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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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September 9, 2014
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 世界最高のバッハ演奏が堪能できる、ケーテンのバッハフェスティバル。

 企画しているツアーでは、このフェスティバルを初日から最終日までたっぷり5日間、楽しみます。ケーテンは田舎町なので、ホテル事情が悪く、またフェスティバル以外に見るところもないので、バスで1時間のライプツィヒに泊まるという事情もあり、すべてのコンサートを網羅する訳ではないですが、それでも別手配も含めれば、5日間で10のコンサートを聴くことになります。

 各日それぞれハイライトがありましたが、3日目は朝からピョートル・アンデルジェフスキのピアノリサイタル、午後はハンブルク・ラーツムジーク&ドロテア・ミールズによる「結婚カンタータ」BWV210と、生誕300年のCPEバッハのガンバ・ソナタなど、夜はトン・コープマンとアムステルダム・バッハ合唱団による「マニフィカト」「管弦楽組曲第3番」などのコンサートと、1日で3つのコンサートをはしご。それもそれぞれ異なるジャンルのトップ奏者たちばかり。大胆豪快なアンデルジェフスキ、清らかでやわらかく、むらのないノンヴィヴラートの美声がすばらしいミールズと、初めて聴いた「ハンブルガー・ラーツムジーク」の創始者である美人ガンバ奏者のエッケルト嬢、いつもながらの音楽の愉悦の世界に遊ばせてくれるコープマンと、ほんとうに多彩なバッハを楽しむことができました。開演前にまたまた教会の広場でコープマンをみかけ、ツアーのみなさんと記念写真に収まっていただいたり、コープマンの終演後にはエッケルト嬢にも遭遇、これまた記念写真を撮っていただいたりとおまけもたくさん。これまた、小さな町の醍醐味です。

 その翌日、6日の土曜日の晩には、今回のフェスティバルの「メインコンサート」と位置づけられたコンサートが待っていました。

 アーティストは、古楽界のしにせ、シギスヴァルト・クイケン指揮するラ・プティット・バンド。プログラムには、ケーテン時代の作品がもりだくさん。ブランデンブルク4曲に、「無伴奏チェロ」2曲、そしてレオポルト侯爵の誕生日用カンタータ、 BWV173aという内容です。音楽だけで正味3時間、間にセレモニーがあったので、ゆうに3時間半という大コンサートになりました。

 「メインコンサート」の理由は、2001年からこのフェスティバルを率いてきた総裁のシェーファー氏の勇退式?が行われたためと、フェスティバルの25回記念ということのよう。ケーテンにちなんで、この時期の作品ばかりを、それも古楽界のリーダーで、という趣向でしょう。

 シェーファー氏については稿を改めますが、コンサートの前に、幸運にもクイケンにインタビューすることができました。

 意外にもクイケン先生、ケーテンのフェスティバルは初めてとのこと。やはりケーテンのこの地で、バッハのケーテン時代の作品を演奏することは、つくづく感慨深いことのようでした。一方で、「保守的な」ドイツの聴衆に、クイケン氏が最近使っている「肩掛けチェロ=ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ」を、おそらく初めて聴いてもらうことへの意気込みも。バッハ当時、ドイツのこのあたりでは足にはさむ「チェロ」ではなく、肩にかける楽器を使っていた、というのは、クイケン氏自身が絵画や楽器も含めて文献にあたってきた結果の結論で、あちこちにも書かれています。

 これも某誌に掲載予定なので、あまり詳しくは書けないのですが、クイケン氏と接していて、その知識もですけれど、音楽に対する「直感力」のようなものに打たれました。

 たとえば「無伴奏」は、たぶん、人に聴かせるためでなく、バッハが自分で弾くために書いたのではないか、とクイケン氏はいいます。「演奏された記録もないし」。それは、そうかもしれない。たしかにあれほど複雑な音楽が、一般にそう歓迎されたとは思えないですし。たとえば今回のプログラムで演奏されたレオポルト侯爵の誕生日用カンタータは、無伴奏に比べれば相当にシンプルです。聴きやすい。あれが宮廷用とすると、無伴奏はおよそ宮廷用とは思えません。

 「バッハはとてもスピリチュアルな作曲家」だとクイケン先生はいいます。直接心にとどくということのよう。もちろん偉大な作曲家はそれぞれそのようなものを持っており、モーツアルトもベートーヴェンもそうだけれど、バッハはほぼすべての作品がそうなのだそうです。生誕300年の次男坊は?とききますと「いやいや全然」とのことでした。まだ長男のほうが響く作品があるという。作品とじかに向かい合っている人の言葉です。

 午後はリハーサルにもぐらせていただき、夜のコンサートもと、クイケンの世界に浸った1日。残念ながら夜のコンサートは、夕方から見舞われたにわか雨のせいで、湿気にかなりたたられてしまいましたが、ブランデンブルクの3番&4番は各楽器の自律性が発揮され、古雅な響き保ちつつ、奔流のような音楽の生命力が体験できた名演でした。

 バッハそして古楽の大家の言葉と演奏を、バッハの活躍した町でひとつながりで体験するという貴重な1日。やっぱりケーテンは、最高です。 

  






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最終更新日  September 9, 2014 09:58:06 PM


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