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カテゴリ:Object作成
前からの続きです。補2-1を先にご覧下さい。
自線が直線側の分岐器を一つ作ってみましょう。 題材とする分岐器は正丸駅の西武秩父方にある片分岐器です。 今まで手をつけてきた飯能~武蔵丘とはえらく離れてしまいますが、 複雑な分岐器のオンパレードなので勘弁してください。 現在は改良工事が施され、線形が変わってしまったようです。 見た感じで分岐側の制限速度は35km/hと推測したので、BVEでは下の様な配線で仮再現しました。 64550,.Curve 0;0 ,.RailType 0;0 ,.Rail 1;1.9;;31 64575,.Curve 300;0,.RailType 0;37,.RailEnd 1;0; これを加工して のようにすればいいのかと言えば答えはNOです。 分岐側のリード曲線はクロッシングまで及んでいないためです。 クロッシングの先は直線に繋がる場合が大半ですが、曲線に繋がる場合もあります。 この場合、クロッシングの前後が曲線となり、乗り心地に影響します。 上図は東武日光線下今市駅の分岐器ですが、クロッシング部のみ直線になっています。 リード曲線をクロッシング手前までにすると以下の赤線のような形になります。 赤線の半径を計算すると約100mになり、随分小さくなってしまいました。 これは分岐側制限速度25km/hの8番分岐に相当します。 35km/h制限の10番分岐は分岐半径約160mですので、BVEでの設定は結構難しいのです。 自線が分岐側のときに厄介なので、BVEの基本レイアウトに従うことで妥協しましょう。 それでは各頂点の座標を求めてみます。 今回設計する分岐器は曲線トングレール、圧接クロッシングのものとし、 リード曲線の分割数は3、分岐側の傾きは0.152でZ=0で1.9m離しました。 下図15-Aの通りです。 複雑なので直線側と分岐側で分けたのが15-B、 重なり合って見えない面を黄色で示したのが15-Cです。 軌道断面は通常の線路ストラクチャと同一です。 S1、S2の部分はフランジウェイで、S1、S2≧38mm、S1+S2≧84mm(スラック無視の条件下)です。 異線側のレールへの横圧の関係で、S1≧S2としている場合が多いようですので、 今回はS1=45mm、S2=40mmとして設計します。 ここまでわかれば、後は数学の知識で座標を求められます。 上の黄色の三角形は三平方の定理から全辺の長さが求められ、 これより更に角θにおけるsin θ、cos θの値も求められます。 分岐線の軌道中心のXZ平面における式は Z=-(25/3.8)X+12.5 で、 三角形の辺の比と、分岐線の軌道中心からレール内側までの距離0.534mから このレール内側のXZ平面における式は 12.6436:12.5:1.9 = 3.5535:3.5132:0.534 より Z=-(25/3.8)X+8.9465 ←=(25/3.8)X+(12.5-3.5535) と表すことができました。 同様に分岐線軌道中心から-0.602mの距離の直線(基準線のレールと交わる直線)を導きます。 計算してまとめると、各々の直線の式は -0.602m:Z=-(25/3.8)X+8.4940(A3) -0.534m:Z=-(25/3.8)X+8.9465(A4) +0.000m:Z=-(25/3.8)X+12.500(A5)……と表すことができます。 (A4)式の直線の終端はX=0.489なので、これを式に代入すればZ=5.7294と求められます。 この点(0.489,5.7294)を通り、かつX=-0.534を通る円がリード曲線の式ですから 両者をX座標の観点から見れば下の式が成り立ちます。 ┌ -(R+0.534)cos 0+R=-0.534 └ -(R+0.534)cos θ+R=0.489 前者はcos 0=1となるのでRは求まりませんが、後者はcos θ=0.9886を代入すれば -(R+0.534)*0.9886+R =-R*0.9886-0.534*0.9886+R (展開) =(1-0.9886)R-0.534*0.9886=0.489 (整理) これを移項して整理すれば (1-0.9886)R=0.489+0.534*0.9886=1.0169 両辺を(1-0.9886)=0.0114で割れば R=1.0169/0.0114=89.2018 ……と求められました。 今度はZ座標の観点から見てみます。 リード曲線の一部をなす円の中心座標を(Xc,Zc)とおけば(Xc=R)、 (A4)式の直線の終端はZ=5.7294で、これは -(R+0.534)sin θ+Zc と同値になります。 sin θ=0.1503、R=89.2018を代入すればZc=19.2167となり、 (Xc,Zc)=(89.2018,19.2167)と求められました。 ここで角度θを求めておきます。sin θ=0.1503なのでθ=arcsin 0.1503=0.1509[rad]です。 ここまで来れば後の計算は容易です。 リード曲線内の座標は上図中の式に値を入れれば出ますし、 Z=0の側の座標もリード曲線始端の座標を図中青字のように移動させれば出てきます。 残ったクロッシングやガードレールも今までと同様に解いていけば求められます。 いずれも平行線なので傾きは同じで、切片は以下のように求めると簡単です。 ではストラクチャ化してみましょう。 毎回同じですが、1つのテクスチャは1回のみ読み込ませるようにするので、 1ブロック内の頂点が非常に多くなって複雑なため、紙に整理して書くことをお勧めします。 頂点番号も書いておきましょう。下はレールの例です。道床部も同様です。 頂点16-21などは非現実的ですが図のように面を作って穴を閉塞しておきます。 辺57-58は面9-10-14-13と同一平面にありますが、本来は9-57-61の辺が連続しているので、 辺9-57-61が面9-10-14-13の上になるように見せる必要があります。 このため辺57-58を1mm高く設定しておきます。 しかし面(8-11)-(56-59)を図中の青色領域とするのが正しい扱いでしょう。 またガードレールなど、車輪が通らない箇所は茶色く錆びていますが、 これを再現してしまうと枕木と同化して存在感がなくなるので区別していません。 ガードレールなどの長さは上の実例を参考に決定しました。 なお、ここまでは小数点以下4桁(0.1mm単位)まで計算してきましたが、 構文にはひと桁少ない3桁(1mm単位)で記述します。これは数値計算の基本です。 構文は後にして、ここまでの過程でできたストラクチャです。 大体完成しました。 あとはトングレールの開きと、その下のポイント部の再現です。 ポイント部と(順番前後しますが)木枕木のテクスチャを予め用意しておいてください。 ポイント部は道床と同じ高さにならないように現物合わせで設置し、 それに合わせるようにトングレールの開きを再現(構文中頂点34-41参照)します。 今回はポイント部をおよそ5mとしました。 完成品と構文です。 あとは別のファイルでポイントマシンなどを作ればOKです。(後日) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 今回の数学の内容で誤りがありましたら、それは恐らく私の理解不足によるものです。 疑問点も学生でしたら数学の先生に聞いた方が確かですし、喜びます。きっと。 ちなみにこの記事、書くのに10日ほど費やしましたorz 作るの自体は難しくもないですが、書くのが難しいです。わかった人少ないんだろうなぁ。 次回内容は未定ですが、次の土曜日の取材が中止になりそうなので、 また分岐器作りになろうかと思います。 取材ツアーは催行の場合にのみ前日あたりにお知らせします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 27, 2009 09:34:10 PM
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