カテゴリ:本の感想
世界情勢の中でも、どうにも理解しがたい国がある。
その代表格がカンボジア。 ポル・ポトだとかシアヌークだとか・・・。 なんせ大量虐殺があったことは確かなことであり、 百万人を超えると言われているが、確かな数は誰も知らない。 そんなポル・ポトに関する小説なのかと思い、図書館で借りた のが三輪太郎の「ポル・ポトの掌」。 ポル・ポトの掌(て) 前半のらりくらりとしたストーリーで、何度か途中で読むのを やめようかと思ったけど、中盤から後半に書けてたたみ掛けるような ストーリー展開がおもしろかった。 特に、森の王様(ポル・ポト)との禅問答のような会話が難解だけど 感銘を受ける。 舞台は1995年という設定で、バブル経済がはじけた日本と、混迷する カンボジアを対比させたイデオロギーについて考えさせられる。 ポル・ポトの原始共産主義思想が正しいのか!? 日本の資本主義(拝金主義)が正しいのか!? その狭間で揺れ動く主人公の心境が非常に興味深い。 物語の最後に交わされるカンボジア人と主人公の問答がいい。 主人公のことを、マラソンを走りきったような顔つきだという。 カンボジア人は、これからマラソンをスタートする準備段階なのだ。 ゴールは日本人のようになることかと尋ねると、冗談はやめてくださいと 否定する。 金を得ても、贅沢するつもりは無いと。 学校を作りたいのだと言う。 日本人には学校を作る資金援助をして欲しいのだと。 ポル・ポトは、都市部に住む有識者、教師、技術者、僧侶などを 徹底して処刑していたのだ。 学校の破壊、教育の破壊を徹底していた。 そして、上下関係を作らない徹底した平等主義を貫こうとした。 結局は無学と貧困しか産み出さなかったんだけど。 日本がバブル崩壊で混迷していた時、カンボジアではそれ以前の 問題をたくさん抱えて混迷していた。 今、日本では一部で学級崩壊だとか言って、学校が機能しなく なっているところがあると言われている。 学校は休憩場所で、塾が学ぶところと言っているが、塾というものは 受験の為の学びであって、本当の学びではないはずなんだけど。 学びたくても学べない国、学べるのに学ぼうとしない国。 我々日本人はどこへ向かおうとしているのか。 マラソンを走りきったような顔で途方に暮れているのかもしれない。 ポル・ポトに虐殺された人たちの髑髏 いまだにポル・ポトの殺戮行為は裁判にかけられていない。 カンボジアはいつスタートできるのだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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