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分太郎の映画日記

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2007.02.28 楽天プロフィール Add to Google XML

『一粒の麦』 昔の日本映画(73)」
[ 日本映画(1951~60) ]    

 今現在、集団就職が行われているのかどうかは寡聞にして知らないが、1955年頃から1960年代の日本の高度経済成長時代には、地方の中卒、高卒の多数の若者が集団で都市の工場や商店に就職のため上京してきた(農村部の次男、三男、女性は地元で就職の機会がないため、学校の先生たちによってある意味、積極的に人手不足の都会へと送り込まれていた)。
 最近の映画では『Always 三丁目の夕陽』が集団就職の模様と一人の少女の姿を描いていたが、集団就職の実態を描きだした初めて(と思う)の映画がこの『一粒の麦』。傑作でした。

 池袋の新文芸坐で開催された「匠 吉村公三郎の世界 -吉村作品の中の名女優たち-」にて鑑賞(2007/2/9)。
 評価:☆☆☆☆

 この時期の吉村監督作品としては少し異色かと思ったら、元々はコンクールで入選した千葉茂樹の脚本に、新藤兼人が補筆したものという。千葉は方言指導で参加し、スタッフも福島県出身者が揃えられたらしい。私の両親が福島出身なので、映画中での言葉遣いに、何とはなしの懐かしさを感じてしまった。

 集団就職は一種の話としか知らない身には、上記のあらすじに書いたように、ものすごく重いテーマであった(『Always 三丁目の夕陽』の少女は、ある意味でハッピーであったし)。菅原謙二の朴訥さと若尾文子の真摯な感じストーリーの上の救いか。
 同じ時代に、享楽的に生きる「太陽族」と呼ばれた若者たちがおり、湘南あたりでヨットや自動車を乗り回していたこと等を考えあわせると(『太陽の季節』の映画化は1956年でこの作品の2年前だったりする)、果たして「格差社会」「格差是正」と叫ばれる今よりも、当時の方がよほど格差が酷かったのではないかと思ったりする(いや、何時の時代も格差はあったというべきか)。
 そういえば、『太陽の季節』の執筆者は今の都知事の石原慎太郎だなぁ。都政すべてを見ているわけではないが、彼はどちらかというと福祉削減・弱者切り捨て型ではないか(東京都民よ、しっかりせい)。

 たぶん、集団就職が現実的ではない今の時代だからこそ、「格差社会」とは何かを考える意味でも、多くの人に観てほしいと思う映画。


【あらすじ】(ネタバレ有り)
 仙台発の臨時編成の集団就職列車が福島駅に到着、中学を卒業したばかりの少年少女たちは都会で働ける期待に胸膨らませながら、引率の教師(菅原謙二)と列車に乗り込む。明け方に到着した上野駅では、職安の係員によってそれぞれの雇い主に引渡され、ある者はそば屋の店員として、小児科の女中として、また自動車の修理工場、鉄工場、ガラス工場、浜松の織物工場へと就職していった。
 郷里に戻った教師は、校長(東野英治郎)から来年もよろしくと頼まれるが、教育者が就職活動の世話に明け暮れることに疑問がぬぐえない。やがて、彼を励ます同僚(若尾文子)と結婚することになる。結婚式の晩、ガラス工場の少年たちが逃亡したとの知らせに、二人は東京へと赴いた。
 そもそも集団就職者を雇うのは経営の苦しい零細企業がほとんどで、残業や休日出勤、また事前の提示よりも給金がかなり安かったりと、子供たちの労働条件はかなり過酷であった。脱走した少年たちには、地元出身の代議士の(票をにらんだ人気取りの)おかげで新たな就職先は見つかったものの、浜松の織物工場は倒産、そこで働いていた少女たちはカフェの女給や温泉宿(今でいうラブホテル)の女中になり、また鉄工所に勤めた一人は肺をやられて帰郷せざるをえなくなる。
 そして、雇い主(殿山泰司)が誠実な自動車工場に勤めた少年も、整備不良が原因とみられる事故のために工場が倒産して失業し、新しく就職した先では、その面接当日に母が亡くなったとの連絡を受けるが、職を失いたくないために家に帰ることを拒んでしまう。
 そんな子供たちの姿・気持ちを知って、教師は来年も就職係を引き受けることを申し出る。
 そして、春、今年も集団就職列車が生徒を乗せて東京へと向かう……。

『一粒の麦』
【製作年】1958年、日本
【配給】大映
【監督】吉村公三郎
【脚本】新藤兼人、千葉茂樹
【音楽】池野成
【出演】菅原謙二、若尾文子、東野英治郎、殿山泰司、田中筆子、浦辺粂子、見明凡太郎、町田博子、市田ひろみ、 ほか


最終更新日  2007.06.08 15:50:17
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