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分太郎の映画日記

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2007.05.24
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 キューバを舞台にした映画ということで、以前から気になっていた作品。

 ドキュメンタリー映画監督であった黒木和雄氏が、1966年に念願の劇場映画の第1作として撮った『とべない沈黙』の3年後に作られた、黒木監督の劇映画第2弾。
 キューバ革命10周年を機に、キューバの国立映画芸術協会と合作されたものである。

 東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の特集上映「追悼特集 映画監督 今村昌平と黒木和雄」にて鑑賞。

 『キューバの恋人』 評価:☆☆☆

 一言でいえば、革命の熱気に溢れるキューバを舞台にしたラブ・ストーリーだが、恋愛ものとしては成功しているとは言い難く、キューバのドキュメンタリー映画としてみた方がよい。

 津川雅彦が演じた主人公は典型的なノンポリの感じで、キューバの地では完全に浮き上がりまくっており、単なるストーカーにしか見えない。「自分を幸せにできない者が、他人を救うことはできない」と宣いつつ、その幸せとは「自分と一緒に日本へ行く」ことで、単なる阿呆な姿をさらす。
 ある兵士に主人公が「自分は自衛隊に入ろうと思ったことがある」と言って、それは何故かと尋ね返されたとき、「戦車に乗りたかったから」というセリフ(とそれを聞いて侮蔑したような表情の兵士たちの姿)は、非常に象徴的だ。

 しかし、まぁそれは、たぶん監督があえて狙っていたことなのだろう。

 そういうだらしない日本人を中心に据えることで、映画に写し撮られた当時のキューバの町や人の姿や、また挟み込まれた記録映像などを通した、キューバ革命の歴史と実際が、観客に真に迫って感じられることにもなる。
 そこで描き出される革命像は、単に理想的なものではなく、多くの人が死に、また今なお苦しむ人がいて、掴むことができたもので、それを守り抜こうという人々の決意が強く映し込まれている。

 ちなみに津川の話すスペイン語は、(ちらっと囓った程度ではあるが)私の耳にもかなり流暢に響き、時折混じる日本語のアクセントあいまって、ちょっと嫌な日本人青年を好演していたと思う。

 知識としては、チェ・ゲバラ──国家元首フィデル・カストロとともに、革命の指導者であり、その後ボリビアで亡くなった革命家──の思想が、キューバの民衆に広く浸透していたと知ってはいたが、至るところに立てられた看板や兵士たちの語りなど、なるほど、こういうものだったのかと納得。
 
 また映画のところどころに、フィデル・カストロ首相の演説姿が写し撮られているが、いや当時は若くて(当然か)少し小太りであったのは、ちょっと意外。
 なお、オリバー・ストーン監督作品『コマンダンテ』は、監督自らがインタビュアーとしてカストロに密着取材したドキュメンタリーで、東京では今週末(5/26)から渋谷のユーロスペースにて公開予定だ。

 この映画は、冒頭にも書いたように、キューバとの合作映画である。
 もともとは、劇映画を撮ることができずにいた黒木監督の下に、竹中労が話を持ち込んで取り持ったもののようだが、当然、当時のキューバに映画製作の予算、余分な外貨があるわけでもなく、黒木監督があちこちに借金して制作費を捻出したようだ。かわりにキューバ側は、日本人スタッフに一切の制限をかけなかったという(キューバ側が黒木監督を指名してきたのは、『とべない沈黙』がキューバで評判になったからのようだ)。
 しかし、当時の映画各社に配給を断られ、結局、自主(的)上映になったために、相当な借金を背負ってしまったという。

 後半の祭りのシーンでは、「座頭市」らしき姿に扮した男が、仕込み杖を振り回すシーンが出てくるのが、ちょっと印象的。
 当時(今でも?)キューバに敵対するアメリカの映画が上映されることもなく、かわりに人気があったのは日本の映画であったという。なかでも『座頭市』はヒットしたようで、その他のラテンアメリカ諸国や東南アジアでもかなりの人気を博したらしい。まぁ香港映画にはもともと武侠映画という土壌があるわけだが。

 音楽は、この後、黒木監督作品でずっとコンビを組んでいくことになる松村禎三。
 チェンバロを中心としたオリジナルな旋律と、『グァンタナメラ』などのキューバ音楽がうまくミックスしていて、独特の魅力を作り出している。

 タイトルから想像される“恋愛映画”としては決してお薦めはできないが、1960年代当時のキューバの姿を知るには、監督のニュートラルな立ち位置もあって、大変によい映画ではなかろうか。


【あらすじ】(ネタバレあり)
 1968年の夏、キューバ革命10周年に沸く首都・ハバナ。休暇をとって上陸していた日本の青年船員のアキラ(津川雅彦)は、街で煙草女工のマルシア(ジュリー・プラセンシア)に出会い、一目惚れする。マルシアを追いまわしては盛んに口説くが、彼女は素っ気なく、故郷のサンティアゴ・デ・クーバに帰るという。
 旅立つ彼女の後を追ってバスに乗り込んだが、到着した先は警戒態勢をとる前線だった。彼女はチェ・ゲバラを信奉する女民兵だった。
 彼女に先発されてしまったアキラは、途中で出会った黒人少女とよろしくやるべくサトウキビの収穫を手伝うが、泊めてもらった家は大家族で少女と懇ろになるどころではなかった。
 ようやく岬町でマルシアに再会。一夜を友にする。彼女も彼を好きだったのだが、革命のために仲良くなれなかったのだ。そして、彼女の故郷サンティアゴ・デ・クーバでアキラが見たのは、彼女の家族を始め、革命に身を捧げた死者の墓標だった。アキラが無邪気に拳銃ごっこをしていると、いつの間にか彼女は姿を消してしまっていた。
 彼女が参加すると行っていた古都サンタクララでの式典。アキラはカストロの演説もそっちのけで彼女を捜すが、すれ違って見つけることはできない。その夜の熱狂的なカーニバルの中でも、彼女に出会うことはできなかった。
 ハバナに戻ったアキラは、マルシアの勤務先のタバコ工場を訪れるが、彼女はすでに兵士になるために退職した後だった。


『キューバの恋人』

【製作年】1969年、日本・キューバ
【製作】黒木プロ=キューバ国立映画芸術協会
【監督】黒木和雄
【脚本】長谷川四郎、阿部博久、加藤一郎、黒木和雄
【撮影】鈴木達夫
【音楽】松村禎三
【出演】津川雅彦(アキア)、ジュリー・プラセンシア(マルシア)、グロリア・リー(黒人少女)、アルマンド・ウルバチ(青年民兵)、フランシスコ・カステイセーノ(チェ・ゲバラ部隊兵士) ほか




DVD『キューバの恋人』

『黒木和雄 初期傑作集
DVD-BOX』

松村禎三
サウンドトラックCD

佐藤忠男著
『黒木和雄とその時代』

黒木和雄 戦争レクイエム
三部作 DVD-BOX

DVD『チェ・ゲバラ&
カストロ』

DVD
『チェ・ゲバラBOX』

DVD『モーターサイクル・
ダイアリーズ』





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最終更新日  2007.05.24 17:16:34
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