見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の 苫屋(とまや) の秋の夕暮れ 定家
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の 苫屋(とまや) の秋の夕暮れ 定家三夕の和歌(さんせきのわか)というものがあるらしい‥「新古今和歌集」秋上に並んでいる、第五句が「秋の夕暮」である三首の和歌。のことである。1つは、寂蓮の「さびしさは其の色としもなかりけりまき立つ山の秋の夕暮」、2つは、西行の「心なき身にもあはれはしられけり鴫(しぎ)立つ沢の秋の夕暮」、そして、藤原定家の「み渡せば花ももみぢもなかりけり浦の苫屋の秋の夕ぐれ」個人的には、やはり、定家の「み渡せば花ももみぢもなかりけり‥」に惹かれる。なんともいえぬ侘しさを感じる。藤原定家 『明月記』の世界 (岩波新書 新赤版 1851) [ 村井 康彦 ]価格:1,078円(税込、送料無料) (2023/12/19時点) 楽天で購入 『新古今和歌集』や『小倉百人一首』の選者として知られる歌人藤原定家は、果たしてどのような日常を送っていたのか。青年期から生涯にわたって綴られた日記『明月記』を詳細に読み解くことで、宮廷での公務の心労、人間関係の軋轢、家長としての重圧と苦悩、息子たちへの思い、など、生身の定家の姿を浮かび上がらせる。‥