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書評日記  パペッティア通信

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Jan 4, 2006
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どのように、韓国や中国の歴史認識と向きあうべきなのか。

「新書読み」なる趣味をもっていると、どんなに注意深く本屋でセレクトしたつもりでも、しばしば地雷を踏んでしまう。

「しまった!!ゴミ本にあたった!」
「金を無駄にした!」


新年早々、クソ本レビューとは縁起でもない、とマユをしかめる人もいるだろうが、やはり触れておかねばなるまい。内容はこんな感じです。

キリシタン迫害と原爆投下の街、長崎。
韓国の詩人金芝河がいたなら、「南朝鮮思想」<世界のあらゆる矛盾の中心、全羅道>クラスの、強烈なナショナリズムの情念がほとばしるはずの、悲劇の街。にもかかわらず、その長崎原爆記念館の展示は、「あいまいな主体」日本に満ちている。だれが加害者であるのか?まったく分からない。今や、周辺諸国では、強烈なナショナリズムによる獰猛な主体が立ちあがっている、というのに。

今こそ日本は、「新たなる主体」を打ち立てねばならない、そう述べられる。

これまで日韓は、あまりにも非対等な関係にあった。
「歴史の傷」以外にも、「中華思想」から日本人に優越心をいだく韓国人。
その幼児性を<許す><憐れむ>という「奴隷道徳」(ニーチェ)を通して、「優位」にたとうとする日本人。つねに非対称の2者関係に加え、<日本人が加害者>であることを引き受けられなかったことによる、「あいまい」さ。この状況への苛立ちは、右派に「すばらしい日本人」たる主体をたちあげさせることに走らせ、左派には「良識ある」「改悛する日本人」という主体の立ちあげにむかわせてきた。

中・韓の被害者意識に擦りよるだけで、「謝罪と反省」の先に何を打ちたてるのかをいわない、「サヨク」的態度。日本無罪論を説き、中韓の上位に日本を位置づける、「日本の韓国化」「日本の中華思想化」をめざすにすぎない「ウヨク」的態度。この本では、双方とも徹底的に批判されています。伝統的「朱子学的思惟」に囚われた中韓と安定した関係を気づくには、左派の考えは「永久謝罪論」に他ならない。 そもそも「許されたら、アジアのために何をするのか」が伝わってこない。先の戦争を正統化して、国力に応じた国際貢献をしたがる右派は、「不道徳な日本」というレッテルを貼られて、国際貢献がどうして可能になるのかを考えていない。

センターとなりうる新たな主体とは、「反共の防波堤」「アメリカの世界戦略」によって、たまたま享受できただけにすぎないことを忘れた、「平和日本の国際貢献」路線では断じてない。そんな平和など、自ら勝ちえたものでもないし、アジアの誰も認めまい。打ち立てられるべき主体は、

「謝罪し国際貢献をする日本」である。

これを「自由と民主主義」の土台で支え、不動のセンターにしなければならない。日本の使命とは、アジアの和解と国際貢献にある。むしろ日本は、成熟した民主主義的価値を共有してもらうため、アジア諸国との積極的交流をおこなわなければならない。その観点からは、左派の共同教科書作りは否定されるべきであり、右派の靖国神社公式参拝なども否定されねばなるまい。むしろ、「栄光ある死者を国家が顕彰する」重荷から免れた日本のポジションこそ、将来の世界において、普遍的なものになるように推しすすめるべきなのだ。韓国などと連携しつつ……。


ひとつひとつの言葉が細かく定義されていない。そのため、全体像をイメージで捉えるしかないものの、結論と提言をみるかぎりは、おおむね妥当な議論がなされているようにみえなくもない。私も心より賛成したい、そう思う。

ところが、これがまったくの幻想。
これを支える周辺の論理があまりにもひどい。

そもそも「主体」が連呼されまくる異様な書。あまりの異様さに、西洋哲学科の出身なのか?何でNHK韓国語講座の先生が?と思って経歴を読むと、<東大ドイツ文学科卒→電通→ソウル大哲学科>を経て東海大教授にあることがわかる。な~んだ、と思うなかれ。

彼が言うには、朱子学は3つの理があるという。これまで、2つしかいわれてこなかった。

<第一の理>「一理 統体太極=超越=絶対的理」
<第二の理>「万理 各具太極=内在=相対的理」


実はこれ以外にもうひとつあるという。<第0の理>(とそれを統べる主体)「メタ理=第一と第二の理を支える根底権力」が存在するというのだ。東アジアの朱子学的秩序は、この<第0の理>によって論理性そのものが政治性を内在させているため、これが理解できないものは支配されて当然となってしまう。それは、「序列化」なる思想を生み、「兄韓国 弟日本」なる観念を産み落としてゆくのだ…プププププ。まんま、西洋哲学の公然たる密輸入、てか朱子学の西洋哲学化させた理解じゃねえの(笑)。

そもそもさあ。「主体-実体(客体)」を「否定の否定」で統合してしまうヘーゲルから始まって、「存在-存在者」に対して「現存在」分析を遂行したハイデガーにしたってそうだが、「2項対立」をつなぐ「3つ」目の次元を発掘するのは、伝統的西洋哲学の手法そのものでしょう。どうみても、「3つ」目の次元を無理矢理ひねりだして、無邪気に喜んでるとしかおもえない。いったい、メタ理なるものは、経書のどこに根拠があるのか? 本書によれば、「なり」「いえり」こそ、「メタ理」なのだという。これは、朱子学ではなく、日本の「読み下しの問題」ではないのか。経書や集註の原文を引かずに、こんな議論が展開されるのだ。

これは、もはや朱子学ではない。小倉氏による朱子学の翻案、独自の儒教、新・新・儒教の類ではないか?。それに<第0の主体>は、それこそ西洋では「神」、日本では「世間」に該当する概念では? こうなると、西洋哲学とも違う、朱子学的特殊性なるものが、この本からはまったく見えてこなくなってしまう。

また明治思想史とは、入れるべき内容を「西欧」「日本」のどちらにするかの違いにもとづいた、2つの朱子学的思潮の対立にすぎないと整理するのも、いささか問題があるのではないか。福沢諭吉に朱子学的思惟を見るのは、まだいいとしよう。なんと、丸山真男までが、「自由の多寡」によって東アジアを「序列化」しようとした罪で、朱子学的思惟の持ち主にされてしまうのだ。ここまで来ると、もう噴飯物。なるほど、

世界史は東から西に向かって進む。というのは、ヨーロッパこそ実に世界史の終結であり、アジアはその端初だからである。… 東洋はただ一人の者が自由であることを知っていたのみであり、また今も依然としてそうである。これに反してギリシアとローマの世界は若干の者が自由であることを、ゲルマンの世界はすべての者が自由であることを知っている

と『歴史哲学講義』でのべたヘーゲルは、さぞかし朱子学的思惟の持ち主だったのだろうな。(爆笑)

てか朝鮮朱子学と本場朱子学の違いも、まったく書かれていない。おまけに、個体差や時代差・地域差も考えていない。他人の思想を内発的に理解しようともしない。この本のどこに哲学が実践されているのだろう?。こうした時空を越えた寝言が、この本の半分以上を占めている。ちなみに私は、「客体的主体性」の言葉がでるたびごとに、「規定は否定」で有名なスピノザ的主体に勝手によみかえて読んでしまったので、すいすい読めた(大嘘【笑】)。もはや、ほとんど『トンデモ本』の楽しみ方の実践である。(ほんと、客体的主体性は、最後まで理解できなかった

まあ、つっこめばきりがないので、この辺で止めておきたい。結論妥当、論証メチャクチャつ~のは、小生初体験である。おまけに、この本の内容は、『東アジア地域研究』『世界』『諸君』などが初出らしいのだ。日本のアラン・ソーカルになるのならば、はたから見ていて、面白いのかもしれないが…

そんな地雷を踏んでみたい、あ・な・た。
覚悟がおありなら、ぜひ読んでみたらいかがでしょう??


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Last updated  Feb 7, 2006 10:45:21 PM
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