ネココロナ遺伝子検査について(飼い主様からの質問)
早いもので、もう5月に入ってしまいました。GWも後半に入ろうかというところ、皆さんは良い休みを過ごされていますか?さて、いつものごとく一月半ぶりの書き込みとなりましたが、いろいろあってサボっていたわけではありませんので・・・(言い訳です)。なにやら、日記の書き込みのサイトにログインできなくなり、いろいろやってもダメで、半ば諦めていました。最近、外でネットをいじる事が多くなりWi-Fiにしたとこ繋がりました!まったく原因は分かりませんが、結局はプロバイダーか接続の問題だったのでしょうか(分かる方、教えてください)。さて、前回に引き続き、ネココロナウィルス遺伝子検査いついてお話したいと思います。とは言っても、私からの話ではなく、あるネコの飼い主様から遺伝子検査に関する質問をいただきましたので、質問と私の回答を紹介します。読んで頂いている皆さんには、同じ疑問をもたれている飼い主様もたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひ参考にして頂ければ、と思います。なお、文面は抜粋とし、個人情報に関わる箇所は、伏字とさせて頂きます。では、ご紹介します。質問のメールです。「はじめてメールさせていただきます。猫を飼っている一般の者です。リアルタイムPCRによるネココロナウィルス遺伝子検査について教えていただきたいことがございまして、メールをお送りさせていただきます。飼い猫がFIPの診断を受けました。その後、さまざまな闘病ブログなどを拝見しておりますと、現在、日本では、貴社とA動物病院様だけが、この検査を実施できる機関とのことでしたが、検査の方法(検出するコロナウイルス遺伝子)は同様と考えてよろしいのでしょうか。FIP発症の原因となる猫の体内での変異後の遺伝子は特定されていないとのことでしたが、変異前のコロナウイルス遺伝子については特定されていて、貴社もA動物病院様も同一の検索を行っているというふうに理解してよろしいのでしょうか。ぶしつけな質問になり、申し訳ございません。お差し支えのない範囲で結構ですので、ご教示いただけますと幸いです。」という内容です。愛猫がFIPと診断されたとの事、飼い主としては今後どのようにして良いか、悩むところだと思います。一点、どのような検査でFIPと診断されたのか、知りたいところですが・・・。私からは、下記のように回答しました。「飼い主様へ。リアルタイムPCR法についてはご存知とお見受けいたしますので、方法については省略させていただきます。PCR法では、特定の遺伝子を検出するためのプライマーやプローブを設計します。どの遺伝子を検出するかによって、プライマーなどの配列も違ってきますし、その違いで、同じようにネココロナウィルスを検出できるかどうかは違ってきます。このあたりは検出のノウハウになってきますので、公開されていない場合も多々あります。ネココロナウィルス遺伝子の検出は、確かにA動物病院でも実施されていますが、上記の理由で弊社とA動物病院とで、まったく同じようにネココロナウィルスを検出しているかどうかはわかりません。ただし、基本的な検査の方法は同じだと思います。FIP発症の原因は、確かに腸コロナウィルスが何かの原因で変異して血中に入りことによる、といわれています。変異ウィルスの報告は現在までいくつかありますが、学術的に確定はされていません。一方、健常のネコの場合、腸コロナウィルスが血液中に存在することはない、といわれています。この理論を元に、弊社では、FIPの検査に血液中(または胸水、腹水中)のコロナウィルスを検出します。ご質問にある「変異前のコロナウィルス遺伝子は特定されていて・・・」については、「腸コロナウィルス遺伝子は特定されています」という回答になります。また、A動物病院様では、先の理由で、弊社と同一かどうかは分かりかねます。このあたりは、A動物病院様に直接お問い合わせいただいたほうが良いかと思います。FIPは、仰るように「変異したネココロナウィルス感染が発症の原因」といわれています。つまり、ウィルス感染症ですから、原因となるウィルスを特定することが診断の重要な点です。FIPを疑う症状があって、血液中(または胸水、腹水中)からネココロナウィルスが検出されれば、FIPと確定して良いと考えています。一方、FIPを疑う症状があっても、コロナウィルスが検出されない場合があります。この場合は、FIPを完全に否定はできませんが(検査には検出限界があり、感度以下の場合は検出されません。どの検査でも同様です)、他の疾患を疑って検査や治療を進めるべきかと考えます。 参考まで、弊社の研究データをご紹介いたしますので、ご参照ください。1)FIPを疑う症状があってコロナウィルス遺伝子検査をした症例を「陽性」と「陰性」にわけ、1年後の予後調査を実施した結果です。結論から言うと、ウィルス陽性例は、1年後全て亡くなっていますいます。一方、陰性例では、1年後約半数が死亡していますが、死因はさまざまです。この結果を見ても、FIPの診断にコロナウィルス検出は有用だと思います。http://www.canine-lab.jp/nwes/news1.pdfhttp://www.canine-lab.jp/nwes/news2.pdf 2)2005年に発表された論文を、分かりやすくまとめたものです。簡単に言うと、術後FIPと確定した症例とFIP以外の症例でコロナウィルス遺伝子検査を実施したところ、前者では93%が陽性、後者では全く検出されなかった、ということです。この結果から、この研究者たちも、「偽陽性の確率が非常に低いことから、RT-PCR法はFIP診断には有用な方法であると思われる。」と言っています。http://www.canine-lab.jp/pdf/cat-hyouka.pdf 愛猫さんの回復をお祈りいたします。」FIP診断におけるネココロナウィルス遺伝子検査の有用性は、少しずつ認知されてきているように思いますが、一方で「腸コロナウィルスが変異した」とされるFIP発症の起因となるウィルスが未だ特定されていない現状では、なかなかここ検査を理解して頂くのも難しいところもあるかと思います。ただ、飼い主様の率直な疑問点ですので、たぶんネコを飼っている皆さんの中にも、同じような疑問を持たれている方々も多いのではないでしょうか。本検査検査を実施してみたい飼い主様は、掛かりつけの先生にご相談下さい。参考になれば幸いです。我が家のななちゃん、クッシングは思った以上に進行し、薬も利きにくくなってきています。飲水量が何と毎日2000mlを超えて、そのため排尿量も異常に多くなってきました。これまで一日2回だった散歩を3回に増やしました。我慢の末、膀胱炎や腎疾患に繋がるのを避けたいと思ったためです。それよりも、オシッコを我慢するのはわれわれでも辛いですからね。腹もパンパンに張ってきて、上から見るとちょうど洋ナシのような体型です。可愛そうですが、どうしてあげることも出来ない、飼い主としては辛いですね。では、皆さん良いGW後半をお過ごしください。