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京都徒然.御朱印

京都徒然.御朱印

ケメコはうす

ケメコはうす
人と人のネットワークが、縦横に広がった結果
皆さん、ザ・ダーツというグループの「ケメコの歌」というのをご存じでしょうか?
この歌が流行ったのは、もう30年以上前のことなので、団塊の世代の方でないとご存じないかもしれない。この歌の作詞に関わり、ザ・ダーツがこの歌でメジャーデビューした時には、グループを離れてしまっていたという澤田好宏氏の自宅兼仕事場が「ケメコはうす」だ。

21けめこはうす (イラストは貞岡なつこさんです)




澤田氏は、町家倶楽部ネットワークが時々催す「町歩き」イベントに参加したのが運の尽きで、自宅を改築することになってしまった。彼は、町歩きで見学した再活用町家の印象から、たった2時間で、「これが人間の住むところか」「こんなところでも住めるのか」「おれの家のほうがよっぽどましだぞ」という結論に達し、わたしに「うちの家も見てくれへんか?修理して住むことできるか見てほしい」と相談したのだ。そして見に行ったわたしは「ええやん、ええやん、最高やん。こんなんマシな方やで」とそそのかしてしまったのだ。
わたしは大々的に改築する方向ではなかったので、そう言ったのだが、澤田氏は、友人の建築家に頼んで、すっかり改築し、見違えるような町家にしてしまった。
おかげで一階は全面フロアのため、いつの間にか大学のゼミ生が集まったり、ギターやチェロのミニコンサート会場になったりしている。もちろん澤田氏の人柄にもよるところが大きいが、やはり人と人のネットワークが、縦横に広がった結果といえよう。
澤田氏は、今では、立命館大学のゼミ生と一緒に西陣の端を探そうシリーズを行い、毎回新しい発見と高い評価を得ている。その成果は、新聞にも取り上げられ、まとめは小冊子になり、大学では学長賞をもらうという具合だ。これも町家倶楽部ネットワークと澤田氏の接触から生まれた波及効果といえよう。なによりも楽しみながらやろう、遊び心をふんだんに、をモットーにしているので、出発前後に銭湯に入ったり、おいしいお店を見つけたり、地域の人と触れ合ったりと、案内人のないひと味違った町歩きになっていることが特徴だ。
自宅兼事務所つまりSOHOの具体例としても活用されている「ケメコはうす」の看板は、わたしが檜の板に彫刻したものだ。まちがって「ケメコはうす(・・)(臼)」と読む人もあって、知ってるつもりが、世代の違う若い人には、違って読まれることもあるのだなあと妙なところで感心していると、ケメコはうすに花をいけてくれている華道家の名刺を見て、「△×華道 家元 ○○さん」を「△×華道家 元○○さん」と、名字に元をつけて解釈する人も出現し、大笑いになったこともある。こうして世代の違った人が交流し、文化や言葉も伝えられてゆくのだなあと思えば、今の核家族化や、塾や習い事で家族がほとんど一緒に過ごすことのない家庭のありかたに、日本の将来を憂慮してしまうのはわたしだけだろうか?


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