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書評日記  パペッティア通信

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Mar 14, 2005
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カテゴリ:経済


東アジア共同体をとなえた本。そんだけ。

じゃすまないので、続き。国際経済外交の一線に立っていた元外交官が、グローバリゼーションに触発されて世界各地でおきている、FTAや地域統合をアジアでも作りましょう、と提言してくださいます。そして、イニシアティブをとらない、アメリカ追従の日本外交の戦略性のなさを叱ります。そして他人ごとのように、通産省や農林水産省、大蔵省などの先見の明のなさを批判してくださいます。

日中のアジアにおけるパワーゲーム。アジア通貨危機の反省から、「ASEAN+3(日中韓)」の地域経済統合を目指す動きが活発化しました。中国はアセアンと提携して、日本はやられっぱなし。2002年11月には、中国・アセアン自由貿易地域協定。日中FTAの提唱。日本は、泥縄式にアジアとFTA交渉へ入る情けなさ。

その泥縄の代表が、日本のTAC(東南アジア友好協力条約)加盟拒否事件。するとアセアンは、中・印に持っていき、そのまま署名されてしまう。あわてた日本は、2003年11月、東京で開かれた日本・アセアン特別首脳会議で、加盟表明したんだそうです。ブザマすぎ、小泉。GATT、京都議定書加盟などで、世界標準の国になるため攻勢をかける中国。

なかなか意外なことも書かれています。

その1。「ASEAN+3(日中韓)」でみると、域内貿易比率は5割近い。ところが、中国の直接投資受入国の比率でみると、日・EU・台湾ともに7~8%前後、韓国5%で、香港の33%などとは比較にならない。韓国でも、日本は15%(アメリカが5割)を占めるだけ。日本は、アジアにはあまり投資していない。中国への直接投資残高は全体の4%。「ASEAN+中韓台香」でさえ、2割にもならない。

その2。農水省は、「例外なき関税化」をさけるため、お米に「ミニマム・アクセス」(最低輸入量義務)を適用したものの、市場で消化できなかった。そのため、結局、「関税化」を受け入れ、なおかつ今も「ミニマム・アクセス」継続中の2重苦らしい。しかも、「ミニマム・アクセス」で6兆円も農家にバラまいて。もう、無茶苦茶すぎて泣けてきます。誰か責任をとったんだろうね?

閑話休題。

とはいえ20年以上、東アジア共同体をつくるべきだろうとはおもっていた評者でさえ、中国経済が台頭した近年まで、現実味がまるでありませんでした。歴史はつねに「過去にむかって」捏造される、を地でいっています。その意味で、なぜ東アジア共同体が実現できないのかを考えてよむには、最適の本ではないでしょうか。

たとえば、FTAを締結すると、中・韓のえる利益は、日本のえる利益よりも圧倒的に大きい。このことは、さすがに著者も認めざるをえません。しかも、この本ではさまざまな地域経済統合へむけた協力が提起されます。石油共同備蓄構想。石油共同開発。労働力受入。技術移転。深刻化するアジアの環境問題への協力。輸入依存度を高めつつある東アジアにおける共通農業政策構想…。おどろくべきことに、これがことごとく、ODAなどで「日本が金を出す話」として提起されるのです。受益者はだれなんだ? この著者、このことにまったく疑問に感じないようです。いつまでたっても、税金を使うことを既得権とでもおもっている、エリート官僚のクセがぬけないのでしょうか。だれが金を払うねん。

てか、この著者のだしてくる史実。そのまま受けとると、日本がアジアで国益をめざしイニシアティブをとろうとすると、つねに中国はアメリカをつつき牽制させる構図になってしまうのです。著者は、米中接近に警鐘まで鳴らしながら、それに全然気づいていません。日本が「円の国際化」を目指せば、中国は米・IMFと連携してAMF構想をつぶし、アジア共通通貨で応酬します。アメリカに日本を牽制してもらいつつ、アジアで国益を追求する中国。日本は、中国に協力しても、中国ほど利益があがるわけではない。結局、アホらしいから、日本は東アジア共同体に及び腰だった、という所が正解なのでしょう。てか、日本は東アジア共同体で、どのように利益をあげるのか、なかなかソロバン勘定がたたないのですから。

そして、中国の限界もここにあるのでしょう。アメリカに牽制してもらうしか、日本の行動を掣肘できない。アメリカの構造的権力下におかれる東アジア。中国もアメリカに手向かいできない。それを表現しているのが、中国人民銀行の何千億ドルもの米国債保有、であり、東アジア共同体の難しさというわけなんでしょうか。

というわけで、この書は評価は、ついつい辛くなってしまいます。

評価 ★★☆
価格: ¥819 (税込)

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Last updated  Jul 21, 2005 09:51:49 PM
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