2500☆8>』を特殊召喚だ!」 2体のトークンが消え、フィールドに巨大な影が落ちる。 見上げれば赤銅色の巨大な翼を広げ、暴君の名を持つ巨竜が滞空していた。 百合子を見下ろす魔物は雄々しく、そして禍々しい。 「更に『デブリ・ドラゴン』を召喚。効果で墓地から攻撃力500以下を蘇生する。 『ドラゴンエッグ』を蘇生し、それに『デブリ・ドラゴン』をチューニング!」 次々にドラゴン達が召喚され、それが1つに重なっていく。 その輝きの中から、更なるドラゴンが召喚されようとしていた。 「猛き爆翼よ、大地を砕け! シンクロ召喚! 吼えろ、『エクスプロード・ウィング・ドラゴン<2400/1600☆7>』!」 新たなモンスターは痩せ細った体躯に巨大なコブを背負った病的な姿のドラゴン。 戦闘する相手を一方的に爆撃する能力を持った凶悪な魔竜である。 「バトル! 『エクスプロード』で『テスタロス』を攻撃!」 「わざわざ相殺ですの? 受けて立ちなさい、『テスタロス』!」 「無駄だ! コイツ以下の攻撃力を持つモンスターはダメージ計算なしで破壊し、 その攻撃力分のダメージを相手に与える! <キングストーム>!」 『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』が大きく仰け反り爆流のブレスを放つ。 それは『テスタロス』が放つ炎ごと全てを飲み込み爆砕し、百合子を襲った。 「きゃああっ! …よくもっ!」 ●百合子LP8000→5600 「更に『タイラント・ドラゴン』の攻撃!」 「させません! 『バトルフェーダー<0/0☆1>』!」 一気に劣勢に立たされた百合子だったが、かろうじて追撃は避けた。 『バトルフェーダー』は直接攻撃時に手札から特殊召喚され、バトルを終了する。 鐘のついた黒いモンスターが現れ、その鐘の音が響いた。 「フン…まぁそうだろうな。カードを2枚伏せてターンエンド!」 ~場の状況~ 百合子 LP5600 手札2 ≪モンスター≫ バトルフェーダー>守備表示 ≪魔法・罠≫ なし 達也 LP7700 手札1 ≪モンスター≫ タイラント・ドラゴン>攻撃表示 エクスプロード・ウィング・ドラゴン>攻撃表示 ≪魔法・罠≫ 伏せカード2枚 <<3ターン目:百合子>> 「わたくしのターン! スタンバイフェイズに『黄泉ガエル』が復活! このカードは私の場に魔法・罠がなければこのタイミングで蘇生しますわ」 黄泉へと続く魔法陣が開かれ、その中から『黄泉ガエル』が浮上する。 「更に『死者蘇生』! 墓地から『光帝クライス<2400/1000☆6>』を蘇生!」 続けて蘇生されたのは神々しい黄金に輝く甲冑の帝。 『クライス』が持つ聖なる光は他の帝とは異なる性質を持っている。 「ソイツは…最初の手札コストか」 「その通りですわ。わたくしのデュエルには一切の無駄がありませんもの! 全てが計算しつくされたパーフェクトタクティクス! オーホッホッホ!」 プロを相手にそれだけ言えるのは凄いわ…と思わず感心してしまう。 「さぁ『クライス』! その効果を発動するのです!」 百合子がそう叫ぶと同時に上空から光が差し込み、 『クライス』と『黄泉ガエル』を包み込んで天へと誘う。 「場のカード2枚までを破壊し、そのコントローラーは破壊された数だけドロー!」 『クライス』が持つ輝きは死と新生の力。 百合子は自らのカード2枚を代償に新たな手札を得る。 「ところで…『クライス』の破壊とドローは同時処理なのはご存じですの?」 「あぁ。それがどうした」 「つまり…我が八御門家の本当の力をお見せできると言うことです! わたくしのモンスターが破壊され墓地へ行った事で効果発動!」 百合子が手札の1枚を掲げると同時に次々と白亜のメカが出現する。 どれもが美しい曲線を描く近未来的なフォルムを持つ5つのメカは、 それぞれが変形し、コアとなるパーツへと結集していく。 「特殊召喚! 『機皇帝ワイゼル∞<2500/2500☆1>』!!」 最終的な姿は左腕にブレード状の武器を装備した人型ロボット。 コアとなる胸部に∞を模した模様を持ち、その中で動力が輝いている。 「このカードは相手のシンクロモンスターを装備カードとして吸収し、 その攻撃力を得るシンクロキラー! 覚悟はよろしくて!?」 「無駄だ!」 「!?」 「罠カード発動! 『無力の証明』!」 ここで達也さんが動いた。伏せカードが開かれ、その正体を露わにする。 『無力の証明』。自分の場に☆7以上の上級モンスターがいれば、 相手の☆5以下のモンスター全てを破壊する全体除去だ。 「消えろ雑魚共!」 達也さんに呼応するように上級ドラゴン達が吼える。 それは衝撃波となって百合子の場を襲い、次々とモンスターを吹き飛ばした。 「わ、わたくしのモンスター達が…」 「さぁ、次はどうするんだ」 「くっ! わたくしはモンスターをセット、伏せカードを1枚出して終了です」 <<4ターン目:達也ターン>> 「俺のターン、ドロー! 『ソニック・ハウリンヴルム<800/500☆1>』を召喚!」 現れたのは鋭い2本の角を持った、大型犬程度の大きさをしたドラゴン。 「バトル! 『エクスプロード』でセットモンスターを攻撃!」 「ふっ! でしたらここで伏せカード、『サンダー・ブレイク』を発動! 手札を1枚捨てる事で、フィールド上のカード1枚を破壊します!」 「フン…『タイラント・ドラゴン』を対象とする罠カードは無効化されるがな」 「存じておりますわ。でしたら、次に厄介なモンスターを倒すまで!」 強烈な閃光が走り、『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』に迫る。 だが、それを黙って見過ごすほどプロデュエリストは甘くはなかった。 「この瞬間、『ソニック・ハウリンヴルム』の効果発動!」 「えっ?」 「このカードを素材として、バトルフェイズ中にシンクロ召喚ができる!」 「なんですってぇ!?」 『ハウリンヴルム』が弾かれたように飛び出し、 『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』の背に突き刺さった。 そこから緑の光輪が発生し、稲妻の矢を弾く。 「レベル7の『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』に、 レベル1の『ソニック・ハウリンヴルム』をチューニング!」 そのまま輪は7つの星と共に光の中へ消える。 「紅蓮の魂よ、灼熱の玉座に顕現せよ! シンクロ召喚! 絶対王者、『レッド・デーモンズ・ドラゴン<3000/2000☆8>』!!」 やがて光は炎に変わり、その中から雄々しい悪魔竜が現れた。 悪魔とドラゴンの特徴を併せ持つ、力の象徴とも言える巨大モンスター。 それは天地を揺るがすパワーを持って百合子に迫る。 「さ、流石はプロですわ。ですがわたくしのライフには触れさせません。 墓地へ捨てた『ダンディライオン<300/300☆3>』の効果発動ですわ」 百合子の場に2体の『綿毛トークン<0/0☆1>』が現れる。 「これで『タイラント・ドラゴン』の連続攻撃効果があろうと防御は完璧! 次のターンでわたくしの帝が華麗なる逆転勝利をもたらしますわ!」 まだ何か秘策があるのか、この状況でも強気な態度は崩さない百合子。 しかし百合子は明らかに『タイラント・ドラゴン』に気を取られ過ぎている。 「知るか。『レッド・デーモンズ』の攻撃! <アブソリュートパワーフォース>!」 BATTLE!! ×綿毛トークン 守0 VS ◎レッド・デーモンズ・ドラゴン 攻3000 紅蓮魔竜の炎を纏った掌底が百合子の場に叩き付けられた。 その一撃は『綿毛トークン』を一瞬で消し飛ばすだけには収まらない。 「攻撃を行った事で『レッド・デーモンズ・ドラゴン』の効果発動! ダメージ計算後に相手守備モンスターを全滅させる! <デモンメテオ>!」 「きゃあああーっ!!」 叩き付けられた拳を中心に次々と火柱が噴き出し、 百合子とその場にいるモンスター達に襲い掛かる。 破壊される中には『メタモルポット』の姿も見て取れた。 「こ、こざかしい真似を…!」 「そりゃこっちのセリフだ。手札補充のアテが外れたな。…次だ!」 『タイラント・ドラゴン』が吐く炎のブレスが百合子を包む。 一瞬でその姿が見えなくなり、ライフカウンターが激しく数値を変えた。 ●百合子LP5600→2700 「くっ! ですがまだライフは…」 「そして守備モンスターを破壊している事で、『破壊神の系譜』を発動! このターン、レベル8モンスター1体は2度攻撃できる!」 「はいぃぃぃーっ!?」 素っ頓狂な声を上げる百合子に、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』が炎を吐く。 再び灼熱に飲まれた百合子は声を上げる事もなく、打ちのめされてへたり込んだ。 ●百合子LP2700→0 「デュエル終了ー! 勝ったのはやはり叢雲達也! 絶対的パワーを見せつけての圧勝だー!!」 実況が叫び、会場が揺れんばかりの大歓声が上がる。 「イ、インチキですわ…」 そんな中でも、百合子が絞り出した一言は何故かよく聞こえた。 「フン。箱入りのお嬢様じゃこんなもんか」 早々にステージから戻ってきた達也さんがそう呟く。 表情から見るに、今のデュエルに満足できなかったように思えた。 「あらまぁ、大人げない」 「うるせぇ」 そんな達也さんを笑顔で切り捨てたのは嶺奈さん。 「それより誰か、迎えに行って差し上げた方がよろしいのでは…?」 言われてステージに振り返ってみると、百合子はその場に固まっていた。 デュエルの衝撃でボサボサになった髪と虚ろな瞳が状態を物語っている。 おまけに半開きになった口からは何か大事なモノを垂れ流している…ような気がした。 「…負けても演出を欠かさない根性は認めてやる」 「確かに…演出派のプロでも思わず忘れがちな所ですものね」 「迫真の演技だな」 その光景に達也さんや嶺奈さんのみならず、雅紀さんまで呆気にとられている。 よかったね百合子。それが演技なら演技派の女優になれるんじゃない? ちなみにその後、百合子は先生に担がれて私の隣まで運ばれたのでした。 ――それから少しのインターバルの後、再びスクリーンにスロットが映された。 次のデュエルが始まる合図だ。残るのは深海嶺奈さん、天野雅紀さん。 対するアカデミア側は小鳥遊英太と私、七瀬奈津美。 ここで最後の組み合わせも決定するだけあって緊張が高まってきた。 「では、2回戦! スロット作動!」 宣言と共に回転し、しばらくして止まる。 ただそれだけの画面に恐らくは会場全ての視線が集中していただろう。 そして表示された中に…私の名前はなかった。 「2回戦! “剣聖”天野雅紀VS小鳥遊英太! 両者ステージへどうぞ!」 その名が叫ばれた瞬間、甲高い歓声が各所から上がった。 私は思わず目を閉じ耳をふさぐ。 それはごく僅かな時間…だったハズなのだが、 次に私が見たステージの上には既に2人のデュエリストが立っていた。 「はやっ!?」 「あらまぁ…いつの間に」 そう呟いた嶺奈さんと、思わず目を合わせてしまう。 すると彼女は優しく微笑んだ。 どこまでも柔らかな、そして底知れぬ深みを感じさせる美貌。 見ているだけで顔が熱くなる。真っ赤になっているかも知れない。 「うふふ。ワタクシの相手は奈津美さんに決まりですわね。 お噂は耳にしています。よろしくお願い致しますわ」 「えっ、あっ、ハイ!」 …って、噂? 一体なんのことだろう。 「行くぜチャンピオン!」 「来たまえヒーローくん!」 だが、ステージから威勢のいい声が聞こえてきたので追及は断念した。 嶺奈さんもそっちに視線を戻しているし、今こだわる必要はないだろう。 「「デュエル!!」」 そして、2人の少年デュエリスト達の戦いが始まった。 ==================================== オリカ紹介。 双生のドラゴンエッグ ☆3 地属性 ドラゴン族 300/300 このカードが相手のカード効果によって墓地へ送られた時、自分フィールド上に 「ドラゴンキッズトークン(☆2・地属性・ドラゴン族・攻/守300)」2体を特殊召喚する。 →相手効果限定だけど場所問わず。生まれたてなのにベビーじゃなくてキッズ。 ソニック・ハウリンヴルム ☆1 風属性 ドラゴン族 800/500 チューナー バトルフェイズ時、自分フィールド上に表側表示で存在する このカードをシンクロ素材としてシンクロ召喚をする事ができる。 →要するに緊急同調を内蔵。相手ターンでも可能な誘発即時効果で設定してます。 もくじへ 前へ 次へ 2011/9/19 |